『AI:ソムニウム ファイル』のレビュー行くぜ!
メーカー:スパイク・チュンソフト
機種:PS4/Switch/PC/Xbox
ジャンル:アドベンチャー
発売日:2019/09/19(PC版は09/18)
価格(税抜):6800円
備考:Z指定
スパイク・チュンソフトと、
『極限脱出』シリーズの打越鋼太郎による完全新作のアドベンチャーゲームだ。
警視庁の特殊捜査部隊に所属する主人公となり、殺人事件の捜査に挑む内容。
スパチュンの完全新作ADVということで、予備知識無しで買ってみたが大当たり。
色々とぶっ飛んでいるものの、
丁寧な作り込みと畳みかけるような怒涛のストーリー展開が堪能できる、
昔ながらの王道ADVだったぜ!
主人公は「伊達 鍵」。
警視庁の「先進式脳捜査部隊ABIS」に所属する警察官だ。
彼の左目には人工知能を搭載した「アイボゥ」という義眼が嵌め込まれている。
これがチート級の性能で、地球上のコンピューターの90%以上をハッキング可能。
更にX線で壁の中を透視して手がかりを発見したり、
サーモグラフィで尋問している相手の体温をチェックして動揺を見抜いたり、
その場で監視カメラのログにアクセスして情報収集も出来ちゃう。
人工知能搭載かつ伊達の脳と無線で接続されているので、黙ったまま会話も可能だ。
そのまま携帯電話としても利用できる。
そして伊達の左目から抜け出して自分の意志でテクテク歩いたりも出来る。
『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉の親父に、
寺沢武一『ゴクウ』の神の目を足したような超ハイスペック!
大抵の調査はアイボゥにちょっと指示を出すだけで済むので凄いぞ。
しかもこのような女の子の姿にもなれてしまう!
この最高の相棒と共に殺人事件を追いかけていくストーリーになっているのだ。
ゲームは捜査パートとソムニウムパートの二部構成。
捜査パートはカーソルを動かして画面内のあちこちを調べたり、
キャラと会話して選択肢で質問をし、情報を集めていく昔ながらの作りだ。
必要な部分をすべて調べれば次のシーンへと進む。
ソムニウムパートはある人物の夢の世界で情報を収集するパートだ。
伊達はPsync装置という特殊な装置を使うことで、
対象の人物と脳を接続し、夢の世界へとダイブすることができる。
何かを知っているけど教えてくれない人物や、喋ることができない人物、
そして本人も思い出せない手がかりなどを得るために活用していくのだ。
こちらでは人型になったアイボゥを方向スティックで直接動かし、
3Dのフィールドを探索していく形式。
様々なオブジェを調べて、手掛かりへ繋がる道を探していく。
夢の世界ということで本人の記憶やトラウマ、思い込みなどが混在しており、
物理法則を無視した出来事が次々に起こるカオス空間。
しかも他人の脳にダイブすることもあり、6分の時間制限付きだ!
6分の制限時間と聞くと面倒そうだが、
「プレイヤーが操作していない時は時間がほぼ流れない」という仕様になっているし、
調べられる場所もそこまで多くないのでやり直しはしやすい。
一部やや難しいステージがあったりはするが程良い難易度だ。
オブジェを調べて行動を選択する度に時間を消費していく作りになっているが、
選択肢を選ぶことで手に入ることがある「TIMIE」というアイテムを使用することで
消費時間を押さえられるなど、パズルっぽい仕様になっているのもなかなか面白い。
例えば120秒かかる行動に、
「消費時間を10秒にする」のTIMIEを使用して時間を節約したりね。
この行動は無駄に思えるけど強力なTIMIEが手に入るから選んどこう!
みたいなプレイも大事になってくるぞ。
そして意外とそういう選択肢が正解だったりするのから油断出来ない。
ソムニウムパートで手に入れた情報によりストーリーが分岐していく。
手に入れた情報により捜査の方向が変わったり、ダイブした人間に影響が出たり。
最終的には全ルート制覇を目指すことになるぞ。
捜査を続けているうちに様々な登場人物に出会うことになるが、
どいつもこいつも一筋縄じゃいかないヤツばかり。
メインビジュアルにも大きく映っているA-set(あせとん)ちゃんはネットアイドル。
踊るのが大好きの明るい性格だが、意外と抜け目ないところもあり、
会話が楽しいキャラである。
「敬おう!」から始まる自己紹介コールは良くも悪くも印象に残るぜ!
実際にYouTubeとTwitterにアカウントを作って
ゲーム実況や情報発信、踊ってみた動画などを行っているのが面白い試み。
俺もTwitterでリプ貰った時は嬉しかったなぁ。
ちょうど俺のプレイで大変なことになってるタイミングだったので、
「大変なことになってるヤツからリプ来た!」ってなったが。
他には主人公の上司で、部屋が殺風景で退屈という理由でお祭りみたいにしたり、
倫理観がちょっとアレだったりするボス。
アイボゥの開発者であり、
1人だけトリガー作品からやってきたような恰好をしているピュータ。
あせとんちゃんの追っかけで、SNSを使った自作自演が得意な24歳ニートの応太。
CVが高木渉で期待通りの面白さを提供してくれるヤクザやスナックのママ、
怪しい政治家などなど……どのキャラも忘れられない濃さ!
俺のお気に入りはアイボゥを除くと、わけあって伊達と同居している小学生のみずき。
伊達と喧嘩してばかりなんだけど、少しずつ打ち解けていく姿が胸を打つし可愛い。
というか、アイボゥとみずきの存在感があり過ぎて、
あせとんちゃんのヒロインポイントが若干低い気がする……!
でも持ち歌の「虹ノ矢ハ折レナイ」は名曲なんで!
そして探索パートでマシンガンのように繰り出されるギャグのテンションが凄い。
あちこち調べる度に、めちゃくちゃしょうもないダジャレや、
脳みそをまったく使っていないようなパロネタ、
擁護な不能なレベルでひどい下ネタがガンガン出てくる!
公式サイトの雰囲気からは想像も出来ない頭の悪いテキストの連発。
セリフに関してはすべてフルボイスです!
受付嬢を調べる度にどんどんテキストがバカになっていくなど、
本筋と関係ないアホな小ネタも満載だ。
『EVE burst error』辺りの90年代ADVを思わせるノリ。
かなり好みが分かれそうだが、
会話のテンポの良さもあり、遊んでいると段々と楽しくなってくるところでもあるね。
パロネタでは『かまいたちの夜』『ダンガンロンパ』など、
歴代チュンソフト・スパチュン製のADVネタもあり、
ちょっとしたオールスター状態なのはADV好きとして嬉しかった。
ボイス付きで「チンチコーレ!」がある上にしっかりTIPSにも記録されるのは驚いたわ
キャラのグラフィックが凝っていて、
瞳の動きや、左右非対称の表情、口パクなど細かい表情の付け方が実に上手い。
圧巻の分量で送るフルボイスの会話と相まって、
キャラが非常に活き活きとしていてみんな魅力的なんだわ。
会話に参加してないキャラも、会話に合わせてリアクションしてたり芸が細かい。
そしてこのゲームで俺が一番気に入ってるのがソムニウムパートのリアクション。
アイボゥに様々な指示を出して夢の世界を探索していくわけだが、
フォークリフトを運転しろと言われたら運転するし、
鍋を頭に被れと言われたら被る。棚にタックルしろと言われたらタックルする。
3Dのキャラをしっかり動かして、
アホな指示やカオスな展開を映像で見せてくれるから、
あちこち調べるのが凄く楽しい。
その度に伊達とアイボゥの漫才めいたノリノリの会話が挟まるので、
この2人への愛着がどんどん湧いてくるぜ。
ソムニウムパートもダイブする相手によってビジュアル表現がガラッと変わるので、
毎回どんな夢の世界なのかドキドキさせられる。
明らかに何かがおかしかったり、ギャグ全振りだったり、
情景と音楽だけで胸が締め付けられたり……上手い構成だ。
明かされる真実に驚愕させられることが何度もある。
しょうもないギャグが満載と書いたが、
戦闘シーンになるとIQがそこから更に二段階くらい下がるのがあまりにも凄い。
このゲーム、まだ変身を残していたのか……!
伊達がとにかくカッコ良くてSF的な銃を構えている姿もサマになってるのに、
戦闘があまりにもアホ!
「メタルギアだって敵兵に発見されたらエロ本は通じねーぞ?!」と、
言いたくなるような頭の悪い展開が満載だ。
他にも「そのキャラがそこまで強かったらさすがに世界観壊れない?!」
とツッコミたくなる描写がいきなり出てきたり、どこまでも人を食った作り。
色んな方向からプレイヤーを揺さぶってきやがる!
とはいえ、本当にシリアスなシーンでは探索パートでもおふざけは挟まないし、
事件そのものを茶化したりはしないし、
そこら辺のバランスはしっかりしているゲームだ。
戦闘シーンはちょっと際どいがな……!
なかなかクセは強いものの、
シナリオの芯の強さをしっかりと感じさせるゲームでもある。
例えばゲームの導入をいきなり事件現場で死体の調査をするシーンから始めて
周りの人間との会話で主人公の立場とキャラを説明していくスマートさが上手いし、
場面転換が早く、しょーもないギャグも数クリックで次に進むのでくどくない。
まあ、数クリックで次のしょーもないギャグがやってくるんだがな!
最初はスケベでアホなヤツという印象の伊達も、
遊んでいくと不器用で優しいところが見えてくる愛すべきキャラだ。
口が悪くも健気なアイボゥも凄く可愛くて、人間の姿になった理由が、
相棒である伊達に喜んでもらいたかったからってそんなのずるいじゃん!
それに対して、じゃあ行きつけのキャバクラのお姉ちゃんそっくりになってくれ
って注文つけてキレられる伊達が実に伊達。
本当にこの2人、スペック的にも性格的にも名コンビである。
事件は進むごとに謎や人間関係が複雑になっていくし、
とあるルートで解かれなかった謎が、別のルートで解かれたり、
あるルートで信用できない行動をしていた人物が、
別のルートだと主人公の近くにいてハラハラさせられたり。
次から次へと事件が二転三転していくので遊んでいて非常に引き込まれるぜ。
推理モノとして見るとかなりご都合主義なところはあるものの、
謎と伏線が組み合いながら収束していく終盤の爆発的な流れは圧巻だ。
様々な人間模様を通して描かれているのは普遍的な「AI」の物語。
辛くも前向きなストーリーは胸にしみたわ。
UI周りが快適なのも素晴らしいところで、スキップは快適だし、
フローチャート機能があるから到達してないルートは一目で分かるし、
各章の細かいパートにも一発で飛べる。
更に、簡単なあらすじもついているので、
「このルートだとどういう話の流れだっけ?」という確認もすぐにできるのだ。
気になった点としては
探索パートで調べる場所がやや分かりにくい箇所があったとこかな。
一応、一度調べた場所はカーソルを合わせた時の色が変化するので
判別はしやすいんだけどね。
ソムニウムパートの探索が楽しかったから、
一度コンプしたら時間無制限で探索できるモードも欲しかったし、
マップに向いてる方向の表示もあれば便利だった。
俺はPS4版でプレイしたんだが、
Switch版は読み込みが多いという報告が上がっているので注意。
あと、Z指定ということもあり、グロいシーンも中盤からちょいちょいあるぞ。
見てて思わず「痛ッた!」って言いたくなったわ。
クリアまでは25~30時間ほど。
ノリは斜め上だがエンタメ作品かつ良質なバディ物であり、
昔ながらのアドベンチャーゲームの良さをしっかりと備えた逸品だった。
すべてのルートを攻略してエンディングを見た時に、
このゲームを買って本当に良かったと思ったよ。
本当に序盤のノリで好み分かれるところだがイチオシしたいッ!