絶対SIMPLE主義

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開発コストの都合が惜しい九龍×憑依アクション!『野狗子: Slitterhead』【PS5/PS4/XBOX/PC】

 

SLITTERHEAD - Bokeh Game Studio

 

『野狗子: Slitterhead』のレビュー行くぜ!俺がプレイしたのはPS5版ね。

 


パブリッシャー:Bokeh Game Studio

機種:PS5/PS4/XBOX/PC

ジャンル:アクションアドベンチャー

発売日:2024/11/9

価格:4980


 

90年代前半の九龍を舞台にしたアクションアドベンチャーだ。人間に憑依する能力を駆使して、人間に擬態する人食いの怪物「野狗子」を追っていく。

2020年に設立したゲーム開発スタジオBokeh Game Studioの第一弾。『サイレントヒル』や『SIREN』を手掛けた外山 圭一郎が代表を務めているぞ。

 

俺は『サイレントヒル』も『SIREN』もやっていないからまっさらな気持ちで挑んだ。雰囲気やシステムは面白いけど、予算やスケジュールの都合を感じさせる箇所が多すぎてちょっと……って感じだったな!

 

 

プレイヤーは体と記憶を持たない正体不明の「憑鬼」。

様々な人間の体に乗り移りながら、「野狗子を狩る」という唯一残った衝動に突き進んでいくぞ。チュートリアルではイヌの体からスタートして人間に乗り移る。こういう設定のゲームだと犬スタート多い気がするな。『ヘラクレスの栄光4』とか『雨魂 – AMEDAMA – 』とか。

 

 

ステージクリア型の構成で、人間に憑依した後は血を武器に変化させてバトル!

時間経過と体力(血液)消費で使える各種スキルや、敵の攻撃を右スティックで弾けるディフレクト(パリィ)を駆使して戦うシステムだ。ヤバくなったら通行人に体を乗り換えれば良し!次々に体を乗り換えて敵の背後を突け!

 

憑依は制限無しだが「憑依した状態で体力ゼロになる」を3回やってしまうとゲームオーバーでチェックポイントからやり直し。体力ギリギリになったら体を乗り換えるのが基本となるぞ。

 

 

通行人の体をどんどん乗り換えながら戦うゲームなので、パンツ一丁のおっさんにもなれる。パンツ一丁のおっさんでも、九龍を救えるんだ!

 

 

ステージクリア時には、操作してるキャラのキメ顔がカッコいい演出で表示されるので、おっさんやおばさんでクリアしたくなる。

 

 

主人公の魂と融合性が高い「稀少体」という人間が何人かおり、彼らに憑依すると通常よりも強力な力を発揮できるし、意識を同調させて脳内で会話も出来る。シナリオはこの「稀少体」たちとの協力を軸に進行。ステージ開始前に2人選んで出撃だ。

 

 

メンバーは爪が武器で回復能力のある役者の卵、ショットガンが武器で憑依した人間を人間爆弾に変える技も持つ闇医者、通行人を精神操作で戦えさせられる娼婦、オートガードとフットワークで戦う元プロボクサーのホームレス、お前「家政婦が見た」って言いたいだけだろな家政婦などなど。ワクワクするメンバーが揃ってるぜ。

 

 

使ってて楽しいのはベティだった。高齢の御婦人だが、メインスキルが敵の攻撃に耐えられるスーパーアーマーで武器は杖。敵の攻撃を正面から受け止めつつ、杖の猛連打ですべてを破壊する!

 

 

九龍舞台のアジアンホラーだったのに、怪物を杖でしばき倒すババア登場で漫☆画太郎になっちまったよ!

 

 

舞台となる九龍のマップは狭いけど作り込んであって、ネオン輝く猥雑な街並みや、ゴミが散乱する汚ったない路地裏の空気感を満喫できる。マップが常に夜なのもいい。人を喰って人に化ける怪物が潜んでいる説得力がにじみ出てる。

 

 

トイレの汚さが他のゲームで見たこと無いレベルなのも忘れられない。新年早々最悪なものを見せられたぜ!

 

 

バトル以外にも様々な要素があるゲームで、逃亡する野狗子を追うために体を次々に乗り換えながら追撃するチェイスに、高いところに移動するために憑依する順番を考える箇所があったり、潜入調査で見つからないように体を次々に乗り換えるステルス要素など色々。野狗子の視界をハックして、どこにいるかのヒントを得たりも。

 

 

そういうゲームになっているが、狭いマップでなんとかボリュームを出そうと四苦八苦してるような構成が段々と辛くなってくる。同じミッションを何度かプレイさせる展開があるし、チェイスとステルスも最初は目新しさがあって面白かったが、早い段階で同じことの繰り返しに気づいて「また逃げるコイツを追うのかよ!」「またステルスパートかよ!」となっていく。

シナリオが佳境のタイミングでも追いかけっこが始まるからうんざりしてくるぞ!

 

 

戦闘も敵の攻撃をパリィで弾いて態勢を崩したり、床の血だまりを吸収して回復したり、体を乗り換えて立ち回ったりってシステムは面白いんだが、敵のバリエーションが少なくて同じ敵とばかり戦うことになるし、終盤になるとザコ敵の物量や、毒ダメージなどのデバフ、制限時間などで難易度を上げてくるのも楽しくない。

 

弱い一般人に憑依した状態で戦うことになり、しばらく頑張ってると強力な稀少体が遅れて合流する……って箇所が多いのは、緊張感あって個人的には好き。

 

 

シナリオも本来は群像劇やりたかったんだろうけど、「コストの都合でこいつの個別エピソードは大幅カットされました」みたいなキャラが非常に多く、いつの間にか仲間に加わってる奴もいてビビった。

 

キャラ自体は魅力的に描けていて、メインメニューから見れる主人公との会話や、たまに発生する仲間同士の交流も良かっただけに、全体的な掘り下げ不足なのは残念だ。

 

 

娼婦のお姉さんに相談事を持ちかけられた男子高校生がドキドキして行ってみたら、ドラクエ5の相談でズッコケる会話とか好き。アニタとドニの絡みはもっと見たかったなぁ。

 

俺がお気に入りの仲間は元プロボクサーでホームレスのエド。すべてを失って落ちぶれつつも、どこか清々しく前向きな態度がカッコいいし、普通に堕落したおっさんらしいところもあるのが良い。

 

 

15時間ほどでクリア。

予算とスケジュールの辛さが前面に出ちゃっていて、消化不良なシナリオに、チグハグなパートボイスに安っぽい人物モデリングなどなど……。色々と辛いし、一昔前の3Dアクションを遊んでるような感覚。

 

良いところもあり、シナリオは尻すぼみではあったが、様々な職業・立場の仲間が集まってマフィアや宗教団体に潜入して野狗子と戦い、徐々に奴らの生態と思考、それに関連したグロい真実、主人公の記憶が明らかになっていく流れはワクワク出来た。ショットガン片手に復讐に燃える闇医者!とか、キャラ造形とビジュアルは本当にキマってる。

 

バリエーションに乏しいが、野狗子のハナカマキリやミノカサゴをモチーフにした不気味でカッコいいデザインや、人体がメリメリ裂けて変異する強烈さもホラーとして高評価。BGMも文句無し。

 

雰囲気や要素では本作独自の輝きがしっかりあるので惜しいゲーム。刺さる人には刺さるはず。新スタジオの第一弾なので、今後のシリーズ展開に期待しとこう!