Life is Strange: Before the Storm | SQUARE ENIX
「前回までのライフイズストレンジ」のレビュー行くぜ!
メーカー:スクウェアエニックス
機種:PS4/XBOXONE/Steam
ジャンル:アドベンチャー
発売日:2018年6月7日
価格:3800円
時間を巻き戻す能力を手に入れた高校生、マックスの選択を描いた傑作ADVだった、
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』の前日譚を描いた作品だ。
そちらではマックスの親友として登場したクロエが本作の主人公。
こちらも選択肢によって変化するストーリーを楽しむADVになっているぞ。
開発は前作を担当したDONTNOD Entertainmentではなく、
Deck Nine Gamesが担当している。
PS4/PS3/Steam「Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)」レビュー!
圧巻の情報量で描く、時に心揺さぶられ、時に思いを馳せるADV。
『Life Is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』は大好きなゲームだったので、
語られていなかったストーリーを描いた前日譚はやらねばなるまい!
でも主人公がクロエだから時間を巻き戻すような超パワーは無いし、
結末も分かっているから地味な内容になるのでは?と思っていたら……。
実際そんな内容だったんだけど!
それでも青春を描いたADVとして、前作ファン向けの1本として良いデキだったぜ。
主人公は16歳の不良少女クロエ。
大好きだった父親が事故で亡くなり、親友のマックスは引っ越してしまい、
母親の新しい恋人は嫌なオヤジだったりで荒れまくり。
成績もボロボロで売人からヤクを買ったりする灰色の生活を送る中、
学校の優等生であるレイチェル=アンバーと運命の出会いを果たす!
というストーリーだ。
クロエは口は悪いしヤバいことにも手を出しまくるし無鉄砲だしでかなりヤンチャ。
しかし友達思いで繊細なところもあり、
ゲーム進行と共に更新されるイラストやレイアウトがめっちゃ凝ってる日記では、
もう引っ越してしまったマックスへ宛てた文章という形で心情が吐露される。
亡くなった父親との会話もちょいちょい挟まるし、
非常に寂しがり屋なところが掘り下げられている。
そして出てくるレイチェル=アンバー。
前作では非常に大きな存在だったがほぼ登場しなかったので、
どういう人物だったのかしっかり描かれているのは今作から。
優等生で洞察力に優れていてコミュ力があり、演劇で主役を務めるほどの人気者。
しかしクロエ以上に危ういところがあったり、
ある問題を抱えていたりとこちらも一筋縄ではいかない。
偶然の出会い、割とグイグイ来るレイチェル、戸惑いつつも深まっていく友情。
そしてハラハラさせられる展開の数々!
「もっと慎重に行動しろや!」「ああ、もっとそいつの想いを汲んでやれよ……!」
「病院の自動販売機に蹴り入れるんじゃねぇ!」と、
2人の思い切りの良さと無鉄砲な行動力には
思わずコントローラーを握って説教したくなるほど!
このもどかしさが何ともほろ苦く、
でも解放感もあってたまらない気持ちにさせられるんだよな。
青春!
前作で登場したキャラ達も続々と登場し、クロエの視点から過去の話が描かれる。
ビクトリアは今回も気持ちいいくらいの性格の悪さとナイス顔芸を見せてくれるし、
ヤクの売人フランクさんも、
ヤクの売人のクソ野郎なのに妙に好感度上がる描写が多いから困る。
デイビットの描写とクロエとのやり取りも、前作プレイ済みだと色々複雑!
単純に善人/悪人で区切れない人物描写はやっぱこのシリーズの魅力的なトコね。
器用に生きるのって難しいなと思わされる。
今回からの新キャラだと演劇のキートン先生が大好き。
大仰なセリフ回しと吹き替えの演技が素晴らしくマッチしてて笑える。
いい先生だよな。
ゲームとしては指示に従って進んでいく一本道のADVで、
頻繁に登場する選択肢でストーリーの細かい部分が変化していくが、
大筋そのものは変化しない。
マップは前作同様、細かいところまで作り込まれているし、
オブジェやポスターなど調べられるものも沢山ある。
そういう場面ではすべてボイス付きで
クロエが皮肉交じりのツッコミを独り言で入れてくれる。
ちょっとしたニュース記事だったり、誰かのメールだったり、映画ネタだったり、
調べると対応した文章が読める箇所もあるので情報量が多い。
これがあるから新しい場所に来るたびに周りを調べるのが非常に楽しいぜ。
マップにはラクガキ出来るポイントが隠されていて、
調べるとイカしたイラストや下品な文面を描くノリもクロエらしくてイイ。
とはいえ、さすがに前作に比べてしまうと
探索がスケールダウンした感は否めないか……。
マップの広さとか、調べられる場所の面白さとかでね。
友人がやっているTRPGに参加するイベントもあり、
プレイヤーはクロエを操作して、
TRPGのキャラのスキルや行動を選択するという入れ子構造になるのが面白い。
クエストをクリア出来るかどうかは選択肢次第だ。
「演じる」「嘘をつく」というのは本作の大きなキー。
嘘に含まれている真実。嘘があるからこそ成立する優しさ。
それらを取捨選択する難しさ。
交錯し、ぶつかり合う真実と嘘に悩まされる本作の通過点にして、
もっとも美しいイベントが「演劇:テンペスト」だ。
準備のシーンのドタバタや、普段と違う登場キャラ達の表情含めて楽しくて笑えて、
ぎこちない開幕から辿り着くフィナーレまでの流れは本作でも屈指の名シーン。
ここ本当に良かった。
こういう要所要所のシーンで、
友情が深まっていくところをしっかり見せられるたびに胸が締め付けられるぜ。
結末を知っているからこそ胸が痛む!
描かれていなかった物語が埋まっていく面白さと、
物語の全貌が分かるからこその辛さ。この感情は前日譚だからこそだね。
反面、ADVとしては大分平凡になってしまったのは否めず。
前作は時間を巻き戻して選択肢を手軽に何度でも選びなおせるからこそ、
選択に本気で悩むという構成が素晴らしかったし、
こちらの予想を超える超展開が次々に押し寄せてくる、
ジェットコースターのようなシナリオにものめり込まされた。
本作は「選択肢である程度物語は変化するけど、結末は前作で決まっている」
という構図のせいもあってか、話が大きく変化したりはしない。
超常現象も起こらない。
口喧嘩で相手を言い負かす「バックトーク」を独自システムとしてウリにしていたが、
選択肢を連続で選ぶ以上のものでは無いので今一つ。
後半の展開も少々駆け足に感じてしまったなあ。
どっちにしろ、この展開だとやや不自然では?と思うトコもチラホラ。
選択肢で展開が変わるゲームで前日譚やるのはどうしても難しいか。
まあ、レイチェルの行動にはこっちの予想外のものも度々あったがな……!
ローカライズはクロエを筆頭に吹き替えの声優の演技は素晴らしいし、
セリフも不自然さが無い。
「次にやるべきことを手にメモする」描写もきっちり日本語な細かさには唸った。
ただ、決定が×ボタンだったり、字幕が変なところで改行される場面が多かったりと、
前作に比べるとやや気になるところが目立ったなあ。
全体的にはハイレベルではあるのでそこまで文句は無いけどね。
嵐の前に展開された美しく、それでいて苦い物語。
スケールの小ささやシステムのせいでどうしても地味なところはあり、
ファンディスクに近い作りでもあるが、それなりに満足行く内容だったぜ。
前作ファンならば楽しめる1本。でも、凄く辛い1本でもあるな!
前作をやっていないのならば、まず前作をプレイしてから決めてもらおう!
デキは水準以上。遊ぶかどうかはお好みで……!