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宇宙に息づく優しさと残酷さ。あまりにも美しい「ループ×人狼×SF」の傑作『グノーシア』レビュー!【Switch/Vita/PC】

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『グノーシア』のレビュー……行くぜ!

 

このレビューはVita版の当時の物で、

後の発売されたNintendo Switch/Steam版は

バランス調整などがされていることを最初に付け加えておく!

 


メーカー:メビウス

機種:Vita/Switch/PC

ジャンル:SF人狼ゲーム

発売日:2019/06/20(Vita)2020/04/30(Switch)2022/01/23(PC)

価格(税込):2480~2750円


 

性別も人種も様々で個性的な面々が集まった宇宙船の中で、

人間に紛れた「グノーシア」を見つけるために議論を繰り返していくゲームだ。

 

所謂「人狼ゲーム」をCPU相手に行う1人用のシミュレーターと言えるが、

ガチガチなシミュレーターではなくRPG的な成長要素があり、

登場キャラも魅力的でストーリーも見所満載。

1プレイが15分程度で終わる手軽さながら、

やればやるほどに成長や発見があるゲームになっているぜ。

 

あの名作『メゾン・ド・魔王』を開発したプチデポットの最新作。

2017年に発表されてから長かったが……期待を裏切らない最高の1本だったぞ!

 

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謎の異星体グノースと接触した人間は正気を失い、

他の人間を消滅させるグノーシア汚染者となってしまう……舞台はそんな宇宙。

主人公(プレイヤー:名前&性別を選択可能)が乗り込んだ宇宙船にも、

グノーシア汚染者が紛れ込んでいたため、

話し合いと投票でコールドスリープさせる人間を決めていくこととなる。

投票で決めた相手は本当にグノーシアだったのか、罪のない人間だったのか。

議論の果てに勝つのは人間か、それともグノーシアか……?

 

しかし、どちらが勝とうともゲームは終わらない!

勝敗が決する度に主人公はループし、1日目へと戻ってしまう。

ループする度に議論に参加するメンバーや立ち位置は変化し、

時には自分がグノーシアとなることも。

 

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鍵を握るのは主人公と同じくループをしているセツ。

協力してループの謎を探っていくことになる。

ループを繰り返して少しずつ情報を集め、謎を解き明かすのがゲームの最終目的だ。

 

議論する!

キャラと交流してイベント見る!

議論する!

終わったら条件の違う次のループでまた最初から議論する!

この繰り返しで進む内容である。

 

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宇宙が舞台ということで、一癖や二癖どころじゃ利かないキャラが続々登場。

出身惑星も様々で、文化や風習の違いがやり取りでも色濃く出る。

ふざけたような態度で真意が掴めない奴もいれば、

能力は高いのに常に高圧的な態度で周りに煙たがられる奴もいる。

一見まともに見えて根底の部分でヤバい奴がいたりと見てて飽きさせないぜ……。

 

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見た目の出オチ感が凄すぎる奴もいたりする。

おいマジかよ!宇宙人が紛れ込んでやがるぜー!

 

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イルカまでいる!?

オトメちん、こう見えてめっちゃ癒し系キャラです。

 

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議論パートでは自分が怪しまれないように注意しつつ、

他の乗組員たちを疑ったり、かばったり、発言に同調したリ、反発したり、

協力したり、ゆさぶったりして立ち回っていくことになる。

誰がどういう発言したか、誰が誰に投票したかは分かりやすいログで確認可能なので、

矛盾や違和感のある行動をしていないか、常に目を光らせる必要があるぞ。

 

SFにアレンジされているがゲームのルールは「人狼ゲーム」に準じている。

昼に人間は議論でコールドスリープする相手を1人決める。

夜にグノーシアは人間を1人だけ選んで消滅させる。

これを繰り返して、グノーシアをすべて排除出来れば人間側の勝ち。

グノーシアが人間より多くなれば投票が成立しなくなるのでグノーシア側の勝ちだ。

 

自分の所属している陣営が勝っても負けてもループしてまた新しいゲームが始まる。

 

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人間には特殊な能力をもった「役割」も存在するため簡単にはいかない。

1日に1人だけ、指定した相手がグノーシアかを調べられるエンジニア。

コールドスリープしたのが人間かグノーシアかを調べられるドクター。

自分以外を1人だけグノーシアの襲撃から守れる守護天使。

2人セットの役割で自分ともう一人が確実に人間であることが分かる留守番。

 

そしてグノーシアを崇拝して消滅させてもらうことを喜びとするAC主義者は、

人間でありながらグノーシアの味方をするし、

人間側が勝った時に生き残っていると宇宙が崩壊する、

あまりにもキラやば過ぎる「バグ」なんて役割も。

 

役割を持っている人間には名乗り出てもらうことが出来るが、

グノーシア、バグ、AC主義者はウソを付けるため、場が混乱することもしばしば。

 

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自分はドクターだと名乗る人間が4人出た時はどうしようかと思いましたね……!

 

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この議論パートの完成度が非常に高く、

場の流れを見ながら時には論理的に、時には直感でアタリを付けていくのが面白いし、

裏を書かれた時のやられた!という感覚もこれはこれでたまらない。

 

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キャラの性格付けも良く出来ていて、

態度が悪すぎるせいで流れとあまり関係なくコールドスリープされるキャラがいたり、

割と自分の好みで投票するキャラがいたり、ウソがヘタなキャラがいたり、

しっかりと個性が反映されているぜ。

 

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みんなからの好感度が低いラキオなんかは、情報の少ない初日に

とりあえずでコスられる(コールドスリープされる)ことが非常に多い。

恐らくこのゲームを遊んだプレイヤーは

このあまりに見事過ぎる捨てゼリフを何十回も見ることになるぞ!

 

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「こいつはシロだな」と思っていても、

そいつがポンコツなせいで投票でクロ判定されたり、

逆に「こいつ怪しい」となっても

そいつのステータスが高いせいで投票で過半数取れなかったりと、

キャラの性質を考えて場を上手くコントロールしないと足を掬われることになる。

 

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こう書くと難しいゲームに見えるし、実際序盤だと昼は投票で負けまくり、

夜にグノーシアに襲われて死にまくるという、まったく心が休まらない日々が続く!

しかし主人公にはレベルと経験値の概念があり、

繰り返しプレイする度に成長して強くなる。

 

レベルが上がった時に手に入るポイントをステータスに振り分けていく形式で、

例えば「カリスマ」を上げれば自分の発言に他のキャラが同調しやすくなるし、

「ステルス」を上げれば目立ちづらくなって生き残る確率が上がる。

プレイヤーの戦略に合わせた割り振りが可能となっているぞ。

ステータスを上げたり、イベントを発生させることで、議論で取れる行動も増えていく

 

議論に勝っても負けても経験値は入るからプレイは無駄にならないし、

1プレイ15分ほどと短いから、負けてもサクッと次に行ける手軽さもある。

レベルを上げていけば相手のウソを見破ったりも出来るし、

最終的にほとんど負けなくなるロジックモンスターの誕生だ!

人間的魅力と論理的思考が合わさり最強となる。

 

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ちなみにゲーム内で見れる「遊び方」という項目では、

くだけた文章とかわいいイラストでゲームのコツがめっちゃ詳細に書かれているので、

「人狼ゲームあんまり分からない」という人でも安心である。

 

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ある程度ゲームを進めると議論の初期状態が設定可能になる。こっからが本番!

乗員やグノーシアの数、役割の有無や自分の役割を完全に設定可能。

これで様々な状況を作りながらイベントを探し、

情報を集めることでメインストーリーが進行していくのだ。

 

イベントの発生条件は様々で、

 

「〇〇が生き残っている状態で〇日目になる」

「〇〇が生き残っている状態で人間側勝利」

「自分と〇〇がグノーシア」

「自分が人間で〇〇がグノーシア」

 

などなど他にも多数。

条件は確認できないのでとにかく回数を重ねて探すしかない。

条件が変われば当然戦い方も変える必要もあるので、

議論で色々なやり方を試してみるのがまたハマるぜ。

キャラと場の状況、役割による会話のパターンが膨大なのに

破綻なく進むのが本当にすごい。

 

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イベントで掘り下げられる各キャラの物語はどれもこれも面白くて、

「今、さらっとめちゃくちゃヤバい設定言わなかった?」

と突っ込みたくなるような怒涛の展開が待っている。

 

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アホなギャグ会話や和やかな会話も多く、

ぶっ飛んだキャラ達のやり取りに口元が綻ぶわ。

投票で殺す人間を決めるのではなく、

あくまでもコールドスリープという選択なのもこの空気に一役買ってると思うね。

 

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バラバラに集まった情報によって

物語の謎が少しずつ解けていく構成は引き込まれるし、

メインストーリーに関係ないイベントも膨大に用意されていて、

かなり遊んでいても「えっ!こんなイベントあったの?!」と驚かされる。

いやマジでどんだけイベントあるんだこれ……。

 

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グノーシア汚染者となった人間は

豹変して普段ではありえない残忍な態度を見せるが、

完全に別の人格に乗っ取られてるわけでない。

強烈な思想に目覚めたという表現で、根底には本人の人格がしっかりと残っている。

 

だからこそ、いつもの口調やノリで人間を消滅させようとするのが恐ろしいし、

時に「グノーシアなのに何故」と言いたくなる矛盾した行動を取ることもあり、

そのどうしようもなく人間的な姿に胸を打たれる。

 

グノーシアの時にしか見せない残酷さと優しさ。

情報を得るための1ループという通過点で垣間見える彼らの表情は深い。

 

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ループの中で繰り返される議論パートとイベントの両方で

キャラへの愛着と理解が深まっていく作りが見事だし、

水彩画風のタッチで描かれたキャラクタービジュアルもすごく魅力的。

 

好きなキャラは憎まれ役としてのあざとさがカンストしてるラキオ。

見ためと性格でこれはもう嫌いになれないリトルグレイ風のしげみち。

可愛いしイベントが進んだ際の会話がたまらないSQ。

会話を重ねるほど好きになり土下座でイラッとさせられる沙明(シャーミン)、

あまりにも、あまりにも優し過ぎるジナ。みんな大好き癒し系のオトメ、

健気に他の乗客をサポートするステラ。

圧倒的カリスマで圧をビシバシかけてくる夕里子さま辺り。

メインヒロインのセツも好きだし、基本的に全キャラ好きだな!

 

ゲーマーで見た目リトルグレイで抜けてるしげみちも

あまりに親近感湧きすぎてつい肩入れしてしまう!

 

「こんなん好きになるしかないだろ……!」ってキャラと、

「こいつはダメだわ(真顔)」ってなるキャラにハッキリ分かれてるんだが、

ダメな奴もこれはこれで良いキャラしてたりするから本当にキャラ造形が上手い。

 

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素晴らしいゲームなのだが欠点を挙げておくと……。

終盤になるとイベントがなかなか発生しなくなり

メインストーリーを進めるのが大変になるところかな?

イベントサーチという、イベントが発生しやすいように初期条件を調整してくれる、

めっちゃありがたい機能も解禁はされる。

が、条件がかなり分かり辛いイベントも多いため、

これを活用しても苦戦は免れないぜ。

 

しかし、これは恐らく謎を解くために果てしないループを繰り返す主人公の境遇を、

プレイヤーの感覚に落とし込むために意図的にやってるバランス……!

俺もかなり苦労させられたんだが、クリアしてから見ると欠点とは言えないかな!

詰まったら投票でやられやすいキャラを生かす方向で立ち回ると吉。

 

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ある程度ゲームを進めるまでは議論での選択肢が少ないので、

議論パートでの展開がやや単調に感じるかも。

あと、キャラやビジュアルが素晴らしいだけに、

CGギャラリーやイベント回想が無いのは辛いぜ……!

これも分かるよ!決められたルートが存在しないゲームだから、

そこで見たイベントは一期一会なんだなって!でもやっぱり欲しかった!

 

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システム、バランス、物語、登場人物。

とにかく驚くほどに「綺麗」なゲームで、

シナリオとシステムの融合を高いレベルで実現させている。

美しいボーカル曲の数々も必聴。

 

かなり遊びこんでも新しい発見があるし、UI関連も遊びやすく作られている。

膨大な会話差分やイベントも含めて、

開発の時間をかけただけのことはあるスキの無い完成度だ。

 

円環し、広がり続ける宇宙の中で気の遠くなるような出会いと別れを繰り返し、

集めた情報の欠片を真実への架け橋にする。

ループ×人狼×SFの3つが噛み合った傑作。イチオシです。