絶対SIMPLE主義

Switch/PS4のダウンロード専用ソフトを中心に全方位でゲーム紹介するブログ。SIMPLEシリーズも応援中。

眩しい青春と、歯ごたえある異能バトルが待つ育成RPG『シカトリス』レビュー!【Switch/PS5/PS4】

 

シカトリス | 日本一ソフトウェア

 

『シカトリス』のレビュー行くぜ!

俺がプレイしたのはPS5版ね。

 

なお、今回のレビューは日本一ソフトウェア様からの依頼であり、

コード提供を受けて執筆した記事となります。

先方からの指定は「チェックは事実関係の確認のみ」「忖度無し」。

これを日本語で漢気と呼ぶッ!

 


パブリッシャー:日本一ソフトウェア

機種:Switch/PS5/PS4

ジャンル:異能×学園RPG

発売日:2023/6/29

価格:6980円

備考:セーブデータ引き継ぎ有りの体験版配信中


 

定期的に日本一ソフトウェアから発売される新規IPの1つで、

「異能」という特殊な力を持った生徒たちを育てるRPGだ。

開発ディレクターは『クリミナルガールズ2』を担当した辰己拓馬氏で、

『風雨来記』などを手掛けた卑影ムラサキ氏もシナリオに関わっている。

 

今回、依頼を頂いてのレビューになっているが、

実際遊んで面白くなかったらどうしようとハラハラしながら遊んだ。

忖度無しのレビューと言われても、

例えば一発くらいなら殴っていいですよって言ってる相手を

ガトリングガンで蜂の巣にしたら少し問題になるもんな……。

 

しかし実際遊んでみたら

毒々しいメインビジュアルから予想出来ないくらいまっすぐな青春モノで、

フルプライス作品としてはチープな部分もありつつとても面白かった!

雰囲気やストーリーの良さだけで終わってない内容で、

日本一ソフトウェアの新規IPではトップクラスに好きだなぁ。

 

 

舞台となっているのは超常的な力を持った「異能使い」が広く認知されている世界。

突如発現するこの力を悪用する者が後を絶たず、一般人では歯が立たないため、

国家は「異能使い」で構成された対異常異能班「AUT」を設立して対抗している。

主人公である神谷蓮史はとある事件をきっかけに「異能」の力を失った元AUTの隊員。

もう力は無いけどその経験を活かし、学生が所属する予備部隊である

「RAUT」の一部隊を教師として率いるというストーリーだ。

 

異能使いは社会で迫害を受けているし、

過去のトラウマなどをきっかけに自我を暴走させると

バケモノのような姿で制御不能になってしまうため、

主人公は異能を持った思春期の生徒たちが闇堕ちしないように、

しっかりとその辺をケアしないといけない。

 

 

和製『X-MEN』的な世界観だが、

異能は集合的無意識へのアクセスで発現できる力だったりと、結構SFしてる設定。

使われている装備の設定なども結構細かいんだけど、

そこら辺は長くなり過ぎずサラッと説明して簡潔にまとめてるぞ。

 

 

で、ゲームを始めるといきなり自我が暴走した仲間と

殺し合いをすることになった生徒たちのシーンからはじまる。

開始1分で鬱展開とは話が早くて助かる!

「あり得るかもしれない未来」を見ているという演出で、

そのまま戦闘チュートリアル開始。

こうならない未来を目指すためにしっかり頑張らないといけない。

ここで生徒が苦しんでるのに

「開始1分で鬱展開とは話が早くて助かる!」とか言ってる奴は教師に向いてないぞ!

 

 

最初に選べる難易度は3段階でその上も存在する。

ノーマルでも結構手強いので難しいと感じたら途中で下げられるものの、

一度下げたら上げる事は出来ない。

 

 

ゲームは授業を選んで生徒のステータスを上げていく育成パートで日数を進める。

特定の日数になると戦闘パート付きのイベントが発生するので、

日頃の育成の成果をここで発揮する。

たまにクリア条件が指定される特別な戦闘があり、

そこで条件を満たせないとバッドエンド。という流れになっている。

 

 

周回プレイで育成が楽になっていく作りで、

戦闘でSランクを獲得するなどの条件で貰えるボーナスポイントで、

周回ボーナスを獲得できるようになる。

逆に言うと条件満たすことを考えずに漠然と周回してると、

ボーナスが全然増えないから結構硬派だ。

まあ、頑張って教師の仕事しないとボーナスが貰えないのは当然かもしれない……。

 

 

戦闘などで溜まっていく信頼度を消費して、

ステータス補正や授業の効率アップなどに関わる「教育改善」を行ったり、

戦闘で使えるアイテムを自腹切って購入したりとやることは沢山あるぞ。

 

 

合間の会話パートはADV形式で進行。

この会話パートがしっかり作ってあって長いため、

スキップせずに遊ぶ初回プレイはノベルゲームに近い印象を受けたかな。

 

 

異能事件の発生日や、仮想空間でトラウマと向き合う演習日が来たら戦闘開始!

戦闘は4人+交代可能な控え3人の合計7人で進行するコマンド式。

4人の生徒が提案した行動を1つだけ選択する形式なので、

コマンドを自由に選べないのが特徴だ。

 

 

1ターンに1人が1回行動するだけなのでチマチマした戦いになりそうだが、

そこは300種類以上存在するスキルを活用することで熱いバトルが幕を開ける。

スキルには「30%の確率で特定のスキルを使う」「攻撃を受けると反撃する」

「誰かが特定の攻撃をすると追撃を行う」といったものが沢山あるので、

育てていくと1ターンに複数の生徒がガンガン攻撃するようになるし、

「行動しないと攻撃力が上がる(一度殴るとリセット)」

なんてスキルもあるので、溜めに溜めてからデカイ一発を撃ち込むのも気持ち良い!

 

 

主人公は異能が使えないので現場指揮するだけだが、

毎ターン溜まっていくオーダーポイントを消費して指示を出せる。

攻撃力や防御力を上げる応援や、

生徒の行動をある程度変更できる再提案などなど。

ゲームが進むと特定の生徒とのタッグ技も使用可能になり、

ポイント消費が大きいが「1ターンだけ全員先制攻撃+必中」

「1ターン攻撃しない代わりに完全防御」など強力なものが揃ってるぞ。

これ活用しないと一瞬でボコボコにされるボス戦もあるから気が抜けない。

 

 

7人という大所帯と多数のスキルを活用した戦闘がとにかく面白い。

戦闘開始前に敵のステータスや耐性をすべて確認できるので、

生徒の能力やスキルとにらめっこしながら、

敵の行動パターンを踏まえたパーティ構成を考えるのが熱いバランスだ。

 

レベルアップでパッシブスキルの枠が増えていくので、

ゲームが進めば進むほどスキルをモリモリに盛れるようになるのが気持ち良い。

膨大なスキルをパズルのように組み合わせて、

ステータスが跳ね上がった時の爽快さが格別!

 

敵の個性付けもしっかりしてるから臨機応変な対応が求められる。

攻撃を受けるとカウンターしてくる敵に、

攻撃を受けるとカウンターする生徒で殴って反撃合戦になって、

基本的に敵の火力が高いので生徒が打ち負けてダウンした時のやっちまった感とかも、

これはこれで楽しい。やり直してカウンター外さなきゃ!

 

 

生徒のステータスが上がっていくと、

それぞれの「専攻」に沿ってスキルを覚えていく。

「専攻」は簡単に言うとRPGの「職業」「ジョブ」などのことで、

ゲームが進むと「専攻」を追加で増やすことも可能だ。

生徒毎に得意なステータスがあるのでなんでもありとはいかないが、

物理攻撃のスキルしか覚えない生徒に属性攻撃を覚えさせたり、

回復スキルを持っていない生徒に回復スキルを覚えさせたりが出来るため、

育成も戦闘も自由度が高いぜ。

 

 

シナリオは複数のラインが同時進行する構成だ。

異能に目覚めたことで人生が狂い、

力を制御するために自らのトラウマと命がけで向き合う生徒たちの成長。

不自然に急増する異能事件の謎や、

恋人を失い自らの力に異変が起こっている主人公の秘密。

これらが絡んで進行するので続きが気になる作り。

 

異能は集合的無意識へのアクセス率が3%を越えることで発現するが、

主人公はアクセス率5%を越えてるのに異能が使用不可能!?

とかは遊んでてかなりワクワクした。

先生のアクセス数超すげぇ!

このままアクセス率100%になって犯罪者を撲滅しようぜ!

と思ったがそういうゲームでは無かった。

 

 

異能に目覚めた生徒たちの境遇は様々。

普通の学生生活を諦めることになった者もいれば、

逆に異能の力に目覚めたことで病弱だった体が普通に動くようになった者もいる。

抱えたトラウマは様々だが、

それを克服するための仮想空間でお互いの内面をさらけ出し、

お互いを励ましながら少しずつ成長していく姿が丁寧に描かれていて、

かなりストレートな青春モノしてるね。

トラウマを乗り越えられるタイミングに差があったり、

凄い過去や凄い実績が無いことにコンプレックスを持ってる生徒がいたりするのが、

いい味になってる。

 

 

生徒たちは異能使いなので外出に制限があったりはするんだけど、

学園生活を楽しんでる要素も多いから普段は明るい雰囲気で進むね。

 

 

キャラはコンビ単位で描かれることが多く、クールな浪崎とがさつな篠森のコンビや、

メンタル危くてシナリオ上で最初の爆弾になる永宮と朝日コンビは印象的。

 

 

心のどこかで力に溺れそうになっている永宮と、

心のどこかで自らの死を求めてる朝日のコンビ。

このゲームがもっとドロドロしたゲームだったら

すげぇ退廃的な描写になってそうだったな……!

 

 

一般人代表(異能使いではあるんだけど)でムードメーカーの涼平(左)と、

ぶっきらぼうで常に態度悪く、でも悪い奴じゃない上城(右)のコンビが特に好き。

素直じゃなかった上城が少しずつ心を開いてくれるのは思い入れが深まるし、

戦闘だと高火力を爆発させるタイプなので頼りにもなったね。

 

 

戦闘の話だと朝日さんも最初から最後までパーティの生命線だった。

防御特化で味方をかばえてダメージを受けるほどに堅くなって、回復スキルも強力。

『ダイの大冒険』に例えると

ベホマラーとベホマとザオリクが使えるクロコダインみたいな立ち位置なので

壁役として強すぎる!

 

 

生徒以外のサブキャラも魅力的で、特に風間さんのあざとさは相当なもの。

異能を持たない一般人のオッサン刑事なので前線で戦えないものの、

色々サポートしてくれるし主人公を気にかけてくれる。

娘への誕生日プレゼントに何を買えばいいか分からず相談もしてくる。

めっちゃ人気出るポジションじゃないですか風間さん!

 

主人公も生徒たちのために頻繁に料理を作ったり、

自分も異能事件で恋人を失ったりして色々大変なのに、

異能使いの先輩として生徒にアドバイスしたりと、

大人として頼れる姿をしっかり見せてくれるから安心感があるね。

 

 

細かい演出も凝っているゲームで、

メインメニューの生徒のセリフはゲーム進行に合った物になっているし、

生徒の服装のバリエーションが多く、

訓練や授業、戦闘で変わるし季節ごとにもちゃんと変化していく。

こういう細かいこだわりと、

着実に生徒からの信頼が深まっていくシナリオが上手く噛み合っていて、

最初は疑り深い態度だった生徒たちが心を開いていく流れに感動できる。

 

 

序盤だと休日に自腹で25000円払って生徒と一緒に外出しても、

大体塩対応されるから心が折れそうだったわ!

 

 

気になった点を挙げていくと、

まず長所でもあるが人によっては好み分かれそうな戦闘の長さ。

ザコ戦含めてすべてボス戦に近い構成なので1戦1戦が総力戦。

敵のステータス画面とにらめっこして耐性を踏まえた編成にし、

戦闘が始まったら防御と回復手段をフルに使って

敵から連続で飛んでくる高火力の攻撃をギリギリで凌ぎながら、

少しずつ体力を削っていく鍔迫り合いが基本となる。

 

溜めに溜めたオーダーポイントを一気に使って攻める時とか、

爽快な場面も多いからキツいだけのゲームではないんだけど、

単純に一戦のカロリーが高いのですげぇ疲れる。

 

一度倒した敵と再戦して生徒を鍛えられる戦闘訓練という項目があるが、

ガチの連戦になるから初戦よりマシとはいえ気が抜けない。

アイテムの節約なんかを考え出すとやはり長引きがちだ。

 

歯応えがあって長引きがちなだけでテンポ自体は悪くない……んだが、

生徒が育って複数のスキルがガンガン重なって発動するようになると

オプションで演出の常時高速化をオンにしてもややもたつくので、

やっぱりもう一段階高速化できる機能が欲しかったかな。

 

 

生徒のデフォルメイラスト自体は結構好きなんだけど、

戦闘の攻撃演出なども全体的にチープ。

敵である異形デザインも分かりやすく内面が肉体に現出してる奴、

単にグロい肉塊みたいな奴、悪魔みたいな奴、妖怪みたいな奴など、

一貫性がなくてあんまり印象に残らないし、

「この流れでなんでボスが雷神みたいなデザインなんだろう?」

とか引っかかる場面もしばしばあった。

 

 

令和のフルプライスソフトとは思えないくらい一枚絵が少ないので、

会話パートもかなり地味。

季節イベントやキャラ同士の交流シーンが多いゲームなので、

もっと色んな一枚絵が見たかった。

 

 

クリアした後にPVを見返したら、

ネタバレにならなそうな一枚絵をほぼ使い切っててビックリした。

全力を尽くしたPVだったんですね……!

ただ、終盤に入ると「ここでこんなのを見せられたら泣いちゃうだろ!」

という一枚絵も出てくるのでポイントはしっかり押さえてる。

少ないリソースをどこに配分するか。作り手が試行錯誤したのが伝わってきたぜ!

 

 

難易度ノーマルでクリアまで遊んで30時間掛からないくらい。

これでも結構苦戦したし、

難易度ハードやその上を目指し始めるとかなり果てしない作りになってる。

バッドエンドルートは凄惨だが、

シナリオ自体はストレートな青春モノを貫いていて終わり方も綺麗。

沢山覚えたスキルを盛れるだけ盛って殴りまくる育成と戦闘も面白かった。

 

演出面は弱いが新規のRPGとして、

シナリオもシステムもハマる人はかなりハマる1本になっているぞ。

日本一ソフトウェアの新規IPを頻繁に買って身としては、

「こういうのを待っていたんだよ!」と言いたくなる内容だったね。

オススメです!