『虧月の夜』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:エディア
機種:Switch
ジャンル:タイムリープサバイバルホラーADV
発売日:2026/01/29
価格(税込):5280円
レトロゲームの移植や女性向けADVを中心に発売しているエディアの完全新作。
「津山三十人殺し」をモチーフにしたタイムリープ作品で、元バンダイビジュアルの森本浩二氏が原案を務めているぞ。
その辺の話は電撃オンラインのインタビューで語られている。
新作ADV『虧月の夜(きげつのよる)』開発者インタビュー。“津山三十人殺し”をモチーフに、殺される恐怖が繰り返されるタイムリープサバイバルホラー - 電撃オンライン
かなり攻めた題材で、エディアにしては珍しい完全新作ADVということで買ってみたが、すぐ終わるし普通に出来が悪い内容だったぜ……!

主人公は現代の高校生であり、進学校の厳しい合宿でメンタルを病んで逃亡。
偶然辿り着いた謎の石碑に接触したことで、その魂は昭和13年5月20日のとある村へとタイムスリップ。鉱山の牢屋に閉じ込められている遠井盈の体へと入り込んでしまう。
昭和の大量殺人事件「蛇塚三十人殺し」が巻き起こるその場所で主人公は何度も死に、その度に時間を巻き戻ることになる。
主人公はループから抜け出し、現代に帰れるのか?というストーリーだ。

舞台となってる蛇塚村はヤバい宗教と因習がマシマシの場所で、おまけに主人公が入った体は言葉を喋れないので手話を使うしかない。頼れるのは主人公(が体を乗っ取っている人間)の兄貴である遠井虧と、メインビジュアルで目立っている蔓草茜の2人くらい。

ゲームはオーソドックスなノベルゲームで、選択肢を選びながら読み進んでいくぞ。
そういう作りだがあらゆる場所に問題点しかない……!
まずストーリーだが、現代の学生の魂だけが、昭和13年の人間の体に入り込んでしまったループ作品である。しかし入り込んだ人物が忌み子扱いで隔離されてて手話でしか喋れない。死んで巻き戻りで復活してもすぐに鉱山の牢屋にぶち込まれる。
そのせいで能動的に情報収集できないから、関係者が不自然に全部喋ってくれたのを聞くだけになってるの構成ミスってるって!
わずかな時間の探索で情報を集める場面もあるんだが、ここもピンポイントで重要な証拠を見付けて終わり。ループで得た情報を活用する場面も終盤少しある程度。主人公の現代知識を活用するような場面もまったくない。
そもそもループ回数自体が少なく、シナリオがほぼ一本道でエンディングの数も少ない。ループ作品の醍醐味が全然味わえない作りだ。

選択肢がやたら多いが、序盤と終盤にちょっと分岐があるだけでほぼ無意味な選択肢。
「正面から突入する」「慎重に様子をうかがう」みたいな、いかにもミスったらダメそうな選択肢も意味が無かったりする。マメにセーブしながら進めたが、あんまり意味が無かったぜ……。

チャプターセレクトとフローチャートは無いが、「一度見たチャプターを読み返す」という中途半端な機能だけはあり、ここの空欄の位置で分岐は分かるようになってるぞ。
初回プレイだと「え……少し遊んだだけでほぼ埋まってるじゃん……」と絶望することになる。

なんと本作はコンプまで遊んでも4時間掛からないボリューム。
時代背景を活かして実在の事件も設定に盛り込んでいるものの、尺が短すぎて登場キャラの掘り下げがまるでできておらず、超重要人物なのにあっさりフェードアウトするキャラもいる。
因習村とヤバい宗教でありがちな18禁ゲームみたいな展開をガンガンやってくるので、よくCERO D扱いでSwitchで出せたな……と驚いたが、キャラの掘り下げがさっぱりな上に、最終的にご都合主義な展開に収束するので安っぽさが強い。

本作、作り手が描きたかったのは明らかに兄貴である遠井虧。
開始直後から「あれ……買うゲーム間違えたか!?」と言いたくなるねっとり熱視線スチルが炸裂だ!兄貴ィッ!終盤のシリアスなシーンでもこの顔するのやめてくれよ!
因習村で忌み子扱いされている弟と、村長の息子なのでなんとか生活できているが疎まれている兄。ただでさえ閉鎖的かつ貧しい村なのに、ヤバい宗教で村民の様子は更におかしくなっている。
この極限状態で依存関係に陥る、BL的な兄弟の話がメイン。
メインビジュアルの茜ちゃんは「何故か人の心が読めるので、喋れない主人公の考えが分かる」というご都合主義パワーを持っているのに扱いが悪く、完全に兄貴がメインヒロインだ。
そして依存関係の兄弟の話としてもノイズが多すぎる。
弟の体に現代から来た主人公の魂が入っていて、妙に詳細な日記から弟の想いを拾っていく構図だが、最後まで弟自身によるセリフや真意などが描写されない。
完全に主人公の存在が関係性の邪魔になっている……!
一つの体に主人公と弟の魂が両方入っているバディ作品にするべきだったのでは?

本作の登場キャラで引っかかったのが蔵元の存在。
結核持ちで徴兵検査で落ちたことで他の村人から虐げられ、似たような立場の主人公には少し優しくしてくれる。明らかに実際の津山三十人殺しの犯人とされている都井睦雄がモデルなんだが、扱いが非常に中途半端。どのルートを進んでも雑にフェードアウトする。
こういうところからも、このゲーム作った人は兄弟BLやりたいだけで、「津山三十人殺し」にあんまり関心ないな?と思ってしまう。

ボイスが無くて演出やエフェクトのレベルも低く、何かある度に安っぽいムービー演出が挟まるのはPS1時代のB級サウンドノベルみたいでだんだん笑えて来る。画面いっぱいに「殺せ」の文字が出て声でも責め立てる演出を、短いスパンで何回も使いまわすのはダメだろ!

ボイス無しでコンプまで4時間掛からずという、5000円のパッケージソフトとは思えぬボリューム。
短すぎて登場キャラが全然描けておらず、そもそも構成をミスってるとしか思えない箇所も多く、過激な描写を詰め込んでみたが、結局はご都合主義や超常現象に収束する。
作り手が描きたいのは極限状態で共依存する兄弟の話で、他の要素はすべてこの舞台装置でしかなく、しかしその兄弟の話も上手く書けていない。関係性だけなら好きな人は結構いるとは思うが……。
雑な因習村+雑なループ作品の合わせ技。
キャッチーさでとりあえず「津山三十人殺し」を題材にしただけの浅いゲームって感想になった。
エディアは大人しく日本テレネット作品の移植でもしてるんだな!