『グリムライト』のレビュー行くぜ!
メーカー:D3パブリッシャー
機種:PS4/Switch/Xbox One/PC
ジャンル:2Dアクションアドベンチャー
発売日:2020/08/20
価格(税込):1980円
D3パブリッシャーとDICO株式会社が送る完全新作のアクションゲームだ。
雰囲気が『ホロウナイト』に似てるということで、
海外だと発売前から結構叩かれたりもしていた。
確かに雰囲気は似てるが実際遊んだら色々違うだろうし、まあ面白いだろう!
と、『ホロウナイト』をある程度遊んだ上で挑んでみたが、
ゲームとして似てはいないが普通にアクションゲームとして全然ダメという、
とてもつらいオチになっていたぜ……!
舞台は闇に閉ざされた美しいガラスの世界。
ステンドグラス調で統一された世界を冒険していくアクションゲームだ。
この世界に何が起こったのか。主人公である「子供」が何故、何のために戦うのか。
テキストやUIが存在しないゲームなので、
そこはプレイヤーが想像で補完しながら進めることになる。
剣で敵を倒しながらスイッチを探して押し、扉を開いて先へ進んでいく一本道構成。
体力ゲージは無いが、主人公も敵も
「ダメージを受けると体の色が黒くなっていく」というルールで統一されているので、
残り体力が一目で分かるようになっているぞ。
待ち受ける機械のようなボスたちを倒す毎に新しい力が手に入っていく。
空中ダッシュや二段ジャンプに溜め攻撃などなど。
これを活用して更に進んでいくのだ。
敵を倒すと砕けて散っていったり、
一見すると背景に見える障害物を攻撃するとパリンパリン割れたりと、
ガラスの世界であることを活かした手応えがなかなか小気味良いぜ。
しかし問題点は山積みだ。
テキストが無い上にヒントなんかも一切ないので操作性周りが非常に不親切。
開幕で「下+ジャンプボタンで床をすり抜けて先へ進む」を、
ノーヒントで要求してきていきなり印象が悪いぞ!
アクションゲームではよくある仕様だが無いゲームだってあるんだしさ。
ボスを倒した後に新しい特殊能力が手に入るけど演出も説明もないので、
とりあえず全部のボタンを押して試さないといけないのもヤバい。
それはボスを倒して新しい能力を手に入れた喜びを削ぎ、
変なところで詰まる可能性を生むだけで、ゲームとしての面白さに繋がってない!
薄暗くて見辛いトゲだらけのステージを、
延々と歩き回ってスイッチを探すだけのゲーム構成。
トゲとスイッチ以外のギミックは登場しないので最初から最後までずっとこれ。
狭い通路に固い敵を並べたような構成も目に付く。
トゲは赤く塗られているんだけどそれでも見辛いし、
ステージが上下に広いのにカメラを動かせないから、
足場が見えない状態で敵やトゲだらけの場所に飛び込まないといけない。
当然ぶつかってダメージを受けまくりだ。
『ホロウナイト』はスティックの上下入力でカメラが動かせたんだが?!
そしてスティックを上下に入力してもカメラは動かないけど、
主人公が首を上下には動かすという無駄な仕様にイラッとする。
首を動かす元気があるならカメラを動かしてもらいたい!
このゲームを遊んで元気がなくなっていく俺の気持ちにもなれ!
ダメージを受けて黒くなった敵が背景に溶け込んで見失うこともあるので、
本当に視認性が悪いゲームだ……。
トゲで一撃死ではないし、
やられてもすぐ近くから無限にやり直せるのでそこは快適ではあるが。
アクションゲームとしての特徴は、
敵にダメージを与えると体力を奪って回復出来るシステム。
ガンガン攻撃するほど有利になる攻めに振った手触りだ。
途中からこの仕様がボス側にも適応されるため、
体力を奪い合いながらの戦いになるぞ。
ボスの周りに湧いてくるザコ敵を斬って体力を回復しつつ、
ボスの攻撃を避けつつ、着実にボス本体にダメージを与えていく必要がある。
ただ、あんまり機能してるとは言い難く、
大半のボスは動きが一本調子だったり、
攻撃に予兆が無かったりで調整が大分雑。
「黒い存在」や「飛び立つ者(2回目)」は多少手応えあったし、
真ラスボス戦のひたすら殴りまくる感じは嫌いではなかったが、
基本はほとんどゴリ押し気味に殴るだけで勝ててしまう。
ボスのデザインや、体に生えている赤い結晶が弱点で
一定ダメージ与えると砕けていく表現は好きなんだけども……。
空中ダッシュや二段ジャンプで体力が少し減る仕様も余計に感じた。
ロケットジャンプなんかは爽快だけど体力がゴリッと減るから、
ボス戦で絶対使わないようにしないといけない。
あと、PVだと主人公が画面の上下を反転させる大技を使っていたが、
実際のゲームだと終盤の隠し部屋で手に入る隠し能力。
使えそうな場所がラスボス戦くらい。
しかも別に使わなくても問題なく勝てる死にスキル。
PVで一番惹かれた点だったのでとても残念だった……。
このゲームの一番よくない点は「不親切」が面白さにまったく繋がっていないところ。
単に既存のゲームから説明を差っ引いただけの安易な作りで、
「なるほどこれはテキストを使わないゲームだからこその表現だ」
と思えるところがほとんど無いんだよね。体の色で残り体力が分かる仕様くらい。
トゥルーエンディング周りの分岐は理不尽な上に、
分かったところでひたすらにつまらない作業をすることになる。
ゲーム内で実績を見ることが出来て、
一応そこにヒントらしきものが書いてあるんだが、
言われても「分かるか!」と言いたくなるレベルだし、
そもそもテキスト使わないゲームでそこにヒント仕込むのは本末転倒だろう。
周回時などでメタっぽい特殊な操作をする必要があるが、
これも理不尽な上に、
「何故プレイヤーがこんなメタ的な操作をしないとゲームが進まないのか」
という疑問に対するゲームからの答えがまったく提示されないので、
作り手に対する印象がめちゃくちゃ悪いぜ。
初回プレイはすぐ終わって周回プレイでボスなど色々変わる仕様なんだが、
ただでさえつまらないマップを何度も言ったり来たりすることになるし、
2周目からスイッチの数が増えて移動の手間が増える。
単にボリュームの薄さを誤魔化すためとしか思えない構成。
攻撃しないといけないスイッチをトゲに埋めて分かり辛くするとか、
そういうところでプレイヤーを足止めする作りになってる。
言われていた『ホロウナイト』との比較だが、
あちらは探索型アクションで、
こちらはステージクリア型のゲームなので根本から別物。
画面の色使いはかなり似通ってはいるし、
障害物をパキパキ壊せるところもそれっぽくはあるんだが、
デザインや基本システム自体は全然違うし、
こういう雰囲気のゲームも珍しくないといえば珍しくないからねぇ。
「敵を攻撃すると体力が回復できる」という点も似てるといえば似てるが、
『ホロウナイト』は敵を攻撃して溜めたゲージを消費し、
敵の隙を突いて一定時間ボタンを長押しすることで回復する仕様なので、
やはり方向性は違う。
まあ、似てる似てない以前の内容だったので『ホロウナイト』のことは忘れてくれ。
本当に忘れるべきはこのゲーム自身かもしれないが……。
コンプまでは攻略も見て5時間ほど。
同じトゲだらけのマップを行ったり来たりする時間が大半でイライラしっぱなし。
単純にアクションゲームとして完成度が低く
基本が出来てないのに奇をてらったことをやろうとしてだだ滑りしてるゲーム。
背景美術などは目を引くが演出があまりにもヘタ。
このご時世、1000~1500円で
世界観やアクションが秀逸なゲームなんていくらでもあるわけで、
そんな中でこの完成度のアクションを1980円で売るのは
「グラフィックは良い」「システムの方向性には面白いところもある」
とかで擁護するのも難しいレベル。
あえてテキストを使わないゲームなんてインディーゲームならたまにあるし、
アクションなら10年前に出た『LIMBO』とかがもっと良い形でやってるから、
発想に新しさがあるわけでもないんだよなぁ。
思い付いたから入れたような意味の無い雑なメタ要素は論外。
主人公含めたビジュアル周りは好きなんだが本当にひどいゲームだった。
割れたのはガラスではなく俺の心だったぜ……。