ゴブリンスレイヤー -ANOTHER ADVENTURER- NIGHTMARE FEAST 公式サイト
『ゴブリンスレイヤー -ANOTHER ADVENTURER- NIGHTMARE FEAST』のレビュー行くぜ!(兜の奥のモノアイを光らせながら)
パブリッシャー:ブシロード
機種:Nintendo Switch/PC
ジャンル:タクティクスRPG
発売日:2024/2/29
価格(税込):5680円【通常版】9880円【限定版】
小説、アニメ、マンガで人気の『ゴブリンスレイヤー』初のコンシューマゲーム作品だ。アニメ版をベースにしたクラシカルなシミュレーションRPGとなっている。
開発は『サモンナイト』などを手掛けたフライトプランのスタッフが在籍するアポロソフト。株式会社メビウスとの共同開発で、『アルカディアスの戦姫』と同じタッグでもある。
原作を見たこと無かったので、しっかり楽しむためにアニメのシーズン1と2に原作小説1巻も読んでからプレイしたぞ。シナリオは外伝作としてよく出来ており、原案・シリーズ構成を原作者である蝸牛くも氏が担当してるだけのことはあった!ちゃんと履修していたので面白さ倍増!
しかし、そこ以外の作りはかなり厳しく、特にUI周りの酷さは低予算っぽさが直撃していたぜ……。
原作はゴブリンに故郷を襲われたことがきっかけで、ひたすらゴブリン退治だけを行う復讐鬼と化したゴブリンスレイヤーが主役だったが、本作の主人公はゲームオリジナルであるギルドマスター。急死した父親に代わって辺境の領主となり、ギルドの運営を任され、自分自身も冒険者として活躍する少女だ。
なお、原作に倣って本作の登場人物にも固有の名前が存在しない。主人公は「ギルドマスター」だし、その幼馴染は「拳闘従士」と表記される。
例外としてコナンだけは名前アリ。
CV島袋美由利で駆け出しのクセに妙に落ち着いていて、英雄めいた名前を名乗るコイツ、一体何者なんだ……!?
一本道のノベルパートとSRPGパートで構成されており、原作キャラとゲームオリジナルキャラ、そしてモブの冒険者などで部隊を作って戦っていくゲームだ。
物語は冒険者ギルドを運営する傍ら「死者蘇生を可能にする遺物」を巡る戦いに巻き込まれていくギルドマスターと、偶然出会った吸血鬼の少女である殲血姫の二人を軸に進んでいく。血を吸いたがるやり取りなどでちょっとインモラルな雰囲気も。
マイペースだけど行動力があってみんなのために突っ走りがちなギルドマスターと、高貴な吸血鬼ぶってるけど、割とメンタルよわよわな殲血姫の二人はしっかり魅力的でシナリオが面白い。
「招かれないと建物に入れない」鮮血姫と、それを一目見てすぐに吸血鬼だと看破するる拳闘従士とか細かい描写も良いね。戦闘に絡まないギルド職員とかの脇役にも、印象的なシーンがあるからしっかりしてる。
メインキャラでは見た目のインパクトが強すぎる白熊僧侶が特に好き。僧侶らしい穏やかで含蓄のある言い回しに加えて、幕間の過去話がめっちゃいい話で一気に好きになってしまった。あんな話泣いちゃうでしょ。
主人公は「ロードモナーク」の力を持っているため、戦場を鷹の目のように見通しながら指揮が可能。つまり、戦闘パートは俯瞰視点で進行するが、主人公自身にもこういう視点で見えているという設定だ。ゲームネタを沢山取り入れていた原作を、更にゲームにするとこうなる!というメタ的な構造。
他にも「いしのなかにいる」ネタとか、「経験というのは宿屋で眠る時に追いついてくるもの」ってセリフとか、「それを売るなんてとんでもない」とか小ネタ多数で楽しい。
地の文章で主人公のことを「あなたは~」って表現するのはちょっと違和感あったが……。TRPG的な言い回しなのは分かるが、このゲームの主人公は立ち絵と自我があるし、選択肢による分岐も無いからね。
描写が丁寧なのでシナリオで退屈はしないし、メインストーリーは豪華声優陣によるフルボイスなのも嬉しいところ(サブクエは声無し)。
序盤は原作にいないキャラを操作してゴブリン以外の敵と戦うステージが続くため「俺は一体何のゲームをやっているんだ」という気持ちになってくる。しかしゴブリンに頭を悩まされる展開になり……。
そこに満を持してやってくる、小鬼退治だけで銀等級に上り詰めた男!
待ってましたオルクボルグ!いや、かみきり丸!いや、小鬼殺し殿!
もちろん女神官、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶もやってくる。この構成は素直にワクワクしたし、そこからはゲームキャラと原作キャラのクロスオーバー的な面白さも強くなってくる。
原作キャラはあくまでも脇役で、合流してからユニットとして使い続けることは出来るものの、メインストーリー上ではあまり顔を出さない。その分サブクエストではしっかり絡むし、ゴブリンスレイヤーさんのセリフ回しがこれこれ~!って感じなのは良し。
ただ、「剣の乙女」はプレイアブルだけどシナリオに絡まない、いるだけ参戦のDLCキャラで、しかもNintendo Switchのパッケージ限定版を買わないと使用不可能。Steamユーザーは使う手段無し。これは短剣を投げられても文句言えねぇ売り方だぞ!
そういうゲームになっているが肝心のタクティカルRPGとしての作りがイマイチ!
昔ながらの味方と敵の順番を交互に行うターン制だが、悪い意味で特徴の無い古臭い作りで、育成の自由度もないから戦略の幅も狭い。
味方みんなで敵をボコってから睡眠の状態異常を打って敵のターンに移るとか、状態異常防止のアクセ付けたキャラを先行させて、広範囲の状態異常魔法撃つザコを潰すとか。そういう楽しさはあるが、ゲームとしての盛り上がりは原作キャラが合流して、強いキャラが一気に増える中盤手前がピークだ。
敵はこちらから近づかないとその場でじっとしてるヤツばかりで、マップが妙に広いからテンポが悪い。味方みんなで固まってダラダラ歩きながら、近づいてきたザコをプチプチ潰す作業が中心となる。そんなところでゴブリンを作業的に倒すゴブスレさんの感覚を再現しなくていいから!
その割にラスボス戦だけやたら面倒な強さなのがしんどいぜ。
モブの冒険者を雇って好きな部隊を編成するシステムがあるが、このゲームは出撃数が最大10名で、メインキャラ5名と原作キャラ5名で埋まるから序盤過ぎると使うとこない。ゴブリンが出ないステージにゴブリンスレイヤーさんを出撃させたくない!ってこだわる原作ファン向けかな。
原作を意識した要素としてダイスと罠のシステムがある。
ダイスは事前に設定した「二人以上の仲間が状態異常を受けた」「敵に攻撃を回避された」などの条件でダイスを振り、出目が良いとプレイヤーに有利なことが起こる。こっちは地味だが、まあステージに合わせた保険システムとしては悪くない。
が、罠システムの方はマトモに機能してない。罠が弱すぎて使うより殴った方が速いし、そもそも罠が設置出来ないステージの方が多い。完全に宣伝用の要素って感じだ。
上は公式の画像で、ゴブリンスレイヤーさんが火薬樽でゴブリンを吹っ飛ばしてるが、こんなこと出来るステージどんだけあったかな……。どっちにしろ殴った方が速いぜ。
ゴブリンスレイヤーさんの短剣投げがめっちゃ使いやすくて強いのはポイント高い点。
蜥蜴僧侶の「竜牙兵」が単なる単体攻撃技なのはちょっとガッカリではあるかな……。
「オート機能」をオンにしたら会話が飛ばされまくるんだけどなにこれ!? #ゴブスレ #NintendoSwitch pic.twitter.com/yPNwlAaDay
— ゲームブロガー双葉ラー油 (@daikai6) March 4, 2024
ゲーム部分はそんなとこだがUI周りが驚くほどひどい。
ノベルパートで「オート機能」をオンにしたら、会話が飛び飛びにスキップされるだけなのは唖然としたよ……。ノベルゲーム遊んだこと無いんですか!?
スキップを選択したら会話を全部飛ばすか聞かれるだけ。どこにも表示されてないがB長押しで早送りは可能。
ノベルパート中はセーブ&ロードが出来ないし、SRPGパート中も自由なセーブ&ロードは出来ない。中断からの再開は何度でも出来るので、これを活用してリセット&やり直しは出来るが面倒。
その他、装備を買う時に現在装備との比較が出来ない、アイテムのソートが無い、戦闘中にカメラを回転できるけどどうやっても見辛い局面がある、戦闘中のキャラの移動モーションなどはBボタンで早送りできるけど「標準を早送りにする」設定が無いからボタンを毎回押す必要がある、方向スティックだとカーソルの動きが重く操作性が悪いため、方向キーで遊ばないとストレスが溜まるなどなど。
「低予算のゲームはまず快適性が犠牲になる」を地で行くガタガタっぷりだ……。
回避の概念があるのに命中率表示が無いのも気になる。
難易度選択は歯ごたえのある「アドベンチャー」と、物語を楽しむ人向けの「ストーリー」2種類があるが、「ストーリー」にしても敵がちょっと弱くなる程度。SRPGに興味ない原作ファンには厳しい仕様だ。シナリオだけ読めるモード入れて良かったと思う。今からでもアプデで入れてくれ。
クリアまでは15~20時間ほど。
クリア後のやり込み要素はエンドレスで続く虚無ダンジョンや、未クリアのサブクエスト埋めくらいかな。
節々のゲームネタや原作とのリンクはニヤリと出来るし、シナリオはそのまま映画にして欲しいくらい良くて満足。「ゲームオリジナルキャラじゃなくて、原作キャラメインでやりたかったなぁ」と、やる前は思っていた俺もすっかりのめり込んでしまった。
一方で肝心のSRPGパートは低予算を根性でなんとか形にしましたレベルである。立ち絵の種類は少ないし、戦闘演出も地味。よく見るとマップの種類も少ない。
思ったよりは面白かったけど、予想してたチープさは超えてこなかったな……という作りでした。ブシロード先生の次回作にご期待ください!