クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』〜おわらない七日間の旅〜 | ネオス株式会社
「オラなつ」のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:ネオス
機種:Switch
ジャンル:夏休み体験アドベンチャー
発売日:2021/7/15
価格(税込):6580円(通常版)8980円(プレミアムボックス)
懐かしい昭和の田舎風景が残る「アッソー」を冒険する
『クレヨンしんちゃん』のゲーム最新作。
そして『ぼくのなつやすみ』シリーズを手掛けた綾部和の最新作でもあるぞ!
通称「オラなつ」である。
公式、当初は「クレなつ」って略称を推してたけど早々に諦めてたな……!
俺は『クレヨンしんちゃん』はそこそこ好きくらいのレベルで、
原作は昔読んでた、アニメはたまーに見る、映画は全部見た。
『ぼくのなつやすみ』に関しては未プレイという立ち位置ね。
雰囲気は本当に見事で序盤は感動したんだが……。
やり続けていくとかなり粗が見えてくる作りだった!
ひろしの九州出張に合わせて、熊本のアッソーにあるみさえの古い友人宅に、
一週間お世話になることになった野原一家。
ところが熊本駅で怪しげな「あくの博士」から謎の高性能カメラを貰ったところから、
何やらおかしな出来事が起こり始める。
アッソーで見かけるかすかべ防衛隊ソックリな子供たちに、
街を歩き回る古代の恐竜たち。何者かの陰謀なのか怪奇現象なのか。
抜けるような青空と、美しい夕暮れに彩られた夏風景の中、
『オラと博士の夏休み』が始まる!というストーリーだ。
メインストーリーを追いながら、寄り道として様々な「目標」を埋めていく構成だ。
おつかいをこなしたり、魚釣りや虫取りをしたり。
エンディングを見るだけなら簡単だけど、細かいサブイベントや会話が色々用意されてる。
ストーリーが進んだり目標を達成したリ、
新しい虫や魚を捕まえると、このように絵日記が更新されるシステム。
このイラストの雰囲気がまたいいなぁ……。
ちなみに文章はカメラに搭載されたAIが書いているという設定だ。
そういうゲームだが、まず目を見張るのがこのグラフィック!
ノスタルジーに満ちた素晴らしい背景美術の中を、
破綻なく3D化された「野原しんのすけ」が歩き回る空気感が見事。
1枚絵の背景を使ってカメラは固定という、一昔前のADVっぽい作りなんだけど、
だからこそ画の決まりっぷりが気持ちいいんだよね。
クレしんらしさも満載。
ダッシュ移動が「ケツだけ星人」で、専用のボタンが用意されている!
みさえの後ろでけつだけ星人やってるだけで無限に笑える #NintendoSwitch pic.twitter.com/N81dCEmYT5
— ラー油/Vゲームブロガーらあゆちゃん (@daikai6) July 15, 2021
ダッシュ操作がケツだけ星人になってるクレしんゲームは過去にもあったが、
美しい田舎風景の中を爆走できる面白さは本作ならではの強さ。
スピードがやたら速いせいもあり、走ってるだけで笑ってしまう。
まあ、生ケツを出さないのは残念なところだが……!
メニュー画面も「クレしん」的な意匠が散りばめられていてにんまり。
「しんのすけは絶対に正面を向かない」という処理を徹底しているので、
アニメっぽい絵柄をきっちり3Dにしつつ、
動く時に角度を絶妙にズラして正面向かないのがこだわり。
新しい虫を魚を手に入れた時に、
踊りながら流れるように写真撮るモーションも良かったね。
しんのすけはこういう動きする!ってなった。
虫取りも魚釣りも操作は単純だが、
美しいアッソーを巡りながら絵日記と図鑑を埋めていくのはやはり楽しい。
絵日記を新聞社に提出することで、体験したことが地元の壁新聞になるシステムも!
記事の文章が適当な文字列並べただけなのは残念だが……。
記事を書くと新規契約数が増えて報酬が貰えるシステム。
新規契約数94人取ったのに報酬が130円……だと?!
オラ、搾取されているゾ!
アッソーで出会うオリジナルキャラたちもいい味出してて、
CV元吉 有希子による読み聞かせの声が良すぎる青山はたや
お約束の「おねえさん」枠である黒髪美子、
宇宙忍者……じゃなかった、銀河流忍法を使う銀河忍辺りが特に好き。
ミニゲームでジャンケンを軸にした恐竜バトルも遊べる。
色々な恐竜が使えるんだが、カンタムロボも使えるからこれ一択だな!
新聞社を大きくしたり、
カード付チョコビを買うと強化に使えるカードが手に入る仕様となっている。
何回か勝った後に恐竜バトルをやめるとアナザーマサオくんから煽られる。
このおにぎり野郎が……!
と、そんな感じでオーソドックスなシステムと最高の雰囲気で最初は楽しいものの、
遊んでいくと作りの荒さが目に付いてくる。
マップがそこまで広くないし、出来ることも多くない。
「目標」は作業的なものばかりだし、
空腹になるとしんのすけがぶっ倒れて家に戻されるので、
定期的にお菓子を食べないといけないシステムも面倒なだけだ。
まあ、家にワープするために、わざと飲まず食わずで移動して倒れる
死体ごっこ搬送術としての活用は出来るが……。
一枚背景なせいでマップのつながりが分かり辛い。2021年のゲームなんだから、
移動できる部分にマーカー表示を出すくらいは欲しいところ。
恐竜バトルも妙に難易度が高く、クリアには必須ではないものの、
勝たないと入れないエリアがあるのは引っかかった。
ストーリーも色々と物足りない作りで、
登場キャラが多い割に掘り下げが少なく、ナレーションで淡々と進行していく。
色々話しかけてはみたものの会話のパターンは多くないし、
「きれいなおねえさん」とデートするために頑張るしんのすけとか、
お約束のネタは押さえているものの、しんのすけが活躍してる感じが薄い。
安直な聞き間違いギャグに頼り過ぎなのも気になったところ。
あと、後半は大人の俺が遊んでも「どういう構造なんだ……?」
「えっ!これで解決なの!?」って混乱する場面がしばしばあって、
設定を上手くシナリオに落とし込めてない印象だった。
徐々に人が増えていく朝のラジオ体操とか
「すべては、一瞬のできごとである!!!」とかは面白かったけど
全体的にやりたいシーンとセリフだけを優先し過ぎた内容に感じてしまったなぁ。
恐竜に驚いたみんなが固まったまま、
自由行動に移行するイベントは何かのミスを疑ったぞ!
ただ、今回の悪役(って言いたくないんだけども)である
「あくの博士」は結構好きだった。
マッドサイエンティストを自称している、いかにもな悪の天才博士なんだけど、
心に引っかかりを抱えたまま年を取った不器用な大人なのが、
言動ににじみ出ていて味わい深い。
しんのすけの活躍が薄いとは書いたが、あくの博士の物語に関しては、
野原一家との交流あったからこそなのが良かったね。
まあ、ここももうちょっと掘り下げて欲しいところではあったが……。
ひろしとみさえ、あくの博士と全然会話してねぇ!
そこそこ寄り道しても9時間掛からないくらいでクリア可能。
1回クリアすると図鑑などを引きついで新しいプレイを始められる。
これまでにない『クレヨンしんちゃん』のゲームにはなっていて、
作り手のこだわりが感じられる素晴らしい点も多いんだが……。
色んな意味で遊ぶほどに世界の狭さにぶつかる内容だったなぁ。
素材は最高だっただけに勿体なかった!