『レナティス』のレビュー行くぜ!
俺がプレイしたのはアップデートパッチver.1.0.5が適応されたPS5版ね。
パブリッシャー:フリュー
機種:PS5/PS4/Switch/PC
ジャンル:アクションRPG
発売日:2024/7/25
価格:7980円
定期的に「あの名作を作ったスタッフによる完全新作!」で何かしら出してくるフリューの最新作だ。今回はシナリオが野島一成、コンポーザーが下村陽子、キービジュアルは直良有祐と、スクウェア系のベテランで固められているぞ。
キャラデザは『ロマンシング サガ リ・ユニバース』などでも描いてる鏑木康隆。
開発はナツメアタリだ。
アクションゲームでは老舗のメーカーで、近年だと『奇々怪界 黒マントの謎』辺りのレトロ作品が目立っているが、『KAMEN RIDER memory of heroez』『ガールズ&パンツァー ドリームタンクマッチ』などキャラゲー関連でも良いのを出してるぜ。
内容は「魔法」が存在する現代の渋谷を舞台にしたアクションRPG。街は実名テナントと「魔法まん延防止措置」「魔法使い募集」などの看板が入り乱れており、雰囲気作りはバッチリ。
- 魔法が存在する2024年の渋谷が舞台
- ノラ魔法使いと魔法機動隊。相反する2人の主人公によって物語は語られる
- 実面店舗が光る。渋谷が舞台のオーソドックスなアクションRPG
- 「抑圧」と「解放」のモードを使い分けるチーム&コンボアクション!
- その戦闘の息切れが結構早い……!
- Vitaソフトのリマスターかと思うようなチープなグラフィック
- 後半は駆け足になってくるシナリオ。無料配信エピソードは現在も継続展開中!
- フルプライスとしては厳しい面も多いが「割り切れば面白い」で落ち着く
それなりに面白いし独自の魅力もあるが、低予算故の息切れも目立っている。
まあ、フリューの完全新作らしい仕上がりと言える……!
魔法が存在する2024年の渋谷が舞台
舞台は魔法使いとそうでない人間が共存する2024年の東京・渋谷。
薬物をばら撒く反政府組織「ギルド」と治安維持組織「M.E.A.」による小競り合いが頻発しており、売人や薬物中毒で暴れる人間、正義を振りかざして好き放題やる自警団、無所属のノラ魔法使いも入り乱れている。
魔法はあるけど夢や希望はない場所ってわけだ。魔法使いにも血筋でなった者と、後天的になった者がおり、そこで差別もある。
ノラ魔法使いと魔法機動隊。相反する2人の主人公によって物語は語られる
物語は二人の主人公の視点で語られる構成だ。
ノラ魔法使いである霧積真凛サイドと、魔法機動隊に所属する西島佐理サイドが交互に進行する。まあ、シナリオ的には霧積真凛くんが主人公と言っていいかな。
自らを縛る抑圧から解放され、自由になるために最強を目指す霧積真凛。「抑圧と解放」がテーマになっている本作を体現した存在だ。19歳の大学生だが言動は子供っぽく、口癖の「知ってた」ですぐ強がったりイキったりするのが可愛い。
渋谷の各所から行ける異世界「アナザー」の奥にある風門を巡ると最強になれる
という理由で行動しており、そこでノラ魔法使いの支援グループ「オウル」のメンバーと出会う。
元陸上選手で話しやすいけどどこか影のある目黒仁香と、ロリータファッションとぬいぐるみで身を包んだ深町最愛がパーティメンバーだ。
愛嬌のあるイキリ大学生と、ちょっと闇が深そうな女子2人のパーティ!
深町最愛はバトルモードになると性格が変わるのがコテコテだが、ウサミミが立ってマスクを装着して、デカいハンマーを振り回すのがイカしてる!
もう一人の主人公である西島佐理は政府公認の魔法使いとして、日夜犯罪と戦っている。職場は過酷で殉職者も珍しくないが、麻薬を根絶するため「お大事に」を掛け声に今日も夜の渋谷へと繰り出す。
仲間は頭脳担当で厄介事ものらりくらりと解決する鵜飼貴一郎と、とにかく力任せに突っ込んで問題を起こしまくる脳筋である土合正義の二人。
こちらはアイドル的な人気もある若手の機動隊員と、濃ゆいおっさん2人のパーティになっている。
渋谷をめちゃくちゃにしてる反政府組織「ギルド」との戦いの中で、この2人の主人公の物語が交錯していくわけだが……。
「こんな形で交錯する展開ある!?」と言いたくなる塩っぷりで凄いぞ!普通はもっと燃える展開になるだろ!?と、驚かされたが続きが気になる展開でもあり、そこからじわじわと2チームの関係を掘り下げていく構成は引き込まれた。
全体的に会話のノリは軽いが、魔法使いになったことで人生が狂った者や、麻薬や自警団の暴走によって悲劇を見ている者など背景は重い。そういったキャラの過去や繊細さを、さりげないやり取りでしっかり描写出来ている。テンポ良い会話の最後に一言付け加えてギャグっぽく落としたり、しんみりまとめたりするのが上手かった。遊んでいるとどのメインキャラも好きになれるね。
サブクエスト埋めていくと、終盤の「なぜ自分でやらなかったか」に対する目黒仁香の、優しさと悲しさが籠った回答が胸に染みたなぁ……。
口癖の使い方で愛嬌を出すのも印象的だった。後半、真凛くんがいかにも「知ってた」って言いそうなところで言わなかった時に、軽い突っ込みが入ったシーンが好き。
頻繁に挿入されるメッセージアプリでの会話シーンも、スタンプの使い方やコメントの書き方に個性があって楽しい。怒った時に「怒」って一文字だけ送る真凛くん笑える。ファミコン版のランボーかよ。
メインキャラ以外でもノラ魔法使いを支援する鯨井ミチロウや、復讐のために依頼をする「愚者」たちなど。世界観を彩るサブキャラたちも魅力的だ。
実面店舗が光る。渋谷が舞台のオーソドックスなアクションRPG
メインストーリーを進行するか、サブクエストを受注してこなすか。ザコ狩りしながら渋谷を探索してアイテムを探すか。ゲームとしてはオーソドックスな構成だ。
街はエリア毎に区切られている。そこまで広くはないが、実名テナントパワーもあって雰囲気はバッチリ。MEGAドンキや一蘭もあるぜ!魔法使いがドンキに来たぞー!
ただ、実名テナントは入口で買い物ができるくらいで中に入ったりは出来ず、買えるのも名前を寄せただけの回復アイテムなのでそこは寂しい点。
自販機もすべて実名なので見知ったドリンクがズラリ!
会話などで溜まるストレスの量によって、攻撃アップと防御ダウンの補正が掛かるシステムがあるんだが、ドリンクを飲むことでそのストレスを下げられるのだ。
一番効果大きいのが240円でストレスを20%下げるZONe!
渋谷の魔法使いはZONeを5本一気に飲むことでストレスを100%消し去れるのだ!さすが魔法使いと言うしかない。俺もそのカフェインとストレスを相殺する魔法欲しいわ。
サブクエストは「魔女狩りアプリ」と呼ばれてる通報用のアプリで受注するのが特徴的。売人の居場所や悩み相談、魔法を使った撮影への参加など様々。こういう雰囲気作り的なシステムは他にもある。
自警団に喧嘩を売られたり、薬物中毒に襲われたりすると戦闘になるが、操作キャラがノラ魔法使いの時に暴れると通報され、SNSのトレンドが上昇。SNSでトレンド一位になると超強いエリート部隊がやってきてボコボコにされるぜ!バズの代償は大きい。
ザコ戦の度にこれになり、通報中は会話が出来なくなるのが少し煩わしいが、マップ開いてファストトラベルで別エリアに移動すればすぐ解除される。
エリート部隊は本編に関係ないボスキャラなので序盤からムリヤリ勝とうと頑張っても良し、ある程度ゲームを進めてから挑んでも良し。こういう要素好き。
「抑圧」と「解放」のモードを使い分けるチーム&コンボアクション!
戦闘は「抑圧」と「解放」のモードを切り替えて戦う。
「抑圧」は攻撃が不可能だが、敵の攻撃を受けた時に画面がスローになり、ボタン長押しで簡単にカウンターと回避ができる。
「解放」中はスローにならなくなるが、ゲージを消費して通常攻撃やスキル技の使用が可能だ。
「抑圧」モードは「敵の攻撃に当たってからジャスト回避&カウンターができる」ような手触りで、これを決めまくって攻撃用のゲージが溜めて一気に反撃!というシステム。ゲージMAX状態で「解放モード」に切り替えると、敵を吹っ飛ばしてスキを作ることができるので、溜めて溜めてドーン!と攻めたい
こう書くと敵の攻撃待ちなゲームに聞こえるが、仲間との連携や、敵の攻撃が来る瞬間にモードを切り替えるなど。プレイヤーの立ち回り次第でテンポアップしてガンガン攻められるのが爽快だ。
3人パーティ制で操作キャラは基本1人。
交代直後は少しだけその場で戦ってくれるので、ゲージ溜めて吹っ飛ばしてスキル技ぶっ放して交代してまたスキル技ぶっ放して……とやれば、3人で敵をボコれるようになるぞ。
スキル技は入れ替えが出来るし、探索で新しいスキル技も手に入る。自分なりの組み合わせでコンボを組み立てていくのが面白いゲームだ。単独だと攻撃のスキが大きすぎて使い辛いキャラも、連携に組み込んでいけばスムーズに使える!
今操作しているモードが「抑圧」と「解放」のどっちなのかを分かりやすくするために、キャラの見た目がガラッと変わるのも好き。
付けてるマスクを外すとか、フードを下すとか、ウサミミが出てくるとかね。視認性をちゃんと考えてある。解放してる時の鵜飼さんかっけぇぜ!
その戦闘の息切れが結構早い……!
しかし……この戦闘の息切れが早い!
ある程度コンボを自分なりのコンボが決まると、同じことの繰り返しになってくるし、中盤からゲージMAXでカウンター決めないと割れないバリアを張る敵や、空を飛び回る敵、地面を潜ってこちらの追撃を避ける敵など、面倒な敵が増えてくる。
結局、基本システムである「敵の攻撃に当たってからジャスト回避&カウンター」が強すぎるので、それを制限する敵を増やす方向に進んじゃってるんだよね。敵のバリエーションもあまり多くない。
最終的に手数の多さでゲージ稼いで、全画面攻撃の超必殺技でゴリ押す場面が多くなってしまった。
ギルドの幹部相手となるボス戦は「抑圧」が通じない回避不能攻撃はガチ避け、通じる攻撃は着実に受けてゲージを溜め、隙を突いて一気に爆発させるバトルや、攻撃する順番を考えないといけないバトルなど、アクション要素強めで個人的には楽しかった。
幹部は出番が少ないがその分キャラ付けが濃い。ちょっと喋っただけで噛ませキャラなのが分かる新崎ジェムや、CV.千葉繁のドスの利いたシリアス演技と「これ絶対アドリブだろ!」って掛け声が入り交じった清川信三郎が面白くて好き。
ただ、ラスボスは画面内を飛び回りながら、高火力かつ避け方が分かりにくい範囲攻撃を連発する理不尽っぷりで、最後の最後で一気にゲームの印象が悪くなってしまったな……。
Vitaソフトのリマスターかと思うようなチープなグラフィック
2024年のフルプライスタイトルとしてはグラフィックがチープなのも気になる。
Vita作品のリマスターかと思う質感とモーション。単純に3Dモデルがイラストと似てない上に、表情が全然変化しないのが厳しい。声優の熱演などで大分カバーは出来ているものの、もうちょっと頑張って欲しかった。
メインキャラがみんな揃って盛り上がる大詰めのシーンなのに、3Dモデルが全員真顔なのはシュールで集中力削がれるって!
同じフリューが2016年に出した『Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-』はどうだったかなと振り返ってみたが、モデルは雰囲気出てるし、表情差分が豊富なイラストでカバーしてる。『レナティス』の方が演出力は劣ってると言わざるを得ない……!キャラは良いだけに、もっと色んな表情を画として見たかったなあ。
後半は駆け足になってくるシナリオ。無料配信エピソードは現在も継続展開中!
ストーリーも同じようなダンジョンを延々歩く場面が多いし、後半になると、ちょっと話飛んだ?ってくらい展開が駆け足になってくる。
ボスである敵幹部がほぼ使い捨てなのは気にならなかったが、ラスボス周りの掘り下げはもっと欲しかったなぁ。主人公である真凛くんの成長物語としては綺麗にまとまってるので、そこは満足してるだけに色々と惜しい。
今後の展開を色々匂わす形で終わっているが、そこら辺は無料配信の後日談エピソードでカバー。9月15日現在だとまだ未完結。本編後の話として「ままならなさ」を描く展開は好きだがどう完結するのか。
フルプライスとしては厳しい面も多いが「割り切れば面白い」で落ち着く
サブクエストほぼ終わらせてもクリアまで20時間くらい。
俺はそれなりに楽しめたが、フルプライス作品としてはちょっとオススメし辛い1本だ。クリア後のエンドコンテンツに乏しいのも物足りなさあるところ。色々と割り切れば面白いゲームなので、世界観やキャラに強く惹かれたら人ならオススメしたいかな。
「割り切れば面白いゲーム」を遊ぶくらいなら、「割り切らなくても面白いゲーム」を最初から遊ぶって?
知ってた。
だが本作にしかない魅力が確かにあり、魔法が存在する渋谷という小さな場所で、組織や世界といった大きなうねりに翻弄され、それでも自分たちの想いを信じて前に向かい成長する若者たちの物語として眩しいシナリオ。ここはさすが野島一成といったところか。
それも知ってた。
全部ひっくるめてフリューの完全新作らしい1本でした!