バディミッション BOND | Nintendo Switch | 任天堂
『バディミッションBOND』のレビュー行くぜ!
メーカー:任天堂
機種:Switch
ジャンル:アドベンチャー
発売日:2021/01/29
価格(税抜):6480円
販売任天堂、開発はコーエーテクモの乙女ゲーチームであるルビーパーティー。
キャラデザは村田雄介という布陣で送る完全新作のアドベンチャーゲームだ。
警官、怪盗、忍者、詐欺師というワケあり4人チームが、
謎の巨大犯罪組織「DISCARD」に挑む!
まずはイイ感じに世界観をまとめてあるオープニングムービーをご覧ください。
これ見てピンと来たら買ってもいいと思う。
一言で表現すると王道ストーリーのADVだが、
その一言で表現してしまうにはあまりにも密度が高い……!
驚くほど大量の会話でメインキャラの成長と激情を丹念に掘り下げ、
プレイヤーを引き込んでいく構成がお見事。
重い設定を抱え、こじらせた男たちの感情のぶつかり合いを、
少年漫画的な爽やかさでまとめ上げた傑作バディ作品になっているぞ!
主人公は正義感溢れる警察官であるルーク・ウィリアムズ。
ワケありにもほどがある仲間たちと共に「チームBOND」を結成し、
謎と陰謀に溢れた事件の数々に挑んでいく。
背後に存在する謎の巨大犯罪組織「DISCARD」を打ち破ることが出来るのか……!?
というストーリーだ。
事件の舞台は巨大な飛行機から華やかなカジノ、劇場、
思いっきり和風な隠れ里など様々。
各シナリオは事件発生までの会話パート。
決められた回数だけマップを移動して情報を集める捜査パート。
その情報を元に目的地に潜入する3Dの潜入パートという構成になっている。
「どのキャラで聞き込みをするか?」「どの選択肢を選んだか?」
などの要素で行動の成否が決まり、「ヒーローゲージ」が上下。
ゲージが高い状態でクリアするとサブシナリオが解禁だ。
潜入パートはキャラ2人と潜入するルートを選択してスタート。
ナンバーロックみたいな謎解きも色々あるが、
集めた情報を確認しながら間違えないように行動するだけですべて解ける。
なので、難易度は非常に低いね。
操作キャラ2人の組み合わせで発生する会話差分が膨大で、
どちらかというとそこを楽しむ作りだ。
とにかく掛け合いで魅せるのがこの『バディミッションBOND』。
魅力たっぷりのメインキャラ4名がぶつかり合いながら、
バディとして、チームとして成長していく姿が丹念に描かれている。
主人公であるルーク・ウィリアムズは、
亡き義父の想いを胸にヒーローを目指す真面目な男だ。
どんな時でも助けを求める人を見捨てられない性格で、
青臭過ぎるセリフを真正面から真顔で言う。
かなり感受性豊かですぐ感動するし、子供っぽいところや天然っぽいところもある。
いかにもな主人公キャラなんだが、
周りの人物のことを気遣って悩む心優しいところが描写されているし、
仲間がどれだけルークの存在に救われているか、
ルーク自身がどれだけ仲間に助けられているかも、
ゲーム通してブレずに描いているから、遊んでいて本当に好感が持てる主人公だ。
後半は「お前さぁ……本当そういうとこだよ!」と、その眩しさに感動させられてしまった。
でも心をバッキバキにへし折られて目が死んでるシーンもまた魅力的!
いい顔するねぇ!
飯を美味そうにテンション高く食うところも好き……というか、
食レポをする時だけ#FEの蒼井樹(CVが同じ)の魂が乗り移ってないかルーク?!
アーロンは宝石を狙って世界を渡り歩く大怪盗。
見たまんまのワイルドな性格で、
腕に装着したアタッチメントからは鋼鉄の爪を出す!カッコいい!
捜査パートでもすぐ力押しで解決しようとする血の気の多い男だ。
でも飛行機が怖いので乗るエピソードだとずっとキレてるというあざとさ。
ちょっとした会話パートでも爪を出す時あるのが笑う。
臆面もなくヒーローを目指すと言ってのけるルークに対して、
最初はバカにしたような態度を取るが、
徐々にほっとけなくなっていく凸凹コンビっぷりがベストマッチ!
ふとした時に見せる優しい目つきと言葉も印象に残る。
優しさが出てる時の表情が本当にいいんだよなアーロン。
モクマは見た目こそちょっとくたびれたおじさんだが、実は元忍者のショーマン。
しょっちゅう酒を飲んだり女性をナンパしたりと軽い態度を崩さないが、
いざという時には身体能力を活かしたニンジャアクションで大活躍だ。
ちょいちょい乙女顔になってボケをかますかわいいおじさんでもある。
危険な犯罪捜査においての清涼剤だ。
まあ、清涼剤にしてはちょっと酒臭いがな!
明るい表情の裏には「何か」からのらりくらりと逃げ続ける顔が隠れているし、
年を重ねた大人ならではの会話も味わい深いキャラだ。
チェズレイは裏社会で暗躍する詐欺師。
常に余裕たっぷりで大仰な言い回しをする、色んな意味で何でもありな反則野郎。
CVを担当した浪川大輔は公式で……。
チェズレイを語る単語はこんな感じです。
詐欺師、欲望、ゲス、変態、紳士、完璧主義、執着、変装、催眠、濁り、などなど……。
数えきれないほどのパンチ力。濃い目の魅力満載です。
と、コメントされているが、まさにその通りで1人だけ色んな意味で濃厚!
闇鍋に手足が生えたようなキャラ造形になっていて、
やる事の酷さも含めて「こいつが仲間になるの?!」と驚き。
仲間になってからも言動が危うくてハラハラさせられる。
しかしこの劇薬っぷりが素晴らしい存在感で、
チェズレイ登場からこのゲームは一気に面白くなる!
遊んでいくと見えてくる、闇鍋の底に沈んだ一途なハートにグッと来るぜ。
シナリオ上はモクマとバディを組むことになるんだが……。
元忍者の酒飲みおじさんとチート詐欺師が、
これでもかと重い感情をぶつけ合う展開が描かれていて目が離せない!
顔芸も声優の熱演もシナリオ展開も圧巻だったわ。
シナリオはこのチーム4人を「バディ」として徹底的に掘り下げる形で構成されていて、
メインストーリーはもちろん、サブエピソードとなる「バディエピソード」では
すべての組み合わせで本編を補完するシナリオが用意されている徹底っぷり。
「ルークとアーロン」「モクマとチェズレイ」が公式バディなんだけど、
「ルークとモクマ」の若者と年を重ねたおじさんのまったりした会話も、
「チェズレイとアーロン」のまさに水と油なやり取りも見ていて楽しいんだよなぁ。
会話は膨大だけどシーン毎の構成がよく考えられていて、
遊んでいて「キャラを掘り下げるためとはいえ冗長だな……」と
感じる場面が全く無いのが凄い。
チームBOND以外のキャラも魅力的。
オープニングで歌ってる歌姫であるスイはメインヒロイン的なポジションで、
大変な目に合いながらも諦めない芯の強さが応援したくなる。
普段着のラフな格好がまた可愛いし、ルークとの関係がいいんだよなぁ。
すべてが終わった後のやり取り、ルークお前本当にそういうとこだよ……!(2回目)
こちらのナデシコさんは「DISCARD」に挑むためにチームを招集したお方。
司令塔として常にクールに振舞い、
大人の余裕たっぷりだけどお茶目な言い回しも忘れない。胸がデカい。
そしてCVは田中敦子という勝利が約束されたキャラだ!
めちゃくちゃカッコ良いし、旧知の中であるモクマさんとのやり取りも重みがある。
この他、数十人ものキャラが登場するので紹介しきれない!
ちょっとしか出番がないキャラも上手くシナリオに絡めてあるし、
名前すら付いていないキャラが意外なタイミングで再登場して、
本筋には関係ないけど良いドラマを見せてくれたり。
キャラの立て方があまりにも丁寧で唸るぜ。
アッカルド、ゴンゾウ、おカンさん辺りが好きかな。
しかしこのゲーム、脇役はダジャレみたいなネーミングのキャラが多いんだけど、
やっぱり『逆転裁判』に影響を受けてるんだろうか……考えすぎかも。
絶対に影響を受けてるわこれ!
ネーミング関連だとサワール・ムラムラ氏が強すぎる。
この名前が任天堂の歴史に刻まれると思うと胸が熱くなるな……。
五十音順だとサワムラーの横辺りにこの名前が刻まれる。
名無しのキャラだとぶっちぎりで人気なのが「いやらしい看守」さん!
期待を裏切らないいやらしさを見せてくれるのでご期待ください。
いや看さんを筆頭にちょいちょい怪しいシーンはあるし、
ストーリー展開も結構重かったりドロドロしたりはしてるんだけど、
基本的には少年漫画的なエンターテイメントで、
爽やかにまとめてある手腕がお見事。
「身体能力どうなってんの?!」「それがアリなら何でもありじゃないか?!」
と、突っ込みたくなるところ含めて楽しいストーリーだ。
イベントシーンやムービーでは、
フキダシや描き文字を活用した漫画的な表現も多く使われている。
これが村田雄介のキャラデザに合っててバチバチに決まっててカッコいい。
BGMも名曲揃いかつ「このシーンではやっぱこの曲だよね!」
という盛り上がりを分かってる選曲で胸が震える。
新規のADVということで、
「すぐ終わるのでは?」「未解決で続編に続いたりするのでは?」
と、心配になる人もいるだろうが、どちらも心配ご無用。
ボリュームたっぷりというか、俺の想像の3倍以上はあったぞ!数十時間コース!
ADVだし休日にサクッとクリアしちゃおう……みたいなことは絶対にやらない方がいい。
4クールのアニメを見るような気持ちで楽しめる1本だ。
終わり方も「完膚なきまでに完璧に終わる」と表現したくなる見事なエンディング。
でもキャラが魅力的過ぎるので続編が欲しくなっちゃうというジレンマ。
早く起これよ……!次の大事件に大惨事……!
そんなゲームだが難点はADVとしてやや単調なところ。
道中やボス戦で挟まるQTEは2021年のゲームとは思えない古さだし、
これもクリア評価に関係するから手も抜けない。
また、クリア評価とは別に「特定の組み合わせで潜入を成功させる」
などの条件をクリアしないと、見れないサイドエピソードが沢山あるのもめんどくさい。
この条件が複数あるシナリオだと必ず2周以上やらないといけないのだ。
難易度が高いわけじゃないんだけど面倒!って感じる構成。
いや、後半のQTEはちょっと難しいかも。
マメなセーブや次の選択肢までのシーンを
全部スキップする機能を使えば大分楽にはなるんだけど、
そもそも変な条件いらないと思う!
3Dの潜入パートも背景美術やギミックが凝ってて楽しくはあるものの……。
一本道を進んでメモを確認していくだけなのでゲームとしては単調だ。
中盤から結構長くなるし、ここはスキップ出来ない。
3Dパートだからこその表現もあってそこは好きなんだよなぁ。
バディで腕立て伏せさせられるギミックとか面白かった。
調査パートや選択肢も「このヒントならこの2人で聞き込みかな?」とか、
「そういえば前のシーンでルークが言ってたなー」とか、
それまでの流れから推理する楽しさが無いとは言わないが……。
難易度低くしたいのか、プレイヤーに考えさせたいのか。
中途半端な構成に感じてしまったぜ。
こんなに1人1人を掘り下げる?!ってくらい、
徹底して「人」と「関係」を描くことで紡いだ「ヒーロー」たちの物語。
「お前さん、本当に律儀だねぇ…」と言いたくなるシナリオの完成度が凄くて。
伏線や謎を消化して核になっている話をまとめつつ、
脇役含めた登場人物それぞれのドラマを未来へと向けて終わるので、
終わった後の余韻がもうすごかった。大満足!
ボイス量やイラストの枚数もかなりのもので、本当に丁寧に作られているね。
バディ作品が好きな人、少年漫画的な王道ストーリーが好きな人、
重い感情を抱えた男たちがぶつかり合いながら成長するストーリーが好きな人。
全員にオススメです!