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【レビュー】「おはなし」を愛したすべての人へ『OU(オーユー)』【Switch/PC】

 

OU - G-MODE

 

OU ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

OU on Steam

 

『OU(オーユー)』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:ジー・モード

機種:Switch/PC

ジャンル:ピクチャレスク・アドベンチャー

発売日:2023/8/17

価格(税込):2400


 

G-MODEと『セパスチャンネル』などを手掛けた幸田御魚氏が送る完全新作。

記憶喪失の少年「OU」を操作し、不思議な世界「ウクロニア」を旅するアドベンチャーゲームだ。

 

発売前に「問題作」であることを強調しており、俺はそれを聞いて「問題作がただの問題で終わったことはそこそこあるぞ!」と不安になったんだが、遊んでみたら杞憂に終わった。いや確かに問題作ではあるかもしれないが見事な作品!

 

 

物語は目覚めたOUを尻尾に火をともせるオポッサムの「サリー」が案内するシーンから始まる。ぶっきらぼうだけど優しい奴で、無口なOUに代わって雄弁に言葉を紡ぐし、常に先導する形で先を歩いてくれる。

進む先にはウクロニアの奇妙な住人たちや恐ろしい怪物たちが待つ。OUはなぜ記憶を失っているのか?何をすれば良いのか?それを見つける旅になるぞ。

 

 

アドベンチャーゲームとしては単純。

画面左に進む、登場キャラとの会話やイベントなどを見る、端っこに水場があってそこに飛び込むと次の場面へワープ。この繰り返しで、途中の選択肢や行動によって物語が分岐していく構成だ。繰り返し遊ぶことで真エンドへの道が開かれる。条件自体は分かりやすいので詰まるところは無い。

 

移動がワープなので、本をめくるように次々に場面が切り替わっていくのが特徴的だ。急に街になったり、急に夜になったり、急に誰かの部屋に移動したりと目まぐるしい。

 

 

幸田御魚氏が原画をボールペン一本で描き上げたという驚異の背景美術は圧巻。細かい砂利や、暗くて映らないような場面まで丁寧に表現されている。どのシーンを切り取っても絵になるくらい、美術としての力が強い!このおかげで水に飛び込むのが毎回楽しみだった。

 

ゲーム自体はG-MODEから出ているけど、こういうところは本来の意味でインディー的と言える作り方だ。最新アップデートで背景をじっくり見れるギャラリーが追加されたのが本当に嬉しいぜ。実際にPCの壁紙として使ってます!

 

 

OUは「付箋」を投げることが可能で、画面内のオブジェに張り付けるとそこに散りばめられた文章を読むことが出来る。こうやって付箋をペタペタ貼って世界を理解していくのだ。

 

巨大な怪物をこれで食い止めるシーンもあって「そういうゲームだったの!?」となるカッコ良さ。『R.O.D』の読子・リードマンを思わせる勇ましさだ!

 

 

ワープで場面がどんどん切り替わっていくし、含みのある言い回しが多いので最初は状況を理解し辛いが、散りばめられた詩のような言葉を拾い集めながら、ゆっくりと旅を続けていくうちにウクロニアの世界に引き込まれていく。

 

 

出会う住人たちはみんな個性的で、ちょっとした動きまで凝っているのが印象的だ。マリアッチ楽団のダンスは特に可愛い。セリフが無いキャラもサリーとのやり取りや解説が面白いので、動きと合わせて感情が伝わってくる。

 

 

ウクロニアの住人で一番好きなのはやっぱりサリーだなあ。癖になるセリフ回しに加えて、得意げになっている時やテンション上がっている時が分かりやすくて愛嬌ある。

尻尾の火が消えた後にシュッと点け直す動きも好き。

 

 

いくつもの結末を見ながら真のエンディング目指して進んでいく。ルート分岐は結構複雑だけど、すべてのルートを通る必要はなく、何周かすれば真エンディング自体は簡単に見れる構成だ。

 

でも遊んでいて気になる分岐が多いため、クリアした後もまたやり直したくなる作り。俺は泣き女を許した結末とサリーの言葉が忘れられなかった。そうなのか。そうなるかぁ。

 

 

ゲームとして気になる点を挙げると行ったり来たりがやや面倒なところ。ショートカットは用意されているものの、フラグ立てのためにあちこち移動することになるため、ちょっとだけテンポが悪い。

 

ただ、背景美術やテキストの力がとにかく強いため、同じ場所を歩くのも個人的には苦にならなかった。お気に入りの本を何度も読み返すように、物語が進むきっかけを探していくのだ。

 

 

すべてのルートを通らなくても真エンディングは見れるため、クリアするだけなら数時間のボリューム。

ふわっと雰囲気で終わって解釈をプレイヤーに任せる作品ではなく、どういう物語なのかは極めて明確に説明される。その上でどう受け止めるか、どう嚙み砕くか、どう抱きしめるかはプレイヤー次第。そういう作りだ。

 

俺にとっては終わり方含めてめちゃくちゃ心に残ったゲームになったが、そういうわけだからレビューするのが難しすぎるんだよ!

 

シナリオ的には色々な物語に触れてきた人に向けた文学寄りの作品ではあるんだけど、本ではなくゲームだからこその構成だと断言できる。12月20日の大型アップデートで追加された「サリーの物語」も、発売からしばらく経って追加される追加エピソードとして文句なかった。椎葉大翼氏によるBGMも絶品で、主題歌の「おまじないのように」が流れる場面は感情が破壊されるぜ!

 

「おはなし」を愛したすべての人に向けたシナリオが胸を打つ一本だった。

PVや公式サイトの雰囲気に引き込まれたら、是非ウクロニアの世界を旅して欲しい!