スーパーマリオRPG | Nintendo Switch | 任天堂
リメイク版『スーパーマリオRPG』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:任天堂
機種:Switch
ジャンル:RPG
発売日:2023/11/17
価格(税込):6578円
27年前にスーパーファミコンで発売された……えっ!?27年前!?
27年前にスーパーファミコンで発売された『スーパーマリオRPG』のリメイク作品。任天堂とスクウェアという、当時としては空前絶後の最強タッグで開発された「マリオのRPG」だ!
旅に出るメンバーはお馴染みのマリオ、ピーチ姫、クッパに加えて、本作オリジナルキャラである自称カエルの少年マロと、人形の姿を借りた天空の使者ジーノの5人。
マリオらしいアクションとRPGを融合させた見事なシステムに、クセが強すぎて忘れられないシナリオ、マリオとクッパの共闘という燃え展開、下村陽子氏による渾身のBGMにと見所満載。今もファンの多い名作だ。
今回のリメイク版はドラクエやサガシリーズのリメイクやリマスターに『オプーナ』も有名なアルテピアッツァが開発を担当しているぞ。
大好きなゲームだったので期待して購入したのだが、原作の雰囲気を本当に大事にしてあるし、追加要素も程よい塩梅。当時は気づけなかった数々の魅力にも改めて気づけた。
丁寧に作られた良リメイクだったぜ!
物語はいつものようにクッパにさらわれたピーチ姫を助けるために、マリオが家から飛び出すところからスタート。いきなりクッパ城に乗り込んで決戦だ!
お約束の流れだが、シャンデリアの上で戦うマリオvsクッパの構図は新鮮。センスを感じるところ。
『スーパーマリオワールド』も「またもやピーチがすがたをけした。こいつはきっとクッパのしわざ!」なんて導入から始まったし、90年代の段階で任天堂はこの手のお約束の流れに自覚的だったのが面白い。
クッパを倒してピーチ姫を助けたところで、天から降ってきた巨大な剣がクッパ城を貫き、全員吹き飛ばされてしまう。そこに『SUPER MARIO RPG』のロゴがドン!いつものマリオとは違う、誰も見たことのない大冒険が幕を開けるのだ。
1996年のマリオ好きの子供がこんなものを喰らったら脳がイカれちまうよ!
クォータービュー視点のゲーム構成で、マリオ本編のようにピョンピョン跳ねながら立体的なフィールドを進み、敵にぶつかると戦闘だ。宝箱は空中に浮いており、ジャンプで下から叩くと中身が取れる。
叩くとコインがコイ~ンと飛び出す宝箱!
単に宝箱を調べて開けるより、圧倒的に気持ち良いから地味に上手い仕様。
マリオ的なアクションとRPGを上手く組み合わせた手触りになっていて、ダンジョンもギミックが満載。マリオで見たことの無い景色を、マリオらしい動きで突破していくのがめっちゃ楽しい。
戦闘はオーソドックスなコマンド式になっているが、アクションコマンドが特色。
攻撃が当たる瞬間にボタンをタイミング良く押すとダメージが上がったり、逆に敵の攻撃がこちらに当たる瞬間に押せればダメージを減らせたりするのだ。
今じゃこういうシステムそこまで珍しくないけど当時としては画期的。
マリオの「ジャンプ」系の技はタイミング良くボタンを押すと連続で敵を踏みつけるとか、ボタン連打で「ファイアボール」を連射するとか、ここもマリオらしさを上手く落とし込んであるね。ちょっと触っただけで「RPGだけどマリオじゃん!」となる面白さ。
今回のリメイク版では戦闘システムでの変更・追加点が多い。
アクションコマンドのタイミングが可視化されて分かりやすくなったし、連続で成功するとコンボになってステータスに補正も掛かる。
行動で溜まるゲージが100%になると強力な3人技が発動可能。
戦闘中にマリオ以外の仲間が入れ替え可能になり、パーティが全滅しても控えの仲間がいれば飛び出すようになった。
これによって格段に使いやすくなったのが属性攻撃&弱点サーチが使えるマロ。
オリジナル版だと他に性能が分かりやすいキャラが多く、
「マリオのRPGならピーチ姫とクッパを使いたい」
「ジーノがカッコ良すぎる」
「お前がコオロギせんべいのこと忘れてたせいでゲームが進まなくなった。俺も忘れてたが許せねぇ」
というプレイヤー感情もあって序盤しか使われないことが多かった。しかし今回は入れ替え機能に加えて、戦闘中に敵のステータスを確認する技である「なにかんがえてるの」で相手の弱点も見れるようになった。
これを活用すると敵に大ダメージを与えられるし、クリア後に戦える強化ボスが強敵揃いなので嫌でも意識する。『スーパーマリオRPG』、実は状態異常や属性相性がめちゃくちゃ重要だったのか!と気づかされるのだ。
オリジナルは全然意識しなくてもクリア出来るくらいの難易度だったから、マジで「こんなゲームだったの!?」と驚いたわ。属性相性と状態異常入れて殴るとダメージが全然違う!
そして序盤から「みんなげんきになあれ」という、「低コストで全体をほぼ全回復&状態異常も回復」技を使えるピーチ姫。改めて遊んでも無法過ぎるスペックだった。そりゃこいつを真っ先に誘拐しないとダメだわ……。
追加要素がアッパー調整なので難易度はかなり下がってるんだが、元々難易度が低いゲームだったので個人的には気にならなかった。
色んな仲間が使いやすくなった点と、アクションコマンド可視化で低レベルでも進めやすくなった点など、戦略の幅が広がったと評価したいね。
物足りない貴方にはクリア後のお楽しみであるボスとの再戦。スーパーファミコン版になかったやり込み要素だ。
クリア後のメンバーでも「こいつどうやって倒すんだ!?」と唖然とさせられる強敵揃いで、攻撃パターンを踏まえて状態異常と属性相性、装備構成などをきっちり考えないと勝てない。『スーパーマリオRPG』でこんなひりつくバトルが出来るとは……!
『スーパーマリオRPG』のCMソングに「RPGやりつくした人も!マ・ン・ゾ・クさせます!マリオです!」という歌詞があったが、再戦ボスの難易度は「満足した?ねえ満足した?」って言いながらこっちの顔を石でぶん殴るような調整になっているぞ!
最後に登場する隠しボスもスーパーファミコン版のファンとして感動だった。リメイクならこうでなくちゃ!
RPG部分の面白さに加えてシナリオも凄まじい。
宿敵クッパと協力して新たな敵「カジオー軍団」と戦え!って流れだけど、シナリオの半分くらいはカジオーと関係ない悪人や狂人や犯罪者と戦ってる気がする……!
キノコ王国の付近ってこんなに治安悪かったのかよ!
よく分からない奴といきなり戦うイベントばかりなのに、会話はイカれてて面白いし、どのボスも芸達者で「RPGのボス戦」として完成度が高い構成が常人のセンスじゃない。あの時代の任天堂とスクウェアにしか出せないワザマエを感じる。
本作オリジナルキャラであるジーノも魅力的。
スターロードを修復するためにやってきた天空の使者が子供の人形に宿った存在で、「ピノキオ」っぽいキャラだが戦闘ではビームとカッターで大暴れ!ちょっと気取ったセリフ回しも含めて存在感ある。
初登場時の「ボクは天空の使者!そして星を追う者!」ってセリフがカッケぇ~!
どう見てもカエルには見えない自称カエルの少年マロも、グラフィック表現が上がったことでグッと可愛くなってるし、戦闘のくだりで説明したように仲間キャラとしても使いやすくなっている。今回のリメイクで一番恩恵を受けているかも。
選択肢以外で喋らずボディランゲージで物語る「マリオ」の雄弁さも必見。
子供に煽られてピクピクしたり、いきなりボスに殴り込みをかけようとして止められたり、面白ヒゲオヤジとしてチャップリンばりの名演技を連発だ。
その場でピョン!とジャンプするだけで身分証明になる天丼ネタが特にずるい。
確かに彼はミスタージャンプマンだが……。
今となってはクッパが長々と喋るのは珍しくないけど、これほど長台詞の作品は当時では珍しかった。ピーチ姫LOVEっぷりや、マリオのことを意識し過ぎて変なことになってる姿が最高。現在のクッパの性格付けの原点と言えるし、一人称「ワガハイ」が確立されたのも本作からだったかな。
いや……しかし今の基準で見てもあざとすぎないかこのクッパ!?
とてもクッパ.Jrに見せられないムーブが満載で、クッパが喋るシーン全部面白い。面白ヒゲオヤジと面白カメおじさんの珍道中になってる。でも軍団の長としての威厳を見せる姿もちゃんとあり、そこはさすがのクッパ大王。
今のマリオシリーズとは少し違うノリも忠実にリメイクされているため、いかにもファンタジーなデザインをしたピーチ城などは今見ると新鮮。
現在のステンドグラスが美しいピーチ城は『スーパーマリオ64』からなので、デザインが全然違う。「ウルトラマンタロウに出てきた光の国」を今見ているような感覚だ。
ファイアを連打し続けると最後に一発チョロッと出るのが再現されてるの細かい #スーパーマリオRPG #SuperMarioRPG #NintendoSwitch pic.twitter.com/7pbS7SPJtG
— ゲームブロガー双葉ラー油 (@daikai6) November 19, 2023
原作再現の力の入れっぷりはすさまじく、ファイアボールを連打すると最後にチョロっと1発出るとか、クッパの武器をぶんなげグローブにするとマリオを投げて攻撃するけど、マリオが倒れてる時はマリオ人形を取り出して投げるとかも再現。
サーチ技の「なにかんがえてるの」で見れる敵の思考に詰め込まれたパロネタもそのまま。
当時のスタッフが100%悪ノリでぶち込んだ下ネタも、表現を変えて頑張って残そうとする男気も評価したい。これどう変えるか議論する様子が見たいねぇ!
その上でボスの炎魔法である「コロナ」が「フレア」に差し変わってるのは「うむ……」という感じではあるが。
ブッキータワー入口の魔導アーマーと基盤も完全再現!改めて遊ぶと記憶よりFFネタが多いぞこのゲーム。『ドンキーコング』から『スーパーマリオワールド』まで網羅した歴代マリオネタも豊富でサービス満点だ。任天堂×スクウェアになってる!
戦闘のボタン入力方式やBGMをオリジナルとリメイクで切り替え可能という配慮も気が効いてる。
歴史的名曲揃いだったBGMのアレンジは、原作を担当した下村陽子本人が手掛けているだけあり、スッと入ってくる。俺は「森のキノコにご用心」も好きだけど「そしてわたしの名はブッキー」の方がお気に入り。今回のアレンジあまりにカッコ良くて痺れた。
その他、マップを開いてのファストトラベルに小まめなオートセーブ、持ちきれないアイテムが自動で送られるアイテムボックスなど。リメイクで遊びやすくなった部分が多数だ。いい時代になりましたね。
説明不足なアクセサリー効果がそのままなのは気になったが……。
今回追加されたモンスター図鑑も秀逸。
一度出会ったモンスターが記録されていくが、新規の解説文がメタっぽいものやパロネタ、世界観を掘り下げる一文など様々で、面白いし原作の雰囲気を壊すことない構成だ。ちゃんとオリジナルのスタッフが関わってるそうでなるほどなぁ。
「なにかんがえてるの」で思考を読むとそのテキストも記録されるので、新たなやり込み要素にもなってる。
未調査のモンスターリストを3カエルコインで記入する救済措置もあり、1回しか戦えない敵を見逃しても安心。原作では見れなかったマロ加入前のデータも見れるようになったぞ。行き届いている!
当時のRPGとしても短めだった作品を忠実にリメイクしているため、クリアまで10時間前後。追加ボス倒すまでやっても15時間くらいかな。
プレイ時間は短いものの、一捻りしたテキストに膨大な小ネタ、個性豊かなモンスターにギミックの詰まったダンジョンにと「絶対にプレイヤーを退屈させない」意思をビシバシ感じる濃密さだ。
スーパーファミコン時代の面白いRPGの、面白い要素だけをギュギュッと詰め込んだ空気感で、ラストダンジョン突入時の「スーファミ時代のスクウェアのRPGこうだったよな……!」ってワクワク感が懐かしくて泣きそうになった。
グラフィックを一新したことでより魅力的になったキャラの動きや、さりげないムービーやボス登場演出の挟み方も上手い。戦闘の調整も含めて、オリジナルの魅力をより輝かせるようなリメイクになっているのが素晴らしいね。
「マリオをRPGにするとこうなるのか!」
「マリオをRPGにするとこうなっちゃうの!?」
が絶妙な配合でブレンドされた時代を超えた名作であり、時代を超えたとんでもない魔球。
カメラを動かせないクォータービュー視点なので、ジャンプの判定が分かり辛い点などはやはり古さを感じるけど、改めて遊んでもめちゃくちゃ楽しかった。
オリジナルをやったことない人も、やりつくした人も、リメイクでマリオと旅に出よう!