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【レビュー】貴方はきっと、運命を変えるのが怖くなる。『The Cosmic Wheel Sisterhood』【PC/Switch】

 

The Cosmic Wheel Sisterhood on Steam

 

The Cosmic Wheel Sisterhood ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

『The Cosmic Wheel Sisterhood』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:Devolver Digital

機種:Switch

ジャンル:アドベンチャーゲーム

発売日:2023/8/17

価格(税込):2000


 

小惑星に流刑された魔女となり、やってくる他の魔女たちを占いで導いていくアドベンチャーゲームだ。占いはプレイヤー自ら作り出したタロットカードで行い、結果によって彼女たちの運命は変化していく。

 

「魔女」と言っても劇中では人間を超えた上位存在として描かれており、太陽系内を旅する様子が語られたりと、SFも交えた内容になっているぞ。

 

ゲーム自体は選択肢でイベントが分岐するオーソドックスな作りだが、その見せ方と人物描写、スケール感の巧みさでプレイヤーの心を揺さぶってくる。選択肢を選ぶ面白さと恐ろしさが存分に味わえる内容だった。

 

 

「本作は運命にまつわる物語です。そのため進行状況は自動で保存され、データは常に上書きされていきます。1つのプレイを複数のスロットに保存し分けて様々な選択肢を試す、といったことはできません。」

 

初手でこういう注意書きを出してくるADVは面白いのが多い。『ライフイズストレンジ』とかね。

 

 

主人公の魔女フォルトゥーナはコヴン(魔女の集団)の崩壊を予言し、皆を混乱させた罪で小惑星に1000年流刑の刑に処している。ベッドとか本とあってそこそこ快適なものの、さすがに200年で耐えられなくなり、禁呪を用いて怪物ベヒモスと契約。

 

エイブラマーと名乗ったベヒモスの力を借り、自分だけのタロットカードを作成する。それを使って行う彼女の占いは100発100中。小惑星にやってくる懐かしい友人、未知の魔女たちを占うことで、宇宙全体に影響を与えていく……というストーリーになっている。

 

 

タロットカードは本当にプレイヤー自身が作るシステム。

素材となる背景、アルカナ、シンボルを組み合わせ、エネルギーコストを消費することで完成する。どれもゲーム進行で増えていくので、作れる種類がどんどん増えていくぞ。

 

 

カード作成に使える素材は現代的なもの、宇宙飛行士などSF的なもの、呪術的なもの、やたら俗っぽいものまで様々だ。なんだよSMの女帝って……。占いでこんなカード出たらなんか気まずいじゃん!

 


そんな素材たちを自由に並べて自分だけのカードを作っていく。

配置は自由自在で、素材のコピー&ペーストにレイヤーの調整、拡大縮小なども出来るので色々いじれる。ここはSwitchよりPCのマウス操作の方が遊びやすそうだ。

 

 

出来た!

うーん、なんか騎士ガンダムの敵キャラみたいなカードになったな……。

 

 

星を渡る力を持つ魔女たちでも、コミュニティ内でのいざこざや仕事、友情、恋愛、趣味などで悩んでおり、まだまだ人の理から抜け出せない発展途上の生物だなと思うが、それに対して占いでアドバイス。

 

出来上がったタロットカードをシャッフルして引き、相手の相談に対して出す。タロットカードが象徴するものに関連した選択肢が表示されるので、そこから更に一つを選んで決定する。それによって会話やその後の展開が変化するのだ。

 

占いはあなたは母親になる、友情が破滅する、悲願を果たせず死ぬ、宇宙規模の戦争や文明に影響を与えるなどなど。ダイナミックな結果が次々に飛び出すし、ランダム性があるのでこのノリで出る選択肢すべてが悪いこともある。

 

 

ざっくり言ってしまうと

 

「家に訪ねて来るキャラと会話する」

「会話中の選択肢で相手のその後が変化する」

「選べる選択肢はランダムで選ばれるカードによって変化する」

 

これを繰り返すゲーム。

しかし、自分の手で作ったタロットカードで占いする構成なので、ただのランダムではなく「自分が選んだ」という納得感があり、選択の重さに手に汗握る。

 

 

アクは強いが人間味たっぷりに描かれる魔女たちは非常に魅力的。

タロットカード作りのチュートリアルが終わるまでじれったく感じるが、一つの小惑星という小さな舞台で語られるスケールの大きい物語と、関連して明らかになるフォルトゥーナの過去も見せ方が上手く、話が進むと一気に止め時が見つからなくなる。

 

最初はぶっ飛んだ選択肢の連発だけで楽しく遊べるが、占いが必ず的中するため、段々と悩む場面が多くなってくるゲームだ。悪い結果が出るかもしれないから、占いをするのが怖いと思えるほどに。自分自身を占うのが恐ろしいと思うほどに。

 

まあ、破滅的な選択肢を選びまくるのもそれはそれで面白いけどね。

俺のターン!占いによるとお前の恋人はお前のことを愛していない!ターンエンド!

 

 

細かい分岐がハチャメチャに多いゲームなのに翻訳も非常に丁寧。哲学的な会話の数々を噛みしめるように進めたくなる。

 

 

魅力的な登場キャラ揃いだが、個人的にはフォルトゥーナと契約したエイブラマーが一番好き。強大な力を持った怪物で見た目もボスキャラみたいだが、割とストレートに感情を伝えるタイプでユーモアもある。どこか相棒感のあるやり取りが気に入ったぜ。お前と会えて良かった。

 

 

ちなみにゲーム内にこういう注意書きがある。

そこまでドギツイ描写があるわけではないんだが、あけっぴろげに性生活の話をするキャラとかは出てくるので、誰かと遊んだり、ゲーム実況したりする時は気まずくならないように注意してくれよ!

 

他に気になった点だと、クリア後にやり直す時にタロットカード作成がやや面倒なくらいかな。

 

 

クリアまでは5時間掛からないくらい。

軽く遊び始めたら一気に最後まで遊んでしまった。人間関係の複雑さが乗る後半の展開は悩まされっぱなしで特に印象的。どこか物悲しく、それでいて雄大なBGMの数々も必聴。

「登場キャラクターの運命を翻弄する面白さ」と「プレイヤー自身が運命に翻弄される面白さ」が存分に味わえる良いゲームだったぜ!