257番目の元素 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)
『257番目の元素(The 257th Element)』のレビュー行くぜ!俺がプレイしたのはNintendo Switch版ね。
パブリッシャー:REAL KYOTO/REAL co.Ltd
機種:Switch/PC
ジャンル:学園系ビジュアルノベル
発売日:2024/9/5(Switch)2024/2/23(PC)
価格:1200~1800円
一本道の海外産ビジュアルノベルゲームでボイスは英語のみ。シナリオライターなどは日本人が担当しているようだ。タイトルだけだとどういうゲームなのか分かり辛いが、SF要素のある学園日常コメディ作品で、前半は謎解き、後半バトル有り。通してみるとヒロインとの恋愛が軸になっているごった煮……って感じかな!
ゲームとして未完成と感じる部分やUI周りの酷さなど問題点は多い。しかし、メインヒロインのストーリーとしてはそれだけで満足できるくらい良かったぜ!
舞台は近未来。
人類は無からあらゆる有を生み出す256番目の夢の元素「アララギニウム」の発見と生成に成功したが、不慮の事故により消失。そこから数日後、東京中で死者が次々に復活する事件が多発する。彼らは事故以前の72時間以内に死亡していた者たちであり、関連性から「アララギヒューマン」と呼ばれるようになる。
というオープニングで、そこに相槌を入れながら、地の文章でプレイヤーに話しかける形で主人公が登場。人間とアララギヒューマンが共生し、今よりもテクロノジーがちょっと進んだ近未来での日常ドタバタストーリーが展開されるぞ。
シナリオは高校を舞台に同級生たちとのアホなドタバタをしつつ、放送部から依頼された学園三不思議の暗号解読や、ネコ探しの依頼などに挑む構成だ。
登場キャラたちが結構ガチな謎解きに振り回される過程でそれぞれを掘り下げ、主人公が意外な頭の回転を見せて突破口を見つける。その合間にちょっとしんみりさせるようなエピソードを挟んだりと、キャラへの思い入れが深まっていく流れがしっかり出来てる。
特にネコ探しのエピソードが終わった辺りで、主人公周りのキャラがグッと好きになれたね。
個人的にキャラデザがめちゃくちゃ好み。表情が魅力的に描けてるし、私服に種類があるなど服装差分の多さも凝ってる点だ。
女性陣もみんな可愛くて良し。テンプレ暴力女的なキャラ付けだけど、可愛いところも多い神吉寺朱音は結構お気に入り。これは主人公が吉良吉影の同僚みたいな解説をしているシーン。主人公とのアホな掛け合いがテンポ良くて笑える。
しかし本作は何といってもメインヒロインである十鶴藤花の存在感と魅力がぶっちぎり!
主人公とは中学時代に同じ塾に通っており、そこで何があったのか?の過去編を中盤からガッツリ尺を使って展開する。
中学時代の藤花は高校受験のために塾に通ってるのに、動物の消しゴムを使った人形遊びに夢中。たまたま主人公がレアな動物消しゴムを持っていたことから交流が始まり、仲が深まっていくエピソードが微笑ましく展開されていく。
一緒にデートに行くシーンもあるけど私服がダサ過ぎる……!
いやここは幼児性の表現であえてやってると思うけども!
ここまで主人公と仲が良かったのに、現代では少し疎遠になっているし、中学時代とかなり性格が変わっている。過去と現代の視点で「変化」と「その先」を描くテキストが巧みで、すべてを見ているプレイヤー視点だと激しく心を揺さぶられる!
主人公の時宗正和が素直に良い奴だと思えるのが、本作のとても好きなところ。バカだけど頭の回転が速く、ウソが付くのが苦手な優しい奴。それをきっちり表現しているから、十鶴藤花が時宗正和を好きになる納得感があるし、そこに泣かされる。いい話じゃん!
そして十鶴藤花のエピソードが一段落すると、自らを神と称する殺人鬼やホームズのそっくりさん、高まるSF設定などが絡み合い、怒涛の展開になだれ込んでいく!
なんだこのゲーム!?と言いたくなるごった煮っぷりで、最後まで飽きさせなかった。
しかし、未完成品と言わざるを得ない箇所が多数あるゲームでもある。
どのヒロインに電話するか?という3択の選択肢があるんだが、何をやっても1番上の選択肢しか選べない。
「ここで選択したものによって、これからの人生が大きく変わるはずだから、慎重に選んでくれよ?一度選んだな、後戻りはできないぜ?」
なんて思わせぶりに主人公が言うのに……!
主人公が手に入れたアイテムが記録されてACHIEVEMENT RATEが上昇していくんだが、一本道のゲームなのに達成度60%止まり。
https://x.com/daikai6/status/1847692041096220777
これ公式に問い合わせたらどっちも仕様と返答が来たのでさすがにビビった。ウソだろ!?予定してる無料DLCがあるとは言ってるが……。
一応、シナリオとしては完結しており、オチがブツ切りだったり続編に続いたりはしない。
ただ、他のキャラの掘り下げをするルートや、世界観の根幹の話するルートあるよね……?という引っかかりがあって、どうしても「メインヒロインの個別ルートだけ実装されてる」って印象はぬぐえないところだ。
クールな超天才キャラだけど、どこかズレてる破魔門結莉の個別ルートは是非とも見たいところなんだが……。
Nintendo Switch版の話になるがUI周りもひどく、テキストに関する設定が一切できない。テキストサイズが小さめでやや読み辛い。通常画面右下に「SKIP」って書いてあるが、これはボイスをスキップする操作であってテキストのスキップは既読・未読共に無し。オート機能の切り替え操作が分かり辛い。チャプターセレクトなども無し。
セーブファイルが10個なのもこの手のゲームとしては少ないし、オートセーブも無しとなっているぞ。
クリアまでは7~8時間くらい。
時にコメディで、時にドラマチックで、時にハートウォーミングなノベルゲーム。
ケチをつけられる箇所が多いせいで印象が悪くなってるが、1200~1800円のノベルゲームとしてはボリュームやスチルの枚数など含めて十分ではある。「メインヒロインの話めっちゃ良かった!」だけで遊んで良かったと思えたし、脱力するギャグ展開も良い塩梅。色々と勿体ない1本だったぜ。