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【レビュー】不死身の葬儀屋と幽霊が織りなす、 命安く命儚いバディ作品『新宿葬命』【Switch/PC】

 

Steam:新宿葬命

 

DLsite:新宿葬命

 

新宿葬命 -SHINJUKU SOUMEI- | G-MODE Corporation

 

『新宿葬命』のレビューするぜ!

 


パブリッシャー:G-MODE

機種:Switch/PC

ジャンル:ノベルADVゲーム

発売日:2024/5/24(PC)2024/11/21(Switch)

価格:3990円


 

シナリオ「片岡とも」、イラスト「すめらぎ琥珀」という布陣でG-MODEが送る完全新作のノベルゲームだ。開発はプラス81が担当しているぞ。

 

新宿に存在する架空のスラム街を舞台にした内容で、不死身の葬儀屋、幽霊、公安、チャイナマフィアなどが入り乱れた物語が展開される。ハードボイルドかと思ったら、割と一昔前のギャルゲーみたいなシナリオだな……というギャップはあったが、登場キャラは立ってるし、声優陣の熱演やテンポも良し。

 

 

舞台となっているのは「東京都新宿区御幸町」という架空の街。

世界各国から行き場を失ったならず者が集まってくるスラム街で、住人は銃を携帯するのが当たり前。ヤクの売買や人死には日常茶飯事。あまりに犯罪者が多すぎて公安も潰すに潰せず、犯罪者が溢れないように抑え込むのが精一杯という場所だ。通称「新宿九龍」。

 

見た目はどう見ても歌舞伎町で、なんならOPムービーだと普通に歌舞伎町が舞台みたいな映像になってる。一応、歌舞伎町を真似た隣町という設定。歌舞伎町の近くに、治安の悪さが10倍ヤバいスーパー歌舞伎町があった!みたいなノリである。

 

 

街が壁などで物理的に区切られてるわけではなく、街から一歩出れば平和な日本という治安が成立してるのは、なかなかファンタジーだ。背景スチルが新宿各所そのままなので、新宿に馴染みがある自分だと普通の街にしか見えなかったな。

 

 

ゲーム自体は一本道のノベルゲームで、選択肢による分岐は無し。たまにキャラの視点を選択する場面はあるものの、読む順番が変わるだけだ。

 

 

主人公は新宿九龍で葬儀屋を営む「緋衣良 虎生」。

何をされても死なない不死身の体を持ち、霊の言葉を聞くことも出来る。その力で完璧な検死を行うため、死体を事故死に見せかけたい悪人たちとの銃撃戦は日常茶飯事。

なぜ不死身かは自分でも分かっていないし、「新宿から出ると死ぬ」という、アニメ版『AKIBA'S TRIP』みたいな症状も起こっているため、ここ10年は新宿から出ていない。

 

自分を殺そうとした相手は正当防衛としてきっちり始末するが、紳士的な対話を心掛けてもいるため、撃つ前に「この後……俺は助かると思うか?」と聞く。命が助かるかはこの言葉への返答次第。

 

CV:関 智一の落ち着いた演技を堪能できる、決め台詞がビシッと決まったスーツ姿のクールなおっさん。という時点でかなりシビれるキャラだぜ。

 

 

その虎生に取りついている幽霊の女の子が六堂 凛音。姿も声も虎生にしか認識できない。記憶喪失で虎生とは10年以上一緒にいるため、気心の知れた中。ツンツンした態度だが世話焼きで、虎生の食生活を心配してニンジンを食べるか監視したり。オカンみたいなところもあって可愛い。

 

虎生の不死身と凛音の失われた記憶。

シナリオはこの2つの謎を軸に、新宿九龍での日常を描きながら進んでいく。

 

 

虎生には他にも頼れる仲間たちがいる。

一ヶ瀬 天依は公安部外事課の係長。こちらもスーツ姿のかっけぇお姉さん。新宿九龍の犯罪が外に出ないように抑えるために日夜頑張っており、虎生には検死の仕事を依頼する。クソブラック環境で働いてるので、たまに限界化して様子がおかしくなるが、公安の本気を見せた時の頼もしさはさすが。天依さんが一番好きかなあ。

 

 

胡 憂炎は街に蔓延るチャイナマフィアのアタマ。

周りのチャイナマフィアと違って自分なりの信念を持ってはいるが、「公安に目を付けられない程度」に抑えてて話が通じるだけで、悪党ではある!彼なりの「福利厚生制度」をどう見るか。

 

この虎生と天依と憂炎の3人は幼馴染。

葬儀屋と公安とチャイナマフィアという関係でありながら、情報交換や依頼などで交流があり、お互いを信頼していて、たまに酒を飲んで愚痴ったりもする。こういった掛け合いが非常に魅力的で、新宿九龍という特異な環境下での日常が映える。

 

 

天依が憂炎に会いにいったら、公安であることを知らない下っ端にヤク売りつけられるほのぼのシーン好き。ワハハハ。笑いごとじゃねぇ!

 

 

他のキャラも強烈で、公式サイトの説明に「頭のイカれた聖職者」と書いてある新座真白はやはり忘れられない。メインキャラでは最年少の女の子で、街の教会で助祭として働いている。真面目な性格と、救いの無い境遇で辿り着いた「魂の救済」が壮絶。

 

そして「このキャラをこのポジションに収めるの剛腕過ぎるだろ!」と言いたくなるそこからの展開がすごい。

 

 

大学生でメインキャラではカタギ寄りの仙波すみれさんなど。女性陣の存在感が大きいゲームである。

 

 

舞台設定は殺伐としているが、明るいギャグシーンもあるし、モブのヤクザやチンピラの命がめちゃくちゃ軽い。「新宿九龍」という異常な場所での日常を描きつつ、不死身の謎や、「命」に関する登場キャラそれぞれの認識が語られていくシナリオだ。

 

掛け合いや場面転換のテンポが非常に良く、ダレることなく読み進められる。順番に読むだけの視点切り替えも、上手いタイミングで挟まるからメリハリがついて良し。

 

不死身とはいえ時にはピンチになる虎生を、幽霊という特性を活かして凛音がサポートするなど。バディ感と緊張感があるバトルシーンも満載。壁をすり抜けて隠れている資刺客を察知して回り込むとかね。

 

 

新宿九龍はろくでなしが集う最悪の街。死んで当然の連中が出てくるし、登場人物たちもそれを自覚した上で毎日を送っている。

 

ただ、これに関連して序盤に語られる憂炎と下っ端のエピソードが上手い塩梅。ベタなんだけど、これが無かったら全体の印象はかなり変わってたと思う。それだけの話なんだけど、それだけの話じゃないよな、っていう味付けだ。

 

 

面白いんだが、魔法のような力のルールや正体を探っていく展開や、口調は突き放してるけど割と分かりやすくイチャイチャする虎生と凛音に、この二人の関係に収束していく構成など。割と一昔前のギャルゲーっぽい雰囲気。合間合間のゆるいギャグもそれっぽい……。最近やったゲームだと『イハナシの魔女』辺りが一番近かったかも。

 

本編で存在感薄いヤツが、サブストーリーで急にギャグ展開のアクセル全開にしたりとかなんなんだよアレ!

 

 

クリアまでは6~8時間くらいのボリューム。

舞台設定からもっとハードな話かと思ったのでギャップはあったが、最初から最後まで読ませる展開で飽きずに楽しめたし、BGMや視点切り替えを効果的に使った演出も上手く、エンディングも綺麗。血生臭い展開とギャグを交えながら送る、命安く命儚いバディ作品として面白かった。

Nintendo Switch版は11月発売なので、興味がある人は予約してみてくれ!Steam版はすぐ買えるぞ!