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何もかも曖昧なこの街で、宝石のような友情と暴力が待っている『ghostpia シーズンワン』レビュー!【Switch/PC】

 

ghostpia公式サイト | 超水道

 

ghostpia シーズンワン ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

Steam:ghostpia シーズンワン

 

『ghostpia シーズンワン』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:room6

機種:Switch/PC

ジャンル:ヴィジュアルノベル

発売日:2023/3/23(Switch)2023/8/22(PC)

価格(税込):2300円


 

2014年に超水道からスマホなどで配信されたヴィジュアルノベルのリニューアル版だ。

オリジナル版からグラフィックなどを大幅に強化し

「読む映画」として1本道の面白さを突き詰めた内容になっているぞ。

 

幽霊たちが住む街を舞台にしたドタバタを描いたシナリオで、

ギャグとシリアスと友情とバイオレンスが混然とした展開を、

尋常じゃないカロリーの映像で綴った構成。

「とんでもないものを見せられている!」

という感情が常に押し寄せる凄まじいゲームだったぜ!

 

 

主人公は幽霊だらけの町に住む異邦人の小夜子。

町の住人から煙たがられ、孤独を抱えた彼女自身も幽霊で、

いつか町を囲む雪の砂漠を越えて、

曖昧な記憶の中に眠る故郷に帰りたいと思っている。

友人たちとの交流や、町に新しくやってきた謎の女の子とのルームシェア、

町を管理する教会との小競り合い、町から出る手段の模索などイベントはいっぱい。

とにかく友達と仲良くやりつつ町から出て故郷を目指す!という話だ。

 

 

幽霊の理想郷と呼ばれるこの町には謎が多い。

町の中心には幽霊たちの名前がびっしりと刻まれたミサイルが鎮座していて、

非常に不気味だがこれが何なのかは分からない。

 

 

幽霊は不死身。ケガはしばらくすれば治るし、

死んだ人間は消滅した後に町はずれにあるゴミ捨て場で目を覚ます。

人間だけでなく、失くした物や食べた物、

忘れてしまった物などはすべてここにやってくる。

「1人が所有できる物」にも制限があり、

物を持ちすぎると消滅してこのゴミ捨て場に移動するというルールも存在する。

 

これらのルール、きちんと物語上で重要な役割を果たすし、

「それもこのルールに含まれるのか」と驚かされる描写も多い。

そして不死身の幽霊とはいえ痛みはあって、

死んで復活しても「誰かに殺された」という事実は残るわけで。

そこも一筋縄じゃいかないところだ。

 

 

そもそも「幽霊」と表現しているがこれは登場人物たちが便宜上呼んでるだけ。

実際どういう存在なのかは彼ら自身にも分からない。

みんな死なないから死生観が独特になってくるし、

時間の感覚が曖昧で久しぶりに会うと「999年ぶり?」なんてジョークをよく言う。

こういう謎めいた設定の数々と独特のルールの数々が物語を面白くしている。

読んでいて引き込まれるぞ。

 

 

映像もすごい。

場面が変わる度にいちいち画がバシッと決まった一枚絵が出てくるし、

キャラの顔が表示されたウインドウが動いたり

アニメでアクションしたり急にコミック風になったりと、

どんだけ手が込んだことやってんの!?って驚きっぱなし。

あそこまでアニメーションしてるわけじゃないけど

この労力の凄さは『マルコと銀河竜』思い出したわ。

登場人物が喋る度に、音程の違う音が流れてボイスっぽくなる作りもいい。

『どうぶつの森』っぽい表現だ。

 

BGMも絶品でハズレ曲無し!

特に日常パートでよく流れるボーカルの入ったピアノ曲「Friend (feat.Meno)」がお気に入り。

これが流れるとホッとするんだよなぁ。

アニメのように毎話入るOPとEDも良すぎる。

 

画面に古いビデオテープのような

ノイズやグリッチが掛かってる(オフにも出来る)のも雰囲気に合ってるし、

本当にビデオテープの早送り、巻き戻しみたいな感覚で

テキストを読み返せる機能もあるのが斬新。

 

 

ちゃんとBGMも巻き戻ってるしこれはすげぇわ。

気の利いたレトロゲームの移植くらいでしか見ないシステムだぞ!

 

 

次に何が起こるかわからない怒涛のシナリオ展開もワクワクさせられっぱなし。

メインキャラみんないい味出しててやりとりをずっと見ていたくなる。

 

 

ボーイッシュでぶっきらぼうだけど優しいアーニャも、

色んな意味で怖いくらい頼りになるパシフィカさんも大好き。

上の画像はパシフィカさんが包容力を見せるシーンだけど、

この後主人公がずっと風呂に入ってないことに気付いてブチキレます。

 

 

正体不明の新入り幽霊であるヨルさんはとにかくエネルギッシュ。

喋って動くたびに空気がヨルさん中心に回る感じがとてもいい。

 

物語は主人公である小夜子の視点で進むため、小夜子の不安や孤独に対して、

実際友人たちが何を考えているのか分からないのが上手いところで、

その辺りのすれ違いや真意が胸を打つね。

 

 

バトルシーンも満載。

劇中で小夜子がニンジャ扱いされていて、

冗談や偏見で言われてるのかと思ったらマジでニンジャ染みた戦闘力を発揮して、

キレッキレのバトルを展開するぞ。

しっとりした作風かと思ったらそんな話だったの!?

ゴーストピアじゃなくてニンジャトピアじゃん!

バトルシーンもどんどんエスカレートしていくから俺の少年ハートも大満足。

 

 

映像センスがあまりにも斜め上で、

コミカルに演出されてるけど真顔になるくらい怖かったり。

かなり凄惨なシーンなのにキレッキレのギャグな動きしてたり。

感動的な会話なのに状況に暴力エネルギーが渦巻きすぎて頭に入ってこなかったり。

これは喜劇なのか悲劇なのか。喜劇かなぁ。

と思うような描写がプレイヤーの脳みそに浸透していく。

 

 

この銃撃戦終えた小夜子と、

小夜子に殴られて銃突きつけられてるクラーラと、

軟禁されてたヨルさんが3人で頭よりデカいハムを貪り食うイラストは、

本作のノリを象徴する名画でめちゃくちゃ好きな1枚。

 

状況を理解する前「何を見せられているんだ」

状況を理解した後「何を見せられているんだ」

 

ってなったわ!

 

 

クラーラはその「みんなに愛される可愛い女の子」な態度が気に入らねぇ!

って感じで色々酷い目に合うポジションなんだが、

だんだんプレイヤーがちょっと引くレベルにまでなってくる。

さすがに可哀そうじゃないか!?

と思いながら超水道の公式アカウント見たらアイコンがクラーラで

ヘッダー画像が指を折られてるクラーラだった。

公式がクラ虐最大手だったか……。

とはいえ、ただそれだけのキャラにはなっていないぞ。

 


さ、最高だった……!

クリアしてまず出て来たのがこれ。

 

時間も記憶も生も死も曖昧な中で、

登場人物たちによる友情と暴力が眩しく鮮やかに輝いてる物語。

丁寧に描かれた心理描写を軸にしたセリフのやり取りと、

間の取り方で心が揺さぶられっぱなし。

なるほどこれは「読む映画」だなと納得させられた。

ほんのちょっとしかセリフが無いのにメチャクチャ存在感あるキャラがいたり、

テキストの力が強いゲームだったぜ。

 

5話構成でクリアまでは8~10時間くらい。

キリの良いところで終わってはいるんだが

ここからが面白いところでもあるからあまりに続きが気になる……。

オリジナルが2014年だったので続きはいつになるんだと絶望的になるが、

公式がシーズン2はそこまで時間は掛からないと言っているので信じて待つぞ。

 

そして「ならシーズン1を遊ぶのはシーズン2が出てからでいいかな?」などと思うな!

今遊んでシーズン2が出た時にもう一回遊べ!

それだけの価値はあるし俺もそうするぜ!