Production Exabilities 有翼のフロイライン
『有翼のフロイライン』のレビュー行くぜ!
俺が遊んだのはPS4版ね。
メーカー:クラウディッドレパードエンタテインメント
機種:PS4/Switch/Steam
ジャンル:ハイスピード3Dシューティング
発売日:2021/6/3
価格(税込):3278円(DL版)3828円(パッケージ版)9878円(特装版)
インディーの開発チームであるProduction Exabilitiesが、
5年の月日をかけて開発した完全新作のハイスピード3Dシューティングだ。
戦闘メカを装着した美少女が空を舞い、ロックオンミサイルの雨で敵を粉砕する!
かなり前から注目されていたインディーゲームだし、
俺も完全新作でこのノリは非常にワクワクしたので予約して購入。
しかし実際やってみたら何もかもが厳しい……。
定価3200円とインディーとしてはやや高めの価格設定になっているが、
さあどこから褒めればいいのかと頭を抱える完成度だったよ!
舞台は謎の勢力「ブランカー」によって脅かされている世界。
ブランカーに対抗できるのは、
機械の翼「ヘルトシステム」に適応できた少女「フロイライン」だけ!
主人公である田舎娘のクラーラは、
ひょんなことからフロイラインの適正を見出されて軍へと入隊する。
同僚である堅物のエーリカと衝突しながらエースとして成長していくが、
彼女には過酷な運命が待っていた……!というようなストーリーだ。
戦闘は『エースコンバット』と比較されることが多かったが、
『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』とかの方に近いかなぁ。
戦場をビュンビュン飛び回り、
複数の敵を同時にロックオンしてミサイルやビームを一斉発射!
ガトリングや高火力のライフルで敵を狙い撃ち!
ボタンを押すとその場で回転して回避、長押しで加速して離脱。
攻撃を受けると減るシールドが0になった状態で、
更にダメージを受けると撃墜となるが、
シールドは数秒で回復するので簡単には落ちないなど。
簡単操作かつ爽快感重視のシステムになっているぞ。
システムや挙動だけ見れば、やりたいことは分かる作り。
が、爽快感重視かつハイスピードをウリにしたゲームにも関わらずそこが厳しい。
エフェクトと効果音が弱いせいで、敵に弾が当たったのかどうかよく分からないし、
ダメージを受けた時もどこから撃たれて当たったのか分からない。
「感触が弱い」というのはこの手のゲームでは致命的。
敵が堅くてロックオン武器の威力が弱いのに多重ロックオンが出来ないから、
敵の群れにマルチロックしてロックオン武器乱射!を何回やっても敵が落ちない。
そもそも当たってるかどうかわかりにくい上に、
中盤からザコ敵がダミーを射出してるのがまた辛い。
破壊部位の多い大型戦闘機などは別だが、
基本的には敵に注視するフォーカスを使って、
ライフル系の武器でチマチマ1体ずつ落とした方がずっと早いね。
極めて作業的でスピード感は全然ない……。
単調なステージばかりだし、
棒立ちでたまにビーム撃ってくるロボの周りをグルグル回りながら戦うステージとか。
数少ないボス戦も全然盛り上がらない。
出撃前に武装を変更可能。
武装は主兵装と副兵装とロックオン武器の3つをカスタマイズ可能だが、
全部合わせても10種類という少なさだし、
前述の通り使える武器がライフル一択なので、色々な武器を使う楽しさがまったくない。
敵の登場演出デモなんかも一切無いから、敵のデザインが全然分からない。
豆粒みたいな敵と戦ってると「あまり会敵したことがないタイプよ」
なんてセリフと共に別の豆粒がやってくる。飢饉のようなゲームだ。
主人公もほとんど後ろ姿しか見えないんだよなぁ。
出撃シーンとか、クリア時に正面からの勝利ポーズとか一切無い。
せっかくの美少女×メカなゲームなのに、
気持ちを盛り上げてくれるカッコいい演出が皆無だ。
ガトリング武器を使う時に砲塔が回転するとか、
静止してる時と動いてる時で、
自機のコアの色が変わるとか細かいところは凝ってるんだけど……。
×ボタンで上昇、〇ボタンで下降というクセのある操作(PS4)でキーコンフィグが無く、
上下反転はあるけど左右反転の設定が無いのも人によっては辛い所かな。
シナリオも酷いとしか言いようがない。
すべてCGを使った静止画+主人公2人の独白のみで進むから非常に淡々としているし、
基本的な見せ方がまったく出来てない。
正体不明の敵性勢力の登場により、空は完全に人類の物ではなくなった。
圧倒的な性能と機体数で空を覆い隠した事から、人類共通の敵は―"ブランカー"と命名された。
人類の希望は新しく開発された機体とそれを駆る少女たち―"フロイライン"に託される事になる。
混沌に包まれた空を取り戻すべく、"フロイライン"として高速で展開される空中戦で抗え。
誰もが機械の翼―”ヘルトシステム”を装着する事はできるわけではない。
しかし幸運な事に敵を出し抜くために兵装を替え、臨機応変に対応する猶予は残されている。
という、特殊戦闘部隊フロイラインvs謎の侵略者ブランカーという設定なのに、
「敵フロイライン撃墜」なんてセリフが序盤から説明なく飛び出してくるため、
一体今、何と戦っているのかまったく分からないままゲームクリアまで突き進む。
一兵士である主人公の視点で描いているので、
大局のことは分からない……という作品はたまにあるが、
本作は最低限の説明すらすっ飛ばすので問題外。
登場人物は基本設定を理解してるのに、
プレイヤーには一切教えてくれないからストレス溜まる。
人類vs謎の敵勢力という部分は味付け程度の要素で、
クラーラとエーリカの掘り下げに絞った構成とは言えるんだが、
それにしたって意味不明過ぎるし、
仲良くなる過程とかの重要な部分をすべて爆速ダイジェストですっ飛ばすので、
この2人の交流に関してもまったく描けていない。
その割に、部下と一緒に誕生日パーティの準備をする、
みたいな日常パートがやたら長かったりする。
「3人の部下が増えた」とか「家族のような部隊」とかセリフでは言うものの、
クラーラとエーリカ以外のキャラは顔が一切映らないし、
3人の部下に至っては名前すら出ないので話が頭に入ってこない。
「才能溢れる優しい田舎娘」と、「士官学校を飛び級で卒業した堅物の天才」が
少しずつ打ち解けて成長していき戦場で共に戦う。
かなり雑に料理しても大丈夫な王道の組み合わせで、
そこにのみ絞った構成なのに、まったく食えたもんじゃない仕上がりはある意味凄い。
エンディングでの2人の暗い「構図」だけは結構好きなんだが、
そこに至るまでの流れがガタガタ過ぎて褒められない……!
これはシナリオではなく穴だらけのあらすじを声優さんが音読してるだけだ。
6ステージしかないため、クリアまでは2~3時間ほど。
これも結構な問題点だがあくまでも「問題点の1つ」でしかない……!
「武装した美少女が戦闘メカ相手に大暴れする3Dのアクションシューティング」
という、探すと意外と少ないコンセプトで楽しみだったものの、
ゲーム部分もシナリオも、ひたすらに虚無感が漂う作りで悲しかった。
アップデートを予定してるようだけどどこまで変わるかなぁ。
基本コンセプトだけで3000円払える!って人か、
将来への投資と割り切れる人以外にはオススメ出来ない内容だった。