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「小説仮面ライダーシリーズ」全感想!

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やろうやろうと思ってずっと後回しになっていた「小説仮面ライダーシリーズ」の全感想を更新!

小説仮面ライダーW、オーズ、カブト読了

小説 仮面ライダーブレイド、キバ、アギト、ファイズ読了!

過去ログはこちら。

今回は感想を書いていなかったディケイド、響鬼、電王、クウガ、龍騎の5作品の感想をサクッと書いていくぜ。

まずは仮面ライダーディケイド小説から。

作者は鐘弘亜樹……って、誰だぁ!?

新人らしいって情報以外何も分かっていない。

TV本編に関わったスタッフが小説を書き下ろすってシリーズじゃなかったっけ?!

一応監修はディケイド本編でもサブ脚本やった井上敏樹だけども……。

まあ米村正二にディケイド小説を書かせるよりはずっといいだろう。

小説ライダーシリーズは後日談だったり番外編だったりTVをなぞった内容だったり色々あるが、

本作は本編とまったく違うパラレル設定で描かれた内容だ。

主人公である士は記憶喪失でもないし、自分のいる世界もしっかり持っている。

が、自分のいる世界が嫌で嫌で仕方がなくて、

その鬱憤を別の世界で超人(ディケイド)となって活躍することでスッキリ晴らす。

別の世界でディケイドになっている間は強い自分でいられる、という非常に弱い人間だ。

本編でも士はめっちゃメンタル弱かったのでこれは面白い解釈ね。

夏みかんや海東さんや鳴滝さんも登場するが設定は異なる。

パラレル設定だが、歴代シリーズ史上もっとも言動に筋が通っている海東さんや、

目的と正体がしっかりと描写されてる鳴滝さんを見ることが出来るぞ!

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ちなみに帯に書いてある

「一番強いライダーはおれだ!勝負しろ!」なんてセリフは本文中に一切出てこないし、

究極の戦士になる話でもなんでもない。

映画予告詐欺では飽き足らず帯詐欺か!おのれディケイド!

ディケイドが9つの世界を巡る内容ではあるんだが、

話として登場するのはクウガの世界、カブトの世界、電王の世界の3つ。

細部の設定はやや異なっていたりはするものの、

歴代ライダーの世界では名前と設定の似た別人が登場していたディケイド本編と違い

こちらはちゃんと「五代雄介」「天道総司」「野上良太郎」が登場してライダーに変身する。

電王だけはディケイド本編でも微妙に違う扱いだったけどね。

しかしこれ、明らかに今だと主演の役者を呼ぶのが難しいライダーからチョイスしたような……。

オダギリジョーに水嶋ヒロに佐藤健だからねえ。小説だからこそ出来たご本人登場。

そのせいで本編でクウガに変身してた「小野寺ユウスケ」がいないのが残念だがしょうがない。

電王の世界は良太郎と4人のイマジンがドタバタを起こしながら契約者を探すという、

電王本編を髣髴をさせる展開。無難な内容だったがまずまず。

クウガの世界は……こらーっ!井上敏樹!、これクウガの世界じゃなくてキバの世界だろ!

五代のセリフもかなり違和感あるし一条さんも出てこないしで完成度は低かったが、

その反面カブトの世界の完成度が恐ろしく高い。

ワームの設定を生かして士の心情を掘り下げたり、

士と海東を圧倒して名言を炸裂させる天道は見事の一言。

「世界の中心は俺だ」「いや俺だ」などと張り合う士と天道は「これが見たかったんだよ!」ってなったね。

海東さんのセリフ回しも全体的にいいなあ。物凄くそれっぽい。

本編と設定がまったく違うのに「海東さんはこういうキレ方する!」って大笑いした。

海東さん以外の人物も本編を彷彿とさせる描写と、本編とまったく違う設定がうまく絡んでるんだよね。

それが意外性と面白さを産んでいていい。

「世界の破壊者」って単語の使い方とか、夏みかんのお節介キャラとか。

気になったのは戦闘描写。

戦闘描写があっさりし過ぎてて物足りないのは他のライダー小説もそうなんだけど、

さすがに歴代ライダー描写に間違いが多いのは読んでてツッコミまくった。

電王のイマジン達がお互いを「○○タロス」と呼び合うのは分かりやすくするためのアレンジとしても

「マントを纏った仮面ライダーキバ」や「剣を使う赤いクウガ」などの明らかなミスが目に付く。

ディエンドの武器がディエンドガンだったりディエンドライバーだったり。

「巨大なカブトムシ、装甲機ゴウラム」に至ってはどうやったらそんな間違いをするんだよ!

監修は誰だ!この小説の監修をしたのは……あっ。

歴代ライダーをディケイド流に再構築した世界を巡るのがディケイド本編だったが

本作は小説版独自解釈のディケイドが、

本家のTVシリーズと同じ歴代ライダーの世界を巡る内容なので完全に正反対。

歴代ライダーの主人公達から影響を受けて成長していく士。

この本はまさにディケイド自身のリ・イマジネーションと言っていい。

文庫1冊に収めているのでどうしても駆け足な点やダイジェストで処理されてる場面も目立つんだが、

「本編の設定をこう解釈するか!」と唸る展開に余韻を残したラストシーン含め、

ディケイド大好きな俺は非常に楽しく読めたよ。

お祭り騒ぎで最終的に「ディケイドに物語はない!」だった本編と対照的に

士にも夏みかんにも海東にも鳴滝にも小説独自の決着と物語をそれぞれつけてある。

4人とも旅人であるという物語で読み応えあった。文庫本3冊くらいで読みたかったなあこれは。

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小説と全然関係ないけど仮面ライダーウィザード最終回のディケイドは最高でしたね……。

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これ以上ないくらい見事な「先輩ライダーらしいセリフ」と共に

オーロラの彼方に去っていく士のシーンは涙が止まらなかった。

こういう士を……こういう仮面ライダーディケイドをもっと見たかったぜ……!

閑話休題。お次は仮面ライダー電王の小説。

書いているのはまさかの白倉伸一郎。

白倉プロデューサーですよ!アギト、龍騎、555、カブト、電王、ディケイドのプロデューサーを務めた!

今や東映テレビプロダクション代表取締役社長の!

色々な意味で問題発言をよくする人だ!

内容は仮面ライダー電王本編を踏まえた番外編的なストーリー。

ただ、良太郎とハナさんが大人のままだったり、

良太郎に取り付いているイマジンは実体を持っていないとハッキリ明言されていたりと、

これはこれでパラレル設定と言えるか。本編の後日談と解釈できなくもない?。

良太郎とハナさんが大人のままな上に、酒屋でアルバイトして飲酒するシーンまであったりするのは

やっぱり役者や自主規制に縛られず、朝の特撮だと出来ないことをやりたかったのかなあ。

舞台は2013年4月。

建設中の東京ワールドタワーによる再開発地域で巻き起こった魔犬騒動。

そして再開発計画による商店街の買収に巻き込まれるミルクディッパー。

本来は東京ワールドタワーではなくスカイツリーが建設されているはずなので、

デンライナーの面々すらも気付かないうちに時間の流れがおかしくなっている?!

というストーリーだ。

「未来を知る男」と呼ばれる投資家の周りに出没する魔犬を探るために、

良太郎とハナさんに4人のイマジン、侑斗は調査を開始する。

ミルクディッパーの常連客である三浦&尾崎さんなども含めて

お馴染みのキャラクターはみんな登場するし、

推理モノっぽく進む構成に意外な契約者に最後のオチにと。

パラレル設定に近い内容ながら、電王の番外編として非常に手堅くまとまっている。

小林靖子が関わってないのにこの「電王っぽさ」はなかなか凄い。

電王は何度も映画化されたり、便利なキャラなので都合よく何度も使われたりしたけど、

本作は「そうそう、電王ってこういう要素が面白い作品だったよなー」

と素直に思い出しつつ浸れる内容になっていて良い意味で予想外だった。

仮面ライダー響鬼は本編前半のメイン脚本だったきだつよしが作者。

なんと江戸時代が舞台で「変身忍者嵐」とのクロスオーバー作品という斜め上過ぎる内容だ。

若き鬼であるヒビキが主人公で、

鬼の一族の頭領としてイブキが出てくる以外には本編のキャラは出てこないし、

もちろんこの2人も劇場版の響鬼と同じように名前が同じというだけで別人だ。

ヒビキの幼馴染である女性のサキや、

イブキをサポートするキリュウとキドウなど小説のオリジナル鬼が中心。

変身忍者嵐は血車党を壊滅させた後という位置づけ。

変身忍者嵐は見たことなかったので、

どんなものかと読み進めてみたがこれが正統派のヒーローモノで実に面白かった。

力の使い方に悩むヒビキとサキの葛藤と成長。設定面でガッチリと響鬼側とリンクさせて活躍するハヤテ。

仮面ライダー響鬼の敵は魔化魍で、変身忍者嵐の敵は化身忍者なわけだけど、

魔化魍は音撃でしか倒せないのでハヤテは魔化魍を倒せない。

ヒビキは人を斬った事が無いので元人間の化身忍者を倒せない、というバランス取りが絶妙。

このおかげで両方に見せ場が作れてヒビキの成長もしっかりと描けている。

変身忍者嵐に関してもかなり細かく説明してくれたのですんなり入れた。

予想通り、本編に登場して見た目がまんま変身忍者嵐だった「鬼の鎧」に関する話があったり、

吉野が鬼の本拠地である理由など設定を補完する要素もあるものの、

響鬼本編とはベツモノに近いので好き嫌いは別れそうなところなんだけど

「そこに繋がるのかよ?!」と全力で突っ込みを入れたエピローグも含めて、

小説だからこそ出来るお祭り作品らしさに溢れた楽しい1冊だった。

小説仮面ライダーシリーズでは一番「正統派のヒーローモノ」っぽい作品と言えるかもね。

続いて仮面ライダークウガは本編でメイン脚本を手掛けた荒川稔久が執筆。

かなり延期してからの発売だったが、読んで納得の圧倒的密度。

最終回からの直接の後日談で13年後が舞台。

クウガ放送から13年経って出版された小説なので劇中でも13年経っている設定ね。

再び行動を開始したグロンギと、同時に目撃され始めた謎の白い戦士を一条さんが追う。

そう!主人公は一条さんですよ!

有名な携帯電話の電源を切っていなかった本編の描写に説明があったのは笑った。

人生を重ねてそれぞれの道を歩みつつも

未だ帰ってこない「五代雄介」に胸を痛めるクウガの登場人物達に

新たなグロンギ被害者の共通点を探るために奔走する一条さん。

本編の回想を挟みつつ綴られる物語は、

ちょっと強引な部分はあるものの綿密な構成で実にクウガらしい。

それでいて、TV番組で書くのはきつそうな悲痛なシーンもあったりでここは小説ならでは。

あと、本編終盤でも神経断裂弾という強力な兵器が配備されたけど、

この小説でも色々と出て来てやっぱりリントが一番怖いな!って思ったなあ。

荒川稔久の趣味っぽいネタもチラホラ挟んであって、

「夜中のふざけた特撮モノ」という前置きで明らかにアキバレンジャーのネタが出てきた時は

「脚本書いたのあんただろ!」って思った。

俺の場合クウガは後になってDVDで見たんだけど、

恐らくリアルタイムで見て思い入れある人だったら俺の10倍は楽しめると思う。

明るい話ではないしあの最終回が台無しと言えなくもないのでそこは好みが分かれそうだが……。

作品としては本当に完成度が高いんだけど、あの最終回の後にまた戦いが始まる内容だからね。

社会の変化。人間の変化。グロンギの変化。

あらゆる意味で「13年後の仮面ライダークウガ」を描いた1作。

読み応えという意味では間違いなく小説仮面ライダーシリーズで1番だ。

仮面ライダー龍騎の小説は本編のサブ脚本だった井上敏樹が執筆。

この小説仮面ライダーシリーズ、555は以前出版した小説の加筆版だったとはいえ、

12作品で井上敏樹が執筆しているものが龍騎と555の2冊、

監修で関わってるのがキバ、アギト、ディケイドの3冊って井上敏樹率高過ぎだよ!

内容は後日談や番外編ではなく、本編を再構成して1冊にしたもの。

真司の職業がなんでも屋になっていたり、

デッキではなくエンブレムで変身したり設定はかなり異なっている。

蓮、真司、浅倉、北岡弁護士、美穂の5人がメインで、

真司と美穂の絡みが多い辺りは劇場版のエピソードファイナルに近い構成だ。

小説独自の過去話もあってキャラを掘り下げてある。

小説版ならではのエログロ要素は強め。

555小説も大概だったけど龍騎小説のグロ描写のぶっ飛びっぷりマジひどいぞ!

書かなくても分かると思いますがグロ描写の9割は浅倉が原因です。

浅倉の過去話は「ここだけ舞城王太郎の作品かと思った」って感想書いてるブログあって笑った。

本当にそんな感じのイカレっぷりとグロさでギャグになってるレベル。下手な怪人よりタチが悪い!

ただ、「極悪非道なヤツなんだけどこの暴れっぷりをもっと見ていたい」

と思わせる魅力に溢れていたTV版の浅倉が好きだったので、

グロ描写を撒き散らす頭の超おかしい奴としか描写されてない本作の浅倉はイマイチだったな。

星空を強調したミラーワールドの描写や、

「仮面ライダー」ではなく「仮面契約者」と表現してるとこはいい。

ゴローちゃんの勢いで考えたようなアレンジはどうかなとは思ったが、

北岡弁護士の末路の悲痛さは本編よりこっちの方が好きだなあ。

小説版独自設定なんだろうが、

「神埼兄はどうやってライダーバトルの勝者の願いを叶えるつもりだったのか」

に言及があったのも面白かった。なるほどねえ。

ライダーバトルのルールもきっちり文章で明言されてある。

よくも悪くも「劇場版を下敷きにした井上敏樹版の仮面ライダー龍騎」

キャラのアレンジや過去話は色んな意味で濃い味付けで、

TV版に思い入れある人ほど好みがハッキリ分かれそう。

俺は最後の蓮と真司のやり取りだけで満足。

というわけで小説仮面ライダーシリーズ全感想でした。

作品として別格なのはやっぱダブル、クウガ、555の3冊だなあ。

どれも作者の熱が文章から伝わってくる内容だし、本編が好きな人ほど胸に響く。

本編の番外編で、本編の補完も行い、TVじゃムリっぽい豪華バトルに

新フォームである仮面ライダーサイクロンも盛り込んだダブルが一番バランスは取れてるかな。

面白さでは前日譚&番外編&後日談の3部構成だったオーズや

渡の成長物語として再構成したキバも良かった。

俺が一番好きなのはもちろんディケイドね。リ・イマジネーション!

後日談だったり再構成モノだったり番外編だったりクロスオーバーだったりと、

なんでもありのバラバラな方向性でノリも全然違うバラエティ豊かな顔ぶれは、

まさに「平成ライダーの小説シリーズ」と呼ぶに相応しいラインナップだったと思う。

これでカブトのデキさえマトモなら文句無かったんだけども……。

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講談社キャラクター文庫ではスーパー戦隊の小説第一弾として侍戦隊シンケンジャーが発売。

プロデューサーである塚田英明が書き下ろした仮面ライダーフォーゼの小説も2月に出るとのことなので、

そっちもそのうち感想書くぜ。