絶対SIMPLE主義

Switch/PS4のダウンロード専用ソフトを中心に全方位でゲーム紹介するブログ。SIMPLEシリーズも応援中。

怖くてワクワクしてやめられない!面白さ全部盛りの群像劇ADV『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』レビュー!【Switch/PC/iOS/Android】

 

パラノマサイト FILE 23 本所七不思議 公式サイト | SQUARE ENIX

 

『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:スクウェア・エニックス

機種:Nintendo Switch/PC/iOS/Android

ジャンル:ホラーミステリーADV

発売日:2023/3/9

価格(税込):1900~1980円


 

スクウェア・エニックスが送る完全新作のホラーミステリーADVだ。

墨田区に伝わる実在の怪談である「本所七不思議」をモチーフにしている。

ディレクター・シナリオは『スクールガールストライカーズ』

『探偵・癸生川凌介事件譚』の石山貴也が担当。開発は株式会社ジーンだ。

 

定価2000円を切る完全新作となるが、シナリオの濃さも構成も演出も圧巻。

これ定価2000円切ってて本当に良いんですか!?と驚いたぞ。

2022年の『春ゆきてレトロチカ』に続いてスクエニがやってくれた!

正直PVの雰囲気が好みならレビュー読まずに即買いして欲しいんだが、

それはそれとして極力ネタバレせずにレビューしていくぞ!

 

 

舞台は昭和後期の墨田区。

本所七不思議に隠された「蘇りの秘術」を巡る群像劇で、

あからさまに胡散臭い案内人のガイドを受けて、

プレイヤーは呪いの力を得た9人の物語を追いかけることになる。

 

 

最初に名前入力すると「提供」でプレイヤー名が表示される演出面白い。

このオカルト呪殺バトルは俺の提供でお送りします!

 

 

ゲームは昔ながらの選択肢と調査で情報を集めるコマンド式。

複数の主人公たちの視点を切り替えて進むザッピング形式で、

主人公たちの行動を上手く誘導し、正しい選択肢を選ぶことで、

ゲームオーバーを回避して物語を進めることが出来る。

 

 

シナリオのメインになるのは墨田区各所で呪いを受けて

本所七不思議に纏わる「呪詛珠」を手に入れた9人の男女。

「呪詛珠」は条件を満たすことで相手を呪い殺せるアイテムで、

人を殺して魂を一定以上集めると「蘇りの秘術」が完成し、

死人を蘇らせることが出来る。

普通の人間を殺しても魂はほとんど集まらないが、

「呪詛珠」を持っている人間を殺せば一気に魂が集まるということで、

呪殺パワーを持ってる人間同士のバトルに発展していく。

 

 

「蘇りの秘術」を欲しがる理由があるとはいえ、

いきなり一般人が呪いでの殺し合いなんかできるの?という疑問に対しては、

呪いの影響で魂を奪う抵抗感が薄くなる設定で理由付けしてあるぞ。

これで安心だな!これから毎日呪殺しようぜ!

呪いを受けた瞬間に細かい説明が一瞬で頭に入ってくる描写もあるし、

基本的に話が早いゲームで助かる。

 

 

9個ある呪詛珠の力はそれぞれ違うため、能力バトル的な面白さもある。

例えば最初に登場する「おいてけ掘」の呪詛珠は、

「自分の前から立ち去ろうとする人間を殺せる」という能力。

強い……ように思えるが、どうしても後手に回らざるを得ないし、

先手を取られたり条件がバレたりした時点で負けなので使い辛い。

まあ、相手と嫌でも会話しないといけないわけで、

アドベンチャーゲームで最初に出す能力としてはピッタリとも言える!

 

 

元になった怨念の強さで明確に性能差が生まれているのも面白いところで

「そんなの反則だろ!?」と言いたくなるヤバい呪詛珠も続々登場だ。

しかし能力がヤバくても力を持ってる人間がヘッポコだったり、

殺しを躊躇う様な人間だと活かせない。

更に、相手を殺して呪詛珠を奪えばそれを使えちゃうし、

持ち主同士ならば譲渡も可能だ。

 

 

今、誰がどの呪詛珠を持っているか?

どんな条件で呪殺できるのか?どう使うつもりなのか?

協力を持ち掛けてくる人物や、自分の手を汚さず横取りを狙う人物もいる。

二転三転する奪い合いと読み合いでこちらを引き込んでくるし、

呪殺バトルかと思いきやホラーミステリー要素も濃くなっていく。

様々な事件や人間関係が入り乱れるハイテンポな展開は遊ぶ手が止まらなくなるぜ。

昭和後期という時代背景も、じめっとした空気感に一役買っていると思う。

 

 

それぞれバディを組んで行動する登場人物たちも魅力的。

おちゃめで不器用だけど有能なベテラン刑事の津詰刑事と、

津詰を尊敬してるけど歯に衣を着せない言動を貫く襟尾巡査部長のコンビは、

おっさんと若者によるボケとツッコミ感が笑えるし、

一瞬即発の状況下での飄々としたやり取りもすっごくカッコいい。

 

 

本作で一番好きなキャラはやっぱ津詰刑事になるかなぁ。

あまりにもあざといベテラン刑事キャラ!

警察という立場から呪いが巻き起こす事件に挑んでいくのだ。

 

 

友人の不審死を解明しようと奔走する逆崎約子と、

オカルトに詳しい黒鈴ミヲのコンビは

女子高生らしい視点と人間関係で事件に踏み込んでいくのが面白いところ。

「こっくりさん」を活用するシーンあるの分かってるよなぁ。

 

 

怪奇現象渦巻くこのゲームだとミヲちゃんがマジで頼りになるしかわいい。

外見でオカルトに詳しいことを見抜かれるの嫌がってたけど、

頭に五芒星の髪飾りつけてそれ言うのが面白過ぎてダメだった。好き。

 

 

「プロの探偵」略してプロタンを名乗り、

子供のような言動と派手な服を着こなす探偵の利飛太と、

亡くした子供を蘇らせるために「蘇りの秘術」を求める有閑マダムの春恵コンビは

このキャラとしての温度差が魅力。

 

利飛太はギャグポジションかと思いきや、依頼人のことをマダムと呼ぶ礼儀正しさと、

自分のポリシーを曲げない探偵らしさを貫いてるのでしっかりカッコいいし、

春恵さんの見ててハラハラする危うさも緊張感ある。

 

 

他にも普通の会社員でいかにも主人公的なルックスの興家くんと、

不思議大好き女子のヨーコさんも外せないし、

脇役まで見ても濃い連中しか出てこない。

この登場人物たちによる会話劇が最初から最後までキレッキレだ。

 

 

色んな角度の立ち絵とカメラワークを組み合わせて進行するから、

会話シーンで常に奥行きと動きがある。見てて飽きさせないのも手間掛かってる点。

 

 

表情差分も豊富だからここぞという場面でのインパクトが抜群。

顔と口をアップにしてるだけのシーンも多いんだが演出が上手く、

クリアするまで一枚絵が無いことにまったく気づかなかった。

2000円しないADVだからこそのコスト削減と言いたいが、

この凝り方は普通できねーって……!

 

画面レイアウトがスッキリしているのも没入感を高めている点で、

探索パートでは360度見まわせるようになってて臨場感あるし、

それを活かしたホラー演出もバッチリだ。

BGMも聞いててゾクゾクするメインテーマから、

微妙に太陽にほえろっぽい劇伴までいい仕事している。

 

 

TIPSのテキストも濃くて読んでて面白い。

「本所七不思議」に関する解説もがっつり書かれているし

人物解説にはTIPSにしかない情報が満載だ。

しっかり読み込んで事件を把握しながら進めたくなる。

 

 

全体的には大満足だったんだが……。

後半の謎解きがやや意地悪かつ既読スキップが無いので、

一回引っかかっちゃうと苦労する作りだ。

ストーリーチャートから場面ごとに飛べるとはいえ不便だね。

 

 

あまりに既読スキップが無いと言われているせいか、

公式が裏技みたいな方法を紹介してた。かなり力技!

 

 

公式が「読むのが速ければ5~6時間」

「じっくりプレイして完全クリアまで10時間」などと言っていたが、

普通に遊んだら普通に10時間掛かると思うぞ!

 

能力バトル、怪談、ホラー、ミステリーなど様々なジャンルの魅力を内包し、

魅力的な登場人物たちと共にジェットコースターのように駆け抜けていく。

様々な事件と人間関係と謎が収束していく盛り上がりと、

ゲームだからこその魅力にも溢れた1本だった。

近いことをやっているゲーム自体は色々あるんだが、

本作の終わり方は群像劇ADVとしてあまりに鮮やか。

あそこで一気に好きなゲームになったね。

これを定価2000円切る価格でスクエニが出してくるの恐ろしいぜ……。

ADVファンなら絶対買いだ!