『198X』のレビュー行くぜ!カプコンのゲームではないぞ!
メーカー :ハチノヨン(Switch) Hi-Bit Studios(PC)
機種:Switch/PC
ジャンル: アーケード / その他
発売日:2020/01/24(Switch)2019/06/11(PC)
価格(税込):980円
舞台は80年代のとある町。
息苦しい生活をしていた1人の少年がゲームセンターと出会い、
見たこと無い新しい世界にのめり込み、成長していく姿を描いた作品だ。
Switch版のローカライズは安心の「ハチノヨン」で、
今のところ日本語版はSwitchだけのようだ。
ゲームとしては鬱屈した主人公の独白をひたすら聞きながら
ドットで描かれた日常と独白を見ていくだけの内容で、
移動パートや選択肢での分岐などは一切無い。
アクション、シューティング、レースといった
アーケードゲーム風のミニゲームが5種類収録されており、
これが主人公の心境に合わせて節々で挿入されるという構成になっているぞ。
PVやスクショの期待感が凄いゲームだったんだが、
実際やってみると割となんとも言えない内容だったな……。
友人はおらず、家庭の問題も抱えた主人公のキッド。
当て所も無くたどり着いた先は工場跡に出来たゲームセンター。
いかがわしい入口、流れてくるタバコの煙、ガラの悪い客たち。
そして立ち並ぶ「家では遊べないスゴいゲーム」の数々。
キッドの瞳は輝き、筐体にコインを投入して夢のような世界へ没頭していく。
日本じゃさすがに80年代でも
こんな怖いゲームセンターは無さそうなのでさすが海外だな……!
主人公が目を輝かせるシーンはワクワクが伝わってきて好きだった。
収録されているゲームはあくまでもシナリオを見せるための演出に近いので、
長さが1面分しかなかったり、唐突に終わったりするが、
ちゃんとゲームとして遊べるようになっているし、グラフィックの凝りっぷりが凄い。
横スクロールのベルトアクションである『Beating Heart』は
『ファイナルファイト』や『ベアナックル』を思わせる内容で、
パンチ攻撃の他、敵を鉄パイプをでぶん殴ったり、
ドラム缶から回復のハンバーガーを回収したりも出来るし、
背景にも小ネタがあったりするぞ。
シューティングゲームの『Out of the Void』は、フォースが無いことを除けば
溜め撃ちで敵をまとめて貫いていく『R-TYPE』まんまな作り。
巨大戦艦から離脱する敵ロボットや細やかな破壊演出などなかなかの燃え展開。
ただ、収録されてるゲームは、
あくまでもシナリオを補強する演出に徹しているのかなと思ったら、
それなりにミニゲームとしてちゃんと遊ばないといけなかったりする。
そうなると単調さやシステムの簡素さが目についてしまうのが辛いところだ。
思ったほどゲームとシナリオが融合していない……!
全体的にエフェクトや動きが綺麗過ぎるのと、そもそも画面がワイドだったりで、
あんまり80年代のアーケードゲームっぽく見えなかったりもするんだよな。
まあ、当時の思い出補正を再現したという強引な解釈でどうにか!
横スクロールの忍者アクションである『Shadowplay』に関しては、
ゲームとしての手触りが完全に「最近のランアクションゲーム」なのが微妙。
やたら種類が多い背景の作り込みや、ボスの動きは見応えあるんだが……。
最後に遊ぶことになる3DのRPGである『Kill Screen』は本当に意味不明で、
ゲームセンターで遊んでるけどどう見てもPCのレトロなRPG。
それでいて敵のドットがウネウネ動く謎のゲーム。
内容もひたすら単調な戦闘で経験値稼ぎしてボス倒すだけだ。
主人公を取り巻く環境をもっとも色濃く反映したゲームにはなっており、
言いたいことは分からなくないんだが、
もうちょっと上手い形には出来なかったのかなこれ。
コンティニューの仕様が、
「ゲームオーバーになったら、Aボタンを連打すれば経験値を引き継いで復活出来る」
というもので、これがノーヒントなので俺は気づかず、
無駄に苦労してしまったよ……。序盤で死ぬたびに最初から何度もやり直してた。
ゲーム部分は簡単で、途中から主人公の独白が被さり、
それが画面とシンクロしていく『The Runaway』が演出としては一番好きだったかな。
こういうのがもっとあれば良かったんだけど。
ドットで描かれたビジュアルシーンの数々や雰囲気は文句なしに素晴らしいものの、
シナリオを語るためにアーケード風のミニゲームを挟む構成が中途半端。
じゃあ肝心のシナリオはというと、
あまりにも短すぎて良し悪しを語れるレベルに達していない。
本当にプロローグだけで終わる分量で何も始まっていないぞ!
続編に続く構成でゲーム自体も短いことを事前に知っていた俺も、
「これで終わり!?」って驚くくらいの短さだぜ!何も分からない!
1~2時間くらいで終わるミニゲーム&ムービータイトル。
グラフィックの凝りっぷりは本当にすごく、
それだけで980円という価格以上の価値は間違いなくあるし、
ハチノヨンがローカライズしただけあって翻訳もフォントもバッチリ。
ただ、コンセプトが上手く行ってるかというと微妙だし、
本当にプロローグ過ぎて評価も難しい1本だ。
雰囲気が好みで気長に続きを待てるのならまあ悪くない……ってとこかな。