絶対SIMPLE主義

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前作を凌駕するボリューム!その気合が空回り?『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』レビュー!【Switch/PS4/PC】

 

凍える銀鈴花[こごえるぎんれいか]秋田・男鹿ミステリー案内 - ハッピーミール株式会社

 

『秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:フライハイワークス

機種:Switch/PS4/PC

ジャンル:ファミコン風コマンド選択式旅情アドベンチャー

発売日:2020/12/24(Switch)2021/1/14(Steam)2021/3/18(PS4)

価格(税込):1980~2000円


 

ハッピーミールとフライハイワークスが展開する

ご当地要素の強いファミコン風アドベンチャーゲームの第二弾だ。

今回の舞台は秋田・男鹿!

 

Switch/PS4「伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠」レビュー!期待を裏切らない完成度!こだわり溢れるファミコン風ADVに大満足だ! - 絶対SIMPLE主義

 

前作の『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』引き続き

キャラデザは『オホーツクに消ゆ』などでお馴染みの荒井清和。

ドットからBGMまでファミコン風にこだわった渾身の1本となっている。

ゲーム中で見られる説明書までファミコン風で統一されているぞ。

 

クラウドファンディングで開発支援を募り、

ファンとの交流もしながら完成させた大ボリュームの構成。

ただ、気合が空回りしてるというか、

ゲームや企画の規模が大きくなった歪さが強く出てる内容だぜ……!

 

 

ストーリーは刑事であるプレイヤーとその後輩である開明寺ケンが、

特殊詐欺グループの幹部を追っているところから始まる。

調査で元締めの手掛かりを掴んだ二人は秋田へ飛ぶことになるが、

事件は想像もしない広がりを見せ、底知れない闇へと繋がっていく……という内容だ。

 

 

ゲームとしては今回もファミコン時代らしいコマンド選択式のADV。

色々な場所に移動して聞き込みや調査で証拠品を集めていき、

進行フラグが立てばストーリーが進行する。

主人公は基本的に喋らないので、調査や会話は相棒のケンを通して行う。

 

 

操作の傍らで訪れる秋田の観光名所とそれにまつわるウンチクが非常に豊富。

実在の観光地が舞台になってるので、

ゲームを遊んだ後に調べて「本当にこうなってるんだー」って楽しめるし、

調べられる場所やテキストも多い。

 

ストーリー自体のボリュームがアップしているので、

まだ続くの!?そんなところに行くの!?と驚かされることになる。

秋田でうまいものを食べるシーンも多く、

遊んでいると腹がへるし旅行にも行きたくなってくるぜ。

ちょっとした脇役もアクの強いキャラが揃っていて、

遊んでいてちょっと笑っちゃうノリも楽しい所。

 

 

ただ、ボリュームアップした分テンポが非常に悪くなってる。

まず冒頭、秋田に行く前の軽い事件の段階で行ったり来たりが既に煩雑だし、

観光描写とケンの食レポはこのシリーズの特色でもあるんだが、

分量が増えすぎてさすがにくどい!

よくも悪くも取材した分を全部突っ込んだような長さだ。

刑事として捜査に来てるのにケンの態度はちょっとふざけ過ぎじゃないか?

と思う場面も多い。前作はもうちょっと真面目だったんだけど……。

序盤、主人公側のミスが目立つのも相まってストレス溜まるところ。

 

テキストはファミコンのゲームと同じように、

喋ってるような効果音に合わせてゆっくり表示される。

こだわりが感じられて雰囲気出てると言えるんだが、

シナリオのテンポの悪さも相まって遊んでいてじれったい。

既読文章はボタン押してスキップ出来るものの、

それ以外は文字送り出来ないから読まないといけないのだ。

 

 

ゲーム外の企画の組み込み方も歪に感じた。

冒頭、クラウドファンディング経由で登場が決まった

秋葉原最終処分場に足を運ぶくだりは

「まだ始まったばかりなのにこんな尺取る必要ある?」って思ったし、

途中、温泉地を探索する場面はやたらフラグ立てが分かりにくく、

ちょっとした場面なのにやたら迷うことになる。

 

秋田・男鹿ミステリー案内 -混浴シーンを探そうチャレンジ!

 

後日、公式で温泉で隠しイベントを探す企画が発表されて、

このためかぁ……って悪い意味で納得してしまった。

ファミコン時代の温泉イベントに心を囚われた囚人がよぉ!

まあ、そういうのに囚われてないとこんなゲーム作らないだろうけども!

 

角川ゲームスから発売された

『Root Film ルートフィルム』とのコラボも行われており、

そちらの主人公であるマックスこと八雲凛太朗と、

曲愛音の2人が登場しているんだが、

かなり重要なシーンで意味ありげに登場してそれっきり。

完全にシナリオのノイズにしかなってない。

 

『Root Film ルートフィルム』の方だと、

寄り道するとミステリー案内シリーズのキャラに会えるようになっていて、

違和感のないコラボになっていた。

 

 

遊んでいて引っかかる部分が多い作りだぜ……。

ただ、シナリオ自体はこの長さだからこそのスケール感になっていて、

二転三転する事件に翻弄されながら、様々な場所を巡っていく面白さは強い。

ファミコン風だけど舞台が現代であることを活かした構成で、

インターネットやスマホが重要な位置付けになっており、

時代背景も盛り込まれたシナリオは読みごたえあるぜ。

 

「あの重要人物の掘り下げあれで終わりなの!?」というツッコミ所と、

前作に続いてちょっとシナリオが重すぎる感はあるが……。

「2時間サスペンスドラマっぽいファミコンADV」的な企画なので、

重い話にはなってしまうか。

 

本作から登場するキャラも魅力的で、

ヒロインであるりんちゃんと一緒に登場する秋田犬の活躍っぷりは印象的。

 

 

特にお気に入りなのは秋田県警捜査二課の如月刑事。

有能だが真面目過ぎる女刑事で、一緒に捜査をしていくことになる。

そこそこゲーム進めないと

「会って間もないケンにやたら感じの悪い人」という印象になるが、

種明かしされた後は腑に落ちるし、

そっからのケンとのやりとりや成長していく姿が魅力的。

 

 

いかにも定年前の老刑事!という佇まいの茂木さんも味わい深いキャラ。

このプレイヤー、ケン、如月刑事、茂木さんの4名で進む空気感は、

シリーズ通してもかなり好きなところだったね、

 

 

ボリュームは軽く前作の2倍以上。

ファミコン風で描かれた背景ドットの枚数と、

それを活かしたシナリオ構成は非常に気合を感じる。

ただ、詰め込み過ぎた弊害を感じる箇所が多く、

1作目のテンポの良さが好きだっただけに、

続編で変な方向に進んでしまったなぁ……という感想に。

悪いゲームではないけどこのシリーズ今後どうなるんだ!

 

 

と、不安になっていたが、

3作目『大分・別府ミステリー案内 歪んだ竹灯篭』では、

本作の問題点をかなり踏まえた内容になっていて一安心だった。