夕暮れの楽園と赤く染まる天使たち | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)
『夕暮れの楽園と赤く染まる天使たち』のレビュー行くぜ!俺がプレイしたのはNintendo Switch版ね。
パブリッシャー:Henteko Doujin/Sanuk Inc.
機種:Switch/PC
ジャンル:シューティング
発売日:2024/1/12(PC)2024/11/7(Switch)
価格:1480円
尖りまくった世界観とハクスラ要素、育成要素を搭載した2D縦シューティングだ。
STGの新回答『骨硬派』。
それはゲームの贅肉を極限まで取り払ったとき、最後に残された真髄。
という思想を掲げてNintendo Switchに殴り込みを掛けてきた作品。
開発は同人サークルのあきら小屋。独自エンジンを用いて20年以上シューティングを作り続けている老舗で、少女と金属と肉片と骨と内臓がぶつかり合うような作風が中心となっている。
代表作はエロティック&グロテスクな『夜光蛾』シリーズ。百合がキスして敵をぶっ飛ばす前張り系シューティング『虚無の乙女』なども強烈だ!個人的には初音ミクが主役の『みっくすまるちぷらい』が印象的。ここの作品で最初に触れたのこれなのでね。
キモカッコ良すぎるビジュアルが強烈な1本だが、それだけで終わらずシューティングとして隅々まで行き届いた配慮がされており、爽快感とハクスラ要素による中毒性も格別。
空前絶後の個性と優しさを兼ね備えた1本で、2024年のシューティングを語る上で外せない作品になっているぞ!
- 西暦23億年!壮大なスケールで送る天使たちの物語
- 所要時間20分!?あまりに濃厚すぎるチュートリアル
- 近づくほどに有利!デカい攻撃にはカウンター!攻めが爽快なシューティング
- 遊べば遊ぶほどに強くなる!ハクスラ要素有りで膨大なステージを攻略
- 細かい配慮が行き届いたオプション
- 総評:しゃぶるほどに味が出る!楽園で戦いに明け暮れる骨硬派シューティング
西暦23億年!壮大なスケールで送る天使たちの物語
舞台となるのは西暦23億年の地球。
完璧な存在を目指した人類が性別は感覚や知能を捨てた「天使」となっており、共食いと分裂を繰り返すだけの存在になっていた。しかし、太陽の寿命と共に天使たちは少しずつ自我を取り戻し、消したはずの「苦痛」や「死への恐怖」が再び彼らの脳内を駆け巡る。
複数の勢力に分かれて争い始めた天使たちの行く末を、俯瞰して追うストーリーになっている。ビジュアルの強さに負けてない凄まじい世界観!ゲーム進行に合わせてテキストで語られる天使たちの歴史は読み返すことが可能で、その数は177ページ。途方もないスケールで語られるSF作品だ。言い回しもイカしてる。
何が逆転確率7800万分の1(ライザンバーII)だ!こっちは西暦23億年だぜ!
所要時間20分!?あまりに濃厚すぎるチュートリアル
めちゃくちゃ怖いメインメニューのトップに鎮座するチュートリアルが本作最初の見所。
ゲームの遊び方を学べるが「約20分かかります。」という文章の圧が強い。1周が短いシューティングならエンディング見れてるぞ!
このチュートリアル、なんと本作ではなく「2Dシューティング」そのものの基本から教えてくれる構成だ。移動やショットに始まり、切り返しやちょん避け、奇数弾と偶数弾への対応、接近すると敵へのダメージが増える仕組みなど多岐に渡る。本当にシューティングの基礎中の基礎から学べる素晴らしい内容だ。
解説するテキストも妙にゆるく、チュートリアルの指示に成功すると「すごい」「あまりにもすごすぎる」などの文字が派手に飛び交う!なんだこのテンション!?とにかく大げさな言い回しで褒めてくれるのが楽しい。
システムメッセージで作者さんによるシューティングの考察に哲学、アーケードとコンシューマの作風の違いなどの私見、メタネタなどがちょいちょい入るのがまた面白い。唐突に「シューティング論理学 技の章」なるものを提唱したりもする。
配信中の体験版にもこのチュートリアルは入っているので、ここだけでも触ってもらいたい!
近づくほどに有利!デカい攻撃にはカウンター!攻めが爽快なシューティング
何やらただ事では無いゲーム画面だがシステムは分かりやすい。
通常ショット、敵弾を消せるチャージ攻撃、ボムの3つを使って敵を倒す。敵は経験値アイテムと回復アイテムを落とし、経験値を貯めるとレベルアップして自機が強化される。
アイテムは敵に接近するほど量が増えるので、敵に近づくほど回復もパワーアップもしやすいシステムだ。
敵が強力な攻撃を撃つ前には必ず予兆を出すため、それに合わせて弾消し出来るチャージ重攻撃で相殺するのが基本となるぞ。
敵に近づいて撃てば撃つほどこっちが有利になる!
敵のデカい攻撃にはこっちのデカい攻撃をぶつける!
というギリギリの殴り合いと爽快感が格別なゲーム。敵の攻撃は激しいがシステムを理解し、チュートリアルで学んだことを忘れなければ突破口は開ける。被弾しても回復が容易なので立て直しもしやすい。
経験値効率の高いドクロアイテムを逃さず取り続けると進化して、ビカビカ輝くデカい全身ドクロになるなど。どこを切り取ってもテンションが高いゲーム。
ちなみにドクロの経験値がデカいのは、内部に【MISO】と呼ばれる良質な神経節が詰まっているからだ。なるほど……なるほど……?
BGMも退廃的なゆったりした曲と、ギターバリバリな激しい曲による緩急が熱い。後者が流れてる時にハチャメチャなビームやボムで敵を薙ぎ払ってると、停滞した天使の世界に苦痛が駆け巡ってる実感が湧くぜ~~ッ!アイテムのジャラジャラ感や効果音、爆発の小気味良さも実に分かっていて、遊んでいてマジで気持ち良い!
遊べば遊ぶほどに強くなる!ハクスラ要素有りで膨大なステージを攻略
モードに関してはまず「オリジナル」か「アーケード」から自機の仕様を選択。
「オリジナル」は溜まった経験値で自機のステータスを強化できるし、敵が落とした武器を集めて付け替えが可能。「アーケード」は育成要素が無いが、繰り返し遊ぶことで強力な新機体がアンロックされていく。
どっちにしろ「遊べば遊ぶほど強くなる」ってわけだ。
自機の仕様を選んだら、全5ステージの様々なコースに挑むストーリーか、枝分かれした数十ステージを攻略するクロニクルにチャレンジだ。
膨大なステージを有する「クロニクル」の攻略が本作のメイン。一度到達したステージから再開できるので、少しずつ攻略していくことになる。
「オリジナル」で遊んでる時の武器収集が果てしない。
武装は通常ショット、重攻撃、ボムのすべてを取り換え可能で、爆風に火炎放射、極太レーザーに貫通ショット、敵弾を弾く泡に大爆発、貫通と拡散ショットの合わせ技などなど。非常に多彩な顔触れ。
遊んでると強い武装が分かってくるが、付属するステータス補正値はランダムだ。
「武装としては強いけど補正値が弱い」「武装としては弱いけど補正値が高い」などの狭間で揺れながらの武装収集。進めば進むほどレベルの高い武装がジャンジャン落ちる。多彩な武装を試し撃ちをしながら無数のルートを埋めていく。この流れが中毒性高くて何度でも遊んじゃう。強くて補正値も高い武器が出るとテンション上がるぜ!
黄色いマークのルートに進んでボスを倒すと一旦エンディングとなり、そこのボスは2ランク上の武装を落とすバランスも上手い。
「敵が強くなってきたからここで一区切りにするか」と一息つけるし、稼ぐ時の目印としても分かりやすいね。
細かい配慮が行き届いたオプション
ゲーム部分の作り込みも凄いがオプションも非常に丁寧。敵弾の簡略化に画面振動のOFF、当たり判定の常時表示化に、当たり判定や敵弾の影や色の調整などなど。プレイヤーの好みに合わせて見やすさを細かく弄れるようになっている。
Steam版限定だが、おっぱい丸出しの敵を規制する配信設定も可能だ。
成長すると当たり判定は小さいままで自機がどんどん巨大化し、どっちがボスか分からんカオス状態になるゲームだが、ここもオプションでサイズを小さいままに出来るぞ。マジで気が利いてる……!見た目グロいのに優しい人!
総評:しゃぶるほどに味が出る!楽園で戦いに明け暮れる骨硬派シューティング
クロニクル完全制覇にアーケード制覇、ストーリーもコンプして20時間以上堪能した。しゃぶっても簡単には味が無くならない骨硬派。
まずビジュアルが凄すぎて引き込まれたし、ライフと火力で敵弾幕を殴り返すインフレの気持ち良さと、それが通じない時の緊張感と試行錯誤の面白さが絶妙。
育成要素と立て直しのしやすいシステムでシューティング上手くない人でも遊びやすいのが良い。熟練した製作者による凄まじいセンスと確かな技術が感じられる。
何もかもが尖っていてカッコいいゲームだった。
シューティング好きは今すぐ、骨を片手に楽園の臓腑を抉りに行こう!