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【レビュー】これは問題作!老舗が送る35年ぶりのシリーズ最新作『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』【Switch】

 

ファミコン探偵倶楽部 笑み男 | Nintendo Switch | 任天堂

 

『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:任天堂

機種:Switch

ジャンル:インタラクティブドラマ

発売日:2024/8/29

価格:6500円


 

ファミコン時代に好評を博したADV『ファミコン探偵倶楽部』のシリーズ最新作だ。リメイクは出ていたが完全新作はずっと出ていなかったので、公式でも「35年ぶりのシリーズ完全新作」を押し出しているぞ。

ってことはサテラビューで配信されてた『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』は別カウントなのね。

 

開発は2021年に発売されたリメイクと同じMAGESが担当。システムをファミコン版の流れを汲んだコマンド式アドベンチャーにしつつ、豪華なグラフィックとフルボイスが物語を彩っているのも同じスタイルだ。

 

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俺はリメイク版からハマったユーザーで新作も楽しみだったんだが……ストーリーもシステムもこれは問題作と言うしかない尖りっぷり!公式ジャンルが「インタラクティブドラマ」なのも遊んで納得だ。

 

単に出来が悪いから問題作って言い方をしてるのではなく、ゲームで物語を語る際のシナリオとシステムの関係や表現方法について、色々な視点で考えたくなる作品だったね。

 

 

 

主人公はプレイヤーであるあなた(名前入力可能)。

空木探偵事務所の少年探偵であり、明るくまじめだけどたまに変なボケをかます。

 

 

探偵助手であるかわいいあゆみちゃんと、出番は少ないが有能で頼れる所長の空木俊介。この少数精鋭で空木探偵事務所は回っているぞ。

時代設定は平成初期になっており、まだ物珍しい携帯電話を渡されて、主人公とあゆみちゃんがウキウキになるシーンもある。

とある死亡事件が、18年前の未解決事件と都市伝説に繋がっていく

 

物語は不気味な袋が被せられた中学生の絞殺遺体から幕を開ける。

この風貌は18年前に発生して未解決で終わった「連続少女殺人事件」と被害者と同じだった。そして一連の事件は「笑み男」という都市伝説によく似ている。

 

これらの事件に関連性はあるのか。そして「笑み男」は実在するのか。実在するとしたら何者なのか。主人公の視点で進んだ過去作と異なり、この事件を主人公とあゆみちゃんの二つの視点で調査することになるぞ。紙袋の不気味なデザインも含めてキャッチーな導入だ。

 

過去作ネタはあるものの、事件としては完全に独立しているので、本作から遊んでも大丈夫だ。

現代的かつリッチな演出表現で送る、昔ながらのコマンド式アドベンチャーゲーム

 

ゲームはコマンド式で進行する。画面内を調べたり聞き込みをしたり、考えをまとめたりして進行フラグを立てていく昔ながらの作りだ。コマンド式アドベンチャーゲームの面白さは、プレイヤー自らが物語の世界に干渉できること、そしてそれに対して様々な反応が返ってくるところにある。

 

 

その昔ながらの面白さを、リッチさで補強しているのが本作。背景は書き込まれているし、登場キャラたちはシーン毎に細やかなアニメーションをするし、ちょっとしたモブキャラも濃ゆい連中揃いかつフルボイス。

 

 

気になった部分には反応が仕込んであるし、すごいどうでもいいテキストまでフルボイスで対応してくれるぞ。

調査パートで妙なボケを唐突にぶっこんでくるシリーズなのだが、そこを主人公を演じた緒方恵美さんがめっちゃ頑張って演じてるぜ!

 

 

とはいえ、この手のゲームは進め方が分からなくて総当たりになってしまったりと、イライラすることもある。

本作では特定のテキストやコマンドの色を強調するヒントがあったり、「考える」を選択することで話が進みやすくしてあったり、調べられる箇所だとカーソルが変化したりと、今の時代に合わせた遊びやすさが意識されてるぞ。

探偵らしさ溢れるやり取りと魅力的なキャラたち

 

調査の過程で明らかになる関係者たちも魅力的に描かれていて、聞き込み調査で掘り下げられる悲痛な想いと、少しずつ明らかになっていく謎に引き込まれる。

 

 

主人公とのやり取りによる人情の描き方やキャラの立て方が非常に上手く、ここは『ファミコン探偵倶楽部』シリーズらしいテキストの妙が味わえるね。細かい表情の変化から感情も伝わってくる。

 

 

メインヒロインであるあゆみちゃんもめっちゃ可愛い!

日が変わるとちゃんと服装も変わったり、本作の美術周りは本当に力が入ってるぜ。

賛否両論が爆発する終盤の展開

 

そんな本作で一番賛否が分かれるのは終盤の展開。

制作側も賛否両論になるのは分かってやったんだろうが、それにしてもよくやったなぁ!と驚かされたよ!

 

安直と言えば非常に安直。

しかし光と影、いや、影の奥に潜む闇を描く手法として、ゲーム全体を通した対立構造を際立たせる展開としては面白いと思ったし、任天堂作品でよく通したと慄く描写も衝撃的。この攻めっぷりと尖りっぷり。俺は評価したい!

普通にシナリオ強引でテンポも悪くないか?

 

評価したいんだが……割とシナリオが強引でツッコミ所が多く、「この時代でもさすがにどっかで警察に引っかからない?」とか「そこそんな流れだったの!?」と、賛否両論覚悟で攻めてる部分と、普通に出来が良くない部分が混在してる。

 

調査シーンもテンポが悪く、ギャグシーンが多いわりになかなか事件が進展しないと思ったら急にクライマックスに突入するから驚かされるぜ。終盤に入ったら一気に物語が進んだり、変なキャラが出てくるギャグがちょいちょい挟まるのは過去作も同じなんだが、本作はそこら辺のバランスが悪く感じたね。

 

 

個人的には「天然っぽいギャグキャラかと思ったけど、何度も会ううちに内面が見えてくる」ってキャラを2人も配置したのが良くなかったと思ってる。

プレイヤー視点で交流する神原刑事、あゆみちゃん視点で交流する福山先生がそれだ。

 

 

神原刑事は刑事なのでまだ捜査に繋がってる感覚があるし、割と早い段階で有能な面が見えてくる。が、福山先生パートは回りくどいボケ会話が多すぎて話が進まねぇ!2つの視点で進むシナリオに、似たような立ち位置のキャラ2人もいらなかったよ!

 

2人とも悪いキャラではなく、本作のテーマ的にもシナリオに絶対必要な存在ではあるし、神原刑事は本作のサブキャラでは一番好きなんだけど、遊んでいてじれったかったのはここだなぁ……。

マジで「問題作」と評するしかない!

 

クリアまでは10時間掛からないくらいのボリューム。

色んな意味で「証拠を集めて犯人を推理するゲーム」としては全然ダメだが、探偵として事件を追い、魅力的な登場キャラと、豪華な演出を楽しむゲームとしての面白さはしっかりある。

 

「理解」をテーマにした対比構造のシナリオと、それを際立たせるためのゲームシステム。「作り手がやりたかった事」に振り切った構成は強烈。何故本作がインタラクティブドラマを名乗っているのかよく分かった。

 

でもクドいギャグシーンや達成感の乏しさ、シナリオの粗など、単純にアドベンチャーゲームとしてイマイチに感じる部分も多い。

 

全部ひっくるめて問題作という評価になるし、嫌いじゃないが他人にはオススメし辛いなぁ。自分以外の人間はどういう感想を抱いたのか……。アドベンチャーゲーム好きな人の意見を聞きたくなる1本でした。

 

本作のスタイルと評判を踏まえた更なるシリーズ新作は絶対見たいので、次なる『ファミコン探偵倶楽部』も気長に待たせてもらうぜ!