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短編をひたすら水増ししたような完成度!『ハテナの塔 —The Tower of Children—』レビュー!【Switch/PC】

 

ハテナの塔 -The Tower of Children- | GAMES | 集英社ゲームズ -SHUEISHA GAMES-

 

3周して全キャラを楽園に到達させたので

『ハテナの塔 —The Tower of Children—』のレビュー行くぜ!

俺がプレイしたのはNintendo Switch版ね。

 


パブリッシャー:集英社ゲームズ

機種:Switch/PC

ジャンル:サバイバルローグライクアドベンチャー

発売日:2023/4/20

価格(税込):2500円(ダウンロード版)3500円(パッケージ版)7800円(コレクターズ・エディション)


 

「才能あふれる独立系クリエイターの発掘」

という理念の元に集英社が設立した、集英社ゲームズから発売される完全新作だ。

世界の果ての塔の上で暮らす子供たちが、

「地上の楽園」を目指して塔を降りるローグライク作品だ。

開発は株式会社タストαが担当。キャラデザは『ルリドラゴン』の眞藤雅興だ。

 

雰囲気とシステムが面白そうなので予約して購入したが、

「雰囲気と音楽とキャラは良いね……」という定型文に頼るしかないゲームだった!

 

 

能力の異なる子供たちから2人を選んで塔のてっぺんからスタートし、

地上を目指して塔内部を攻略する。

地上に辿り着けたら違う子供を選んで再挑戦だ。

何度も挑んですべての子供を地上に到達させたらゲームクリア。

子供たちは何故塔のてっぺんで暮らしているのか?

この塔はなんなのか?地上の楽園には何が待っているのか?

それは遊んでいくと明らかになる。

 

 

探索の過程で新しい仲間が加入することがあり、メンバーは最大で9人。

9人全員を地上に降ろしたら1周終了。

全20キャラなので1周だと全員を見ることは出来ないが、

次の周回で仲間にしてないキャラが出る仕様のようで、

俺の場合きっかり3周で20人全員見れた。

 

 

ランダムで様々なイベントが待ち受ける塔内部では、

手持ちのカードを使って戦闘などをこなしていく。

 

 

戦闘は攻撃、防御、回復カードなどを選択して行うが、

進行がリアルタイムになっているのでのんびりしていると殴られ放題。

しかもカードはタロットカードがモチーフになっており、

「正位置」と「逆位置」の概念がある。

例えば薬草のカードは「正位置」だと回復だが、

「逆位置」だと毒草になって自分にダメージとなるぞ。

 

手札の向きを入れ替える「ハングドマン」のカードなんかもあるし、

特定の種類のカードを続けて使ったり、

特定のカードを組み合わせるとコンボが発生してパワーアップ。

敵の攻撃タイミングに合わせて防御カードを使うことで、

ジャストガードが発生して相手をピヨらせる要素もある。

リアルタイムに変化する状況に合わせて、素早くカードを選択する必要があるのだ。

 

 

戦闘やイベント報酬で新しいカードをゲットし、

どんどん戦力を強化していくデッキ構築型のローグライクになっているぞ。

 

 

……というゲームだがまずこの戦闘がダメ。

有効なカードを素早く選ぶトランプの「スピード」みたいなルールだが、

ボタン押せば無制限に手札を入れ替えられる上に、

戦略の幅が狭すぎて強いカードが決まっているため、

最初から最後までコンボになる攻撃カードを連続して選ぶだけの作業となる。

 

 

しかも泉イベントで手持ちの不要カードを捨てられるんだけど、

「1イベント1枚」とかではなく、まさかの好きなだけ捨てられる仕様。

デッキ圧縮し放題だ。

最低限のコンボパーツになるカードと回復カード以外を全部捨てれば戦闘は楽勝!

このゲーム、この手のデッキ構築型ローグライクをまったく研究してないな!?

 

とにかく戦闘の幅が狭い上に難易度が異常に低い。

子供はジョブによって使うカードが変化し、

連続攻撃が強力な剣士、魔法カードの詠唱で火力が爆増する魔法使い、

指の本数が書かれたカードを順番通りに使うことでコンボになる神技使いの3種類。

基本的に同じジョブで組むのが強いが、

魔法使いと神業使いのカードは互換性があるので最強。

って感じなんだけど、

ラスボスすら初期デッキで雑に攻撃カード連打でどうにでもなるゲームだからね……。

 

 

「ほぼ初期デッキで心臓を倒せるSlay the Spire」みたいなバランスで、

最初に30分遊んだ時の「このゲームのバランス大丈夫か?」という気持ちが

1ミリも覆されないままゲームが終わった。

 

「ローグライクなリアルタイムカードバトルゲーム」

というのは公式の説明とPVでも推している点で、

普通のユーザーならそこに期待するところだが……。

まさかゲームとして完全に破綻してて

雰囲気を楽しむものとして割り切らないといけないレベルとは思わないじゃん!

何週も何週も遊ぶことになるからだるいぜ!

ある程度遊ぶと一気に最下層までワープ出来るショートカットが

ランダムで出現するようになるんだけど、それを考慮してもテンポ悪い。

 

 

イベントをすべて手持ちのカードで対応するシステムは面白いと思う。

肉を焼くための火を欲しがってる老人に、火を起こすカードを使うか、

パンを渡すか、攻撃して倒しちゃうか。

取引を持ち掛けた商人に彼が望んでそうなアイテムを渡すか、

そこそこのアイテムを渡すか、ゴミカードを押し付けるか。

 

カードによって結果が変わるし、

上手く正解のカードを渡せばレアカードをくれたり、

そこから連続イベントに発展するキャラもいる。

何度も繰り返し遊んで正解や失敗時のリアクションを探る面白さがあるね。

まあ、イベントの種類がそんなに多くないから、底が見えるのも早いんだけど……。

 

 

せっかく色んなキャラがいるのに、

塔のてっぺんの集落で発生するイベントが少ないのも寂しい。

周回プレイ前提なのに同じイベントばかり見ることになるし、

1周に1回発生する強制的にパンが全没収されるイベントが面倒。

 

ゲーム内で1日経過する毎に集落のパンを消費するシステムで、

パンが尽きた状態で日を跨ぐとゲームオーバーで最初からやり直し。

パンは回復アイテムでもあるので、

定期的にパン稼ぎのために塔に潜ることになるんだが、

そこでパン全没収はマジでキツい。

こんなゲームの遅延行為にしかならないイベントやめてくれよ……。

 

 

デッキ構築型ローグライクではなく

ADVとして見ても同じことの繰り返しで、演出や画面切り替え含めてテンポ悪すぎる。

20時間やって図鑑が全部埋まってないし、

繰り返しプレイしてアンロックされる新カードもコンプ出来てない。

最初に書いたようにほぼ初期デッキでクリア出来るバランスだから、

新カードがアンロックされても全然嬉しくない。

一体どういう遊び方を想定してるんだ?

 

 

キャラに関しては『ルリドラゴン』眞藤雅興によるデザインがとても良い

短いセリフの中でもしっかり個性を出していて魅力的に描けてる。

俺は「合掌」が口癖で明らかに使いどころがおかしいミコや……。

 

 

あからさまにネコキャラのミャウに、ヤンチャで元気いっぱいのランラン、

予言書片手にのじゃ口調で胡散臭い予言の話をするウサン、

欠食児童のガブ、最初から最後まで暴力の話しかしないフィスト辺りがお気に入り。

キャラの組み合わせや、エンディングを迎える順番による

細かいセリフ差分もかなり多く、

好感度を上げる事でキャラのプロフィールや一枚絵が解放される要素もあるぞ。

まあ、好感度上げと一枚絵を埋めるのが大変で

20時間しても全然コンプ出来なかったけどね……。

 

 

1時間の短編なら面白かったゲームを、

なんとか何十時間遊べるようにしましたって作り。

俺は単に内容が薄くて同じことの繰り返しを強制するゲームを、

初心者向けと言ってオススメするのは悪い事だと思ってるので

普通にデキの良くないゲームだと評することにする。

 

キャラと「楽園」の正体含めたストーリー自体は結構好きだったし、

塔で出会うザコ敵の個性付けも考えられてはいる。

短編ならアイデアや雰囲気、BGMで評価されただろうけど、

あまりにも同じことの繰り返しでテンポ悪くてうんざりした。

この内容でデッキ構築型ローグライクの亜種を期待させる宣伝も良くない。

全体的に集英社ゲームズが編集や広報の仕事をしっかりやってないのでは?

という印象になったね……。