絶対SIMPLE主義

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【レビュー】アンテナ農場でデンパと記憶を集める日々!『デンパトウ』【PC】

 

デンパトウ on Steam

 

『デンパトウ』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:株式会社BSテレビ東京

機種:PC

ジャンル:農場シミュレーションアドベンチャー

発売日:2024/5/17

価格:980円


 

トロヤマイバッテリーズフライドが手掛ける農場シミュレーションアドベンチャー。アンテナの木を育てるとデンパが収穫できるので、それを使ってテレビを見るという独特な構造だ。とはいえ、シミュレーション部分は単純だから、物語を読み進めるアドベンチャーゲームと思った方が良い。

 

テレビ東京で放送され、トロヤさんが講師を務めた『東京パソコンクラブ~プログラミング女子のゼロからゲーム作り~』から生まれたオリジナルゲームで、パブリッシャーも株式会社BSテレビ東京。そういう経緯だがいかにも「企画モノ」な感じはまったくない。雰囲気に浸れる良質な短編ゲームに仕上がっているぜ。

 

 

主人公は記憶喪失の少年。

自分が誰なのか思い出せないまま、ぼんやりテレビを見ていると、とある少年が車にはねられ、行方不明になったというニュースが流れてくる。気になって見ているとテレビが途切れてしまう。

 

 

と、そこでいきなり立ちあがって喋りだすテレビ!確かにテレビにはスピーカーも足も付いているが……!なかなかフレンドリーなヤツで、倒れていた少年をベッドに寝かせたのもこのテレビ。少年はテレビが運営するアンテナ農場でお手伝いをすることに。

仕事をしてテレビを見ることで、少年の記憶が少しずつ明らかになっていく……というストーリーだ。

 

 

アンテナ農場とは?

アンテナの苗を植えてデンパを与えて成長させ、大きくなったら出荷するお仕事だ。こうやってみんなの家にアンテナがやってくるんですね~!知らなかったそんなの……。

 

 

山の方が野生のデンパが多いからアンテナ農場として都合がいい、という説明もある。なるほど。なるほど?

 

 

ゲームは単純。通貨である「アルミニウム」でアンテナの苗を買う、パラボラアンテナで空気中のデンパを回収して苗に与える。1日を終える。数日経つとアンテナが育つので出荷する。「アルミニウム」が貰える。この繰り返しだ。

 

 

アンテナの苗は様々な種類があり、成長速度や並べた時の相性、出荷額などが異なるぞ。この広告のチープな雰囲気がしみるぜ……。

 

 

デンパは集めるのに時間が掛かるし、装置のバッテリーが切れると、その日はそれ以上集められなくなる。アルミニウムを消費して道具を強化することで、どんどん作業効率を上げることが出来るのだ。

アルミニウムでアンテナの苗をガンガン買って植えまくるか、それともアップグレードに使うかが悩みどころ。

 

 

淡々としたゲームではあるんだけど、アンテナの木のデザインを筆頭にビジュアルが素晴らしいし、歩き回ってデンパをジリジリと集めていく感覚や、少しずつ成長していく木の表現、「完全成長する前に切り倒すとアルミニウムを大量に吐き出す木」を切り倒すと物凄い数のアルミニウム片が地面い落ち、それをザーーーッと一気に回収する気持ち良さなどで、小さな達成感を演出している。黙々と遊んじゃう面白さがあるね。

 

 

アンテナの木を切り倒して出荷すると、木の内部に蓄えられたデンパが一時的に放出。それを受信することでテレビ番組を見ることが出来るのだ。テレビ番組は少年に関わる内容から、全然関係ないバラエティ番組まで様々。90年代の懐かしい人気番組を思わせる番組が多く、当時を知ってるとニヤニヤしちゃう。もう随分前に終わったんだよなぁと遠い目にもなる。

 

番組が直接表示されるのではなく、少年の感想越しに内容を想像するしかないのが味わい深い。分かる人はそれだけで分かるからな!

 

 

番組のバリエーションはかなり多いし、ゆるい会話と単純作業の繰り返しで掘り下げる少年とテレビの友情はずっと見ていたくなる。内向的だけど素直な少年と、おしゃべりなテレビの掛け合いがいい空気感なんだわ。ハートフルで驚きのあるシナリオ構成も見事だった。

 

 

少し気になったのはトゥルーエンドへの分岐方法。

期限内にアンテナの木を規定以上収穫すると分岐で、スキップ機能やデータを引き継いでの2周目などは無し。育成の選択肢が狭く、コツを掴めばそれの繰り返しになるゲームだからやり直しはかなり作業的になる。セーブした時点から1日ずつ遡ってロード出来るシステムは非常に親切なんだけど、スケジュール決めて栽培するゲームだから、やり直すとなると結構戻る場合もある。考えられてはいるけど、引っかかる人は引っかかっちゃうかな。

 

 

クリアまでは4~6時間ほど。

ブラウン管を思わせる少し歪んだ画角とセピアな色使い。遠い記憶の中で鳴り響いているようなBGM。去り行く「テレビ番組」への郷愁を感じさせる要素が盛り沢山で、しかしそれだけではない構造がたまらない1本。子供の頃にテレビ番組が好きだった大人や、ちょっとフシギな友情モノが好きな人にオススメだ!