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「1999年の終末論」に挑むメタADV!『ANGEL WHISPER~あるゲーム作家が遺したサスペンスアドベンチャー』レビュー!【Switch】

 

ANGEL WHISPER~あるゲーム作家が遺したサスペンスアドベンチャー ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

ANGEL WHISPER 〜アドベンチャーゲームの無料ダウンロード

 

『ANGEL WHISPER~あるゲーム作家が遺したサスペンスアドベンチャー』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:マメクジラ

機種:Switch

ジャンル:アドベンチャー

発売日:2023/9/28

価格(税込):1500円


 

1999年に発表されたノベルゲームのフルリメイクで、

グラフィックやシステムの一新、エピローグの追加などが行われている。

オリジナル版はPCやスマホで今もプレイ可能だ。

 

「とあるゲーム作家が残した遺作」

という設定でプレイするメタ要素の強いノベルゲームで、

最後まで遊ぶことでその作家に何があったのかが分かる構成だ。

1998年にとあるゲーム制作会社で起こった事件を軸に物語は進んでいく。

 

ノストラダムスの大予言の話題がピークだった頃の作品で、

恐怖の大王アンゴルモアなどをド真ん中で取り扱っている内容。

今となってはもはや遠いノスタルジーだ……。

 

俺は今回が初プレイ。

さすがに時代を感じる描写も多いが、

今遊んでも普遍的な面白さがある作品だったし、

何より「リメイク」としての作りに唸った。これは尖ってるわ。

 

 

本作は消失したゲームクリエイターの娘である

由島美瀬からの依頼でリメイクされ世に出されたという説明と、

プレイヤーへの警告からゲームがスタート。盛り上げてくれる!

 

 

ゲーム自体はオーソドックスな一本道のノベルゲーム。

あちこち移動しながらゲームを進めることになるが、

迷うようなところは無いしヒント機能もあるぞ。

 

 

オリジナル版は実在する個人サイトやゲームサイトから情報を集め、

それを元に謎解きの答えをプレイヤーが直接入力するという、

現実とゲーム内の出来事が交錯するギミックがあったが、

Nintendo Switch版ではすべてゲーム内にサイトが格納されている。

やや味気ない作りだが止む無し。

 

 

物語の主役は冒頭で死んだと語られるゲームデザイナーである由島博昭本人。

自伝的な内容というわけだ。

仕事が無くてヒマしてた由島にゲーム会社から依頼が舞い込み、

ノストラダムスの予言をモチーフにした

「アンゴルモア」という新作に関わることになる。

しかし、ゲーム開発は既に彩月という天才ゲームクリエイターが

自らのスタジオと進めている。

 

 

こだわり主義の彩月のやり方だとボリュームが短いゲームになってしまうので、

スポンサーからの要望も組んで、

プレイ時間を増やせる部分を担当して欲しいと言われる。

つまり由島が担当するのは本編のボリュームを増やすための水増し部分。

ゲームクリエイター主役の話でこんな世知辛い話があるかよ!

 

2軍として「アンゴルモア」に収録される本編と独立したゲームを作る立場になったが、

集まった他のスタッフも徐々にやる気になって燃えていく。

 

 

「アンゴルモア」本編は破滅的なストーリーになっているため、

もっと希望の持てる、遊んだ人間に夢を与えるような内容にしたい。

本編より面白いものを作ってあいつらを見返してやろう。

ちょっと青臭くピュアな想いを胸に結束していくメンバーの姿がグッと来る。

 

 

開発メンバーだとデニー山村さんが好きだなぁ。

有名なデザイナーなので本来はこんな下請けの仕事なんかしないんだけど、

自分が本当に作りたいものを作れるという理由で引き受けてくれた。

ゲームを進むと分かる内面も含めて濃くて良いキャラしてる。

天才ゲームクリエイター彩月も最後まで遊ぶとかなり好きになれた。

 

 

と、そのままゲーム完成に向けて頑張るお仕事モノが続けば良かったんだが、

そうは問屋が卸さぬアンゴルモア!

 

 

「アンゴルモア」の制作に関わる由島を監視するようなメールが届くようになったり、

不思議な夢を続けて見るようになったりと、

常識では説明がつかない出来事が次々に起こるようになる。

物語はお仕事モノからSFになっていき、

色んな意味で「一体この話はどこへ向かっているんだ!?」

という方向へすっ飛んでいくぞ。

 

この流れがテンポ良く緊迫感を保ったまま進行するので、

一気に最後まで遊んでしまう面白さがあったし、

こんだけぶっ飛んだ展開なのにしっかりまとめて来るのはシナリオの力を感じた。

君はもう、ノストラダムスの大予言から目が離せない!

 

 

気になったのは1998年という舞台設定からすると

違和感の強い背景や服装があるところかな……!

細部まで完璧にしろとは言わないけど、さすがに一目で分かるレベルだと気になる。

 

一部の演出のチープさもどうかと思った。

とある人物が落下するシーンで、

腰から上しかないバストアップの画像がヒョイッと上に飛んだ後、

下にスッと消えていくのギャグだったよ!

 

UIはノベルゲームとしては標準的なレベルではあるんだが、

マップ画面でのカーソル移動がやり辛かったり、

ゲーム内webサイトの操作性が悪かったり、

プレイヤーが答えを入力する場面で一度ミスしないと前の画面に戻れなかったりと、

細かいところでやや引っかかりがあるね。

 

 

クリアまでは5時間ほど。

ゲームとしては非常に時代性が強い。

当時ブームだったノストラダムスの大予言に端を発した終末論が蔓延する中、

今よりもアングラ感の強かったインターネットサイトを実際に回りながら遊ぶ、

ビジュアルも含めて得体の知れない不気味さがあるPCゲーム。

1999年にリアルタイムで遊んでいたら、なるほどこれはマジで凄いゲームだと思う!

当時これをやったらそりゃ話題になるわ。

 

しかしそれを綺麗な画面とゲーム内ですべて完結した作りにリメイクして、

Nintendo Switchで2023年に遊ぶとなると……。

登場キャラの立ちっぷりや怒涛の展開は引き込まれるものの、

「そこそこ面白いゲーム」止まりでしかないのは確かだ。

さすがに今見ると時代を感じる箇所やツッコミ所も多い。

 

だがッ!

そこで終わらずに「2023年に発売されるリメイク」だからこその

仕掛けを盛り込んだことで、

ラストシーンで二重、三重のメタADVとして完成する構成が凄かった。

今の時代に合わせたあの終わり方は沁みたぜ……!

演出周りなどで惜しいところはあるものの、ADV好きな人や、

「ノストラダムスの大予言」を懐かしく感じる人には、是非遊んでもらいたい1本だ。

 

ちなみにノストラダムス関連で実際に1999年に発売されたゲームだと

サクセスのPSソフトである『アンゴルモア99』ってのがあって……。

 

 

内容は宇宙からの侵略者アンゴルモア4人衆と戦うほぼUNOのカードゲームという、

定価1500円のバカゲーでした。これが……現実!