『新サクラ大戦』のレビュー行くぜ!
メーカー:セガゲームス
機種:PS4
ジャンル:ドラマチック3Dアクションアドベンチャー
発売日:2019/12/12
価格(税別):8,800円
セガサターンから始まって一世を風靡した『サクラ大戦』シリーズ念願の最新作!
ナンバリングタイトルはPS2の『サクラ大戦5』から数えて実に14年ぶりだ!
『サクラ大戦』は大正ならぬ、
架空の「太正時代」を舞台にした和風スチームパンクADV。
女性ばかりの秘密部隊を率い、彼女たちと交流を深めながら、
大型メカを操縦して悪を蹴散らして正義を示すシリーズである。
今回は『新』ということでメインキャラは一新しつつ、
旧作と繋がりのあるキャラや要素も顔を出す構成だ。
シリーズ復活は非常に嬉しかったし、
これぞサクラ大戦!という要素や進化を感じられるところも多いんだが……。
セガの思い切りの悪さが、
欠点としてモロに出てしまっているのが非常に勿体なかった!
『サクラ大戦』とは、平和な時は「帝国歌劇団」として劇場で人々を楽しませ、
有事の際には「帝国華撃団」として悪と戦う……。
人々に寄り添い、その笑顔を守る。そんな乙女たちの物語である!
今回の舞台は過去作から10年後。
帝都を襲った未曽有の危機である降魔大戦で、すべての華撃団が消滅
そこから世界各都市に華撃団が誕生し、お互いを高めるために2年に1度
「世界華撃団大戦」でぶつかり合うようのが当たり前となり 、
長らく華撃団が不在だった帝都にも再び新しい「帝国華撃団・花組」が誕生した。
しかし、今の花組は既にかつての栄光は無いポンコツ部隊。
そこに隊長として就任することになった主人公の神山誠十郎。
そして新たに現れる降魔と謎の敵。
果たして神山が率いる新たな帝国華撃団は世界華撃団大戦で勝ち抜き、
謎の敵から帝都も守ることが出来るのか?!
という、『スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』と
仮面ライダーの春映画を足したようなあらすじである。
過去作の華撃団が全員消滅というショッキングなあらすじではあるんだが……。
俺は仮面ライダーの映画でこういう展開に慣れてるし
ぶっちゃけ『サクラ大戦』の過去作でも色々あったので、
最初から「なるほど……最終的に復活するやつですね!」としか思わなかったな!
一時代を築いた過去の『サクラ大戦』と、
まだまだ未熟だがここから成長していく『新サクラ大戦』の対比にもなっているね。
ゲームはマップを歩き回るADVパートで会話やイベントをこなし、
登場キャラとの交流を深め、それによって戦闘パートでのステータスが変化する作り。
ADVパートは30分のテレビアニメのような構成になっており、
各話最後には次回予告ムービーが挿入される。
過去のサクラ大戦と変わらぬ構成だ。
リアルな3Dのフィールドを歩き回れるのはさすがに進化を感じるところで、
入れる建物は少ないが、
歌舞伎座やデパート屋上などの雰囲気作りや通行人との会話が良い。
マップに次にやるべき行動と、本筋に関係ない会話イベントの場所が表示されるんだが
そこに乗らない細かい会話イベントもあるので、しっかり歩き回りたくなる。
戦闘パートは過去作だとターン制のシミュレーションゲームだったが、
今回は無双系に近い操作の3Dアクションゲームになっているぞ。
ADVパートではLIPSという制限時間付きの選択肢が多く登場するのも特徴。
制限時間内に選択肢を選ばないと
「何も答えられない」「何も出来なかった」といった結果になり、
イベントによってこの制限時間の長さが変わったりもする。
早く行動しなければ!って時はめっちゃ短かったりね。
単に選択肢を選ぶだけだが没入感がグッと増しているし、
実は時間切れが一番の正解だったりするパターンもあるのが面白いところ。
今でいうQTEに近いが、初代から採用されていて画期的だったシステムだ。
新たなヒロインたちはみんな魅力的で、
王道幼馴染キャラかつ良くも悪くも想いの強さが炸裂してる天宮さくら。
切符の良いパワータイプの江戸っ子だが、繊細さも持ち合わせている東雲初穂。
知的な文学少女で追い込まれた時の暴走っぷりが面白過ぎるクラリス。
和装メイド忍者という変化球と思わせてかなりストレートに可愛いあざみ。
プロ意識の高いミステリアスな美人だけどお茶目なところもあるアナスタシアと、
交流を深めていくうちにみんな第一印象と違う顔が見えてくるところが良い。
やる前はあざみ推しだったんだけど実際やるとクラリスかなり気に入ったし、
初穂はあんなん好きになるしかないだろ!
フル3Dのキャラのモデリングやモーションも凝っていて、
表情の変化や会話中の動きが実に活き活きしている。
会話してる時の動きが大げさすぎるという意見もあったが、
演劇が要素の1つとしてある作品なのですんなりと受け入れられたし、
見ていて楽しさの方が上だったな。
シリーズのお約束イベントで
「これは体が勝手に動いてる男の動きだわ……」ってなったり。
3Dで表現の幅が広がったことが良い方向に働いてる。
過去作からの続投となる神崎すみれは今の帝劇の支配人として登場。
戦う力を失ったことで最後の決戦に参加できず、逆に1人だけ生き残ってしまった。
この辺は演じた富沢美智恵さんが結婚で仕事を減らした際に、
『サクラ大戦』の舞台を一時降板したり、
それに関連したOVAが作られたりした当時の流れも踏まえたものになっているかな。
戦う力はなくとも、懸命に今の帝国華撃団を立て直そうとしており、
ちょっとしたセリフにもシリーズの重みを乗せてくるため、
サクラ大戦の新作を待っていた人間ほどセリフが刺さるぜ……!
そして今回の主人公である神山誠十郎。
『サクラ大戦』はヒロインが魅力的なのはもちろんの事、
主人公のキャラの立ちっぷりも極めて重要なのだがそこがお見事。
シリアスシーンでの熱血っぷりと、
ギャグシーンでの奇行っぷりがどちらも全力で心を揺さぶられっぱなし!
こいつとヒロインたちの物語が見たい!としっかり思わせてくれる。
それでいて過去の主人公「大神一郎」の焼き直しでは無いところが素晴らしいね。
基本的に真面目な軍人だけど、時折変なことをするのが面白い大神さんに対して、
根はお調子者だけど、頑張って真面目にやろうとしてる感のある神山くんである。
このキャラ造形のバランス、相当に苦労したろうなぁ。
ギャグ関連のイベントがどれもキレッキレ。
また声優である阿座上洋平の演技が上手くて、
特に上ずった声や棒読みの演技がいい。これは本当に演技うまくないと出来ない
他の華撃団のキャラやサブキャラも出番は多くないがインパクトある。
狂犬と王のタッグである倫敦華撃団も良かったが、
やっぱり伯林華撃団の2人がお気に入りかな。あざといぞエリス!
セガ……お前まだヒーローバンクのことを……!
めちゃくちゃどっかで見たことある敵キャラの夜叉も、
「横山智佐が全力でやる悪人演技」は素晴らしく強烈だ。
音楽も田中公平が現役で超天才なままであることが実感できるクオリティで、
新しいサクラ大戦の幕開けとして気合が感じられる内容ではあるんだが……。
勢いで押し切れない大きな欠点も多い。まずストーリーがかなり雑。
全体的に思い付いた展開を強引につなぎ合わせているような駆け足過ぎる流れで、
登場キャラの行動が意味不明だったり、
あまりにも頭が悪かったり描写不足すぎたり。
展開が駆け足な割にキャラは沢山いて、続編へ持ち越しになっている要素も多い。
その煽りを一番喰らっているのが今回の帝劇支配人の神崎すみれで、
「いくらなんでもすみれさんの対応が雑過ぎない!?」って感じるシーンが多い。
見せ場では本当にグッと来るんだが……。
元々『サクラ大戦』はコテコテのお約束展開やご都合主義の良さを
ゴージャスな作りのゲームで楽しむ作品であり、
今も突っ込まれる初代『サクラ大戦』終盤の超展開を筆頭に、
唐突な展開が多いシリーズでもあるんだが、
それでも設定面や流れなどでもうちょっと芯は通していたと思うし、
比べると今回のストーリーは雑過ぎる。
主人公チーム以外にも華撃団が出て来て華撃団同士でもバトルをする!
というのは、賛否あれど現代風のお約束展開として良いとは思うんだけどね。
また、他の華撃団はどこもシナリオ上は2人しか出てこないんだが……。
華撃団大戦でのバトルは3vs3なので、
そこでは一切喋らない謎の3人目が一緒に出てくる。
いや、そいつ誰なんだよ?!なんでこんな中途半端なキャラ構成になってんの?!
中途半端と言えばボイス無しのイベントが挟まるタイミング。
このゲーム、フルボイスではないのだがボイス量自体はかなり多い。
しかし「このタイミングでボイス無くなるの?!」
というタイミングでボイス無しのイベントが挟まるので悪目立ちしちゃってる。
キャラが演技力の話をしてる時だったりね。
3Dキャラの出来は良いのに
ここぞという場面でのアニメムービーの作画がイマイチだったり、
スケジュールの都合なのかどうも各所の連携が取れてない印象だ。
アクションゲームに生まれ変わった戦闘パートは
ボタンの組み合わせによるコンボ技や、
緊急回避をタイミング良く決めると一定時間スローになる技、
ゲージを溜めて放つ必殺技を駆使して戦う作り。
しかし見所がほとんど無く、
仲間に指示も出せないし敵キャラのロックオンも出来ない。
カメラワークも見辛く巨大感が無いし、単調な通路を繋いだだけのステージもだるい。
それでいて遠距離攻撃のキャラで狙撃してるだけでほとんどの敵を完封出来たり、
ボスは密着して必殺技をぶっ放すだけで勝てたりと大味。
色々なキャラを使うテクニカルな作りにしたいのか、
それともアクションゲーム苦手な人でも楽しめる簡単操作&派手な演出にしたいのか、
どっちつかずの内容だ。
メインストーリーのバトルが敵の作った異空間ばかりで
変わり映えし無いのを緩和したつもりなのか、
市内でザコと軽く戦うだけの緊急出撃というイベントが、
ストーリー上めっちゃ強引に挟まるのも気になった。
必殺技演出のカッコ良さや、それで敵をなぎ倒す爽快さなど、
良い部分がまったくないわけではないんだが、
方向性が中途半端かつ単純にデキが悪く、
仮にもセガが2019年に自社の看板タイトルで導入するクオリティとは到底思えない。
元々『サクラ大戦』シリーズの戦闘パートはそこまでデキが良くはなかったが、
それでもシリーズ通してしっかり進化してきた部分だし(特に3での進化)、
本当にこれで良いと思ったのか。
発売前のインタビューだと、サクラ大戦を壊すとか威勢の良いことを言っていたが、
実際のところ世界観を完全に一新するような決断は出来ず、
一新したアクションパートは方向性を明確にすることが出来ず、
続編やスピンオフに引っ張れるような伏線とキャラはいっぱい出すので
その分だけ本筋が薄まっているという、
セガの及び腰な姿勢がモロに悪い部分として出てしまっていたぜ。
久々のシリーズ新作として残念な点は多かったが、
今回新たに生まれたキャラクター達は間違いなく魅力的だったし、
グラフィックなどで新たな進化を感じられる部分もまた多い。
声優陣の素晴らしい演技と、田中公平が今も地球代表として
宇宙人と戦えるレベルの天才だったことに助けられてる側面は大きいんだが、
新しさがありつつ「サクラ大戦らしさ」が確かに感じられる部分もある。
ここから新たなる展開を続けられる地力もあると思うので、
新たなる始まりとして今後も応援したい。
またしばらく、花見に行かせてもらうぜ!