トロコンしたので『少女地獄のドクムス〆』のレビュー行くぜ!
メーカー:日本一ソフトウェア
機種:PS4/Switch
ジャンル:陣取りアクションRPG
発売日:2020/06/25
価格(税抜):6980円
日本一ソフトウェアによる完全新作のアクションRPGだ。
ヒロインと協力し、様々な少女の心から生まれた毒を浄化していくゲーム。
公式には陣取りアクションRPGって書いてあるけどTPSに近いかな。
メインビジュアルや雰囲気、タイトルのセンスに惹かれて購入したが、
システム部分の練り込みが甘すぎて単調という、
日本一ソフトウェアの新規IPでありがちなヤツでした!
ゲームは、なぜか記憶を失って地獄に迷い込んでしまった主人公が、
そこで出会った名も無き「毒娘」と出会うところから始まる。
毒娘は自分の肉体が無いため、主人公の体を借りた「二心一体」状態となっている。
そして、地獄を浄化して貰えるステッカーを集めれば、
天国に行って願いを叶えられるキャンペーン中が開催中。
主人公は現世に戻るために、毒娘は体を手に入れるために、
2人は様々な少女の煩悩から生み出された毒の坩堝「少女地獄」に挑む!
というストーリーだ。
主人公は性別、名前、ボイスを選択可能。
基本的に選択肢以外では喋らないタイプだ。地獄だから黒い喪服で戦うのカッコいい。
全体マップから様々な「少女地獄」に挑むステージクリア型の構成。
ステージ数は20以上だ。
ステージ開始時に「ヒガンラジオ」というラジオ番組が流れ、
そこで今から挑む「少女地獄」がどういう経緯で発生したのかが解説される。
ラジオはDJである「カグツチミドリ」「キキリツツリ」の2人による、
軽薄かつ面白おかしい掛け合いで進行。
話に合わせて動く影絵の演出も挟まり、見ていて楽しいコーナーだ。
しかしこの名前、『少女地獄』繋がりで夢野久作ネタか!
「シルエットだからセーフ!」と言わんばかりのパロネタのぶっ込み方も嫌いじゃない。
「少女地獄」は死んだ少女の未練から生まれたものと、
まだ現世にいる人間の歪みから発生したものがある。
お金を執着稼ぐことに執着した少女や、挫折した地下アイドルの少女、
飼っていた犬が死んでしまった少女、
親に過度な期待を背負わされた少女などなど……。
完全に本人の自業自得なものから、本人には落ち度が無いもの、
ギャグノリが強いものだったりと、地獄の種類は様々。
敵と戦いながらステージ内を探索し、情報を集めることで、
少女たちのトラウマや心の歪みが少しずつ明らかになっていく構成だ。
原因を見つけてそれを解消することで地獄は浄化される。
基本的には1ステージ、1少女、1トラウマのペースで駆け抜ける、
少女のトラウマわんこそばアクションなので、個々のエピソードはあっさりめ。
しかし、毒娘の勢いのある突っ込みや掛け合いが豊富で、
楽しく進められるようになってるし、
百合、家族、友情などなど、どれも短いながらもポイントを押さえたエピソード構成。
地獄少女の主たちのイラストも可愛いし、バラエティ豊かで飽きさせない。
俺は地下アイドルの話がお気に入りかな。
また、地獄を浄化することで死んでいる少女の魂が成仏出来たり、
まだ生きているパターンだと自分の行いを見つめ直して前に進めたりと、
割と読後感よく仕上げてあるのも特徴だ。この毒、意外と飲みやすい!
少しチープなところもあるが、薄いマゼンダカラーを基調とした少女地獄のビジュアルも、
まさに「異界」という空気感があって非常にいい。
こういう空の色で個性出してくるゲーム好きなんだよなぁ。
置かれているオブジェなども、
主である少女の心が反映されたものになっているのが凝っているところ。
BGMもすげぇカッコ良くて雰囲気バッチリだ。
地獄を浄化していく中で、主人公とは別にライバル的な「二心一体」コンビも登場だ。
この笑顔が素敵な喪服の少女と白い毒娘。
コテコテな漫才っぽい会話と予想外の境遇でいいキャラ出してるぜ。
一番声を聴くことになるヒガンラジオの2人も声だけながら魅力的で、
ゲーム雰囲気をしっかりと支えている。
終盤のセリフなどはこの構造だからこそで非常に良かった……。
色んな少女が登場する短編集的な作りではあるが、
シナリオは芯が通っていて終盤の盛り上がりはなかなかだぜ。
肝心の戦闘システムは、2つのモードを切り替えて戦うアクションシューティング。
右スティックで敵を狙って弾を撃つ射撃モードが攻撃の基本だ。
毒を弾として発射し、弾切れになったら一定時間経過で回復。
もう一つは毒を回収するモード。
あちこちにある毒沼は上に乗ると、ダメージを受けるし移動も遅くなる。
そこで毒娘を左スティックで操作して毒沼をグルッと囲むと、毒を吸収して浄化。
弾がすぐに回復するし、経験値も入るし、敵を巻き込んでダメージを与えることも出来る。
大きく囲えばそれだけ大きなダメージを与えられるしダウンも取れる。
毒娘を囮に敵の攻撃を逸らすような使い方も出来るぜ。
ステージ内に3つあるアイテムを回収すれば、
そのステージに関連した「攻性毒」や「防性毒」といった装備アイテムをゲット。
どれも4回まで強化可能。また、主人公のレベルが上がると、
武器である「攻性毒」を複数装備して戦闘中に切り替えることも可能となる。
「妄者毒」という武器もあるが、こちらはレベル上げも出来ず、時間経過で弾が回復もしない。
「攻性毒」とは別枠での装備となり、サブウェポン的なポジションね。
陣取りシステムを活用して弾の補給と敵への妨害を同時に行い、
銃撃をバンバン撃ちまくって敵を倒し、苦しむ少女のトラウマに挑む!
そういうゲームだが、この戦闘システムがイマイチ……。
陣取り部分と射撃部分が噛み合っていない。
敵の種類が少なく、見た目以外は似たようなマップが延々と続くし、
中盤からは見た目も似たようなマップが増えてくる。
飛行して陣取り要素を無視する敵や、
こっちの攻撃をデカい盾で防ぎつつ突進攻撃してくる敵で難易度を上げる作り。
飛行する敵は撃ち続けて地面に落とせば巻き込めるようになるんだが、
それなら普通に撃って倒した方が早いよ……。
毒を浄化しても弾切れ状態になってないと弾が補充されない仕様や、
敵に接近され過ぎると弾が当たらなくなる仕様、
中盤くらいまではザコの攻撃を一発喰らうと、
体力の半分くらい持っていかれるバランスもストレス溜まる。
アクションゲームとしてそこまで難しくはないんだけど、
死ぬときはすぐ死ぬって作りだ。
ある程度進むと陣取りで溜めたエネルギーを放出するボム技が使えるようになるが、
攻撃範囲が狭く、発動までにスキがあり、
無敵時間が無いので敵に一発殴られるとキャンセルされる性能。全然使えねぇ!
緊急回避もモッタリした動きでスキが大きいので使い辛い。
武器も沢山あるけど個性が薄い。
結局、冗長なステージを歩きながら、
似たような武器でダラダラと引き撃ちするだけの展開となる。
これ安易に「銃を撃つゲーム」にしちゃったのが失敗じゃないかなぁ……。
単純なので手軽と言えば手軽ではあるし、
効果音とかエフェクトはそれなりに気持ち良いのでそこは評価できるが。
また、エラー落ちの報告がかなり多いのも注意したいところ。
俺はPS4proでやっているせいか1回落ちただけだったが、
オートセーブは無いのでセーブを忘れると悲惨だぜ。
トロコンするまで遊んで10時間くらいのボリューム。
雰囲気やキャラやボイスやBGMは良いけどシステムの練り込みが甘く単調で、
フルプライスならもっとちゃんと作り込めや!と言いたくなる。
いかにも日本一ソフトウェアの新規IPらしい感じだな!
世界観はダークながら登場キャラは明るく、
全体的に優しく前向きな作りなのはすごく好きなんだが、
尺が短いせいもあり、毒娘たちのエピソードが駆け足だったのも惜しいところ。
喪服の少女と白い毒娘のコンビすごく好きだったのでね……。
今回も刺さる人には刺さる内容にはなっているので、
雰囲気やキャラに惹かれた人は、
ゲーム部分のハードル下げて遊んでみてくださいってところかな。