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令和の解像度で描いた「一本道RPGとしてのFF」だ!『FINAL FANTASY XVI』レビュー!【PS5】

 

FINAL FANTASY XVI (ファイナルファンタジー16)| SQUARE ENIX

 

FF16のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:スクウェア・エニックス

機種:PS5

ジャンル:アクションRPG

発売日:2023/06/22

価格(税込):9900円


 

言わずと知れた『ファイナルファンタジー』のナンバリング16作目!

15の時点でかなりアクション寄りだったが、

今回は完全なアクションRPGとして作られているぞ。

シナリオはガッツリ戦記物っぽいダークファンタジー寄りにしつつ、

そこから過去のFFにどんどん回帰していくような流れもある。

徹底した親切設計と迷う事の無いマップ作りも含めて、

「一本道RPGとしてのFF」を突き詰めたような構成になっていた。

 

登場キャラの描き方がしっかりしてるし、

PS5のスペックを使ったド派手な召喚獣合戦はやっぱりスゴい。

このレベルの大作じゃないと出来なさそうな機能、描写も盛り沢山だった。

半面、冗長な部分や歪な部分も目立ち、

楽しめたけど個人的には「名作!」とまではいかなかったな。

 

 

物語は主人公のクライヴによる

「クリスタルをめぐる探求の旅は 今なお 続いているのだ」

という初代オマージュの語りから幕を開ける。

舞台となるのはヴァリスゼアという大陸で、

ここでは魔法による加護を与える巨大なマザークリスタルと、

それを掌握する国家が存在している。

国家間は召喚獣をその身に宿した強大な存在である「ドミナント」を軸に対立しており、

主人公であるロザリア公国の第一王子クライヴもその戦いに巻き込まれていく。

 

 

クライヴの少年時代から始まり、

なんやかんやあって国がボロボロになって大人になって

王族から奴隷に身を堕として復讐に燃える姿とその後が描かれていく。

そのクライヴの旅路が、実はヤバい存在であるマザークリスタルを破壊して

世界を救うことに繋がっていくストーリーだ。

序盤から登場キャラが死にまくるし、

奴隷であるベアラーの扱いがいかに酷いかをめっちゃ丹念に描くしで、

とにかく話が重いぜ……!

 

 

今回はアクションRPGだが、アクション苦手な人でもクリアできるように

「ストーリーフォーカス」「アクションフォーカス」の2モードを用意。

難易度自体は変化しないが、「ストーリーフォーカス」だと

オートで色々やってくれる強力なアクセサリーを持った状態で始まる。

イージーモードなどという屈辱的で選び辛い表記は使っていないぞ!

最近はこういう風潮が強くなってる気がする。

 

 

戦闘は制約なしに使える通常攻撃と魔法攻撃、

強力だが一度使うと一定時間再使用出来ない召喚獣アビリティ、

回避、アイテムなどを軸に立ち回る。

アクションゲームとしてはかなりシンプルな構成で、

回避の判定が強いので連発してるだけで結構避けてくれるし、状態異常の概念も無し。

敵構成はボス1体とのタイマンか、

範囲攻撃で散らせるザコの群れ+ボス1体の組み合わせがほとんど。

 

戦い方は

「攻撃でボスのウィルゲージを削る」

「ゲージが無くなるとダウンする」

「ダウン中にコンボを叩き込んで大ダメージを与える」

が基本となっている。

 

まあつまり

「とにかく回避して殴れ!」

「ボスがダウンしたらとにかく召喚獣パワーを爆発させてコンボをぶち込め!」

ってゲームだね。複雑なシステムは無いので分かりやすい。

 

 

それでつまらないのかというとそうではなく、

回復アイテムの所持制限で緊張感を出し、

召喚獣アビリティを活用した幅広いアクションで、いかに効率良く敵を倒せるか?

という点で面白さを出している。

 

 

クライヴに装備させた召喚獣によって使える能力は変化する。

召喚獣は3つまで装備出来て戦闘中は自由に切り替えが可能。

それぞれ固有能力であるフィート1つ、自由に入れ替えできるアビリティ2つがある。

つまり戦闘中は召喚獣を使った3×3種類の能力が使用できるってわけね。

 

アビリティは一撃が重い攻撃からゲージを削りやすい連打技、

敵を引き寄せる技、遠距離技まで様々で、

組み合わせによって多彩なコンボを繰り出せる。

タイミング良くボタンを押すと威力アップとか、

特定の攻撃で専用ゲージを貯めると放てる大技なんてのもある。

攻撃後の硬直を減らせる小技も色々あるので、突き詰めると結構コンボゲーになるね。

わざわざトレーニングモードが用意されてるのも納得。

 

 

固有能力であるフィートは敵との距離を一瞬で詰めたり、

敵を掴んで引き寄せたり、敵の攻撃をタイミング良くガードするとカウンター出来たりと、

戦闘スタイルに関連したものになっているので、

メインストーリーを進めて新しい召喚獣が手に入ると立ち回りの幅が一気に広がる。

特に後半使える「あの技」は脳汁がヤバ過ぎて別ゲーだぜ……!

 

戦闘で溜まったポイントを使えばアビリティの強化ができ、

最高まで鍛えれば別の召喚獣にセット可能となる。

フェニックスのアビリティをガルーダにつけたりできるのだ。

強化に使えるポイントはいつでもリセットできるのもありがたい。

縦横無尽にバトルフィールドを飛び回りながら、君だけの召喚獣コンボを見つけよう!

ってゲームになってるぞ。

 

 

単純だが色々出来る戦闘に加えて、

令和最高グラフィックで表現された「シリーズお馴染みのモンスターたち」も必見。

クアールカッコ良すぎて震えたわ。

 

 

モルボルのマジで臭そうな感じもハンパじゃない。

まあ、今回は状態異常が無いので

過去作だと喰らうと状態異常全部乗せになった「くさい息」はただのダウン技。

単に「見た目がキモい奴が臭い息を吐くのしんどくて倒れる」ってだけの話になってる。

 

他にも見た目からしてヤバいくらい強そうなのに

メテオで隕石をバンバン降らせてくるベヒーモスとか、

規模がシャレになってないモンスターが多くてワクワクが止まらなかった。

 

 

ゲームとしてはダンジョンも含めて一本道を貫いているので進むだけ。

画面に集中するためにミニマップは一部以外に無い作りだが、

それでも迷わないし、ボタンを押せば進行方向が分かる親切機能付き。

ゲームを進めると各地で多数のサブクエストや、

本筋に関係ない強敵のリスキーモブ討伐といったやり込み要素が出現するので、

そちらで幅を出してあるね。

 

 

シナリオは最初にも書いたが暗い!

奴隷であるベアラーは生まれつき魔法が使える存在で、

判明と同時に国に管理され「喋る家電」くらいの扱いを受ける。

主人公であるクライヴも顔にベアラーの紋章を刻まれているため、

酷い扱いを受け続けるし、サブクエで昨日まで普通に友人だったのに

隠れベアラーだったことが判明したら態度が一変するとか、

これでもかと辛い展開が山盛り。

 

 

そんなベアラーというだけで人が人として扱われない世界だからこそ、

苦しみ虐げられる人々がいる世界だからこそ、

シドが提唱する「誰もが人として死ねる場所をつくりたい」というセリフが響くし、

人が死ぬと埋葬に関するセリフが細かく入るのもそこに繋がっていて印象に残る。

 

 

マザークリスタルを巡って様々な国家、人物が入り乱れ、

確固たる信念を持った登場人物たちがぶつかり合うからドラマが見応えある。

特にクライヴと相対するフーゴ・クプカの存在感と来たら……!

敵キャラとしては一番印象に残ってるね。

 

 

そして「アクティブタイムロア」がすごい。

イベントシーン中にタッチパッドを押すと

現在のシーンに関連した用語集をすぐに開くことが出来るというものだ。

情勢が入り乱れてるゲームなので人名や地名をすぐに確認出来てありがたいんだが、

膨大な時間のイベントシーンに関連して

細かく表示されるキーワードが変化するのに驚き。地味に労力掛かってるぞ。

 

 

加えて、国家情勢やこれまでのシナリオの流れ、

今後のクライヴの目的などを確認できる機能もある。

こちらもゲーム展開に連動して細かく変化しているから、

読み返すと色々発見があったりして面白いね。

 

アクションだけでなく、シナリオ面でもプレイヤーが脱落しないように、

一本道のゲームとしてとにかく親切に作られているぞ。

とはいえ、とにかく過酷な展開の連発。続きは気になるけど遊んでいて疲れる。

ナンバリング最新作なのでゲーム実況やってる人多いけどお通夜になってない?

って心配になってしまう。

俺も重いシーン多すぎるし迂闊なシーンはネタバレになるしで、

なかなかTwitterとかで気軽シェアする気持ちにはなれなかったわ……!

 

 

相棒である狼のトルガルはビックリするくらい強いし健気で可愛いし、

撫でたりエサを上げたりとコミュニケーションも取れるのでシェアしやすい存在。

本作、他にマスコットキャラもいるにはいるけど存在感薄いんだよね。

チョコボは完全に馬扱いでフィールドだと野生のチョコボが普通に襲ってくるし……。

 

 

モーグリは頭のボンボンが「器官」って感じのリアルさでなんか怖い。

そもそも掲示板係で出番があんまり無かったりする。

 

 

総合するとトルガルの次にマスコットキャラと言えるのはバイロンおじさんではないか。

このゲームやった人間でバイロンおじさん嫌いな人いねぇよなぁ!?

バイロンおじさんのアクリルスタンドとか出してくれ。

 

 

遊ぶと美味そうな料理が無限に出て来た『FINAL FANTASY XV』から一転し、

何やらマズそうな食い物が次々に出てくる。

過酷な世界観を反映してると言えるが、これコラボカフェとかやる時に困らない?

メニューが「ベネディクタが一口飲んで吐き捨てた酒をイメージしたカクテル」とか

「息も絶え絶えのベアラーに支給されたパンとワインをイメージしたランチセット」

とかにならない?と心配になったが、

ゲームを進めたら多少は美味そうな食べ物が色々出てきて安心した。

 

SQUARE ENIX CAFE TOKYO

 

まあ、実際に発売記念で行われたコラボカフェは、

各国と召喚獣をモチーフにした無難なメニューだったんだが、

次回があるなら攻めた内容にして欲しいですね!

 

 

辛い旅路が続くが、ゲームを進めると拠点に様々な仲間が集まってきて

雰囲気が明るくなってくるのが感慨深いし、仲間たちそれぞれの物語も味わい深い。

クライヴも会話の端々でふっと表情や口調が柔らかくなるところや、

優しさやお人好しっぷり(これはサブクエの都合もあるが)で好きにさせてくれる。

街の人のセリフがめっちゃ細かく変わるとか、割と気付きにくいところでも凝ってる作り。

 

 

各エピソードの区切りで発生する召喚獣合戦も大迫力。

召喚獣の力を宿したドミナントである主人公とボスが、

それぞれ巨大な召喚獣に変身しての大バトル!

ここはほぼイベント戦闘で固定された能力で戦うことになるが、

それまでの重苦しい空気を吹っ飛ばすような超豪快、超迫力の描写だ。

 

この変身と同時にドラマが切り替わり、

巨大な存在に物語のエネルギーが収束してぶつかり合うのは完全に特撮ヒーロー物のノリ。

というか特撮や少年マンガの燃え演出を詰め込んだようなシーンが多く、

これでもかと盛り上げてくれる構成になっているぞ。

今回プラチナゲームズが関わってるらしいけど、

担当パートがあまりに分かりやすすぎるだろ!

 

イフリートの扱いがこんなに良いFF、

他に無いんじゃないか?ってくらいの活躍っぷりで。

これは「イフリートってこんなにカッコ良かったのか!」ってクソ広告打っても許される。

 

尋常じゃないスケールで目まぐるしい大バトルが行われるんだけど、

大技を使う時にはいつものFFみたいに技名がウインドウ表示されるのも、

ワクワク感を煽ってくれてたまらん。

「やべー!この映像クオリティであの技が来るのかッ!」って大興奮よ!

ここ以外にもシリーズに関連した小ネタが多くてニヤリとできる。

 

 

気になった点としては戦闘の見辛さ。

最新アプデでモーションブラーをオプションで調整できるようになったものの、

全体的に画面が暗い&エフェクトが過剰で普通に目が疲れるレベルだ。

クライヴとボスの猛攻がぶつかり合うと画面が全然見えねぇ!

ファイナルファンタジーが目にしみる!

 

戦闘は敵との駆け引きよりも映像美とコンボを楽しむ作りにはなっているんだが、

モードをアクションフォーカスにしてもかなり難易度が低く、遊んでるとややダレてくる。

2周目からは更なる高難易度などが解禁されるが、

それよりはもうちょっと基本の難易度を上げても良かったと思うなぁ。

 

 

召喚獣合戦も攻撃手段が少ないわりに敵が堅いため、

映像の迫力の割にチマチマした戦いになりがちなのも気になった。

 

節々で入る画面真ん中に押すボタンが表示されるQTEも、

本当に2023年のAAA作品か!?と思う様なチープさで没入感削がれたかな……。

「QTEがあって良かった!」と思えるシーンもいくつかあるので許せる範囲だが。

 

 

大量に発生するサブクエストはキャラと世界観の掘り下げとして面白い。

メインストーリーで気になってた部分や、

主人公の行動に対する解答を示しているものが多く、

やるかやらないかでゲームの印象がガラッと変わってくるレベル。

ただ、内容は旧態依然としたおつかいミッションが中心。

序盤は「ちょっとたるいけど話が面白いから良し!」と楽しめたものの、

移動手段のチョコボが使い辛かったり、拠点内の移動がちょっと面倒だったりもあって、

数が一気に増える後半は普通に面倒だった。

 

 

良くも悪くも序盤と後半でシナリオのノリが変わってくるのも好みが別れる点。

ガチなダークファンタジーで面白いけど、

渋すぎてファイナルファンタジーっぽくないかも?

と思っていたら凄い勢いでファイナルファンタジー濃度が上昇していく!

令和の解像度でお馴染みの展開を描くとこうなる!という勢いを感じた。

 

「ファイナルファンタジーって作品毎に違うノリだから、

単純にファイナルファンタジー濃度とか言えなくない?」

 

と思うかもしれないが、マジでファイナルファンタジ―ですとしか言いようがない。

自分のことをここまでファイナルファンタジーだと主張するのは、

逆にファイナルファンタジーらしくないのでは?

とか色々考えてしまう異様なハイテンションさがあふれ出してくる。

 

個人的にはこれはこれで嫌いではないんだけど。

大量の登場人物と国家間の思惑が入り乱れ、

ジェットコースターのように進むそれまでの展開に比べると

人も国もどんどん退場した後の展開は単純にパワーダウンが否めず……。

それを補うために大量のサブクエストで物語を広げ、

登場人物たちが前へ進む希望を描いており、

一通り遊んでると凄くグッと来るんだが、前述の通りテンポが悪いと来た。

色々惜しいところ。

 

 

サブクエストとリスキーモブ全部クリアするまで遊んで56時間ほど。

歴代シリーズを俯瞰してファンサービスをたっぷり入れながら、

誰でも楽しめる一本道RPGとしての作りを突き詰め、シナリオとシステムの両面で

「ファイナルファンタジーとは何か」を模索しているような内容だった。

節々で見られる

「制作スタッフ、ファイナルファンタジーをキメ過ぎてちょっとおかしくなってない?」

という本作ならではのぶっ飛んだテンションはかなり好きだし、

各種サブクエで描かれる、混沌の中で瞬く光のような人々の営みも印象に残る。

 

ただ、こじんまりとまとまり過ぎて物足りないところもあるし、

後半の構成やバランス面では歪さもある。

俺が直近の『STRANGER OF PARADISE FINAL FANTASY ORIGIN』や

前作の『FINAL FANTASY XV』が好きで、

ナンバリング最新作としてハードル上がってる側面もあるけど、

良くも悪くも「80点」という印象になったな。

PS5ならではの贅沢な大作ゲームとしては満足できたので、

そこを求めてる人ならばオススメしたいぜ!