サブクエスト全部終わらせたので『わるい王様とりっぱな勇者』のレビュー行くぜ!
メーカー:日本一ソフトウェア
機種:PS4/Switch
ジャンル:絵本を旅するRPG
発売日:2021/6/24
価格(税込):7678円(通常版)8980円(初回限定版)
かつて魔王と呼ばれた王様ドラゴンに育てられた少女が、
立派な勇者を目指して大冒険をする完全新作のRPGだ。
□PS4/Switch/Vita「嘘つき姫と盲目王子」レビュー!割高!だが…尊いッ!求めていたおとぎ話がここにあった! - 絶対SIMPLE主義
好評を博した『嘘つき姫と盲目王子』のスタッフが送る新作となっている。
世界観などは無関係だが、
見ただけで心温まる優しい雰囲気はしっかりと引き継がれているぞ。
志方あきこの主題歌や、近藤玲奈さんの優しい朗読ムービーも健在!
『嘘つき姫と盲目王子』はストーリーや雰囲気はとても良かったが、
パズルアクション部分のデキは今一つ。
すぐ終わっちゃうのでフルプライスは高いという批判も多かった。
俺はかなり気に入っていたので今回も発売日買い。
ジャンルがRPGに変わったのでそこら辺どうなるかと思っていたんだが、
だるい移動と単調な戦闘でプレイ時間を水増しする方向に舵を切っていて、
こうなって欲しくなかったなぁ……と本当に残念な気持ちになってしまったね。
ゲーム部分が物語への没入感を削ぎまくっていて勿体なかった。
かつては魔王と呼ばれ恐れられていたが、
勇者に倒されてからは心を入れ替え、人間を助けることもしている王様ドラゴン。
亡き勇者の娘であり、王様ドラゴンに育てられている元気いっぱいの少女ゆう。
この2人の心温まる交流が物語の軸だ。
ゆうは王様ドラゴンが魔王であることを知らず、
勇者を「パパ」、王様ドラゴンを「おとうさん」と呼ぶ。
「勇者が魔王を倒した昔話」を聞きながら、
立派な勇者になる!と毎日張り切っているし、
それを王様ドラゴンは優しく見守っている。
このやり取りを近藤玲奈さんによる朗読ムービーが彩り、
いつか訪れる「勇者が魔王を倒す瞬間」を予感させて既に泣けるやつ!
ゲームは2DのRPGで、メインストーリーを進めつつ、
村でのサブクエストもこなしていく構成。
キャラの仕草や背景の細かさはさすがの一言で、
「絵本を旅するRPG」という公称は伊達じゃない!
ちょっとしたチュートリアルも雰囲気出ていて、セーブの説明で
「旅の思い出をこまめにとっておきたい方のために
たくさんのしおりを用意しておきました」なんて文が添えてあったり。
サブクエストの説明では最後に「きっと楽しいですよ。」なんて付け加えたり。
ゲームの雰囲気に合わせた口調で統一してあるのがとてもいいね。
サブクエストに関しては言いたいこともあるがそれは後述……。
まだまだ未熟なゆうをほっとけないのが王様ドラゴン。
道を塞ぐ岩を破壊する時や、戦闘中に「かえん斬り」を使う時は、
ゆうが気づかないように王様ドラゴンがこっそり手助けする演出が挟まる。
お判りいただけただろうか……。
普通の移動シーンでも王様ドラゴンが背景をチョロチョロ動き回ってるのが可愛い。
でも魔王級の王様ドラゴンがそこら辺歩いてるの、
他のモンスターからしたらいい迷惑だな!
戦闘は最大2人パーティで行うオーソドックスなターン制で、
ゲーム進行に合わせて仲間は入れ替わっていく。
攻撃や回復効果のあるとくぎや、アイテムを使い戦う。まあ、本当に普通のRPGだね。
チュートリアルもめっちゃ初歩から教えてくれるので、
かなりRPG初心者向けを意識しているのかも。
ゆうはお鍋を兜の代わりにして戦うので、
手に入る防御系装備はお鍋で統一されてるのがゆるくて良い。
登場する3人の仲間たちもバッチリ個性的。人間のお姫様であるフローラは
モンスターに囲まれて暮らすゆうとの対比にもなっているし、
割と無茶なことをしつつも自分に出来ることを探す姿勢が勇ましい。
王様ドラゴンの家来であるコウモリ野郎のサカサは、典型的な三下キャラで、
言動で「調子の良い奴だな!」「お前、どの面下げて!」と思わせつつも、
憎めなくて遊んでいると好きになれるタイプだ。
家族を助けるために頑張る雪ぎつねのコンコはどうしても影薄いんだけど、
朗読ムービーの「コンコーン」が可愛くてそこは印象に残るね。
仲間固有の能力を使って進む場面もある。
フローラの傘を使って気流に乗って先へ!
こういう動きも細かくて、各キャラの魅力がしっかり出ている。
りっぱな勇者になるためには、人助けが欠かせない!
というわけで、村ではモンスターの依頼をこなしていくサブクエストが満載だ。
メインストーリーの進行に連動して増えていく。
連作形式で依頼人を掘り下げる形式になっているし、
読んでいてグッとくるエピソードも多い。
納期に苦しむハリネズミを助けるサブクエもあるぞ!
日本一ソフトウェアのゲーム、納期ネタのイベント多いような……気のせいかな。
温かみのある絵柄と繊細な演出、朗読ムービーが今回も素晴らしいし、
「悲しみに寄り添う優しさ」を描いた
メインストーリーとサブクエストはどちらも胸にしみる。
王様ドラゴンとゆうのやり取りがとにかく良くて、
「お気に入りの木の棒が折れたので、村に新しい剣を買いに行く」
という、小さな一歩から旅立ったゆうが、
「りっぱな勇者」として成長していく姿が泣けるし、
かつての勇者について語る時の王様ドラゴンの言い回しも味わい深い。
サブクエストも小粒ながら名エピソード揃い。
俺が一番好きなのは余命僅かで美味しい食べ物を求めるネイサンと、
その友人ハリーのエピソードだね。これはぶっちぎりで好き。
強大な魔力を秘めた魔本と共に旅をする男のエピソードや、
過去のトラウマで引きこもるコルヴォと、
彼の辛い記憶を消そうと画策するルチェルのエピソードも良かった。
いくつか「説明セリフの言い回しが堅すぎない?」と引っかかるシーンもあったが、
他にも「ちょっといい話」としてまとまってるエピソードが多い。
この雰囲気に惹かれて買った人ならば、
「そうそう、こういうのが見たくて買ったんだよ!」と、しっかり満足できるストーリーだ。
……が、そのストーリーの足を引っ張るのがRPGパート。
システムが単純かつ、キャラ毎のとくぎの種類が少ないため、
戦略の幅が非常に狭くてかなり単調。
ほとんど同じ全体攻撃を連発してザコを散らすだけの作業になるし、
最大MPが低くてすぐMP切れになるからサクサク進行ともならない。
簡単かというとそうでもなく、
割としっかりレベル上げをしないとボス戦で苦戦するバランス。
「敵の弱点を突くと敵がピヨる」
「ピヨった敵は攻撃すると大ダメージだが逃がすことも出来る」
ってシステムがあるんだけど、弱点の条件が複雑で満たしづらいものが多く、
普通に倒した方が早いから上手く機能していない。
しかも弱点があるのはザコだけでボスには無い。
ダンジョンは細長い通路を組み合わせただけの構成で無駄に冗長。
似たような景色を延々と歩かされる。
沢山あるサブクエストは一度クリアしたダンジョンを探索させられるものばかり。
「ダンジョンでアイテムを3つ探してきて」ってタイプの依頼が多く、
場所を示すマーカー表示はあるものの、遊んでいるとかなりウンザリする。
ゆうがそのエリアに出現するモンスターより強くなると、
エンカウント率が下がってダッシュも可能になるシステムや、
エンカウント率が下がる消費アイテムもあるんだけど、
ダンジョンが広いからこれらを使ってもかなりかったるいレベル。
特定の仲間がいないと通れない仕掛けがあるんだけど、
どの仲間が必要なのかは行ってみないと分からないのも面倒だね。
このRPGパート、本当に無味乾燥なだけなので、
「つまらなくはない」「気にならなかった」という人はいても、
「面白かった」って言う人はほとんどいないと思う。そこが一番厳しい。
「初心者向け」を言い訳に、
単に味がしないだけの料理を初心者に喰わせるのは大罪だよ!
サブクエストは村にいるNPCを掘り下げる話で、
冗長な条件を要求されるものばかりだから、
追ってると「ゆうと王様ドラゴン」という
メインストーリーの印象が薄れるのも歯がゆいなぁ。
人助けをしてこそ勇者!
というのはテーマでもあるから、完全に無関係ではないにしても……。
ザコモンスターのデザインや図鑑のテキストも魅力的なだけに勿体ない。
こちらはミミック……じゃなくてタカラバコに擬態してるタカラネコ!
本編クリア+サブクエストコンプまで遊んで23時間ほど。
クリア優先なら10~15時間くらいかな?
主人公2人の関係のみを全力投球で描いた『嘘つき姫と盲目王子』に対して、
今回はゆうと王様ドラゴンの2人を中心とした世界を描いている。
方向性は割と違うが、「悲しみに寄り添う、優しさのおとぎ話」として良い話だったし、
主題歌やエンディングも満足だ。
しかし、すぐ終わるから値段が高いという前作への批判に対し、
プレイ時間を水増しする方向に舵を切ってしまったのが本当に無念。
美しいマップの探索や様々なキャラとの交流は、
RPG形式にしたからこそではあるんだが、テンポがあまりにも悪い。
サブクエストをコンプして良かったと言えるストーリーではあったので。
「サブクエストは適当なところで無視して遊んでくれ」とも言い辛いんだよぁ。
勿体無いゲームだった!