幻想牢獄のカレイドスコープ オフィシャルサイト | ENTERGRAM
『幻想牢獄のカレイドスコープ』のレビュー行くぜ!
ちなみに公式の略称は「ゲロカス」ね。
メーカー:エンターグラム
機種:PS4/Switch/Vita
ジャンル:アドベンチャー(サスペンスアドベンチャーノベル)
発売日:2020/12/17
価格:4000円(通常版)7000円(限定版)
企画・シナリオを『ひぐらしのなく頃に』などでお馴染みの竜騎士07。
原画は『CLANNAD』などでお馴染みの樋上いたるという、
強力タッグで送るデスゲームADVだ。
いたる画の美少女キャラが、竜騎士07節の会話で殴り合うゲームで、
「みんな!デスゲーム開始まで長いADVは嫌だよね!」
と言わんばかりの凄まじいスピード感や、声優の鬼のような熱演が凄い。
「その罵声、脳みそのどこから出してんの?!」って言いたくなる会話の数々と、
そんなノリなのに驚くほど綺麗にまとまるシナリオも圧巻だ。
色々な意味で強烈で楽しいゲームだった!
物語は仲良し4人組が突然謎の部屋に監禁されるところからスタート。
そこで理不尽かつ恐ろしい試練を強要され、
極限状態でそれぞれが本性をむき出しにしていく。
このデスゲームは一体何なのか……?
それはすべての物語を読み終えた時に明らかになる。
デスゲームの制限時間は5分。
4人それぞれに役割が振られたカードが配られ、
「死刑囚」のカードを引いた人間はヤバそうな椅子に拘束されて拷問にかけられる。
「死刑囚」以外の3人は生還となるが、拷問役を交代可能な「ピエロ」1名と、
誰を拷問に掛けるか決められる「断罪者」2名がいるため、
話し合い次第では「死刑囚」が拷問を回避できる可能性もある。
誰を犠牲にするかで大いに盛り上がってくれ!というルール。
プレイヤーはこの3種類のカードをどのキャラに割り振るかを選択。
その役割に従ったシナリオが展開され、読み終わるとまたこの画面に戻ってくる。
すべての組み合わせを見るまで、これを総当たりで繰り返す構成だ。
同じ組み合わせを選ぼうとすると注意が出るので、
「見てない組み合わせどれだっけ?」と悩む必要は無いぞ。
ルールが単純かつ制限時間はたった5分。
狭い部屋で調べられるような場所もほとんどないため、
脱出ルート探しもすぐに難しいと分かる。
「誰を犠牲にするか」で揉める様を見せる事に特化したデスゲーム作品。
このおかげで展開が早い早い!
シナリオ開始から爆速で罵り合いが始まり、1ルート30分ほどで決着!
4人とも平常時は美少女ゲームのキャラらしい性格付けなのに、
ブチキレるとヤンキーみたいなセリフ回しでムチャクチャ言い出すので、
凄惨な状況なのに見ていて笑っちゃうパワーに溢れてる。
かと思うと、こいつ生き残るために上っ面だけの綺麗事言ってんな……。
と、すぐ察せる薄ら寒いセリフ回しにゾクッとさせられたり。
緩急織り交ぜた言葉の殴り合いはもはや格闘技だ。
まあ、場合によっては物理的な殴り合いが始まる時もあるんだが!
舌戦が始まるとこんな神室町めいたセリフがポンポン飛び出してくるため、
『CLANNAD』かと思ったら『龍が如く』だったか……という気持ちになる。
竜騎士07のテキストが一番キレッキレだったのはガンバレコールのくだりかな……!
登場キャラの声優はそれぞれ茜屋日海夏、鈴木みのり、
豊田萌絵、瀬戸麻沙美が担当しており、4名とも凄い熱演。
ゲームはフルボイスだが半分以上が罵り合いだ。
ロボットアニメの戦闘シーンでもこんなに叫ばないぞ!
最初は「なんか知らない連中が顔芸しながら罵り合ってる……」となるし、
罵声の合間にデスゲーム前の平和な日常シーンが挟まる構成なので、
どういう顔でこれ見ればいいんだよ!とさらに困惑。
しかし、繰り返しプレイしていくと人間関係の表裏や、
それぞれの抱えた重い感情の流れが見えてきて面白くなってくるし、
そうなると配役を決める段階で、
この組み合わせだとこいつがこういう感じになりそうだな……。
と予想が付いてくるのが上手い作りだ。
メインキャラ4名の通常時と豹変時のギャップも見所。
パッケージでメインヒロイン面してる五条風華は、
周囲の期待に応えようと努力する優等生キャラ。
日常パートでは友人の相談に乗りつつ、時に自分の本心を素直に語る姿が良い。
しかしぶっちぎりでキレるのが早く、
特に「死刑囚」になった時の豹変っぷりがあまりにもマッハ。
最強死刑囚編は私から始めるという強い意志を感じる。
田丸火凛は男子顔負けの暴れっぷりを見せる元気いっぱいの美少女。
日常パートでオシャレに関する相談をしてる時の姿が可愛いし、
語尾に「~ゾ」を付ける一昔前っぽいキャラ付けがなかなかクセになる。
心情を吐露する時にめちゃくちゃ冷たい言い方をするギャップも強烈だ。
特撮好きでみんなを守るヒーローになりたい!といつも言っていたせいで、
定期的に「みんなを守るっていつも言ってたじゃん!私の代わりに死んでよ!」
って責められ方をされるのが酷すぎて好き。
湯浅水無は分かりやすいロリ担当。
夢見がちな性格で、みんなに愛されるマスコット的なポジション。
しかし、追い詰められてブチ切れると語彙力が急上昇して、
煽りのセンスがキレッキレになるのでサイヤ人か何かだと思う。
英土麗美は唐突によく分からないことを言いだす不思議系キャラだが、
心に抱えた闇は深く、一番切羽詰まったキレ方をするのが印象的。
公式サイトの竜騎士07の発言によると、
樋上いたるらしい不思議系ヒロインを意識したそうなんだが……。
ギャグシーンとはいえ、出力されたのが
「牛丼屋で牛丼の上に紅生姜を山盛り乗せてそこだけ完食し、
牛丼に手を付けずに店を出るせいで出禁を喰らった」という、
普通に迷惑な人になってるのは軽い事故だと思う!
川澄舞になれなかった哀しいモンスターかよ。
超展開もあるものの、ルートを遊ぶことで全体像が少しずつ見えてきて、
ビックリするくらい綺麗に収束する構成は巧みだし、
プレイヤーによって総当たりの順番は違うわけだけど、
どの順番でやってもしっかりまとまっていくようになっている。
非現実感の強いデスゲーム中の罵り合いを散々見せた後に、
「普通に見ててキツい……!」ってシーンを持ってくるところも上手いね。
「女の子は万華鏡」という作品テーマを正面から語りだすシーンなどは
ちょっと見てて恥ずかしかったが、
「それでまとめられるほど綺麗なやり取りじゃなかったろ?!」
「女の子に限った話でもないよね?」ってとこまで含めた話かなと。
ただ、6時間ちょっとで完全クリア出来るのでボリュームは少なめだ。
ミドルプライスのゲームならこんなものかなという気はするが、
基本的に女の子の役割を変えて分岐を埋める展開の繰り返しなので、
後半はちょっとダレてくるし、やや好き嫌いが強く出そうな構成。
後半に登場する、あるキャラの性格が浮きすぎてるのも気になったな……!
グロシーンはシルエットなどで表現されているし、
「拷問」もかなりぼかした表現になってる。
ちょっと物足りなさはあるがここは好みか。
ぶっちぎりのスピード感に笑いながら進めていくうちに引き込まれ、
最後は「あれ?!なんかいい感じにまとまってる?!」と驚かされる。
短編のADVとしてなかなか面白い1本だった。作風に惹かれた人は是非!