女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音 - G-MODEアーカイブス
G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音 on Steam
『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブルII 始まりの福音』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:ジー・モード
機種:Switch/PC
ジャンル:RPG
発売日:2022/9/29(Switch)2022/12/13(PC)
価格(税込):1800円
2007年に携帯アプリとして配信されたRPGの移植だ。
携帯アプリオリジナル作品である『新約ラストバイブル』三部作の二作目だ。
長らく幻の作品と言われていたが、
現在は三部作すべてが『G-MODEアーカイブス+』で復活しているぞ。
俺の前作レビューはこちら。
□幻の「外伝」がここに復活!『G-MODEアーカイブス+ 女神転生外伝 新約ラストバイブル』レビュー!【Switch/PC】 - 絶対SIMPLE主義
1作目は王道ファンタジーRPGっぽい雰囲気から、
徐々に不穏さが滲み出てくる展開になっていたが……。
2作目である本作は最初からかっ飛ばしててギアが二段階くらい違う!
しかもギアを一切落とさない!
絶望の中でも生きる人々を説得力を持って描くために、
まずプレイヤーの心を丹念にすりつぶすぞ!という意気込みを感じた。
無修正で復刻できるか心配されていたがやって納得。
グラフィックがスーパーファミコンレベルじゃないと許されない描写が山盛りだ。
でも、シナリオ自体は本当によく出来てるし、
1作目から演出面も含めてRPGとして大幅にパワーアップしていたぜ。
舞台は絶望の星ホルス。
疫病が蔓延して多くの人々が病に倒れ、世界を支配する狂王カインは重い税を課し、
外を出ればそこら中を魔獣が闊歩している世界だ。
希望は疫病の薬を民に配り、狂王カインに対抗する聖王アベル。
そして謎の予言によって語られる「福音の子」のみ。
主人公(名前選択可能)は街から離れた山奥で暮らしていたが
謎の魔獣に襲われて両親と妹を惨殺されてしまい、
狂王アベルの討伐とかたき討ちの旅に出る……。
世界観もシナリオ展開も冒頭からヘビーだが、まだジャブに過ぎないぞ。
1作目とは別の惑星が舞台になっており、
全然関係ない話かと思ったらガッツリ関係あるくらいの構成。
順番的には1作目から2作目でも、その逆でも楽しめるようになってるかな。
今回も昔ながらの一本道RPGで、
レベルを上げながら各地の街とダンジョンを順番に回っていく。
前作に比べると街でのイベントや住人のテキストが格段に濃くなってるんだが、
どの街も病院は疫病患者でベッドが埋まってるし、
病気は神の祝福だと国民を洗脳して強制労働させてる国もあったりで地獄。
薬が出来る前は疫病の原因を探す魔女狩りが横行した話もあるし、
ストーリー説明の「絶望の星」という単語は伊達じゃない絶望っぷり。
今の時代でも通じる重さというか、今の時代だから色々ヤバい!
でも頑張ってる連中もいるぞ!終末戦隊オワレンジャーだッ!
シャレになってねーぞ終末戦隊!
この世界観でこのノリやるのかなりガッツあるよな……。
「初心者の館」的なポジションで基礎知識を教えてくれる。
旅先で加わる仲間たちも非常に濃い。
レオンは市民を弾圧する狂王軍の「福音の子」と呼ばれている戦士で、
仮面を付けたクールな男……のフリをしているが実は超ヘタレ。
ハッタリでピンチを乗り切ったり乗り切れなかったりする。
こういう奴が頑張る展開が燃えるんだよな!
と思いながら遊ぶとヘタレ期間が長すぎて本気で不安になってくるぞ!
ルナは民を助ける聖王軍の「福音の子」と呼ばれている巫女。
公務の時は押さえているが実は血の気が多く、
脅迫まがいのやり方で強引にパーティに加わってくる。
ルナ、初期装備が「聖女のドス」の段階で強い。
どんなドスだよ!
劇中で「スカートが短い」って言われるネタが天丼になってるんだが、
メニューで立ち絵見たらマジでスカート短くて笑った。
この2人以外にも濃ゆい脇役が次々に登場する。
特にインパクト抜群なのが狂王カインの右腕であるアイン。
劇中でこいつ1人だけ熱血サムライみたいなノリで、
専用BGMと効果音まで引っ提げて暴れ回る。
しかし狂王軍を仕切ってる人物で男気があり、
めちゃくちゃ強いし指示も的確なので頼りになる。
完全にこいつがシナリオを食ってると言っていい存在感だが、
それだけで終わらない構成が巧み。
対立しているはずの狂王軍と聖王軍それぞれの「福音の子」を仲間に加え、
狂王カインを倒す旅を続ける過程で世界の謎が明らかになっていく。
真実や常識だと思っていたものがひっくり返っていく構図は前作同様だが、
切れ味に磨きが掛かっていて陰惨な展開の連発。
マジで「た、助けてくれ……!」って声が出るくらいしんどいシナリオ。
しかしそれ以上に登場人物たちと世界の行く末が気になって目が離せなくなる。
レオンとルナによる頭の悪いドタバタギャグがちょいちょい挟まるが、
世界観重すぎてこのギャグパートが無いと息が詰まるし、
ギャグパートとの温度差で余計キツいシーンも盛り沢山だぜ!
『狂四郎2030』くらいギャグとシリアスの振れ幅がヤバい。
「キャラを横に回転させて寝ている・倒れている表現をする」
「キャラが点滅して消えるのは死んだという表現」
という、スーパーファミコンレベルのグラフィックじゃなきゃ出来ない、
有様を想像させてくるシーンがとにかく強烈。
遊んでいるとプレイヤーが頻繁に目にすることになる
ゲームシステム的な表現やテキストを、
ストーリー上の演出に組み込んでくるのも見事だったし、
BGMの使い方も最悪に上手い(褒め言葉)。
あの「きらきら星」のメロディーもう聞きたくないよ!やめてくれ!
RPGとしても前作を踏まえて色々進化している。
今回も敵である魔獣を仲魔に加えて進む内容でパーティは最大6人。
能力の異なる仲魔で上手くパーティを編成していく面白さがあるし、
強力な技が増えたので、
通常攻撃のゴリ押しになりがちだった前作よりも戦略の幅が広がっている。
ザコ戦はサクサク、ボス戦は強敵揃いのバランスでしっかり楽しませてくれるぜ。
ただ、中盤からのボスの強さは前作以上。
強力な状態異常と全体攻撃を使いこなすボスが多いため、
立ち回りが噛み合わないと一瞬でパーティが半壊する。
「どうやって勝つんだ!?」
と、シナリオだけでなくボス戦でも絶望させられる!
ボスにも状態異常が効く時があるので、
こっちも状態異常技を使える仲魔を入れて効くまで撃ちまくるとか、
対抗できる防御系の技を持っている仲魔を探すとか、
回復役の仲魔を1人増やしてみるとか、
パーティの再編を考えることも大事になってくる。
そして最後に待ち受けるラスボスの強さがあまりに苛烈!
他のRPGだったら隠しボスレベルの戦術を要求されるので、
攻略情報入れても全然いいと思う。
救済措置なのか終盤に経験値稼ぎ用の場所が解禁されるので、
なんとかレベル上げて対抗したい。勝った時は嬉しかった!
苦戦したけど歯応えあって面白かった。
魔獣図鑑を埋めると有用なアイテムが貰えるが、
専用の呪文で1体1体登録しないといけない煩わしさは前作そのまま。
ただ、ボス戦は倒すだけで登録されるようになったし、
戦闘中に図鑑を開いて登録済みかどうかの確認も可能になった。
アイテムの所持数も大幅に増えたりと、システム面でも進歩が見られる。
前作は砂漠のオアシスでじっとしてたエイボン氏も、
今回は家をゲットしたりとアクティブに活動してるのが良かったな。
しかし節々で改善は見られるものの、
エンカウント率がやや高めで、歩くスピードが遅いのはそのまま。
「G-MODEアーカイブス」の共通仕様で
今回も便利機能などは追加されていないため、
やっぱり今やるとダンジョンなどが単調に感じるところはあるね。
ここは復刻シリーズとしてどうにもならないところかなぁ。
RPGとしてそこまでテンポが悪いわけでは無く、
ダンジョンの作りはクセが無いし、
無駄に広すぎたり理不尽な仕掛けがあるようなこともない。
前作終盤みたいなちょっと面倒なイベントも無くなっているので、
昔のRPGに慣れてる人なら全然いける範囲かな。
控えとの仲魔の入れ替えがいつでもできるゲームなので、
エンカウント率軽減or無効の呪文使えるやつを仲魔にして、
MP全振りで育成して敵除け役として働かせると便利なのでオススメ。
クリアまで20~30時間ほど。
最後の最後まで続く絶望的な展開の数々と、プレイヤーに迫るあまりに重い決断。
それがあるからこそ輝く希望と作品のテーマは息を呑む熱量で、
個々のキャラの描き方も丁寧でシナリオの完成度が本当に高かった。
密度の濃いテキストや終盤のダンジョンなど演出面でも見所が多く、
こんな怪物みたいなRPGが携帯アプリであったとはなぁ……と感服したわ。
辛いゲームだったけどエンディング見て遊んで良かったと思えたね。
前作は「俺は楽しめたけど作品自体に興味が無いと少しきついかも」
って感じだったが、本作はファミコン~スーファミ時代のRPG好きな人なら
絶対やって欲しいって言えるくらいには凄まじいゲームだった。
続編なので1作目から遊ぶのがベストなんだけど、
最初に書いた通り2作目から1作目でも十分楽しめる構成になってるので、
お好きな順番で!