『ふしぎ駄菓子屋銭天堂 ふしぎ駄菓子ばなし50選』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:ディースリー・パブリッシャー
機種:Switch
ジャンル:不思議な遊べる本
発売日:2023/11/9
価格(税込):4400円
400万部を超える児童向け書籍でアニメも放送中の『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』を、我らがD3パブリッシャーがゲーム化したものだ。開発は株式会社テンダゲームスが担当している。
内容は完全新作のシナリオを50本収録した短編のノベルゲーム。原作の雰囲気の落とし込み方も上手く、なかなか良いゲーム化だったぞ!
まず『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』とは?
アニメも原作も1話完結のお話で、毎回、悩みを抱えた登場人物が「銭天堂」という駄菓子屋にたどり着く。そこで悩みを解決できる不思議な力を持った駄菓子を手に入れるが、欲望を暴走させて失敗したり、なんとか成功したりと、悲喜交々なオチを迎える構成だ。
この手の怪しげな案内人から不思議な道具を手に入れた主人公が、その道具の力に翻弄される……という筋書きは昔からよくある。
『笑ゥせぇるすまん』に『アウターゾーン』『週刊ストーリーランド』などなど。『藤子・F・不二雄のSF短編』のヨドバ氏なんかも含まれるかな。
『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』はタイトル通り不思議な道具を「駄菓子」に絞ったところと、案内人である紅子さんが着物を着た品の良いおばあさんである点。子供向けではあるが、大人を主役にした回も多い点。一度破滅したキャラが再登場したり、悪意マシマシの道具をばら撒くライバルが登場するなど縦軸の要素がある点。
この辺りが魅力でヒットに繋がってるところ。いかにも駄菓子らしい安っぽいネーミングと、世界観のゆるさも上手くマッチしてるぜ。
よどみ キャラクター|ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 アニメ公式サイト
アニメだとよどみさんが良いんだよなぁ。ロリババアのライバルキャラでCVが榊原良子!榊原良子さんが本気で魔女みたいな演技する上に、喋る時に顔にシワがガッツリ入るから普通にコワイ!OPだと可愛いんだけど……。
ゲーム版はプレイヤー自身が客として「銭天堂」を訪れるシーンから始まる。店主である紅子さんから様々なお話を聞いて、プレイヤーが忘れてしまっている望みを思い出すという構成になっているぞ。
紅子さんから提示される3つの駄菓子から1つを選ぶと、それにまつわるお話を聞ける。用意された50本すべてを聞くのがゲームの目的だ。話の合間に紅子さんから色々質問されることがあり、それによって提示される駄菓子が変化。
まあ、まだ選んでない駄菓子を選んでいけば、特に詰まることなく全部見れる。
一度読んだ話はメインメニューの「駄菓子屋コレクション」から読み返せるし、エンディングリストもあるからコンプも楽々だ。
ボイスは紅子さんとの会話時にちょっとあるだけだが、各エピソードのタイトルコールをやってくれるのはポイント高いぜ。
内容は縦書きで表現されたノベルゲーム。1エピソードに1回、2択の選択肢による分岐があり、それによって「成功エンド」か「失敗エンド」に分岐する。選択肢ではなくミニゲームで合否が判定されるエピソードもあるぞ。ゲームオーバーなどはなく、終わったら次のエピソードへ。
スキップやオートモードなどの基本的な機能はあるし、文字サイズや画面の明るさも調整可能。漢字に全部ルビも振ってあるので、お子様でも安心して遊べる仕様です!
登場する駄菓子は
食べた人にしか見えない神様が恋愛のサポートをしてくれる「ラブどっちボール」
たべると運動神経がバツグンによくなる「モンキーバナナチョコ」
なめると身近な人がとても心配してくれるようになる「シンパインアメ」
食べて兄弟の名前を思い浮かべるとその人がいなくなる「オンリーミーントガム」
などなど……微笑ましいものから効果の段階でヤバいものまで様々。
ほとんどの駄菓子はゲームオリジナルで、脱力するネーミングといかにもな見た目でそれっぽさが出てる。ちょっとドラえもんのひみつ道具的なセンスを感じる物もあるが、駄菓子+ダジャレだからやむなし!
商品の魔力に魅入られている……って表現でもあるんだが、注意書きを読まない奴や忘れる奴が多いのもお約束。この描写が来ると「待ってました!」ってなる!これが見てぇんだよ!
たまに注意書きの場所が分かりにくい駄菓子もあってトラップ過ぎるぜ……。
毎回主人公が異なるため、紅子さんの見た目についてそれぞれの基準で描写されるのが好きなところ。ゲームだと分かり辛いけど紅子さんめちゃくちゃデカいからな!
「お前のようなババアがいるか!」って言いたいけど、貫禄と気品あり過ぎて言うのをためらう!アニメだと稀に変装して潜入する回あるのが好きだった。
短編集的な原作をそのままノベルゲームにした作りになっており、普遍的な友情や人情を題材にした作劇になってるので、幅広い年齢が楽しめる作りになってる。心温まるエピソードから、因果応報的なホラーオチまで様々だ。
全体的にオチが弱いのが惜しいところで、「成功エンド」「失敗エンド」に分かれてはいるものの、失敗したらそこであっさり終わるのが大半だし、もう一捻り欲しいなぁというシナリオが多かった。
ただ、そこは全50話という物量でカバー。ちゃんと面白い話もあるし、最初は子供が主役の話が多いが、読み進めていくと大人が主役の話が増えていき、感動できる話や笑える話を入れてきたりと、原作を思わせる緩急のついた構成になってる。
まあ「笑える話かと思ったら失敗エンドで明らかに人が死んでるんだけど!?」って話もあるが……。
現代のSNSを題材にした話もあるのが今風。
「少し前までの二人は、どちらもフォロワーがすくなかったので、ふだんから低レベルな争いをくりひろげていた」
が辛辣過ぎて笑う。
『銭天堂』の駄菓子といえば、「その注意書きからそうはならんやろ!」という飛躍も面白いところだけど、そういう話もあるし、「成功」とも「失敗」とも言えないちょっとモヤッとするオチが用意されてる話もある。個人的にはその方が印象に残った。
絵の質にかなりバラつきはあるものの、全50話すべてに個別の絵を用意してるのも気合を感じる!モブや背景に関しては汎用のものになってるけど、各話の主人公周りに関してはしっかり個別だ。この千夏ちゃんかわいい。
原作と同じ駄菓子も出てくるんだけど、シナリオはちゃんとゲームオリジナルで違った切り口なのも好印象。「しわとり梅干し」と「型ぬき人魚グミ」が来た時はテンション上がったぜ。
しわ逆流が来るぞーーーーーッ!
短編集なので全話読み切るのに7~8時間くらいかな。エンディングリスト全部埋めようと思ったらもうちょっと掛かる。
シナリオの当たり外れが大きいものの、純粋に低年齢層向けのノベルゲームとしてよく出来ているし、大人が遊んでも楽しめる作り。雰囲気や終わり方など、原作を上手くゲームへ落とし込んだ構成が綺麗だったのでそこも満足だ。
客であるプレイヤーの視点で進むから、アニメや原作では描かれていた「紅子さん側の描写」は無し。履修してないと「あれはなんだったんだろう?」と思う箇所もあるんだが、そこも含めて一貫性のある作りになってるのでこれで良いと思った。
ゲームを遊んだ後にアニメや原作が見てもしっかり楽しめるので、キャラゲーとしては理想的な1本だね。
ちなみに本作登場の駄菓子で俺が欲しいのは「ネバーギブアップル」。
エピソードで好きなのは「ハッピーラッキークッキー」「クロデッサン」「しわとり梅干し」「型抜き人魚グミ」「セレブレティー」辺りでした。