『アサツグトリ』のレビュー行くぜ！
俺がプレイしたのはPS4版ね。
Switch版はゲーム中にちょいちょい止まる不具合があったが、
今は修正されてるはず。
パブリッシャー：日本一ソフトウェア
機種：PS4/Switch
ジャンル：タイムループ探索アドベンチャー
発売日：2021/11/25
価格（税込）：7678円
毎度お馴染み日本一ソフトウェアのフルプライス新規IPだ。
デスゲーム作品とタイムループ作品をミックスした構成で、
時間を巻き戻す力を持った主人公が、
殺し合いを回避させつつ脱出方法を探るというシナリオになっているぞ。
「しおん」氏による儚い色使いのキャラクターデザインと、
繊細な人物描写はなかなか見所あったが……そこ以外はボロボロ。
日本一ソフトウェアの新規IPの中でも結構厳しい作りだったな！
主人公であるヒバリが目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋。
体には謎の機械が取り付けれているし、別の部屋には同じ境遇の女の子が7人。
そこに流れる「建物から出られるのは最後に残った1人だけ」というアナウンス。
戸惑いながらも始まった謎の施設での共同生活だったが、
数日後に最初の殺人が起こってしまう。
その時に「時間を遡る力」に目覚めたヒバリは、
殺し合いを防ぎつつ、脱出の方法を探すことを決意する……というストーリーだ。
後半に選択ミスで軽いバッドエンドはあるものの、基本的には1本道のADV。
ノベルパートと探索パートを交互に遊ぶ構成だ。
施設はシナリオが進むごとに行ける場所が増えていくので、
時間を撒き戻しながらあちこち探索していくことになる。
本作で魅力的なのが登場キャラの描写。
過去に父親を失っている経験から、
せっかく出会った人たちを失いたくないと奔走する主人公のヒバリは
良い子だなぁ～ってなるし、ヒバリを明るく支えるマチネも可愛い。
天才キャラでノリの良いエノさんや、
見た目と裏腹にアホキャラっぽいカリンさん、
リーダーとして頑張ろうとし過ぎて、周りと衝突しちゃうコマリ辺りも好き。
登場キャラたち、個性的だけど癖があり過ぎないのが上手い塩梅だね。
何回ループして展開が変わっても、
誰か死ぬ度にトウカさんが必ず「ついに始まったわね（ﾄﾞﾔｧ）」
みたいなこと言うのもジワジワ面白くなってくる。
殺人が起こっても時間を戻して無かったことに出来る。
とはいえ、巻き戻せるのは24時間という縛りがあるし、
本作は犯人をやっつけるのではなく、殺人を思いとどまらせないといけない。
殺人に至った相手を説得するために頭を捻る必要があるし、
解決しても、当然「自分を殺そうとした相手」と険悪になる女の子もいる。
生活が長くなると、自然と空気自体も悪くなってくる。
しかし、付き合いが長くなれば理解できることも増える。
「衝突」と「成長」の書き方が丁寧なゲームで、
嫌いだけど認めているところはあるとか、
怒っているわけではないが譲れないといったやり取りや、
そういうところから生まれるすれ違いも見所だ。
シナリオが進んで行ける場所が増えてくると、
脱出のキーになりそうなアイテムや、みんなで楽しめるような場所も登場。
こういう場面での明るい会話も見てて楽しかった。
最終的にメインキャラ8人はみんな好きになれたなぁ。
デスゲーム作品だけど、殺し合いを食い止めるゲームなので、
シナリオが進んでも死人が増えないのも新鮮だね。
まあ、緊張感が薄れるので良し悪しではあるが、
本作は女の子同士の友情と交流が軸になってるから、
構成としてこれはこれでいい。
しかし、探索パートの出来があまりにもひどい。
・キャラと会話してフラグ立てる必要ある
・キャラがマップのどこにいるか分からない
・時間の概念あってキャラが移動する
・特定の時間に話かけないとフラグ立たない
・時間を巻き戻す力はあるが進めることは出来ない
・ノーヒント
という内容で、一体いつの時代のADVだよこれ！
ドラえもんを怒らせて進化退化光線銃でも浴びせられたのか？
時間を自由に進められないのが一番きついところで、
ローラー作戦でマップを調べながら時間を潰すしかない。
しかもシナリオを進めるための条件が会話ではなく、
「特定の場所を調べる（ノーヒント）」とか、
「時間切れになるまで探索を続ける（ノーヒント）」なんて時もあるので、
とにかく遊んでて疲れる。
1000円のインディーゲームで同じことやっても文句言われるぞ！
2021年のフルプライスゲームとは思えない。
日本一ソフトウェアは昨日今日ゲーム作りを始めたメーカーではないはずだろ。
推理パートもあるが、これも質問に対して正解のアイテムを選ぶだけ。
1回でもミスすると時間を撒き戻すシーンを挟んでから
やり直しになるのが少しかったるい。
探索パートの雰囲気は嫌いでは無いんだが
似たような場所が多くてグラフィックもチープ。
ソファの上で立ったまま寝てる奴とかいるぞ！
カリンさんならギリギリやりそうではあるか……？
個々のキャラの描写は良いものの、
話の真相や黒幕の動き、ピンチの脱し方などの進行部分はガタガタ。
話がクライマックスに差し掛かると、
ご都合主義の塊が流星群のように突っ込んで来て死ぬシナリオだった。
クライマックスまでの流れ、ちゃんとやれば盛り上がる展開ではあるんだけど、
メインシナリオの尺が短すぎるのであまりに強引さが目立つ。
色々活かせそうなのに、
「これ何のための設定だったんだ……ラストのここだけのためかよ！」
ってなってる要素が多いのも残念。
終盤の登場キャラたちの成長っぷりは良かったんだがなぁ。
6時間くらいで終わるボイス無しのノベルADVに、
ズタボロの探索パートを付けてプレイ時間を水増ししてフルプライスにしたゲーム。
シナリオの発想は悪くない。登場キャラの描写も良かった。
しかしこの2つが噛み合っておらず、そこに低予算っぷりが直撃して……これは厳しい！
日本一ソフトウェアの新規IPでも大分悪い方のゲームだと思う。
キャラとBGM、イラストは本当に魅力的だっただけに惜しい。
同じシナリオライターでもっとちゃんと作った新作出してくれ！
