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めっちゃモヤモヤした『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』ネタバレ感想!

 

先日『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』を見て来たんだが、

あまりにしんどい内容でシナリオの雑さにもモヤモヤしっぱなし。

ここ数年の映画クレヨンしんちゃんではぶっちぎりで見ていてしんどく、

時間が経つほどに「しん次元ひどかったな……」という感情が高まってきたので、

一度ここにネタバレ全開で感想を書いておくぞ!

映画が面白かったと思った人は読まないでくれ!

 

 

ポスターのキャッチコピーがあまりにひどかったので、

見る前は「おいおい、エアプしんのすけかぁ!?」なんてネタにしてたけど、

まさか大体そんな感じの内容とは思わなかったぜ……。

 

3D化自体は違和感なく質の高いものになっていて、

お馴染みの春日部の背景が実在感のある密度で描かれていたのは新鮮だったし、

冒頭のこれぞ3D!というスピード感あるアクションもさすが。

「みさえのケツを3D化すると大分いやらしくなるな……」

「ミッチーとヨシリンまで3Dになってる!」「川口もだ!」

「チーターと一緒にいる同級生まで!」辺りも感動した。

あと国際エスパー調整委員会埼玉支部が割と765プロじゃなかった?

 

しかし本作一番きついのが敵役であるミツルくんこと非理谷充(ヒリヤ ミツル)。

ティッシュ配りくらいしか仕事が無く、通りすがりのサラリーマンに馬鹿にされ、

推していたアイドルは結婚して絶望する。

非常にステレオタイプな底辺キャラで、

劇場版クレしんらしいぶっ飛んだキャラ付けでもなければ愛嬌もない。

 

そんなミツルくんが超能力を手に入れて暴走を始めるが、

偶然立ち寄った幼稚園の様子を見て、

結婚したアイドルが保育士アイドルグループだったことを思い出し、

腹いせに襲撃して先生と園児を人質に立てこもって、

明らかに殺傷能力ある超能力を振り回す展開。

合間のしんのすけのギャグあっても怖いだけだったよ!

怖い悪役ってそういうことじゃねーから!

 

「最近のガキはうめーもん食ってるな」などと言いながら園児の弁当を食い散らかし、

よしなが先生やかすかべ防衛隊の面々を相手に

「この国はお先真っ暗だ!」と喚き散らす姿はただただ不快なクズでしかなく、

これを大スクリーンで延々と見せられるのがもうしんどい。

なんでクレヨンしんちゃんの映画でこんなの見せられるんだよ……。

単純に「劇場版クレヨンしんちゃんの登場キャラ」に落とし込めてない。

 

そして彼の力を利用するヌスットラダマス二世が登場。

未来の無いこの国を消すための「令和てんぷく団」を組織する悪役で、

明らかにネットカフェ難民をモチーフにした施設で、

行き場のない若者たちの負のエネルギーを集めている。

そこにミツルくんを連れて行き、

新ウイルス蔓延や超少子化、ハイパー高齢化、自治体崩壊などを挙げ、

こんな国は早く無くなった方がいいだろうと語る。

このヌスットラダマス二世、明らかに真っ黒な悪者なんだけど、

何故かなあなあで「憎めないヤツ」的な処理されるのも本作のモヤモヤポイント。

 

とにかく味方も敵も「この国の未来は明るくない」という表現を繰り返し、

後半はミツルくんにも悲しい過去が!という話になっていくんだが、

ミツルくんは小さいころから両親にかまって貰えず寂しい思いをしていて、

学校でも馴染めず、中学か高校くらいになった時に

両親がそれぞれ離婚して見捨てられたという境遇。

事件の発端もミツルくんが傷害事件の犯人に間違われて

警察に追われたところから始まっており、

これはただの個人の不幸であって国とか関係ねぇ!

 

CMで活躍してるカンタムロボの大バトルは見応えがあり、

期待に応えてくれるレベルではあったんだけどそれは途中まで。

本当の最終決戦はミツルくんの精神世界で、

中学生くらいの子供に生々しく真正面からボコられるしんのすけを延々見せられる。

なんでこんなのを延々と見せられなきゃいけないんだ……。

 

今回、3Dになったことでこういう暴力シーンがどぎつく感じるのも気になったところ。

かすかべ防衛隊の面々が壁に叩きつけられるシーンでも結構痛々しいし、

幼稚園でミツルくんが超能力弾を発射してしんのすけがそれを避ける、

超能力弾は壁に当たって壁がえぐれる……ってシーン。

「当たったら死ぬだろ!」感が強すぎて怖かった。

 

まあ過去の映画でも「当たったら死ぬだろ!」ってシーンは山ほどあるし、

『夕陽のカスカベボーイズ』の鞭打ちシーンや、

『栄光のヤキニクロード』の高枝切りバサミで攻撃するシーン辺りは、

生々しい暴力で特に怖いと言われていたけど、本作はそれとは別ラインの表現に感じた。

 

そして少年時代のミツルくんとしんのすけの対話シーンは、

現実がどんなに辛くても、どんな時でも、

「永遠の五歳児 野原しんのすけ」はいつも傍で応援してくれる

っていうメタ視点も含んだ話をやりたいんだと思うんだけど、

ミツルくんの話と噛み合ってなくて唐突感しかないし、

やることが「仲間」という単語を連発し、

「オラの仲間を……いじめるなァァァァー!」

と叫んでただの喧嘩に加勢するしんのすけだから違和感すげぇ。

 

最後のTwitter名言botと化した野原ひろしがまたキツい。

「急に良い事を言うけどパンツ丸出しの野原ひろし」

というギャグで落としてはいるものの、

ほとんど絡みの無かったミツルくんに言うには

あまりに上から目線の説教過ぎて中和しきれていない。

「この国の未来は明るくないかもしれないけど」

なんてことを言い出した後に、

ひたすら「頑張れ!」を連呼する野原ひろしなんて見たくなかったぜ……!

 

というか野原ひろしが「君はまだ若い!」「頑張れ!」とか言い出してるけど

野原ひろし35歳でミツルくん30歳なのでムチャクチャ。

恵まれた同世代が上から目線で頑張れ!

って説教する構図にしかなってないのが残酷過ぎる。

ミツルくん本人は記憶改竄&消去で自分がやったこと忘れちゃってるから、

着地点もよく分からないことになってる。

 

安易に「この国の未来は明るくないけど頑張れ!」を正面から繰り返すだけの

メッセージ性を抜きに劇中の流れだけを見ても、

ミツルくんは傷害事件の犯人と間違えられ、

爆発事件の犯人としても指名手配された上に、

幼稚園占拠のくだりや顔写真や本名含めて全部テレビで報道されたことに

一切フォローが入っていない。

「頑張れ!」とか「この国の未来」とか関係なく、

ミツルくん普通に社会復帰出来ないだろ!

 

ミツルくん周りで俺の印象が悪いせいもあるかもしれないけど、

焼肉の割引券程度でしんのすけを怪しい組織に連れて行くみさえとか、

怪物に吸い込まれたしんのすけを追おうとするみさえを止めるひろしとか、

「予言にそうあった」だけで引っ張る強引なシナリオ展開、

取ってつけたノルマみたいに出てきて、

オトナ帝国の劣化コピーみたいなセリフも飛び出すひろしの靴下などなど。

シナリオの細かい描写もどんどん気になってしまった。

 

原作マンガ風でまとめたスタッフロールは過去の映画と比較しても文句無しに素晴らしく、

「こういうノリで見たかったなぁ」という気持ちになったね。

 

クレヨンしんちゃんは歴史が長いシリーズなので、

キャラの言動にかなりブレはあるし、重いテーマを扱った作品も沢山あるし、

そのテーマを扱い切れてない作品もある。

それを踏まえても今回の描き方はあまりに雑で、

ギャグアニメとしてノイズになる描写も多すぎた。

エンタメにし辛いネタをわざわざ取り上げてエンタメとして調理しないまま放り込み、

ズレた描写と薄っぺらなメッセージで投げっぱなしにする。

初の3D映画化で期待して見にいっただけにガッカリ感が強かったよ……!

 

しんのすけ ひまわりのエスパー兄妹 | 毎日更新!「クレヨンしんちゃん」の漫画公式サイトだゾ | まんがクレヨンしんちゃん.com【公式】

 

一応本作には原作となる

「しんのすけ ひまわりのエスパー兄妹」があって現在無料公開中だ。

原作といってもこちらはおバカなエスパーバトルがメインでほぼ別物。

会社を理不尽にクビになった男が超能力を手に入れて暴れ回るが、

最後は正義の超能力を手に入れたしんのすけに敗れて破壊された街は元に戻る。

本人も「また仕事探して人生やり直します!」と前向きになり、

ひろしも「ガンバレよ!不景気に負けるな!」とだけ励ます罪を憎んで人を憎まずオチ。

 

要素だけ抜き出すと似てるところもあるのに、

読後感の良さが全然違っててめっちゃ面白い……。

もっと原作の魅力を活かして欲しかったぜ!