『√Letter ルートレター』公式サイト|角川ゲームミステリー
√Letter のレビュー行くぜ!
メーカー:角川ゲームス
機種:PS4/VITA用パッケージソフト
ジャンル:ミステリーアドベンチャー
配信日:2016年6月16日
価格:4800円
角川ゲームスが送る完全新作のアドベンチャーゲーム!
既に「角川ゲームミステリー」としてシリーズ化が決まっている1本だ。
物語は主人公が自分の部屋から15年前の高校時代に文通していた女の子
「文野亜弥」の手紙を見つけるところから始まる。
手紙は10通あったはずなのに何故か消印の無い11通目の手紙が紛れており、
そこには文通相手による罪の告白のようなメッセージが書かれていた。
この手紙はどういうことなのか、文野亜弥は今どうしているのか。
主人公は15年前に何があったのかを調べるために、
文野亜弥が住んでいた島根へと向かう!
…というミステリアスな内容だ。
舞台となっている島根県とガッツリとタッグを組んで制作された内容で、
劇中にはマスコットであるしまねっこも登場。
実在の名所がいくつも登場するご当地ゲームになっている。
発売前から台湾を含む展開が決まっていたり、島根でプレミアムイベントを行ったり、
カドカワらしくユーザーからオリジナルのエンディングを募集する企画を行ったりも。
また、声優が声を当てた架空の女優「角川ゲームミステリー女優」が、
作品毎に異なる役で出演するという試みも発表されている。
例えば今回だと日高のり子が声を当てているAYAというキャラクターが、
ゲーム内では「文野亜弥」を演じているけど、
次回作ではAYAとして違うキャラクターを演じる、というわけね。
なかなか大掛かりなプロジェクトで面白い試みが多数行われている。
ギャルゲーではない完全新作のADVでこれだけ色々やってくれるのは嬉しいし、
既にシリーズ化も決まってるとかワクワク。
15年前の文通から始まる青春ミステリーとか凄く面白そう。
期待を込めてPS4の限定版を予約したぜ!
それが……どうしてこうなったんだ……。
アドベンチャーゲームとしては今時珍しいほどにオーソドックス。
画面内を調べたり、近くにいる人と会話したり、
他の場所に移動したりしてゲームを進行させていく。
島根の各地を巡りながら物語を進めていく。
行ける場所は多いが、「考える」コマンドを使うことで次に進む場所のヒントが貰えるのでサクサク進行だ。
全10章で、章の最初に主人公が文通相手の手紙を読むシーンがある。
ここで「あの時俺はどういう返事を送ったっけ?」と選択肢が登場。
選択肢によって9章以降のシナリオが5種類に分岐する。
一度選択した返事は色が変化するし、
とりあえず片っ端から潰していけば5種類見られるようになっていると思う。
手紙から始まり、手紙から物語が分岐していくゲームなのだ。
このゲームでまず面食らうのが
文通相手である文野亜弥がクラスメイトにつけてるあだ名。
「サル」「ビッチ」「デブ」「ガリ」「メガネ」「チビ」「親友」と、
ストレートというかただの悪口に近いものばかり!
特に「デブ」のことを「デブくん」という、
蔑称+くん付けで呼ぶところが物凄く悪い意味で生々しすぎる……。
ほぼフルボイスなので、
こういうのも全部日高のり子さんの素敵な演技で読み上げてくれます。
「マックス」というニックネームの主人公(本名は入力可能)は
この手紙に書かれた「サル」「ビッチ」「デブ」
「ガリ」「メガネ」「チビ」「親友」のあだ名を元にクラスメイトを探して、
文野亜弥についての情報を集めていくわけなんだけど、
この主人公のヤバさがルートレター最大の問題点。
30歳過ぎてるはずなのに、誰が相手でもタメ口で失礼な態度を取る。
ただの通行人相手でも
「人に物を聞くときにそんな言い方する?!」って態度を終始崩さず、
ゲーム開始すぐに違和感を覚えることになるが、まだまだ序の口。
あだ名が「ビッチ」のクラスメイトを探すシーンでは勝手な決めつけでビッチ認定。
そこから相手を直接ビッチ呼ばわりして怒らせた挙句……。
なぜ怒られたのか分からないという態度で撤退する。
おい、この主人公ヤバいぞ。
文野亜弥の元クラスメイト達は何故か自分たちが元クラスメイトであることを隠し、
文野亜弥のことも喋ろうとしないため、証拠品を集めて問い詰める必要がある。
章のクライマックスで始まる「追及モード」では
相手の発言を打ち破る選択肢や証拠品を選択して自白に追い込めばクリアだ!
元クラスメイトは
「サル」「ビッチ」「デブ」「ガリ」「メガネ」「チビ」「親友」
などと呼ばれていたので
必然的に相手の身体的特徴や社会的立場を突いた追及になりますね…。
シナリオの重要な場面ではマックスモードという、
ゲージをタイミング良く止めることで
ゲージの強さに応じた言葉を相手にぶつけるモードが発動するので、
これも活用して情報を引き出していく。
シナリオ上で「ここはマックスモードだ!」
とか主人公が自分で言うのがよく分からないんだよな……。
説明では「相手に想いを伝えます」などとマイルド文章になっているが、
実際は「ゲージの強さに応じた暴言を相手に叩き付けるシステム」と言っていい。
ゴルフゲームみたいですね。
例えば高校時代は優秀だった人物から情報を引き出すために、
あえて相手をバカにするシーンでマックスモードが発動するんだけど、
ゲージで決められる選択肢が
「お前は、優秀じゃない!」
「お前は、平凡で普通だ!」
「お前は、ただののろまだ!」
「お前は、鈍才の愚か者だ!」
の4択だったり色々すごい。
あ、このシーンの正解は「お前は鈍才の愚か者だ!」です。
ゲームを進めれば進めるほど正気とは思えない選択肢が次々に飛び出す。
さすがにどの場面でも強い暴言をぶつければいいってわけじゃないんだけど、
「なんでこっちの選択肢はダメでこっちならOKなの?」ってシーンが多く、
選択肢を選んで相手にぶつけるシステムとしてまったく機能していない。
簡単にまとめると、
マックスからしたら赤の他人である文通相手の元クラスメイトに
しつこく付きまとって情報や証拠品を集め、
追及モードやマックスモードを駆使し、
暴言に乗せて相手の身体的特徴や社会的立場を突いて情報を引っ張り出すゲームです!
完全にただの恫喝である。ドウカツ!始まります!
主人公が嘘ついたり犯罪紛いの行動するのに一切躊躇ないのがまた凄いんだよな。
俺の記憶だと、1周するだけでも主人公が身分や立場を偽って
情報を聞き出したりアポを取ったりするシーンが4回くらいあったと思う……。
嘘も方便の使い方おかしいだろ?!
タレントとして成功できなくて
今はステージママとして娘に自分の夢を託してる女性に、
スカウトマンだと身分を偽って近づいて呼び出すシーンとか凄いですよ。
グラドルに転向して露出度の高い水着で
ビールの宣伝に出てた時期のポスターを探し出して突きつけたり、
娘にこれを見せてやろうか?って脅すマックス流の恫喝術が炸裂する
このゲーム、関係者と会う前に相手が苦手なものを事前に用意しておくシーンが多く、
マックス実に抜かりない。
ボスの弱点属性のアイテムを用意するのはゲームの基本だからな!
もちろんこのゲームは島根を舞台にしたご当地ゲームなので、
恫喝の合間には島根の人たちとの楽しいやり取りや、
島根の美味しい料理を食べるシーンもありますよ!
人を脅した後はメシがうまい!この唐突な島根観光描写!
孤独のグルメばりに突然主人公がお腹を空かせてメシを食いに行くシーンが挟まるぞ!
主人公は「15年前の文通相手を探しに島根に来た一般人」なのに、
なんで関係者をこんな高圧的な態度で恫喝していくんだよ?!
文通相手に生まれ育った村を焼かれて、その復讐のための島根にやってきた
くらいの理由がないとおかしいぞ……。
ゲーム全体を通して主人公の描写が薄い上に、
何かが欠落しているとしか思えない数々の言動。
このゲームを遊んだユーザーの多くが主人公のことを
「クズ主人公」ではなく「サイコパス」と呼ぶのはそこら辺に原因があるね……。
性格が悪いんじゃなくて、
やることがおかしい上に描写が足りないから性格がまったく理解できない。
主人公の性格を掘り下げる友人や、
主人公の言動に突っ込みを入れる相棒役みたいなのがいたら
また違ったのかもしれないが、一人で島根に来てるのでそういうキャラが一切いない。
単なる島根サイコパス一人旅になっている。
コンプした上で見ると主人公に元クラスメイト達の行動を糾弾させる必要があり、
かつ、「部外者」である主人公が行動を起こすことで
変化が起こるという流れにする上で
ある程度無茶な性格にする必要があったのかなとは思えるんだが、
それにしたってこのキャラは擁護できん……。
焚き火をする必要がある!
って時に石油コンビナートを爆破する奴がいたら一言言いたくもなるでしょ。
シナリオは5ルート分岐するものの、真エンド以外は完成度低い。
結局のところ、8章までが共通ルートで9章と10章が変化するだけで、
エンディングも1ルートに1個だけ。
しかも、大筋が同じルートも結構あるのでストーリーが分岐していく面白さが薄いし、
真相もそこまで驚くようなものではなかった。
元クラスメイト達の行動も首をかしげる。
元クラスメイト達の描写が足りなかったりメチャクチャだったりで、
15年前の過去と向かい合う重さがまるで足りないんだよなあ。
主人公とのやり取りでそこら辺が掘り下げられれば良かったんだが、
ほら、このゲームの主人公って脅迫でしか語り合うことができない人間だから……。
ホラールートや宇宙人ルートといったガラリと雰囲気が変わるものもあるが、
突飛な展開を投げやりにやって、
いい加減なオチをつけて終わりってのばかりでガッカリだ。
特に宇宙人ルートには期待してただけに酷すぎる!
とにかく真エンド以外が雑なんだよなあ。
ルートによって9章と10章の手紙の内容が変化する演出はよかったし、
「姫が森の姫」ルートなんかは
ちゃんと作ればホラーとして面白くなりそうだったのに。
なんか途中から急にルート分岐することが決まったような雑さがあるし、
シリアスシーンでも唐突過ぎるトンデモ展開の連発で変な笑い出てくる。
300万円とは一体…あの老人介護施設は一体…なぜカラス……。
真エンドはそれなりに綺麗に終わってまあまあ良かったんだけど、
強引な展開が目立つし全体の印象の悪さをひっくり返すほどではない。
やっぱりこの文通相手も頭おかしいのでは……って感想に。
元クラスメイトもひどい奴らばっかりだよ!
メインキャラがみんなギスギスしてるし智子ちゃんが癒し。
シナリオは置いておいても、あちこち調べられる場所があるのに
どこを調べてもリアクションがやっつけで調べる楽しみが薄いのはかなり不満。
せっかく島根の名所をあちこち回れるのになんだこのリアクションの薄さは。
バックログ開くだけで笑えるくらい薄い。
どこ調べても前頭葉を家に置き忘れて来たようなリアクションするぞ!
ゲームがテンポ良く進む所は長所と言いたいんだけど、
このゲームはテンポが良いんじゃなくて、
描写しないといけないことを描写してないから早く進むってだけだからな……。
コンプを目指しても10時間ちょっとでサクッと終わって難易度も低いのは、
まあ定価4800円だしこれはこれで良いと思う。
忙しい社会人でも安心のお手軽さ。まあ、肝心のゲーム内容が安心できないんだがな!
8章だけスキップできないのが難点だけど、
一度クリアすれば1~7章は冒頭の選択肢だけ選んで即スキップ出来るから
周回プレイしやすいのは普通に長所。
全体的に90年代のADVっぽいノリを今やろうとしているのが伝わってくる手触りで
その方向性は好きだなあ。EVEとか同級生とかあの辺のノリに近い。
本筋に絡まないサブキャラが無駄に濃い連中揃いで、
変なギャグ会話を繰り広げるのも面白かった。
いかにも「旅先で出会った変な人」っぽいね
「猫が好きな関係者に話を聞くためにレアな猫のお守りを手に入れよう」
みたいなお使いイベントも懐かしくて嫌いじゃないぜ。
まあ、そのシーンは
「レアな猫のお守りをつけている飼い猫がいたので奪おうとしたけど、
飼い主が来たので失敗だ!」
みたいな方向に話が進んでいくんですけどね!
このゲーム、通りすがりの島根の人がたまたま重要アイテム持ってたとか、
たまたま重要情報知ってたとかで進行するシーンがあまりにも多すぎるので
島根の人は恐ろしいなあと思いました。
島根の実在の名所をモデルにした行ける場所が非常に多く、
どこも綺麗な背景イラストがある点や、
モブキャラ含めてほぼフルボイスな点、クオリティの高いBGM、
そして忘れちゃいけない箕星太朗による魅力的なキャラデザインなどは本当にイイ。
シナリオ以外は本当にいいゲームなんですよ!雰囲気だけはいいゲームなんですよ!
アドベンチャゲームなんだから、
いくらシナリオ以外が良くてもシナリオがダメだったらどうしようもないんだけどね!
OPで大炎上する「角川ゲームミステリー」のロゴが
あまりにも内容を表現し切っていて凄まじい。
90年代風のちょっと懐かしいADVを新規に今やろうという方向性と、
シナリオの作りこみが絶望的に噛み合っていなくて
とんでもない合体事故になっている。
その合体事故に島根が巻き込まれた!
手を抜かれて作られたわけではないだろうに、
シナリオだけはPS1やSS時代のC級ゲームみたいな内容。
2016年の新作ゲームとは思えない。
かなり長いレビューになったが
まだまだルートレターの恐ろしさは伝わってないと思う。
マックスのマッドマックスっぷりがあまりにもクライマックス。
「サイコパス主人公と共に破綻したシナリオを楽しむバカゲー」として、
そういう内容を期待してプレイすれば間違いなく2016年屈指の傑作。
ある意味で色んな人にプレイしてもらいたいゲームなのは間違いない。
だが真面目に完全新規のアドベンチャーゲームとして期待していた俺は、
陸に打ち上げられた魚のように
口をパクパクさせながら野垂れ死にするしかなかった…!
面白いかつまらないかと聞かれたら滅茶苦茶面白いんだけど、
俺が求めていた面白さとは2光年くらいかけ離れている!
それなりの大きさのプロジェクトでもう次回作まで決まっているというのに、
本当に、本当にどうしてこんなことになったのか。その謎こそが最大のミステリー。
この「角川ゲームミステリー」に期待している俺は
次回作も決死の覚悟で予約して買うので次はシナリオなんとかしてください……