Nintendo Switch|ダウンロード購入|The friends of Ringo Ishikawa
Steam:The friends of Ringo Ishikawa
『The friends of Ringo Ishikawa』のレビュー行くぜ!
メーカー:CIRCLE Ent.
機種:Switch/Steam
ジャンル:アクション
発売日:2019/04/04
価格(税抜):1500円
ロシア生まれのインディーゲームで、
『熱血硬派くにおくん』シリーズへの熱いリスペクトが感じられる
バリバリのヤンキーアクションゲームだ。
これはもう画面見た瞬間に買うしかなかった。
とはいえ、作風は『熱血硬派くにおくん』シリーズとは真逆ノリと言っても良く、
そこら辺も含めてなかなか印象的な1本だったぜ。
不良の石河倫吾となり、
80年代の日本のヤンキーマンガそのままの世界で
自由に生き抜くアクションゲームだ。
とてもロシア産とは思えん……!
倫吾くんとその友人たちが
他校の生徒と抗争を繰り広げるところからゲームは幕を開ける。
それから1年。
高校3年生となった倫吾くんが素行不良で先生から説教され、
なんとか退学は免れたところから本編開始だ。
先生、なんだかんだで倫吾くんのことを考えているコテコテの良い先生である。
ゲームは真面目に学校に通っても良し、ケンカに明け暮れても良し、
バイトでお金貯めて買い物しても良しの自由な構成だ。
時間や日にちの概念はあるが、やらなきゃいけないことはない。
自分の好きにヤンキーライフを送るのだ。
街では他校の不良が睨みを利かせてたり、
他校の不良同士が乱闘を繰り広げていたりするので、
そこに殴りかかっていけばバトル開始!
パンチ、キック、投げを起点にしたコンボや技で戦う構成だ。
パンチとキック同時押しでジャンプになるのが実にファミコンの熱血硬派仕様だが、
後ろに下がりながらしっかりしたガードをすることが重要だったり、
何も考えずに複数の敵を相手にすると、
一方的にボコボコにされる辺りは大分手触りが違うね。
くにおくんの凄さが分かる。あいつマッハキック連発でモブは処理できるからな。
あちこちにいる仲間を連れて一緒に戦うことが出来るし、
異なる勢力が入り乱れて戦う場面も多いため、
挟み撃ちによる個別撃破が基本となるぞ。
ゲームを進めることで蹴り技やボクシング技、
投げ技など様々な技を覚えられるし、
敵を倒すことで経験値が溜まってレベルアップもしていくのだ。
育てていくと目に見えて攻撃力が上がっていくのが気持ち良い。
また、空腹の概念があるのでしっかりメシを食わないと力が出ない。
空腹はレストランで食事したりショップでパンや弁当を買うことで満たせる。
食べ物以外にも本やビデオなど買えるものは色々あるぜ。
テレビデオや8bitのゲーム機は買うと自室に設置されて使うことが出来るので、
高額だが優先して買いたいな!ロマンある!
金は倒した不良の懐を探る事でも手に入るが、
基本的に1人100円前後しか手に入らないという超デフレ時代。
地道にバイトなどして稼ごう。
とにかく雰囲気作りが上手すぎるゲームで、
ドットで表現された80年代の日本の風景が見事だしキャラの細やかな動きも良い。
住宅街、商店街、しょぼいレストラン、不良が集まるバー、
ボロボロの廃工場、薄汚い高架下などなど……。
イベントや店を探しながら隅々まで歩き回りたくなるロケーション揃い。
バーでポーカーが遊べたり、ミニゲームも散りばめられている。
80年代カルチャーも満載だ。
8bitゲーム機が全盛の時代なのに
『タイタニック』のポスターが貼ってあるのは見なかったことにしとく!
倫吾くんが普通に喫煙も飲酒もするのに驚き。
これぞ不良だがなかなかゲームではやらないよなあ。
ボタン一つでタバコを取り出して、どこでも吸える。
もう一度ボタンを押すとタバコをそこら辺に投げ捨てるし、
タバコが無くなったら自動販売機で補充も出来る。
そしてタバコを吸っても何も効果がないので完全に雰囲気だけ!
素晴らしい!
明け方に自宅のベランダから、ぼんやり外を眺めてタバコ吸ってる時の空気感よ。
仲間と一緒に自宅でダラダラとテレビ見ることも出来る。
こういう良い意味で無駄な描写が豊富だからこそ、
「石河倫吾とその仲間たちの青春」の厚みが増している。
時間や曜日の概念があって学校やショップ、バイト先、体を鍛えられる施設も
それに沿っているため、
自然と自分なりのスケジュールが出来上がっていく。
今日は月曜日だから朝は学校に出て
昼からバイトしてジムに行って残り時間で勉強して……みたいな。
不良とのバトルがあると書いたがほとんど無視できるので、
どちらかというとアクションRPGというより育成ゲームに近い手触りね。
毎週土曜日のテストで満点を取る度に奨学金1万円が貰えるし、
お金を貯めてアイテムも買いたくなるので、
不良だけど真面目に勉強とバイトをこなす倫吾くんが完成!
夜が長いので自宅で勉強することが多くなるんだわ。
不良仲間3人を引き連れて図書室で真面目に本を読む倫吾くん。
熱血硬派くにおくんのような痛快なつっぱりファンタジーではなく、
将来のことを考えなければいけない時期に、
自分の居場所を探し求めてもがき、失敗し、
それでも何かを掴みつつある石河倫吾の仲間たちの姿が描かれている。
会話もどこか哲学的なものが多いぜ。
学校で眼鏡かけたオタクとゲーム話するようなギャグ会話もあるものの、
どこか重苦しく、ほろ苦い空気だ。
音楽がアクションゲームらしい軽快なものではなく、
どこか郷愁を誘う曲で統一されているのも、
ミスマッチに思えて実はこの上なくゲームにマッチしているね。
本作の難点は不親切なところで、
イベントの発生条件が一切分からないし、細かい部分の説明もまったくない。
ビデオショップの店員に話しかけた後に
自宅横の掲示板を調べることでバイト出来るとか、
どこかに座っている状態でガードボタンを押すと持っている本を読めるとか、
そういうところに一切説明がないし、
そもそも本を読むことでどういう効果があるのかも表示されない。
手探り感を楽しむにしても、
もうちょっと色々分かりやすくしてほしかったかな。
ファストトラベルが無いのはこれはこれで良かった。
そこまで広大なマップじゃないし、繰り返し移動して
学校やバイト先、友人宅への道を覚えていくのが楽しかったからさ。
『熱血硬派くにおくん』シリーズまんまに見えて雰囲気はまったく異なり、
それが独自の個性になっているこだわり溢れた1本だ。
雰囲気が刺さった人には是非触れてもらいたいが、
育成ゲームに近いことを念頭に置いて買った方が良いかも。
俺としてはくにおくんをリスペクトしつつも、
まったく違うゲームに仕上げたところが素晴らしいところだと思ってる。
そして自由度が高いように見えて本作のエンディングは1つしかなく、
あれをどう受け止めるかで評価が真っ二つに分かれそうなところ。
俺としてはプレイヤーがコントローラーを通して石河倫吾の青春を体感し、
その最後に待っているのがあの結末だからこそ、
プレイヤーそれぞれの物語として完結するし、ゲームだからこその構成になった。
確かに、そこには青春があったんだ。