『春待ちトロイダル』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:ケムコ/さめさめサメーション
機種:PS5/PS4/Switch/XBOX/PC
ジャンル:ループ型選択形式アドベンチャーゲーム
発売日:2023/8/3(PC)2023/8/3(PS5/PS4/Switch/XBOX)
価格:800~1430円
さめさめサメーションが手掛けるアドベンチャーゲームだ。
とある離島の高校に「卒業まであと10日」のタイミングで放り込まれた主人公が、ループしながら凄惨な事件の回避に挑む!カードバトル形式で生徒たちと対話し、物語の真相に迫るゲームになっているぞ。
家庭用版はケムコから登場しており、データを引き継いで完全に最初からやり直す「はじめから+」と設定資料が追加されている。ゲーム内容は一緒。
ゲームバランスに甘いところはあるものの、「自分の手でループから抜け出す」という感覚がしっかりした良作だったぜ。
「プレイヤー=主人公(名前選択可能)」は28歳のサラリーマン。
謎のアクマの力により「卒業まで10日のタイミングでやってきた転校生」として離島の高校にぶち込まれる。僅か10日という期間で生徒たちと交流を深め、とある悲劇を回避して無事卒業せよ!というストーリーだ。
「俺にコミュニケーション能力が無かったら即死だった」から始まるループ劇である。
ゲームは育成シミュレーション風の構成で、対話を選択するとクラスメイトと会話。それ以外だとステータスなどが上昇。何度か行動するとその日が終わって次の日へ進む。卒業式の日にたどり着いてゲームクリア条件を満たしていなかったら初日に戻ってやり直しだ。
12人+αのクラスメイトと交流を深めながら10日を過ごしていく。カードゲーム方式の対話で「関係性ポイント」を上げると色々なイベントが発生。メインストーリー進行に関連するイベントを発生させられれば、シナリオが次の段階に進むのだ。
対話は数字の描かれたカードでデッキを編成して戦う形式。そこの高校生!俺と対話バトルで勝負だッ!
と言ってもルールは単純で、数字の大きいカードを出せば勝ち。相手より小さければ負け。これを繰り返し、総合成績で相手を上回れば勝利となる。
相手の手札はすべて開示されており、テンションが高い時は数字の大きいカードを出すなど、キャラ毎にクセがある。そういう時にあえて弱いカードを出して手札を調整するなどが駆け引きだ。
勝った時は自分のカードと相手のカードの合計ポイントが、そのまま上昇する関係性ポイントになる。大きく勝てば大きく関係性を深められるってわけだ。同じ色のカードで勝つとポイント倍なのも重要!
戦う前に相手のカードを確認できるので下準備も大事だ。何も考えずに対話バトルを始めたら、相手の方が強いカードばかりだったりなんてことも。その場合、会話が一切盛り上がらないお通夜に突入して体力だけ消耗する……!
バトルで勝つと新しいトークカードが手に入るし、バトルで使えるアイテム的な「対話スキル」と、手に入れればずっと効果を発揮するパッシブスキル的な「ループアビリティ」もある。ステータスを上げればカードの強化なども可能だ。
周回プレイでポイントを貯めることで、初期トークカードの数字底上げや、対話スキルとループアビリティの強化と拡張も可能。
10日を終えて新しいループが始まる度に関係性ポイント、手に入れた対話スキルとループアビリティはリセットされる。最初からやり直しになるが、強化は引き継がれるのでどんどん強くなって楽に勝てるようになる。
ループは無駄じゃない。繰り返しプレイの圧倒的なカードパワーで相手を黙らせろ!
いや、対話で関係性を深めるゲームだから黙らせちゃダメなんだけども!
バトルが強くなると1回の対話バトルで得られる関係性ポイントも多くなるので、キャラのイベントもサクサク進められるようになるぞ。極まるとちょっと会話しただけで一気に関係が深まっていく。転校したばかりとか関係ねぇ。ループによって得た圧倒的トーク力で関係を深めまくりだ。
卒業10日前の離島の高校にとんでもないモンスターが放たれた……。人間関係壊れちゃう!
そういう育成+カードバトルなゲームだが、ドットで表現された12人+αの登場人物たちがとにかく魅力的だ。何度もループを繰り返して会話でキャラを深堀していくのが楽しい。
女性陣はみんな可愛いし、男性陣も濃い奴ら揃い。
みんなバチバチにキャラが立ってるから最初の顔合わせの段階で「いいね!」ってなるし、交流を深めることでそれぞれの人間関係や、意外と闇が深い家庭環境が明らかになったりで引き込まれる。
選択肢で変化するゆるい会話イベントが適度に挟まれているため、ループしながら「今回はこっちを選ぼう」と遊べるのも上手い作り。
犬が好きか猫が好きか聞かれるイベントで、今回は空気読まずハムスターを選ぼう!って遊んだら意外な流れになったりね。
細かい会話差分の積み重ねで人物を魅せるゲームで、対話バトル中の会話バリエーションも豊富。
これは何故か「好きな魚」を聞く主人公と、それにクラゲと答えるふわ子。
会話とイベントのバリエーションが豊富だから10日を繰り返しても飽きないし、1ループが短いこともあって試行錯誤がしやすい。特定の日に特定の場所に行くとか、関係性マックス時に本筋に関係ない個別イベントがあるとか。試行錯誤しがいがあるのだ。無為なループすら見所はあるし糧になる。
クラスメイトと楽しく会話して、コンビニで見慣れない食べ物を買って、夜のファミレスで偶然会った友人とそのままメシ食ったりしてる主人公、28歳のサラリーマン時代より充実してそう。
少々気になった点としてはエンディングへの導線。
「〇〇が怪しいから関係性を深めてみよう」などのヒントを追うことで真相に近づく構成だが、ヒントが分かりやすいので追ってると結構あっさり終わっちゃう。
色んなキャラとの関係性を深めるのが面白いゲームで、シナリオもそういう構成になっているだけに、もうちょっと迷わせて欲しかったなあ。本筋を追うだけだと交流をほぼしないまま終わるキャラもいるので猶更だ。
分かりにくいと難易度が一気に上がっちゃうシステムだから難しいとこではあるが。
カードバトルパートは短くまとまっていて、安定して勝てるようになると面白くなってくる。ただ、パワーこそ正義なバランスなので、結構早い段階で作業的にもなっちゃう。
まあ、サクサク周回してキャラの掘り下げ楽しむゲームだから、このくらい軽くても良いかも。
一通り遊んでも7時間掛からないくらいかな?
ループを繰り返して真相に近づく度に新たな謎が立ち上がり、登場キャラたちの意外な一面が顔を出す。ループ作品の盛り上がり所を押さえたシナリオと、「次はこれを試してみよう」が自然と思いつくシステムが上手く嚙み合ってる。
BGMも良いし、効果音とゲージの動きが心地良いUIなど、細かい部分まで丁寧だ。
真相にたどり着いた後でも周回プレイでダラダラ遊べるのが最高!俺たちの青春は終わらねぇんだ!
手軽に遊べる青春ループ作品として良作でした。オススメ!