Nintendo Switch|ダウンロード購入|タケシとヒロシ
『タケシとヒロシ』のレビュー行くぜ!
メーカー:オインクゲームズ
機種:Switch/iOS
ジャンル:アドベンチャー
発売日:2020/08/26
価格(税込):900円(Switch) 600円(apple arcade)
ボードゲームで有名なオインクゲームズが送るアドベンチャーゲーム。
ゲームクリエイターを目指すタケシと、その弟であるヒロシの物語だ。
タケシは病弱なヒロシにせがまれて自作ゲームを遊ばせることになるが、
ゲームはまだまだ未完成。でもヒロシの悲しい顔は見たくない。
こうなったらモンスターはこっそり自分が操作するしかない!
という内容で、人形を使ったアニメムービーと、
ロールプレイングゲームの二部構成で進んでいくぞ。
ビジュアルとコンセプトに惹かれて買ったが
優しさが詰まった内容で素晴らしかったわ……!
まず目を引くのは人形を使ったムービーの細かさだ。
キャラの仕草や表情の変化が実に豊か。見ていて楽しいしキャラに愛着が湧く。
この表現力だからこそ、
ヒロシの悲しい顔を見ると断れなくなっちゃうタケシに説得力が出るね。
ヒロシの動きと表情が本当に可愛くて微笑ましい。
ボイスは無いが、キャラが喋る時にファミコンのゲームっぽい効果音が挿入される。
これも上手く雰囲気にマッチしている。
ヒロシのためにゲーム作りを進めるタケシだったが、
行き当たりばったりで作っていたので壁にぶつかるようになってくる。
そこに絡んでくるのはおせっかいやきの幼馴染に、
同じくゲームクリエイターを目指していてめちゃくちゃデキる転校生。
同級生との交流が刺激になって話が進んでいく展開が、
コテコテながら良く出来てる。
そんな転校生ヨースケの自作ゲームが『500m ZOMBIE ESCAPE』。
実際にオインクゲームズがスマホでヒットさせて3DS移植もさせた
『1000m Zombie Escape!』がモデルのゲームなので色々とずるい……!
学生でこれ作れるヨースケそりゃ凄いわ!
ちゃんとミニゲームとして遊ぶことも出来るぜ。
ヨースケのゲームで度肝抜かれたヒロシが
「おれは もっと 世界感があるやつが 好きだな……」
とかリアルな負け惜しみ言うところ大好き。
ロールプレイングパートは「ヒロシが次に戦うモンスター」とその順番を、
プレイヤーが選択していくパズル的な作り。
バトルでヒロシのドキドキが高まっていき、
バトル終了でドキドキが「たのしさゲージ」へと変換される。
5回戦った時点でヒロシの「たのしさゲージ」が規定以上ならクリア。
ヒロシが途中でやられるか、ゲージを規定以上に出来なかったらゲームオーバーだ。
ゲームオーバーになっても、
チェックポイントがあるので途中から何度でも再開出来る。
システムは単純だが、簡単すぎてもダメ、難し過ぎてもダメ。
ちゃんとヒロシが楽しめるようにモンスターを出す必要がある。
いきなりオーク2匹を出して勇者ヒロシを真っ二つにしたらダメだぞ!
ヒロシは生かさず殺さず……じっくりとゲームを楽しんでもらわないとな!
モンスターを沢山倒すとその分ゲージも上がるし、
残りHPがギリギリの状態でクリアすればゲージは大幅上昇だ。
各モンスターの攻撃力や能力を見極めながら、
綺麗に戦いが終わるように試行錯誤していくのはパズル的な面白さがある。
ストーリーが進行するとタケシがゲームの開発を進めて、
勇者に「次の攻撃はダメージ3倍」「1回だけ敵の攻撃を避ける」
などの新システムが追加されていくし、モンスターも種類もどんどん増えていく。
倒すと自爆するスライムとか、勇者の動きを一定ターン止めるモンスターとか。
俺がプレイヤーだったらキレそうなモンスターが続々と登場!
安直に出すとヒロシがボコられるだけになるが、
上手く順番を考えれば戦いを盛り上げられるぜ。
そこまで難易度は高くないんだが、
単純なシステムでゲーム製作者気分が味わえるようになっていて、
どんどん複雑になるところも含めて面白かった。
稀に勇者が攻撃をミスすることがあって、計算が狂うところが絶妙。
何もかもが作り手の思い通りにいくとは限らない……!
勇者とモンスターをそれぞれ別のプレイヤーが担当するというのは、
どちらかというとボードゲーム的な発想で、
これはオインクゲームズならではのアイデアだね。
それを上手くストーリーに落とし込んでいるのがお見事。
俺がこのゲームで特に気に入ってるのは、
「ヒロシのために、おれは ゲームになる!」という、
キャッチーかつ作品を体現した決めセリフの存在と、
ゲームを遊び終えたヒロシを少し不安そうな表情で見るタケシ。
この二つの表現だけで、もうこのゲームは勝ち。
クリアまでは1時間ちょっと。
すぐ終わってしまうし後日談的なものが欲しかったなーとは思ったが、
細かいところまでこだわりが感じられて、
導入から登場人物の成長、ラストの演出まで綺麗にまとまっているし、
ストーリーとゲームシステムがガッチリと噛み合っている。
タケシとヒロシの2人が好きになれるストーリーで、
作り手と遊び手の両方の視点から、
「ゲームっていいものだ!」というメッセージをストレートにぶつけてくる、
優しさいっぱいの作品だった。
コンセプトやビジュアルに惹かれた人は是非「ゲーム」になってみてくれ!