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これはまさに……SFの糸で編まれた百合ファンタジー!『じんるいのみなさまへ』レビュー!【PS4/Switch】

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じんるいのみなさまへ | 日本一ソフトウェア

 

トロフィーコンプしてDLC入れた2周目もクリアしたので

『じんるいのみなさまへ』のレビュー行くぜ!

 


メーカー:日本一ソフトウェア

機種:PS4/Switch

ジャンル:ガールズアドベンチャー

発売日:2019/06/27

価格(税込):7538円


 

 何故か廃墟になっている秋葉原を舞台に、

5人(+1人)の女の子たちがゆるく楽しいサバイバル生活を繰り広げるゲームだ。

日本一ソフトウェアとアクワイアのタッグによる完全新作。

 

日本一ソフトウェアの新規IPは定期的に買ってて

微妙なタイトルの方が圧倒的に多いんだが、

やはり完全新作タイトルは応援したい気持ちがあるし、

廃墟の秋葉!女の子!サバイバル!

と、ワクワクするネタ揃いだったので予約して即購入である。

 

で、内容はハッキリ言って2019年のフルプライス作品でこれは無いだろう、

という点が多く、DLCの売り方もかなり酷かったんだが、

 スタッフが力を入れている部分に関しては光るところも多く、

 良くも悪くも非常に印象に残る1本だった。

 

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ストーリーは旅行で秋葉原にやってきた女の子たちがホテルで目を覚ましてみると、

何故か秋葉原が植物に覆われた廃墟になっていて人っ子一人いない。

目を覚ましたホテルのベッドも、

よく見るとSF映画に出てくるカプセルみたいでどう考えてもおかしい……。

まあそれはそれとして秋葉原を満喫しよう!

人がいないし店もやってないから自給自足だ!

 

という導入からゆるいサバイバル生活が始まる内容だ。

秋葉を探索していくうちに彼女たちのサバイバル能力もアップしていくし、

散りばめられた謎も明らかになっていく。

 

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 3Dで表現された秋葉原を探索し、

「〇〇へ行こう」「〇〇を探そう」などと表示された目標をクリアして

ストーリーを進めていくのがゲームの流れ。

秋葉原中に存在する探索ポイントで素材を集めたり、

料理のレシピを見つけたり、動物を捕まえる罠を作ったり、釣りをしたりも出来る。

素直にメインストーリーを進めても良いし、あちこち探索して素材集めしても良い。

日数制限やゲームオーバーの概念は無いのでゆるい!

 

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グラフィックがめっちゃ粗い上に異常なくらい遠景がボケボケなので、

初めて遊ぶと「俺、目が悪くなったのかな……?」と戸惑うレベルなんだが、

一応秋葉原の地形はだいたい本物そのままだし、

全部ではないが店舗の看板なんかも架空の店名で再現されているぞ。

俺がたまに行くゴーゴーカレーが滅びてる!heyもだ!

 

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同じアクワイアで秋葉が舞台の『アキバズトリップ2』なんかだと、

画面が華やかな代わりにエリアで区切られてて自由に歩き回れなかったんだが、

本作に関してはシームレスに隅々まで秋葉を歩き回れるからそこは結構感動したな。

裏通りに入ると看板がほとんど無くなったり作り込みは大分劣るけど……。

 

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地形はだいたい本物そのままと書いたが、

秋葉原は滅びているので、見渡す限りの海になっている場所もあるぞ!

色んな魚を釣ることが出来るので自然がいっぱい。

秋葉原は電気街から脱却して自然街へ。

 

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罠を仕掛けるとシカや鳥が掛かるんだが、

たまに小象やツチノコのゲットに成功することも。

 

君は海のある秋葉原で、10代の女の子たちが

小象やツチノコを捕獲するゲームを遊んだことがあるか?

誰も見たことの無い秋葉原がここにあるのだッ!

 

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登場キャラは5名で、DLCを購入すると2周目から更に1名追加される。

 

主人公の「榛東京椛(しんとうきょうか)」は常に前向きで元気いっぱい。

その元気が空回りしたりドジったりすることも多いんだが、

そういうところ含めてみんなの空気を和ませるムードメーカーだ。

 

「小松 和海(こまつ かずみ)」は常に前向きなアウトドアガール。

何かあると一番に突っ込んでいき、ポジティブさを忘れない。

みんなを引っ張っていくメンバーの体力担当だ。バカ担当でもある。

 

「少弐 勇魚(しょうに いさな)」は真面目なしっかり者。

いつも一生懸命で、悩みながらもお母さん的ポジションとして

みんなを支える料理担当だ。

 

「菓子 永里那(かし えりな)」は無気力でいつもだるそうなゲーマー少女。

時折妙なことを言ってボケたり、逆にツッコミに回ったりしながら

メンバーの会話を盛り上げていくマスコット担当である。

 

「邑楽 幽々子(おうら ゆゆこ)」はやや引っ込み思案な物知り少女。

他のメンバーとはやや距離があるものの、自慢の知識でみんなを助ける技術担当だ。

 

500円のDLCを買うことで崩壊した秋葉に投入することが出来る

「朱香CyxaЯ(しゅか すはーや)」はロシア人とのハーフ。

12歳なのに飛び級で大学生をやっている超天才少女で、

落語が趣味で喋り始めると止まらなくなる一面も。

 

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この5人+1人で進むサバイバルはとにかくゆるくて明るい空気。

メンバーが喧嘩するシーンや険悪になるシーンがほとんど無い。

拠点となるホテルに電気もシャワーも揃ってるし、

 

秋葉の同人ショップには

何故かサバイバル生活に役立つ同人誌が大量に置かれているため、

そこから得た知識を元に様々な物を作り出せる。

数日で巨大な野菜が収穫できる謎の畑もある。

このサバイバル生活、あったけぇ……!

 

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とはいえ、そんな生活でもトラブルは発生するから

解決するために協力して街を探索する必要は出てくるし、物語上の謎も多い。

 

 

ひたすらにご都合主義とゆるい会話で進行していき、

ちょっと描写不足なところも少なくないんだが、

6人の女の子たちが仲良く協力して何気ない日常を積み重ねながら、

自分に無いものをお互いに見出し、

想いを深めていく流れはちゃんと出来ていてグッと来るし、

物語が動き出してからの展開は引き込まれるぜ。

 

あと、京椛がアニメ好きで永里那もゲーマーなので

会話でパロネタがちょいちょい出てくるんだけど、

くどい突っ込みが無くスッと差し込まれるし、

「なんでそんなこと知ってるの?」って会話で、

動画サイトの関連動画で出て来たのを見たなんて会話があったり、

ここら辺の描写はキャラが生きていて好き。

 

設定は奇抜だが、百合作品としてはライトな日常系のノリで、

関係としては友達以上恋人未満くらいでイチャイチャする感じかな。

終盤の展開を踏まえた上で俺はこう受け止めたが、

「もうちょっと先が見たい」くらいのバランスでこれはこれで気に入ってるぜ。

 

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シナリオ上の疑問点には大体劇中でもツッコミが入るし、

やり込んでいくとゲーム的な都合だと思った部分にまで

ちゃんと理由があったことが分かる作りも細かい。

とはいえ、力技過ぎて「それはそれで無理ないか?!」ということも。

 

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例えば捕まえたシカをちゃんと解体&血抜きして肉にした説明があるんだけど、

「アウトドア派の和美さんが本を参考にやってくれました!」とかだったりする。

この勢いのせいで技術担当の幽々子さんのチートっぷりが

14歳じゃ説明付かなくなってるぞ!どんな雑学博士なんだよ幽々子!

そしてそれを上回る最強超人朱香!

ちゃんと理屈はあるけどそれを踏まえてもゆるい、柔らかい金属のようなシナリオ展開

 

他にも何かする時に「こんなことして大丈夫かな?」「〇〇だから大丈夫だよ!」

みたいな確認をちょいちょい入れてきたり、

全体的に「シナリオの人、すごく真面目なんだな……!」

というのが伝わってくるノリである。

 

「知識さえあれば人間なんでも出来るんだよ!」

というパワフルさに溢れており、

6人がワイワイ騒ぎながら元気にゆるサバイバル生活していく姿に、

ツッコミを入れながら遊んでいくのは楽しかったぜ。

 

声優は新人さんが多いけど、安定感あるしみんなキャラに合ってると思う。

主人公である京椛は後半の演技が特に良かったし、

永里那(ななひらが担当しているので新人ではないが)の力の抜けた演技も好き。

 

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そんな本作の難点はゲーム進行の単調さ。

選択によるストーリー分岐などは一切なく一本道で

メインストーリーはひたすら「〇〇へ行け!」のおつかいイベントを繰り返すだけ。

マップ自体はそこまでデカくないんだが、

キャラの足が遅いせいもあって遊んでるとしんどくなってくる。

 ダッシュボタンを押しっぱなしにしないとダッシュしないのも地味に面倒な点。

 

また、マップは見れるが現在位置と目的地が表示されない。

一応、マップに建物の名前がちゃんと書いてあるため、

それを見ながらプレイすればそこまで迷わないし、

遊んでるうちに自然と道が覚えられるようにはなっている。

 

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……が、定期的に「色々な建物やその周辺を調べてみよう!」

みたいなフワッとした目標が提示されることがあったり、

妙に目的地が分かり辛い時があったりでこれがきつい。

 

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足の遅いキャラを操作して、もう何度も通った道をグルグル歩き回って、

イベントマーカーが出ている目的地を探さないといけない。

カードリーダーイベントは特に苦労したのでもうやりたくないわ!

 

拠点であるホテルの入り口が異常なくらい分かりにくく、

初見プレイだと確実に混乱するのもどうかと思った。

 

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本作はメインストーリーが進むおつかいイベントと

それ以外のサバイバル要素が完全に分離しており、

素材集めたり食料を蓄えたりといった

サバイバル要素を完全無視してもゲームが進行するので

シミュレーションゲーム的な楽しさを1ミリでも期待すると絶滅する。

 

最初にも書いたが時間制限やゲームオーバーは一切ない。

また、メインストーリーで必要になるアイテムを先に探索で集めておいても無意味で、

ストーリーに沿って発生したイベントをこなさないとダメ。

本当に探索の意味が薄い。

 

探索してレシピや素材を集めて料理を作ると、

ボイス無しのちょっとした会話イベントが発生するし、

後述する100円玉集めもあるのでまったく無意味ではなく、

「探索はストーリーをより深く読み解くためだけに行うもの」

なのは分かるんだけど、

あまりにぶん投げ過ぎなのでもうちょっと作り込んでもらいたかった。

あと、PS4版でトロフィーコンプ目指すなら動物や魚集めがいるくらいかな。

 

食べた料理の種類によって探索の効率が上がるとか、

空腹だと探索した時の残り時間の減りが早くなる要素もあるんだけど、

効率の上がり幅が微弱すぎて効果が実感できないし、

日数制限ないから次の日に回せばよい。

 

っていうか、拠点であるホテルに戻るコマンドが存在しないから

毎回徒歩で戻らないといけないんだけど、

探索で残り時間がゼロになれば自動で帰還するので、

そのために常に空腹にしておいた方が遊びやすくなるぞ!

腹ペコで女の子を1日中走り回らせた方がゲームが快適になる!

 

ゲームオーバーやキャラ管理を気にせず気楽に遊べると言えなくもないんだが、

作り込みが浅くてシステムがスカスカになってるだけなので、

これをそういう言い方するのは抵抗あるかな……。

 

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いくら低予算とはいえフルプライスの家庭用ゲームでマジかよ。

と言いたくなるツッコミどころも満載。

イベントシーンの背景がほぼフリー素材みたいなので賄われていて、

秋葉の浄水プラントを調べているはずなのに背景で田舎のポンプ小屋が出てきたり、

シナリオ担当が想定しているビジュアルとの凄まじい剥離を感じるシーン多数。

 

他にも3Dモデルが主人公の京椛にしかなかったり、

立ち絵が通常の服とパジャマしかないので、

シャワー浴びてるシーンなのに立ち絵は服着てたり、

BGMとSEの種類が少なく、

重要シーンで流れるメロディが日数経過のSEの使いまわしだったり。

 

CGも18枚、DLC入れても25枚しかないので、

もうちょっと色々なシーンが見たかったなあ。

和海を見つめる勇魚のシーンとか、CG自体は良いものが多いだけに残念。

あとパジャマがエロかわいくて良いですね。

 

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500円のDLCを購入すると2周目から6人目である朱香が加入し、

ストーリーが変化する構成になっているが、

このDLCの売り方は率直に言ってADVとして最悪。

 

DLC入れないと「誰か入っているけど開けられないカプセル」が出てくるだけで

結局よく分からないままフェードアウトしていくのでモヤッとするし、

ストーリーの核心部分が明らかにならない。

メンバーが1人足りないから、

後半はなんか主人公の京椛だけ微妙にはぶられる感じになるのも不憫。

 

しかもDLC入れた2周目のストーリーは8割くらい1周目と同じで、

細かい会話が変わるくらいなので後半に入るまで目新しさが無い。

 

一応、1周目だけでも話は完結してはいるし、

1周目の終わり方はめちゃくちゃ好きなんだけど、

全部終わらせた後だとこの売り方は無いだろ……という気持ちにしかならなかった。

  

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ゲーム終盤になると駅前のロッカーを開けられるようになり、

中に入っているあるものが手に入るようになる。

集めることでゲーム全体の細かい謎などが解けるようになっているんだが、

これがめちゃくちゃいい。

探索がつまらないからノベルゲームにしろという意見も見かけたが、

このロッカーの1点だけで

「3Dの秋葉原を歩きまわるゲーム」にした意味はあると思う。

 

ただ、ロッカーを1つ開けるのに、探索で低確率で見つかる100円玉が1枚必要。

フルオープン目指すなら60枚もいるのでひたすら作業プレイをすることになる。

しかもロッカーが開けられるようになる直前に、

イベントで手持ちの100円玉を全没収されるという嫌がらせのような仕様。

 

結局、仕組みは面白いのにゲームに上手く落とし込めてないんだよな……。

探索パートとロッカーがもっとしっかり絡んでれば凄く良くなったのに。

っていうかDLCといい、ロッカーといい、

ゲームの魅力を正面から阻害するような欠点が多いのはなんなんだよ!

 

一応、100円玉でロッカー開けてタイトル画面に戻ってデータロード……を繰り返せば

簡単にフルオープンに出来る裏ワザがあるのでもうみんなこれで開けよう!!!

 

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6人の女の子たちのゆるい会話の積み重ねを「退屈」と捉えるか、

「そんなやり取りが愛おしく、そしてかけがえのない毎日だった」と捉えるかで

評価が変わるし、

キャラのみに着目するか、取り巻く環境を含めるかでも評価が変わりそうな作品だ。

 

冒頭部分から察せる通りSF要素なんかも絡んできて怒涛の展開が待っている。

しかし、常に中心には6人の女の子たちの明るく微笑ましいやり取りがあって、

パッケージに書かれた

「知恵と勇気と仲良しパワーでゆる~いサバイバル」なゲームとして、

芯の通った、それでいて振り切ったシナリオになっている。

 

欠点は山ほどあるんだが、

制作スタッフが力を入れた部分は遊んでいて伝わってくるし

刺さる人には絶対に刺さる1本。俺は買って良かったと思ってるな。

 

 

どうしたってオススメはし辛いものの、マップに現在地と目的地が表示されるなど、

今後のアップデートで多少遊びやすくはなるようなので、

興味を持ったみなさまには、是非とも一度触れてもらいたいぜ。

 


 

※追記

 

 

8月1日のアップデートでついに目的地関連が改善されたぞ!