ファミレスを享受せよ ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)
『ファミレスを享受せよ』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:わくわくゲームズ
機種:PC/Switch
ジャンル:アドベンチャーゲーム
発売日:2023/8/1(PC)2023/11/15(Switch)
価格(税込):1500円
「こんなに月が綺麗な夜はファミレスに行こうかな」
と思い立って深夜にファミレス「ムーンパレス」に出かけたものの、
そのままその中に閉じ込められてしまった主人公。
先に閉じ込められた住人たちと会話しながら脱出の方法を探るADVだ。
システムや設定は脱出ゲームっぽいが難易度は高くなく、
登場人物たちの言葉を楽しむ作りになってるぞ。
手掛けたのはゲーム制作サークルの「月刊湿地帯」。
元々は2022年にitch.ioなどで公開されたタイトルで、
SteamとNintendo Switch版はプログラムから作り直されている。
新たな雑談やクリア特典の
『サウンドギャラリー』『イラストギャラリー』も追加されているぞ。
ビジュアルも空気感に合ったBGMも秀逸で、
短編ならではの良さが凝縮された1本だった。
捉えどころのない雑談の数々を噛みしめるように進める構成がたまらなかったね。
話題アイコンを選択してムーンパレスの住人たちと会話していくのが基本の作り。
ここはどこなのか、店員はどこにいるのか、あなたは誰なのか。
ドリンクバーのミルクが切れていたが補充はされないのか。
会話の中で新しい話題が手に入ることもあり、どんどんアイコンが増えていくぞ。
アイコンデザイン1個1個が異なっているこだわりが光る。
時間の概念が曖昧なファミレスで、
客たちは気が遠くなるほどの時間をここで過ごしている。
自殺しようとしても出来なかったとか、混乱して暴れたとか、
物騒な話も聞けるが、今はみんなけだるい態度で平穏が保たれている。
発狂してもおかしくなさそうなんだが、何かの力が働いてるようだ。
客の中には遥か昔に滅びた国の王様もいたり、
かと思えば主人公と同じ時代っぽい人間もいたりと、
会話をするほどに「ムーンパレス」という場所の謎が深まっていくぞ。
「ここでは水が飲みたければ 偉大な王でさえ自ら立ち上がり ドリンクバーに行くしかない」
って王様のセリフが良すぎる。
毒を入れられる心配が無いって言うのも苦労が感じられて好き。
ファミレス内を色々歩き回って情報を集めていくが、行ける場所は少ない。
自分以外の3人の客がいる席やドリンクバーなどなどだ。
ドリンクバーだ!いいですね……
「黒い酒」「第一のスープ」「ペンギンソーダ」「りんごジュース」などなど。
不思議な飲み物ばかりが並んでいるぞ。
りんごジュースはりんごジュースです。
ドリンク片手にあちこち移動して好きな場所で飲めるが、混ぜたりは出来ない。
混ぜられるようにしたかったけど、差分が膨大になるから断念したんだろうな……!
ファミレス……というかサイゼリヤのお約束である間違い探しもあるぞ。
何やら意味深なイラストが次々に出てくる!
原作再現で間違いが非常に分かりにくく作られているので、
最終的にひたすら画面を連打することになる。
深夜のファミレスでダラダラと喋っているような会話の雰囲気が本当にいい。
オチは無いし喋ってる本人もよく分かってないんだけど、
でもなんか引っかかる……って話題や、
「話題が無いことに苦しむ話題」などの雑談を繰り返すことで、
登場人物たちの性格や背景が浮かび上がっていく。
線や色使いはシンプルなんだけどセンスが溢れる画もキャッチーで、
黄色と黒だけでこんなにも奥行きを感じさせるのか!と圧倒される。
そしてダラダラ会話しながらファミレスの中をグルグル歩き回るゲームだからこそ、
物語や場面が動いた時のインパクトが強烈だ。
良い意味でプレイヤーを置いてけぼりにする加速感溢れた展開や、
ここぞという場面での演出の上手さで引き込みまくり。
雰囲気と謎だけのフワッとした話で終わらせず、
きっちりと物語を語り尽くして完結させ、
それでいてプレイヤーの想像の余地も残してあるところが好き。
クリアまで3時間ほどの短編。
言葉を重ねて言葉を味わい言葉で物語るゲームで、
その果てに辿り着く物語の幕切れがあまりに綺麗。
深夜のファミレスが舞台だからこその心地良い空気感が唯一無二で、
ゲームを終えた後は「朝が来てしまった」ような寂しさがあった。
余韻に浸りながら鑑賞できる『サウンドギャラリー』と
『イラストギャラリー』も素敵で満足感いっぱい。
オススメです。みんなもファミレスとドリンクバーを享受せよ!