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鮮やかに締めくくられる、小さなゲーム業界地獄変!『GOODBYE WORLD』レビュー!【Switch/PC】

 

GOODBYE WORLD ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

PS4/PS5 Goodbye World

 

Steam:GOODBYE WORLD

 

『GOODBYE WORLD』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:フライハイワークス

機種:Switch/PS4/PS5/PC

ジャンル:ナラティブアドベンチャー

発売日:2022/11/17(Switch/PC)2023/06/30(PS4/PS5)

価格(税込):1200円


 

絶品のドット絵で表現されたナラティブアドベンチャー。

ゲーム開発の理想と現実に苦しむ2人のクリエイターが主役で、

物語に合わせてパズルゲームパートが挟まる構成になっている。

一本道で選択肢も無いゲームで、

クリアまでは1時間ちょっとのボリュームだ。

 

YO FUJII😇 (@onsen023) / Twitter

 

手掛けたのは個人クリエイターであるYO FUJIIさんで、

会社を辞めても作り続けてついに完成されたのが本作。

発売を迎えた時にTwitterで応援してくれた人たちや、

サポートしてくれたフライハイワークスへの感謝を述べていて、

「もうこれがこのゲームのエンディングで良いんじゃないかな?」

ってくらい温かい気持ちになったぜ……。

 

良い意味で映画1本見終えたような満足感があり、

しかしゲームだからこその構成になっている見事な作品だった。

 

 

主役はプログラマーの蟹井(かにい)とグラフィッカーの熊手(くまで)。

物語は過去のシーンから始まる。

ドット絵のゲームが作りたい専門学校時代の蟹井だったが、

組んだ相手のドットが気に入らず、

「ただイラストを縮小しただけですよね?」などと不機嫌になる。

めんどくせぇ~!

もうちょっと会話続いてたら

絶対「ファミコン想定だからこの色数はおかしい」とか言い出してたぜ。

俺もたまに言うから分かる。

 

そこで出会ったのが才能あふれる熊手(くまで)であり、

専門学校を卒業した後に二人でゲーム制作をすることになる。

 

 

しかし専門学校での運命の出会いは一瞬の輝きで、

作るゲームはあまり売れずに生活も2人の関係もどんどん荒んでいく。

これを生々しい言葉のやりとりと

淡々とした展開でひたすら掘り下げる作りで、

遊んでいて胸が締め付けられる!

 

 

登場人物が遊んでいるという体で物語の合間に挟まるのが、

ミニゲームの『BLOCKS』。パズルアクションで、

光るブロックを壊すとカーソルを動かして好きな場所に再配置出来る。

数に限りがあるブロックで上手く足場を作り、先へ進んでいくのだ。

 

ゲームボーイ風のグラフィックが凄く凝ってるし、

ありそうであんまり無いシステムもなかなか面白い作り。

ただ、急に難しくなったり、

進行に必須のテクが分かり辛かったりとムラのある内容。

3回ゲームオーバーになると次に進むので、

アクションが苦手という人もとりあえず安心だ。

 

 

『BLOCKS』の内容はシナリオ進行とリンクしているので、

先が見えなくてお先真っ暗の時に、

ゲーム機の電源スイッチをオンにして暗闇ステージが始まったりする。

 

俺の経験で言わせてもらうが、

気分が落ち込んでる時にめんどくさいギミックのステージ遊ぶと

マジでうんざりして気持ちが更に落ち込むからやめた方がいいぞ!

 

 

蟹井がパブリッシャーにゲームを持ち込んで

ボロクソ言われるシーンも辛い。

 

「レトロゲームの名作を遊んだ方が良くないですか?」

「無名のクリエイターが作った偽物のレトロゲームなんかよりも」

 

などともっともらしいことを言っているが、

話の流れ的に嫌味言いたいだけじゃねーか!と遊ぶ俺の手にも力が入る。

 

まあ、「レトロ風」という宣伝文句を雑に使っただけの、

ロックマンを遊び直した方がまだマシに見える新作ゲームが

毎週大量にストアに並んでる現実を目の当たりにしてるので、

言葉自体には「そうかな……そうかも……」ってちょっと思ってしまうが……。

 

 

とにかくセリフの質感がいいなぁと思わせるゲームで、

蟹井がずっと遊んでる古いゲームを「微妙」と評して、

「昔は面白いって思ってたけど……ゲームクリエイターとしての視点で見ると……ね」

なんてダルいこと言う気持ちはゲームブロガーである俺も凄く分かる。

 

 

出色なのは電車の中で語り合うシーン。

間の取り方、光の表現、登場人物の演技とセリフ、それに合わせた電車の動き。

これらが一体となり2人の距離感と心の動きを浮かび上がらせる。

HD振動による臨場感も見事だ。ラストシーン以外だとここが一番印象的だなぁ。

 

 

最初に書いたように良くも悪くも映画1本分の短編ADV。

徹底的に蟹井と熊手の2人にフォーカスしたシナリオで、

それ以外の数少ないキャラはステレオタイプなデフォルメになっている。

(冒頭のドットが描けないって文句言われてた子はいい味出してたが)

 

どこにでもあるようなありふれた挫折と絶望。

すれ違いとそれぞれの理想と現実。

それを丹念に掘り下げているからこそ普遍的で胸を打つ。

そして重苦しさにハラハラしながら読み進めた物語は、

「鮮やか」としか言いようがない結末へ辿り着く。

いいゲームだった!

PV見て琴線に触れる物を感じたら是非遊んでもらいたいぜ。