『妄想凶ザナトリウム』のレビュー行くぜ!
パブリッシャー:ケムコ
機種:Switch/PS5/PS4/XBOX/PC
ジャンル:ノベルアドベンチャー
発売日:2024/4/26
価格:880円
フリーゲームからの移植作であり、漫画家のぱげらった氏がシナリオ、イラスト、演出を手がけたホラーADVだ。元タイトルは『妄想狂ザナトリウム』だったんだが……やっぱ「狂」って文字は厳しいのか。
短い作品だが、妄想と現実をテーマにした作品としてよくまとまっていたし、キャラの可愛さや一枚絵の多さなども魅力だったぜ。
ゲームは妄想や幻覚症状を引き起こすウィルスに感染した主人公が、精神科病院に入院するところから始まる。そこで出会った初恋の女の子や、世話をしてくれる妹との日常が物語の中心。典型的な「信頼できない語り手」による、虚実入り交じったシナリオ構成だ。化け物が見えたり見えなかったり。部屋の様子がおかしかったりする。
こちらが主人公の妹のモネ。けだるい態度だが面倒見が良く、病院に何度も足を運んで主人公を世話してくれる。一番かわいいと思う。なんだかんだ言いながらお兄ちゃん好きな妹が嫌いなヤツいねぇよなぁ!?
リザは偶然再会した主人公の初恋相手だが、彼女もウィルスに感染して入院中。元々不思議な女の子だったが、感染したことで不思議っぷりが加速。世界が終わるという妄想に取りつかれ命を断とうとする。面白いことをしてくれたら自殺をやめるとか言い出したので、主人公がなんとかリザを楽しませ続ける展開がシナリオの軸になる。
その他、病院の院長であるアンリもちょくちょく登場。ガスマスクと銃で武装している。この姿は主人公の妄想でそう見えているだけなのか、本当にこの格好なのか……?
ウィルスの症状で妹が急に悪魔っ娘に見えたりするので、何が現実か分からないのだ!漫画家さんが作ってるだけあって細かい一枚絵が豊富なのが良い。
主人公にしか見えない脳みそマスコットもいるし、キャラも可愛いのでギャグ多めかと思いきや、そこはくどくならないテンポでサクサク進行。重苦しい病院内で展開される、確かな安らぎがある日常パート。その合間に挟まる、虚実入り交じった描写にじわじわと引き込まれる作りだ。
そしてコンシューマ版の特別エピソードとして、ヒロイン2人のサービスカット満載の海水浴エピソードを収録!意外なキャラも登場したりで楽しい構成だった。
ゲームとしてはオーソドックスなノベルゲームで複雑な分岐などは無し。
選択肢による分岐はミスしても手前の選択肢に戻れるし、ノベルゲームとしての機能面も問題ないぞ。
クリア後のおまけエピソードを含めても1~2時間くらいで終わる短編。
880円なので原作経験者が体感したであろう「これがフリーゲーム!?」的な驚きは薄いものの、「妄想と現実」をテーマにした短編ノベルとしてよくまとまっている。展開がチープなところもあるが、これは一気に駆け抜ける短編だからこその切れ味だったね。コンセプトに惹かれた人はちょっと遊んでみてくれ!