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【レビュー】遊べるデジタル歴史書!テトリス40年の歴史は芳醇だ!『テトリス® フォーエバー (Tetris® Forever)』【PS5/PS4/Switch/XBOX/PC】

 

テトリス® フォーエバー | PlayStation (日本)

 

テトリス® フォーエバー (Tetris® Forever) | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

Tetris® Forever を購入 | Xbox

 

Steam:Tetris® Forever

 

『テトリス® フォーエバー (Tetris® Forever)』のレビュー行くぜ!俺がプレイしたのはPS5版ね。

 


パブリッシャー:Digital Eclipse

機種:PS5/PS4/Switch/XBOX/PC

ジャンル:パズル

発売日:2024/11/13~11/14

価格:3960~4100


 

『テトリス』40周年の歴史を網羅したコレクションタイトルだ。完全新作を含めたシリーズ&関連タイトル18本を収録している。

 

 Digital Eclipse が展開している「ゴールド・マスター・シリーズ」の1本という位置付けで、このシリーズはただのコレクションタイトルではない。製作者のドキュメンタリー映像などの豊富な資料で歴史を掘り下げる構成になってる。本作もテトリスの作者「アレクセイ・パジトノフ」と、テトリス・カンパニーの創設者「ヘンク・ロジャース」に纏わる映像を1時間以上も収録しているぞ。

 

コレクションタイトルとしては問題点もあるが、歴代『テトリス』を実際にプレイしながら歴史を追う「遊べるデジタル歴史書」としては圧巻だった!

 

ゲームを起動すると

 

 

“他のすべてのゲームが消えても テトリスは残り続けるだろう”

ヘンク・ロジャース 

 

“テトリスをプレイしたまえ、友よ”

アレクセイ・パジトノフ 

 

という、「テトリスが言うなら許すが……」としか言えない序文が出て早速タイトル回収だ。

 

 

収録タイトルは18本!『囲碁』もある!?

 

 

5章構成で綴られるテトリスの歴史を追っていく構成。

好きな場所から読めるし、収録されているゲームも最初から全部遊ぶことが出来る。俺が興味あるのは歴史ではなくテトリスだ!という人はいきなりライブラリーに飛んで遊びまくれる。

 

収録しているタイトルは以下の通り。

 

 

テトリス【Elektronika 60】

テトリス(アカデミーソフト)【MS-DOS】

囲碁九路盤対局【ファミコン】

テトリス(スペクトラム・ホロバイト)【MS-DOS】

テトリス【AppleII】

テトリス【ファミコン】

ハットリス【ファミコン】

ハットリス【ゲームボーイ】

テトリス2+ボンブリス【ファミコン】

ハットリス【NES】

スーパーテトリス2+ボンブリス【スーパーファミコン】

テトリス武闘外伝【スーパーファミコン】

スーパーテトリス2+ボンブリス限定版【スーパーファミコン】

スーパーテトリス3【スーパーファミコン】

スーパーボンブリス【ゲームボーイ】

スーパーボンブリス【スーパーファミコン】

スーパーボンブリスDX【ゲームボーイカラー】

テトリスタイムワープ【今回作られた完全新作】

 

「半分以上ボンブリスじゃねーか!」

「ハットリスはテトリスと直接関係ないだろ!」

「囲碁……囲碁!?」

 

と、なかなか驚きのラインナップ。ほとんど日本で発売されたゲームなので日本人向けの顔ぶれかも。囲碁に関しては歴史を追うことで収録理由が分かる。

 

権利関係でBPSから発売されたタイトルが中心であり、金字塔であるゲームボーイ版や幻のセガ版などは収録されていない。が、それでもこれまで移植がなかった貴重なタイトル揃いだ。

Elektronika 60版『テトリス』は1984年にソビエト連邦領内向けのコンピューターで作られた正真正銘「はじまりのテトリス」!これが現行ハードで手軽に遊べるのがすごい。

 

 

こちらは家庭用ゲーム機で初めて発売されたファミコン版『テトリス』!

最初のヒット作ながら十字ボタンでピースを回転させ、Aボタンを押してブロックを落下させる操作性の悪さで知られており、解説で「現代とやや異なる操作方法が採用されていますが」とか軽く突っ込まれてるの笑う。

今回はキーコンフィグがあるので安心!

 

 

その3年後に発売された『テトリス2+ボンブリス』は開発チュンソフト、石原恒和、中村光一、すぎやまこういちなどのドリームチームで作られた決定版!

 

 

聞いてすぐ分かるBGMのすぎやまこういち感が凄い。ドラクエとはまた一味違うテイストになってて素晴らしいぜ。

 

シリーズ化もされたこの『ボンブリス』はテトリスのくせにブロックを横一列に並べてもブロックが消えず、赤い爆弾ブロックを混ぜて爆発させないといけないルールの変化球。普通のブロックを横一列に並べてコンボを稼ぐほど爆弾の火力がアップしたり、爆弾ブロックを4つ重ねると巨大爆弾が生成されるなどが特徴だ。

テトリスという秩序で脳を焼いて人を猿にするゲームに、暴力的な要素を持ち込んだ野蛮な派生作品であり、そんなゲームが面白くないわけない!産業革命だ!

 

その他、『テトリス武闘外伝』は『ぷよぷよ』風に進化した対戦型のテトリスで今もコアなファンが多いし、『スーパーテトリス3』はルールの違うテトリス3つ入りで試行錯誤が感じられるし、一口に『テトリス』と言っても色々な切り口がある。

完全新作『テトリスタイムワープ』は最大4人のオンライン対戦にも対応。GB風モードも!

 

完全新作の『テトリスタイムワープ』は最大4人でのオンライン対戦にも対応している。基本的には「普通の最新テトリス」という作りで、ハードドロップ、ホールド、Tスピンなどのシステムをしっかり搭載。

 

 

たまに落ちてくる「タイムワープ・テトリミノ」を消すとタイムスリップするのが最大の特徴。

一定時間だけ画面や操作性、ルールが過去のテトリス作品に変化する。時間内に設定されたラインを消すと次の時代へ進んでいく。これを繰り返して元の時代まで帰還すれば高得点となるぞ。時間内にラインを消せなかった場合は強制的に元の時代に戻ってボーナスは無し。

 

いかにも記念作品らしいコンセプトだ。

しかしゲームとしては「普通にテトリスを遊んでいたら、突然古くて操作性が違うテトリスを連続でやらされる」って作りなので一発ネタの域を出ないかな……!

 

この「タイムワープ・テトリミノ」を活用して最高ストアを目指す「スコアアタック」「3分タイムアタック」に、タイムワープ無しで出来るだけ早い150ライン消去を目指す「モダンマラソン」、そしてゲームボーイ版を再現した仕様と画面で150ライン消去を目指す「1989モダンマラソン」の4モードを収録している。

 

 

まんまゲームボーイ版の「1989モダンマラソン」はホールドなどの最新機能も無いから手触りも昔のまま。

金字塔であるゲームボーイ版そのものは収録できないけど再現したモードは入れる……『テトリス・エフェクト』でもやってた手法ですね!

コレクションタイトルの仕様!基本は押さえてるがオートセーブ無しが一部致命的。

 

『テトリスタイムワープ』以外の移植作の仕様に触れておくと、キーコンフィグ、巻き戻し、スロット1個だけのセーブ&ロード機能、3種類から選べる画面モード、ブラウン管風の画面フィルターを搭載している。コレクションタイトルとしてはまあ普通な作り。

 

しかし、原作のオートセーブに対応しておらず、ゲームを止める時はメニューから手動でセーブを行わないとデータが消える。不便な仕様だ。

 

 

この仕様が致命的なのが『スーパーテトリス2+ボンブリス』。

原作では30ステージのコンクエストモードをクリアするとスタッフロールが流れてゲームが止まる。そこでリセットをしてゲームを再開すると裏面が解禁されるんだが、本作はオートセーブに対応していないので解禁出来ない!メニューにリセットの項目があるが、これはゲームを初期化するだけなので無意味。

 

元のゲームの仕様を理解してない移植でここは残念……。

原作に裏面解禁出来る隠しコマンドがあるのでそれを使えばなんとかなると思うが、2Pコントローラーが必要なのでこちらでは未確認だ。

 

 

その他、当時のパッケージを3Dでグルグル回して鑑賞できて、説明書もそのまま収録してるのは評価点。

全5章で『テトリス』の歴史を追うドキュメンタリーは必見!

 

ドキュメンタリー部分は動画、テキスト、画像資料を織り交ぜて送る構成。テトリス誕生から現代までを時系列準に追っていく。

インタビュー映像は新録から過去のアーカイブまで1時間以上!テトリスの生みの親であるアレクセイ・パジトノフと、テトリスカンパニー創設者であるヘンク・ロジャース の動画がたっぷり。作った人と売った人のコンビ。

 

 

テトリスを作ったアレクセイ・パジノトフ氏のハイテンションテトリスコーデがカッコ良すぎるな。

 

 

1984年。ソ連科学アカデミーに在籍していたアレクセイ・パジトノフは空き時間にゲームを制作する。いつか自分たちのゲームを販売したいと考えていたが、社会主義経済体制が敷かれた当時のソ連ではそれは不可能に近かった。

しかし『テトリス』の完成、天才ハッカーの出会いとMS-DOSへの移植、面白さから次から次へとコピーされていく『テトリス』のディスクと徐々に広まっていき、ハンガリーに送られたディスクからついにソ連の外へと飛び出す。『テトリス』の躍進が始まる。

 

 

一方、1983年にBPSを設立したヘンク・ロジャースは、1984年に『ザ・ブラックオニキス』を日本で成功させ、1987年には任天堂と交渉してファミコン初の囲碁ゲーム『囲碁九路盤対局』を発売。1988年にテトリスブームを知ったヘンクはどうにか権利を取得し、初のファミコン版『テトリス』をヒットさせた。

 

80年代後半に掛けて爆発的に広まっていく『テトリス』だが、ソ連越しの交渉かつ複数の企業が絡んでいるため、権利関係があちこち曖昧なまま進んでいる。

 

 

これが描かれる1~2章の段階でめちゃくちゃ面白いのに、3章で満を持してゲームボーイが出てくる流れに震える。俺はこの後の歴史を知っているから。これがどれだけとんでもない存在なのか知っているから……!ドキュメンタリー全体でもゲームボーイ版は特別扱いで語られてる。

 


携帯ゲーム版『テトリス』の許諾をソビエト政府から得るため、旅行用ビザでモスクワに徒手空拳で乗り込むヘンク。しかしそこには『テトリス』の版権を巡り、ヘンク以外にも2人の人物がモスクワにいた。

 

 

ソビエト連邦との交渉の場ではKGBも列席していた。ヘンクの立ち回りの上手さで権利の取得に成功。その後、改めてニンテンドーオブアメリカの重役とモスクワと訪れたヘンクによって、家庭用ゲーム機版『テトリス』の全権利を取得する。

 

その後、任天堂の承認を受けないまま『テトリス』の販売をしていたテンゲンと訴訟になり、その余波でメガドライブ版『テトリス』が販売中止になり……。

 

と、「歴史」を見ているとしか言えないエピソードの数々に興奮しっぱなし。そのまま映画化出来ますよこれ!

 

 

してたわ。

任天堂ファンも注目のレジェンドたち登場。『ポケモンショックテトリス』の情報も!

 

山内博や宮本茂といった任天堂のレジェンドたちも次々に登場するし、当時のニンテンドーオブアメリカの様子やソ連の街並みなどを動画で収録してるのも貴重過ぎる。とんでもねぇぞ!

 

 

かと思うと、アレクセイとヘンクが日本旅行した時の写真なんかもあったりして和む。

ヘンクがアスキーに『テトリス』持ち込んで拒否されたことをボロクソ言うのも笑った。

 

 

宣伝用チラシなどの画像資料もたっぷり収録。

セガのアーケード版『テトリス』のチラシや、メガドライブ版『テトリス』の説明書も収録しているし、MS-DOS版の「アメリカに対するソビエトからの挑戦状!」的な色が強い挑発的な宣伝資料なども貴重。

 

歴史の紆余曲折に関してはやはりゲームボーイ版辺りの盛り上がりがピークで、4章からは順風満帆に色んな『テトリス』が広がっていくのがブームの様子と共に語られる。これはこれで『テトリス』の定着っぷりに感慨深くなるね。

 

インタビュー動画で『テトリス武闘外伝』についても触れてるんだが、技を一生懸命考えたとかそのくらいの言及で深堀りされてない。どう見ても『ぷよぷよ』の影響だろ!白状しろ!

 

 

4章でも日本で爆発的に売れていたキーホルダー型のパチモノ『テトリス』を見たヘンクが、中国の製造元を突き止めて正規の商品として売る話などは凄い。これリアルタイムで体験してるわ。みんなパチモノを遊んでた。

 

 

遊ぶことは出来ないが派生作品もかなり網羅しており、携帯ゲーム機の『ポケモンミニ』で発売された『ポケモンショックテトリス』まで収めてるのは驚き。PS5でプレイしてるから、任天堂やポケモンが出てくるの不思議な感じする。バーチャルボーイの『Vテトリス』や、バイオセンサーという怪しげな周辺機器に対応した『テトリス64』などもしっかり入ってました。

『テトリス』と共に育った人間ならマストバイだ!

 

コレクションタイトルとしては引っかかるところがあるものの、圧倒的な情報量で『テトリス』の歴史を網羅した構成はお見事。まさに遊べるデジタル歴史書と言える1本だ。『テトリス』と共に育った人間ならマストバイ。

今も続くアレクセイとヘンクの友情と、最後に2人で『テトリス』を遊んでるシーンがしみるぜ。これからも永遠に続く歴史の一端をその目で確認せよ!