『戦場のフーガ』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:サイバーコネクトツー
機種:PS4/PS5/Switch/Xbox/PC
ジャンル:ドラマティックシミュレーションRPG
発売日:2021/07/29
価格(税込):4180円(通常版)6380円(DLC付きのDXエディション)
どスゲェキャラゲーや『.hack』シリーズでお馴染みのサイバーコネクトツーが、
初の自社パブリッシングで送るシミュレーションRPGだ。
同社が古くから展開している『リトルテイルブロンクス』という、
ケモキャラだらけの世界観に基づいた作品の1本。
過去に発売された『テイルコンチェルト』や
『solatorobo(ソラトロボ)』と同じ世界観ってわけね。
見てるだけでワクワクする巨大戦車に、小さなケモキャラたちが乗り込み、
家族を助けるために軍隊に挑む!必殺の鬱展開キャノンもあるよ!というゲーム。
キャラの可愛さやイラスト、BGMは文句無いし。
戦闘システムも遊んでいて面白かったんだが、
周回の仕様やシナリオ周りなどで、やや練り込み不足を感じた1本でもあったな
舞台は「イヌヒト」と「ネコヒト」が暮らす浮遊大陸群。
とある小さな村で暮らしていた子供たちだったが、
突如として大国であるベルマン帝国の襲撃を受ける。
大人たちによって脱出した子供たちは不思議な声に導かれ、
近くの山の洞窟で眠る謎の巨大戦車「タラニス」と出会う。
自分たちの村を、そして家族を守るために、
子供たちはタラニスを操り、戦火に身を投じる!
まずこのタラニスのビジュアルがすごい……!
各部位をぐわっしゃぐわっしゃと動かし、
蒸気を吹きながら爆走する姿はそれだけでテンションが上がるぜ!
タラニスは進行ルートを自動で進んでいくので、
こっちがやることは分かれ道でどう進むか選ぶだけ。
「安全な道/普通の道/危険な道」のどれかで、
危険な道ほど敵は強いがアイテムや経験値が手に入りやすくなる。
マップの最後に待ち受けるボスを倒せばクリアで、次の章へ。
ルート分岐でシナリオが変化することは無いし、マップも単純。
基本的には一本道のゲームだね。
戦闘は行動速度の速いキャラから行動するコマンド式。
多彩なパーティメンバーからメインで戦う3人と、
それをサポートする3人の系6人で戦うシステムだ。
タラニスにはマシンガン、グレネード、キャノンの3種類の武装があり、
キャラによって使える武装は異なる。
敵の相性に合わせて武装を使い分ける必要があるし、
キャラによって異なるサポート効果も上手く活用しないと苦戦は必死だ。
また、敵には装甲という概念があり、これを削らないとダメージがあまり与えられない。
装甲を削れるスキルを持ったキャラは重宝するぞ。
メンバーは入れ替えが可能なので臨機応変に対応可能。
一度入れ替えると3ターンは入れ替え不可能になるが、
このゲームで3ターンはあっという間なのでバンバン入れ替えられるのだ。
行動すぐ後に順番入れ替えて、同じキャラに二回行動とかもさせられちゃう。
1回のミスが後々まで響く戦闘バランスになっていて、
戦闘が終わってもHPやSPは回復せず、回復ポイントを通過しないと回復しない。
回復アイテムも店売りが無いため、無駄遣いは出来ない仕様。
また、HPが減っている状態で大ダメージを受けたり、
敵の特殊な攻撃を喰らうとキャラが「怪我」をすることがある。
この状態でもう一度怪我をしてしまうと戦闘不能になり、
次のインターミッションまでは使用不可能となるぞ。
じゃあとにかくシビアで厳しいゲームかというとそうではなく、
前述したキャラの入れ替えを有効に活用すればしっかり対抗できるし、
育成で強力なスキルをガンガン覚えていくのが気持ちいい。
キャノン砲の5連続攻撃に、敵を一掃する機銃掃射、
装甲3枚抜きショットに、敵全体への乱れ打ち攻撃、
ボスにも有効な状態異常攻撃の数々などなど。
キャラ毎に用意された合体必殺技もあり、
これはゲージを溜めれば好きな時に発動出来て強力。
ピンチの時に確率で絶好調になるシステムもある、
一定時間チートみたいな行動が可能になるぞ。
プレイヤーに有利なシステムが多いのが好きなところだね。
とはいえ、強敵はパワーアップスキルで攻撃力上げて8連続攻撃とかやってくるし、
厄介な状態異常攻撃もあるのでやっぱり油断は禁物。
緊張感と爽快感のバランスがかなり絶妙な作りだ。
どのタイミングで守りを固めるか、どのキャラで装甲を削るか、
どのタイミングで一斉攻撃をするか、回復はどうするか……。
悩むのが楽しいぜ!
戦闘で本作最大のウリとなるのが禁忌の武器ソウルキャノン。
ボス戦でピンチの時のみ発動可能で、一撃でどんな敵でも殲滅可能。
ただし、撃つときは子供の命を1人犠牲にしなければならない……!
プレイヤーが選ばないといけないし、選んだ子供は死んで二度と復活しない。
かわいいケモキャラたちが覚悟を決めた最期の言葉と共に命を燃やし、
悲しみを残してボスを消し去る。とんだ鬱展開キャノンだな!
ボス戦だと体力が半分を切っただけでソウルキャノンの使用を促されるし、
「これから1人くらい死にます」みたいな物悲しい主題歌がよく流れるので、
まだ死んでないし死なせる気も無いのでちょっと待ってもらえますか!!!!
って言いたくなる!
俺はケモキャラの鬱展開を見せようとする世界の意志に抗ってやるぞ!
「これから1人くらい死にます」みたいな物悲しい主題歌がこちらです。
良い曲だけどボス戦でこれ流されると1人くらい死にそうなんだよ!
それにしても子ども1人分の覚悟で敵の大軍を消し飛ばせるソウルキャノン。
あまりにも燃費が良すぎる。そりゃ禁忌扱いされるわな……。
存在するだけで社会の倫理観を揺るがすレベルの燃費だぜ。
ステージ開始時や中間ポイント、ボス戦前などで発生するインターミッションでは
行動ポイントの範囲内でキャラ同士の会話、武器の改造、
釣りや遺跡の探索、ステータスを底上げする料理作成、畑の管理などが行える。
次の戦いに備えての育成タイムだ。
インターミッションの度にキャラの配置が変わって、
思い思いの行動をしてるのがめっちゃ可愛い。じっくり見ていたくなる。
DLCの水着コスをONにすると商業作品であんまり見れない空気になる。
キャラ同士の友好度が一定以上になると会話イベントが発生。
10人以上いるキャラのすべての組み合わせに3種類ずつ用意されているのは凝ってるね。
それぞれの性格や関連性を活かした会話が満載だ。
豊富に用意されているイラストも最高。
インターミッションでの行動時や章クリア時、イベント時などなど。
とにかく枚数が多くて質も高くてゴージャス!
様々なイラストレーターによる神イラストが次々に出てくる八百万神ゲーである。
登場キャラだと好きなのはジンかなぁ。
単純にデザインがカッコいいし、ぶっきらぼうだけど熱い所があるのも良い。
ワッパもお気に入り。リーダー気取りで一人称が「あたい」の姉御キャラ。
個別会話だとマジレスされて困ったり、年少相手に慌てたりするのが微笑ましい。
改めて登場キャラ一覧見るとメインキャラが10歳以下の子どもばかり。
こんないたいけな子どもたちを鬱展開キャノンにぶち込もうとする
サイバーコネクトツー絶対許さねぇ……!
『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚2』を早く作れ!(多分いま作ってる)
ただ、シナリオは結構不満点が多い。
「ソウルキャノンで誰が死んでいても成立するシナリオにする必要がある」
という構造のせいか、一言二言喋るだけのシーンが大半だ。
その分を埋めるのがインターミッションの会話ってことなんだろうけど、
こっちも内容は悪くないんだけど数が多い分1つ1つの分量が少ない。
登場キャラが多いから複数人での会話がもっと欲しかった。
重い設定な割にかなりご都合主義な展開や、
設定面でよく分からないところも結構あった。
他のシリーズやれば分かるんだろうか……?
敵キャラも魅力的な連中が揃っているのにほとんど使い捨て。
特にフラム中佐めちゃくちゃ可愛くてカッコよくて無様なのにあの扱いは勿体ない……。
バランス面でも気になるところがある。
一番難易度高いルートを選んだ方が素材や経験値が稼げて安定するし、
ソウルキャノンで1人犠牲にすると戦略の幅が狭まってどんどん不利になる。
ゲームオーバーになっても直前のインターミッションから再開できるので、
結局、無理してでも一番難しい道を進むのが一番楽なバランス。
「ソウルキャノンを使うと後々不利になるのは分かってるけど
ボスに勝てないから使うしかない!」
という葛藤をプレイヤーにさせたいのは分かるが、上手く機能してるとは言い難い。
まあ、あくまでもこれは最適解の話で、
1周目は細かいことを気にせずに、
ほどほどに血涙を流しながらソウルキャノンを使って終わらせて、
2周目からが本番の作りなのかなぁとは思ったが、
前述の通り一本道のゲームで1周が16時間以上かかる。
その上スキップやシナリオセレクト機能も無い。
少し前にアプデで高速モードが実装されたが、
戦車の移動モーションが気持ち早くなる程度なので焼け石に水。
タラニスとキャラの成長も完全に引き継がれるので、
バランスが崩壊して戦闘の大半は完全に作業になってしまう。
2周目以降は戦闘をサクッと進めて、
見てない会話イベントを埋めつつのんびり楽しんでくれってのは分かるんだが、
かなり作業的でしんどいぜ。
繰り返し遊んでると敵の使い回しが多いのも目に付いてくるね。
あと、頑張ってソウルキャノン使わずに進めても、
ちょっとした条件を満たしてないと真エンド見れない仕様は納得いかないぞ!
1周クリアまで16時間ちょっと。真エンド見れなくて2周クリアで27時間。
トロコンまで遊んで32時間掛かった。
良い意味でサイバーコネクトツーの趣味全開で作り込まれた1本。
戦闘システムは面白かったし、ビジュアル面やBGMも文句無し。
真エンディングのスタッフロールなども好きだった。
ただ、ゲーム的に歪な部分も多く、評価は「惜しいゲーム」止まり。
「ソウルキャノン」という、インパクトは大だけど
シナリオ的にもシステム的にもバランス取りが難しい要素を入れた結果か。
マジで惜しい。気に入った部分も多かったので、
今後もこういう新作ゲームは定期的に出してもらいたい!