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【レビュー】「明るく楽しい」に振り切った、規格外の完全新作和風アクション現る!『御伽活劇 豆狸のバケル ~オラクル祭太郎の祭難!!~』【Switch】

 

御伽活劇 豆狸のバケル ~オラクル祭太郎の祭難!!~公式サイト|Nintendo Switch

 

フルコンプしたので『御伽活劇 豆狸のバケル』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:グッド・フィール

機種:Switch

ジャンル:アクション

発売日:2023/11/30

価格(税込):5280


 

『がんばれゴエモン』のメインスタッフが立ち上げ、ここ10年は任天堂の下請けとして数々のアクションゲームを送り出したグッド・フィール。そこが満を持して自社パブリッシングで送る、完全新作の和風アクションだ。

 

プロデューサーはゴエモンシリーズを手掛けてきた「エビス丸のモデル」こと蛭子悦延 氏。その他はグッド・フィールの新しいスタッフで開発されており、コロコロでコミカライズを連載していたりと、ターゲット的にはゴエモンファンではなく今の子供に向けて売り出してるね。

 

PVの時点でステージの密度が凄くて期待が持てたが、実際遊んで最高!気になる点はありつつ完全新作として素晴らしいデキだったぞ!

 

 

イッスン族の「すん」と出会った狸の少年「バケル」が、日本各地で悪事を働くオラクル祭太郎に挑むストーリーだ。御伽話の英雄たちの力も借りながら、47都道府県で暴れ回るお祭り軍団を浄化せよ!

 

 

一本道の3Dステージをゴール目指して進む構成で、脇道に様々な収集物が隠されている。グッド・フィールの完全新作和風アクションと聞いたときは「精神的ゴエモンが来たか!?」と思ったが、ゲームとしては『星のカービィ ディスカバリー』に近いスタイルだね。

 

太鼓のバチを使った攻撃で戦うのが基本で、LRボタン(あるいはYXボタン)で左打ちと右打ち攻撃。溜め攻撃でドドンとデカい一発もぶちかませる。3Dアクションで左右攻撃の打ち分けと聞くとややこしそうだが、実際遊ぶと直感的だ。

 

敵の攻撃に合わせて前転回避するダッジロールやガードをタイミング良く使うと、回り込みやカウンターが発動する要素もある。判定はかなりゆるいので使いやすい。飛んでくる弾をカウンターすればそのまま弾を反射して敵を倒せる!

 



トンデモ和風スタイルでまとめられた47都道府県すべてがステージ。

魔改造された熊本城に挑む熊本ステージや、ダムを攻略する富山ステージ、ド派手なパレードに飛び込む千葉ステージなどなど。ご当地要素を活かした構成になっているが、たまにガン無視して「これは砂丘じゃなくてエジプトじゃねーか!」とか意表を突いてくる。

 

 

背景美術や遠景の凝りっぷりとセンスが素晴らしく、どのステージもぶっ飛んだギミック盛り沢山。隅々まで堪能しながら探索する楽しみがいっぱいだ。

 

 

スイカの敵を叩くと綺麗に割れる、水風船の敵を叩くと破裂する、転がりながらデカくなる雪玉の敵を叩くとバラバラになるなど。ザコを倒した時の感触を大事にしてるのが分かる手触り。バチ攻撃の誘導性能の高さや、溜め攻撃の範囲の広さもあって蹴散らすのが爽快!

 

 

ザコ敵はバケルに気づくまで思い思いの行動をしていて、気づくと専用の動きで向かってくるのが可愛く、不意打ちも有効だ。ステージギミックがザコ敵にも当たるので、転がってきた米俵や岩に大量のザコが潰されたり、大量のザコが乗った足場が落下して全滅したり、突っ込んでくるザコが落とし穴に引っかかって落下したりするのも良い。

 

ギミック説明と敵の個性付けを兼ねているし、何より間抜けな姿に単純にクスッとさせられる。作り込まれたステージの中で、ザコ敵がちゃんとキャラクターとして生きている姿が表現されているね。

 

まあ、つまり生きているから死ぬっていう話なんだけどな!

ザコの断末魔が「ワッショイ……」なの大分面白い。死は祭りだワッショイ!

 

 

湯もみしてるザコが「チョイナ!チョイナ!」とか言いながらダメージ判定のある湯を飛ばしてくるのもめちゃくちゃ好きだった。オラクル祭太郎の殺人湯もみ部隊だ!コワイ!

 

 

ステージによってはかつてのゴエモンインパクトを思わせる巨大ロボ戦や3Dシューティングステージなど、ミニゲームが始まると都道府県もいくつかある。

 

正直ミニゲームに関してはビジュアルとシチュエーション以外は薄味で物足りなかったが、通常ステージが長めなので適度に軽いミニゲームを挟む構成は良いし「通常操作でダッシュパネルを次々に踏んでいく」みたいな変則ステージはめちゃくちゃ気持ち良かった。

 

 

背景も異常なテンションだしこれは脳汁出る!

 

 

バケルはタヌキらしく様々な姿に変身可能。ゲームを進めておとぎ話の英雄と戦って勝つと、その力を借りて変化可能になるのだ。

 

近接攻撃が強力なキンタロウ、ホーミング性能のある中距離攻撃を放つウラシマタロウ、高速移動と銃撃が可能なモモタロウ。そして攻撃は出来ないが小さくなってホバリングによる空中移動が出来るイッスンの4種類。

 

イッスン、公式サイトだとホバリングって言ってるけど、空中でジタバタして滞空時間を延ばすってこれ「ふんばりジャンプ」ですよね……?

グッド・フィールは『ヨッシーウールワールド』や『ヨッシークラフトワールド』開発してるからセーフ!

 

 

変身に関してはとりあえず竿を振り回すだけで敵が全部死ぬウラシマが強すぎて、もう全部あいつ一人で良いんじゃないかなってレベル。

 

ただ、ボスや硬い敵にキンタロウを使うと一気に体力を削れて爽快だし、モモタロウも移動や遠くの鬱陶しい敵の掃除で使いどころはある。攻撃が出来ないイッスンは一部のギミック専用かと思いきや、足場を渡る場面でふんばりジャンプが有用など活用場所もある。

 

 

何も考えずにウラタロス……じゃなかった、ウラシマを振っても進めるけど、きっちり活用すると更にサクサクになるのは悪くないバランスだと思った。別のフォームに一瞬で変身できるのでテンポも良好だ。特にイッスン変化は「ここで有効なの!?」って箇所があるので色々試したくなる。

 

 

変化してる間は「バケルギー」というエネルギーを消費し、無くなると元のバケルに戻る。

敵を倒すとバケルギーや買い物に使う小判を落とすので、テンポ良く敵を倒しながら進むのが重要なゲームとなる。買い物で買えるのは最大HP増加アイテムや、使い切りの救済措置的なアイテム、コレクション用のお面などなどだ。

 

 

各ステージには都道府県にちなんだお土産3つとうんちく5種類が隠されており、これを探すのがやり込み要素。うんちくは放浪の賢者「ウンチク」さんを見つけると教えてもらえる。

 

ウンチ……クさん!?ここは『妖怪ウォッチ』的なセンス。うんちくを喋った後の「所説あ~る!」というボイスがやたら耳に残る。うんちくの内容はゲームに関係ないけど思わず「へぇ~」って言っちゃうものも多いから割と楽しい。

 

 

へぇ~、野生のゴリラって本当はバナナ食べないんだー。

ドンキーコング……ウソだろ……?

 

 

へぇ~、鼻毛って「はなげ」じゃなくて「びもう」が正式名称なのかー。

ボボボーボ・ボーボボ……ウソだろ……?

 

 

遊んでいて楽しいゲームで、これだけステージが作り込まれてる新規IPは規格外と言っていい。2005年に設立し、任天堂の下請けで数々のアクションゲームを作り続けてきたグッド・フィールのノウハウが詰め込まれた密度になっているぞ。

 

ノリノリな和風BGMの完成度も高くハズレ曲無し!手掛けた大久保サトシさんの名前は覚えた!『ウィッシュルーム』『アナザーコード』や最近の『マリオパーティ』もやってる人なのね。

 

しかし触ってすぐに分かる引っかかりポイントも多いのが惜しい作り。

一番気になったのがダッシュの仕様。

 

 

ダッジロールボタンを押し続けるとダッシュという操作なので、つまり「ダッシュする時は緊急回避を一回しないといけない」仕様になってる。これが原因で狭いところで落下死することが多い。3Dマリオみたいに移動し続けると自動でダッシュに切り替わる仕様で良かったと思う。

 

 

安い店売りアイテムの「速飴」を食べるとステージ出るまで足が速くなるけど、ちゃんと活用すると毎回食べる作業が挟まるし、これは標準仕様で良かったと思う。

 

敵を倒した時に小判がやたら飛び散るのも気になる点。

小判の回収範囲自体は広く、ちょっと近づけばジャラジャラっと吸い込むものの、吹っ飛んだ敵が吹っ飛んだ先で小判をばら撒くから取りこぼしがち。小判自体は稼ごうと思えばいくらでも稼げるものの、普通に動かす時の気持ち良さを少し削いじゃってる。

 

消費アイテムの「かんしゃく玉」が全画面攻撃&小判自動回収で爽快だったので、あえてやってるのかなぁ。

 

 

ステージが作り込まれているのは素晴らしいんだが、1つのステージに収集物がお土産3つ、うんちく5つで一部ステージには隠れたぬきまでいるのはちょっと重いぜ……!

 

コンプしても特に特典などは無いので、気にせず気軽にお祭り気分で遊べばいいんだけど、俺はこういうのを見ると、全部集めないと哺乳類として認められない気持ちになるのだ!

別にいいじゃねぇか哺乳類として認められなくても!

 

収集物への導線自体はちゃんとしてると思うんだけど、たまに意地悪な配置があるし、隠れたぬきは法則性を掴まないとマジで分からんのがいくつか。

 

 

収集物取ったらすぐステージから出てもOKなのは親切!

 

その他、全体マップのステージ一覧からそのステージにジャンプ移動できない、遊んでる時に集めたお土産とうんちくをすぐ確認出来ない(数秒その場にジッとしてると表示される)など、細かい部分で気が利いてない作りがチラホラ。

 

 

ステージの華やかさ賑やかさに反してストーリーはかなり淡泊。

会話デモは淡々としてるし、御伽英雄も姫もちょっと顔出してほとんどストーリーに絡まない。なんならタイトルになってるオラクル祭太郎すら、本人はあんまり存在感無いからなぁ。

でもオラクル祭太郎の「意見の…相違というやつだな……」は使っていきたい。なんで急にIQ高まったんだ。

 

 

顔が似てるキャラや幼児キャラがやたら多いなど、デザインの引き出しの少なさがモロに出てる点も含め、キャラクターが魅力的に描けておらず終盤も盛り上がり切らない。「お祭り軍団が悪事を働いている」という筋書きも分かりにくい。戦闘の無い村マップとか用意して掘り下げが欲しかったね。そこら辺はコミカライズで掘り下げてはいる。

 

 

収集物完全コンプして全ステージクリアで20時間掛からないくらい。

敵を蹴散らしながら作り込まれたステージを走り回り、探索する楽しさに特化した3Dアクション。中盤からは落下による一撃死も増えてくるが、チェックポイントから再開できるし、そこも含めて難易度低めゲームとしてちょうど良いバランスだと思った。

 

スーファミからPS2くらいまでのアクションゲームのワクワク感をギュッと凝縮したような構成で「次はどんなステージがなんだろう?」をフックに、太鼓のバチでプレイヤーのケツを叩きながら47都道府県一気に引きずり回すパワフルさが圧巻。このステージ密度で最初から最後まで息切れ無しで走り切ったのが凄まじい。

 

ブラッシュアップ出来そうな部分が多いのは惜しかったけど、新規IPとして素晴らしい力作だった。こういう明るく楽しい手触りに振り切った3Dアクションゲーム、もっと増えて欲しいぜ!