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こんなハチャメチャな夏休みあるわけ無いだろ……ここにあったッ!『なつもん! 20世紀の夏休み』レビュー!【Switch】

 

なつもん! 20世紀の夏休み | スパイク・チュンソフト

 

『なつもん! 20世紀の夏休み』のレビュ―行くぜ!

 


パブリッシャー:スパイク・チュンソフト

機種:Switch

ジャンル:ほのぼの夏休みアドベンチャー

発売日:2023/7/28

価格(税込):6578円


 

『ぼくのなつやすみ』を手掛けた綾部和とミレニアムキッチンが、

スパイク・チュンソフト、トイボックスと送る完全新作だ。

サーカス団の一人息子となって、

初めて訪れた街で1か月の夏休み生活を楽しむ内容になっている。

『ぼくのなつやすみ』と同じ子供時代のノスタルジーいっぱいの内容で、

CMソングも『ぼくのなつやすみ2』と同じ井上陽水の『少年時代』を使用しているぞ。

分かりやすい寄せっぷり。

実際のゲーム内容はオープンワールドのアドベンチャーゲームにした上で、

ほぼ『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と同じ動きが出来るため、

機動力がヤバい。建物や山に登りまくったり、そっからムササビで滑空飛行も出来る。

成長すると物理法則を無視した二段ジャンプも可能。

 

サーカス団の子どもはサイヤ人と同じくらい強いという思想で作られている。

安易に忍者の末裔とかにしなかったの評価したい。

化石を掘って博物館に展示してもらう要素もあり、

「20世紀の夏休み」などと言い張っているが、

我々が見たことのない夏休みが次々に展開される。

 

現代の価値観や基準、技術で新たに再解釈した

『シン・ぼくのなつやすみ』かと思ったら、

現代のゲーム業界についていくためにあらゆる手段で修行してパワーアップした

『スーパーぼくのなつやすみ』だったって内容だ!

 

とはいえ、ゲームとしての面白さに割り切った作りは遊んでいて気持ち良いし、

雰囲気作りやセリフ回しなどもさすがの完成度。

「戦闘が無い現代が舞台のオープンワールド」としてよく出来ていたぞ!

 

 

主人公は家族であるサーカス団と一緒に「よもぎ町」に滞在し、

興行のために一カ月滞在することになる。

シェアハウスである明日葉荘を拠点にして、町を冒険していくのだ。

この一目で人となりが伝わる登場キャラたちがまずいいね。

キャラデザ担当したヒョーゴノスケさんのセンスと、

それを見事に落とし込んだ3Dモデルの両方が光ってる。

 

 

主人公の名前は「サトルくん」で固定となっているが、

いつも持ち歩く絵日記の名前だけはプレイヤーの選択が反映される仕様だ。

サトルくんが自分の絵日記に知らない人間の名前を書くヤベー奴になってる!

 

 

1か月自由に過ごす!がゲームの内容であり、

メインストーリーややらないといけないイベントは無し。

オープンワールドで表現された「よもぎ町」を歩き回り、

虫取りや魚釣り、大量のサブイベントをこなしていく作りだ。

 

 

探偵事務所を構える近所の小学生たちと一緒に様々な事件に挑むなど、

連作になっているイベントは多数ある。

 

 

このシリーズお約束である朝の体操も存在。

「さあ見ているみなさんもいっしょに体操しましょう」と呼び掛けてくるぞ!

「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~ 」だと、

オリジナルの体操になってたけど本作は普通のラジオ体操だね。

 

 

発見したイベントや目標は冒険メモにリストアップされていき、

クリアすることでステッカーが手にはいることがある。

ステッカーが沢山あるほど、ダッシュ出来る時間や壁を登れる時間が長くなっていく。

まあ……「がんばりゲージ」ですね!

 

 

最初にも書いたがサトルくんはサーカス団の一人息子というだけの設定で、

凄まじい機動力を発揮。何もない垂直の柱に張り付いて登るという、

『刃牙 最凶死刑囚編』のシコルスキー並の動きを平然とするから恐ろしい。

 

 

この機動力を生かして駆け回るオープンワールドの探索がとにかく楽しい!

謎の城あるし巨大な山あるし、離れ小島に鳥居があったり、

少し歩くと着く隣町でデカい時計塔があったりと、ランドマークになる場所が多数。

 

 

田舎町の雰囲気作りもさすがの作り込み。

商店街のこのカメラワークや細かい看板までこだわりが感じられる。

 

 

分かりやすいノスタルジーな町並みや分かりやすいランドマークなど、

色んな要素をギュッと詰め込んだ構造になっている。

いかにも「ゲームに出てくる現実ではありえない町」だが、このゲームはこれでいい。

良い意味で探索の楽しさに振り切っているので、毎日色んな所に出かけたくなる。

 

発見したイベントなどをこなすことで、

新しいステッカーが手に入ってどんどん高い所に登れるようになり、

高いところに登れるとまた新しいイベントや新しい昆虫などが見つかって、

また新しいステッカーが手に入って……。

この繰り返しでゲームが止まらなくなるぞ。

 

 

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』プレイヤーなら、

影響を受けているのがすぐ分かるレベルで色んなところを寄せているんだが、

まず普通のメーカーがブレワイっぽいゲームを作るのは不可能なので、

それをこの精度で作ってる時点で素直に凄いと思う。

下手なメーカーが真似しようとしてもトライフォースの力に押しつぶされるが、

このゲームはサーカス団の子どもがちゃんと力を使いこなしているぞ!

 

ただのパクリではなく戦闘が無い時点で別のゲームだし、

どんな高いところから落下しても1秒くらい足が痺れるだけで済むとか、

元ネタよりもペナルティ軽くしてあるところもあるから遊びやすい。

山の頂上や空から落ちても無傷のサトルくん、やっぱサイヤ人じゃねーの?

 

 

近年のオープンワールドゲームとしてはマップはそこまで広くはなく、

入れる建物も少ないものの、高低差をしっかり活かした構成になってるので密度は高い。

とにかく登れる場所を探して景色を堪能するだけで時間が溶ける。

場所に合わせて変わる環境音も非常に細かくて臨場感バッチリだ。

 

ちなみにファストトラベルは点在してるバス停を調べると可能になる。

安価で買える回数券を使うことでバスを呼び出して移動できるのだ。

夜以外はいつでもどこでもバスを呼ぶことが可能で、

離れ小島や海岸沿いからでも乗車可能。

お客さんが少ないからとか説明があったけどおかしいだろ……!?

 

 

各地で捕まえられる昆虫も200種類いて、一つ一つにサトルくんの解説付き。

一体ここはどこの国なんだと言いたくなるくらい幅広い昆虫が生息しており、

モルフォチョウモドキも登場だ!

いや無理だって!「モドキ」付けて誤魔化そうとしたって無理あるって!

 

 

そして釣りをすれば120センチのブリをサクッと釣りあげたりする。

 

 

海に飛び込んでそのまま手掴みで捕まえることも可能だぞ。

サーカスの子どもスッゲェ~!これもうサーカス原人だよ。

 

 

鉱山などの採掘ポイントでガラスやダイヤを発掘したリ、

野生の豚を育ててお金にしたり、化石を掘り出して博物館に展示したり、

やることはいっぱい!

 

 

ゲームが進むとサーカスの興行が始まり、

サトルくんのポケットマネーでサーカスの設備や出演者のコスチュームを買ったり、

サーカスのプログラムを自由に切り替えたりも可能になるぞ。

 

小学生が夏休みにガラス採掘や化石発掘やサーカス興行を行う……。

俺が知っている「20世紀の夏休み」とかなり差があるな!

派手だけど金ばかり掛かって全然儲からないサーカス興行は泣ける。

 

 

やることは自由!なゲームではあるが、

サーカス団の一員であるラブちゃんに話しかけると、

その日に発生するイベントや珍しい虫、レアアイテムの場所などを占いで教えてくれる。

これを毎日の目標に出来るので、ちゃんとプレイヤーが迷わない導線が敷かれているね。

 

 

掴みどころのないセリフの数々で困惑させる

吉田ラヴィンスキーことラブちゃん自体もかわいい。

 

 

ラブちゃん以外も女性陣がみんなやたらかわいいゲームで、

年上のお姉さんキャラとして登場する純子ちゃんは

夜に一緒に出掛けるイベントがあったりヒロインしてる。

「夏休みに旅先でちょっと仲良くなった年上の女の子」

くらいの距離感なのが良いんだよなぁ。

 

 

商店街に寄ると出会うことになる良子さんも可愛すぎてびびる。

こんなイカしたおねーさんが店番してる肉屋、俺が知ってる20世紀に無いんだが!?

夜に行くとお店でお酒(明言はされてないが)を飲んでて

ちょっと顔赤くなってるのがドキッとさせられる。

 

 

ちょっと不思議な癒し系の女性であるそらよさんは、

中盤からの登場だけあってグイグイ来る。

距離感の詰め方とイベントの発展が早すぎて、

存在がほぼ真希波・マリ・イラストリアスだぞコイツ!

でも俺は女性陣だと今日子おばさんが好き。

 

 

女性キャラ以外で印象強いのがサーカスの一員であるトコトコさん。

夕飯の時間になると迎えに来るキャラで、

どこにいようが大雨が降ってような必ず見つけてくるし、

その時に「気分はどんな感じ?」って質問に「最悪オブ・ザ・イヤー!」って答えると、

涙ぐみながら「あとで何があったか教えてくれよな……」って気遣ってくれる。

めっちゃいい兄貴分じゃん!

サーカスの興行がはじまると綱渡りで失敗しまくって、

股間を強打する姿を毎晩見ることになるけども!

 

 

会話テキストとボイスがリズムもテンポも小気味良く、遊んでいて心地良い。

教訓めいた会話もあるけど、

力の抜けるやり取りを挟みながらスッと進むから引っかからないし、

時折来る真正面からの言葉がしみる。

 

登場キャラは時間帯によってあちこちに移動していて、

日によってセリフも変わるから差分が多い。

居場所は大体マップから確認できるので、

毎日の探索のついでに話しかけていくとキャラへの思い入れが深まっていく。

ちゃんと町が生きてるなぁと感じさせてくれる作り込みだ。

 

 

田舎町なので見た目は昭和っぽいが、

1999年が舞台なのでそれらしいノスタルジーなネタもある。

俺が一番ノスタルジーを感じたのはここ。

専務さんがコマーシャルに出たゲーム機……何もかも懐かしいぜ……。

 

 

ドリーム……ドリーミングキャット!

 

 

クリアした後はデータを引き継いで2周目を始められるので、

収集物をコンプしたいやり込み派の人も安心の使用となっているぞ。

 

 

1週は25時間ほど。

イベント盛り沢山で毎日が楽しく、

終わりが近づいてくるほどに寂しさが忍び寄ってくる構成と、

語り過ぎない物語は「20世紀の夏休み」だからこそだ。

現代が舞台で戦闘の無いオープンワールドゲームって時点でかなり貴重だし、

この時代にノスタルジーを感じる大人が遊んでも、

この時代を知らない今の子供が遊んでも楽しめる作りになってるね。

メインテーマと主題歌もいい曲で、聞くだけでゲーム内容が蘇ってくるぜ。

 

ハチャメチャな構成だけど、

このテンション高めで色々出来てどこでも行ける解放感と万能感は、

これこそ小学生の頃の夏休みの感覚に近いかもしれない。

いい夏休みだったっ!