Nintendo Switch「歌と森の妖怪屋敷」公式サイト
『歌と森の妖怪屋敷』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:ピクセル
機種:Switch
ジャンル:ツインスティックブロック崩し
発売日:2025/7/10
価格:2200円(ダウンロード版)3300円(パッケージ版)
妖怪を題材にしたツインスティックの新感覚ブロック崩しだ。
元々は株式会社ピクセルが2015年にスマホ向けに配信した作品で、Switch向けに作り直しての登場となるぞ。「日本古来からあって今も細々と息づいている」という点で、ブロックくずしと妖怪は同じものかもしれない。いや、ブロックくずしは海外から来た作品ではあるが……。
メインコンポーザーは音楽素材サイトMusinNoteの作曲担当であり、『最悪なる災厄人間に捧ぐ』も手掛けたエイジ氏。ゲストコンポーザーとして『源平討魔伝』や『暴れん坊天狗』などを手掛けた中潟 憲雄氏が参加しているぞ。イラストや音楽にレジェンドを起用するピクセルのいつものスタイルだ。

ブロックくずしがパッケージで発売される感動で6600円の限定版を購入!国内だと2012年の『ハローキティといっしょ!ブロッククラッシュZ』以来じゃないか……?
限定版は妖怪図鑑がちゃんと紐で閉じてある凝りっぷり。コースターも可愛いしサントラも付いてるのだ。
しかし妖怪の描写や音周りは気合入っているものの、ゲーム部分はめっちゃ大味。そこに期待すると結構ガッカリする内容だったなぁ。

町でウワサの妖怪屋敷に迷い込んでしまった女の子の歌ちゃん。人魂のミューに助けられ、悪い妖怪たちが出現する妖魔界の扉を封印することに。一緒に来た男の子の海くんと再会し、無事に妖怪屋敷から脱出することは出来るのか……?というストーリーだ。
左のスティックで歌ちゃんを動かして敵の攻撃を避け、右のスティックでミューを発射して体当たりで妖怪を粉砕!おはじきを弾くような感覚でミューの発射方向を決めるゲームなので、ブロックくずしというより『モンスターストライク』などに近い手触りかも。
モードは2つ。ストーリー仕立てで様々な妖怪を仲間にしていくストーリーモードと、ストーリー無しで全ステージの通しプレイに挑戦するアーケードモードだ。

ストーリーモードは1ステージずつ遊べるし、溜めたお金でメインメニューのショップからパワーアップを購入可能。能力の底上げも出来る親切設計になってる。ショップの店員はかわいいろくろ首で、買い物をすると首を伸ばすサービスをしてくれる。
まあ、お金のバランスが悪くてなかなか買い物出来ないし、長いゲームではないから育成の面白みは薄いんだが……。あくまでも救済措置くらいの位置付け。

本作の特徴は何と言っても妖怪の充実っぷり!
40体以上の妖怪が登場する構成で、ザコとして次々に新しい妖怪が登場するから飽きさせない。百鬼夜行にブロックくずしで殴り込むゲームだ。波に乗って現れる海坊主の質感いいねえ。

けうげげんが『スペースハリアー』みたいな多関節ボスなの笑った。

デカい妖怪と壁の隙間に人魂のミューくんをシューッ!反射しまくって大ダメージ!これぞブロックくずしの醍醐味よ!

戦った妖怪は妖怪図鑑に記録されていき、解説と共に確認できるぞ。
おいっ、見てくれよッ!この油すましのベストショット!!!
『水木しげるの妖怪写真館』移植されないかな……。

雰囲気良好だがゲームバランスはかなり悪い。
歌ちゃんはジャンプ出来ないのに敵が地を這うような攻撃をしてきたり、いきなり近くに泥田坊が出現して攻撃してきたり……。雑な不意打ちで難易度上げるスタイルが『ホーギーヒュー』や『焔龍聖拳シャオメイ』から進歩してない!
敵の種類と攻撃エフェクトの種類が多くて画面が見辛いのも困りもの。
方向を指定して人魂のミューくんを発射。画面を跳ねまわって完全に止まったらもう一度発射出来るという仕様だが、ゆっっっっくりと減速していくので、なかなか完全に止まってくれない。その間も敵の攻撃が飛んでくるので爽快感が無くストレスが溜まる。

そこで頼りになるのが画面右に表示された妖怪たち。
ボス撃破で1体ずつ仲間になり、友達妖怪ゲージが溜まると呼ぶことが出来る。ぬりかべだったら画面をヨタヨタとかわいく歩いて海ちゃんを守るぞ。他にも攻撃、防御、回復と様々な能力の仲間たちがいる。

しかし画面内を貫通性能で一定時間飛び回る輪入道が強すぎてこれ一択!
ブロックくずしで貫通性能はバランス壊すから
次点で1ダメージと引き換えにアイテムブロックを大量に出すので、バリアアイテムと回復を取りまくれる九尾。即時回復の座敷童が緊急回避でたまに使うくらいかなぁ。
ゲージはすぐ回復するのでバンバン妖怪を呼ぶことが出来て、激しい攻撃もこれで簡単に押し返せる。出てこい俺の友達!ずっと友達のターン!俺に下手な事したら輪入道先輩が黙ってないんだが?
逆に言うと、妖怪でゴリ押しする以外にどうしようもない局面が多すぎる。海ちゃんは機動力が低すぎるし、ザコが多くて軌道がブレまくるのに、ヒューは画面内を跳ねまわってなかなか止まらない。プレイヤーのテクニックで激しい攻撃を避けたり、弱点を狙い撃つような面白さが全然無いってことだ。
ステージも雑にブロック並べただけの配置が延々と続くので、ザコの種類は豊富なんだけどかなり単調。ボスも結局ゴリ押しになるし、その割に体力が多い。

ストーリーモードは特定のステージで隠しアイテムを出現させないと、ラスボスに挑めない謎解き要素がある。該当ステージだとろくろ首がヒントをくれるのでこれを参考にする。
と、言ってもかなり取ってつけたような要素。「カッパを10匹倒す」って条件なのに、カッパの好物の話をしてたりヒントがズレてるところも。火炎攻撃で火を点けたけうげげんに、アメフラシで雨を当てる……みたいなのは見た目的な面白さもあって良かった。

ストーリーモードクリアするだけなら2時間くらい。
その後にアーケードモードをクリアしても何もなかった。
手書きアニメで表現された40を超える妖怪たちと、和風でコミカルでどこか怖さもあるBGM、人魂を敵にぶつけた時の花火のような気持ち良い効果音など良好!
ただ、変化球のブロックくずしとしても、アクションゲームとしても、繰り返し遊んで育成するゲームとしても、妖怪を戦略的に使いこなすゲームとしても中途半端だ。最初から最後まで、似たようなステージを妖怪パワーでゴリ押しするだけ。大味で難易度高いゲームより、大味で難易度低いゲームの方が苦しまないだけずっと良いが……。
シナリオもこんな雑な悲劇で「クリアの先に待つのは、切なく優しい思いやりの物語」なんて名乗るなよって感想が先に来てしまう。もしかしたら真エンドがあるのかもしれないが発見できなかった。
ダウンロード版なら定価2200円なので、妖怪たちの雰囲気が好みなら悪くない……くらいの評価でした!