絶対SIMPLE主義

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【レビュー】犯罪者たちとの逃亡劇は、かけがえのない「旅」へと変わる『DesperaDrops/デスペラドロップス』【Switch】


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DesperaDrops/デスペラドロップス

 

『DesperaDrops/デスペラドロップス』のレビュー行くぜ!

 


パブリッシャー:ディースリー・パブリッシャー

機種:Switch

ジャンル:愛と逃亡のクライムADV乙女ゲーム

発売日:2023/11/30

価格(税込):7480


 

乙女ゲーの老舗でもあるディースリー・パブリッシャーが送る完全新作のADV。

D3Pオトメ部のブランドから発売される作品で開発はレッドエンタテイメント、キャラデザはコザキユースケ氏、シナリオは吉村りりか氏という布陣だ。

殺人事件の冤罪で逮捕された主人公が、成り行きでガチ犯罪者6人と一緒に逃げることになり、その過程で恋が芽生える恋愛ゲームになっているぞ。

 

俺は乙女ゲー自体全然やらなくて、昔SIMPLEシリーズで発売されたタイトルや『VitaminX』をちょっと遊んだくらい。D3から完全新作が出るなら試しにやってみるかと買ったらめっちゃ面白かった。2023年に遊んだD3のゲームではぶっちぎりに一番だぜ。

 

いやまあ、俺が2023年に遊んだD3のゲームは『CUSTOM MECH WARS』『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 ふしぎ駄菓子ばなし50選』『ひろがるスカイ!プリキュア ひろがる!パズルコレクション』『あのゲー』『Ed-0: Zombie Uprising』なんだが……。

普通にノベルゲームとして楽しめたし、クリアした後に「いい旅だった」と浸れる1本になっていたぞ!

 

 

舞台は2028年のイタリア。留学中だった天城ミカ(名前変更可能&デフォだと名前呼びボイス有り)は殺人事件の濡れ衣を着せられて逮捕され、ロクな捜査もされずに護送車に詰め込まれてしまう。突然の事故で護送車から脱出したものの、成り行きで同行していた6人の犯罪者たちと逃げることに。

 

追ってくる警察や強大な力を持つ秘密組織、殺人事件の真相、そしてミカが持っている「他人の感情や記憶を読み取る力」など。様々な謎と思惑が絡む中、ミカは元の生活に戻ることが出来るのか……?というストーリーだ。

 

このあらすじで元の生活に戻れると思いますか皆さんッ!?

 

 

メインメニューがいきなりオシャレUIでテンション上がる。

 


ノベルADVとしてはオーソドックスな構成。

全員で進む共通ルートを読み進め、選択肢による好感度の変化で後半から個別ルートに分岐していく作りだ。選んだ選択肢は記録されるし、好感度がどのくらい増えたかも可視化される。チャート機能もある。既読部分をすっ飛ばして次の選択肢まで飛ぶ機能もある。機能面は文句なしだ。

 

 

攻略対象である6人の犯罪者は曲者揃い。

全員が同じ手錠で繋がれてしまっているし、警察の行動も不審な点が多く、冤罪だから出頭して終わりとはならなそう。全員の犯罪スキルを活用してイタリア中を逃げ回りつつ、様々な人物の手を借りながら事件の真相に迫っていく。

 

 

これから主人公といちゃつく犯罪者共を紹介するぜ!

罪状が傷害のアッシュ・マイヤーは寡黙な一匹狼。喧嘩っ早くて行動が危ういし、みんなの会話に加わらないしで態度が悪い。

 

 

でもバイクを発見して少年のような笑顔を見せちゃうからもうダメ。

かなり序盤でそれ見せたらただの可愛い奴だろ!不器用ながらに主人公を気遣う姿と、大勢で行動することに慣れてない様子、時折見せる天然っぽさが魅力的な男だ。個別ルートは一番好きかなあ。

 


罪状が詐欺師であるハミエル・ルイスは見た目通りの色男。常にスカした態度を取りつつ、窮地を口の上手さで切り抜ける姿がマジで頼りになるので、遊んでいて思わず「ハミエルの兄貴!」と叫ぶことになる。粋なセリフ回しの数々がいちいち決まっていて、騙されてしまいたい……!

 

 

元警察官であるジブ・ヴァルツァーはメンバーの最年長。経験を活かした立ち回りと真面目さがまとめ役として頼もしく、銃の腕前もプロ級……いや元プロだったか。ハミエルの兄貴に次いで安心感がある。しかし罪状はメンバーでもっとも重い殺人だ。一体過去に何があったのか序盤から気にさせる。

 

 

パパさんと呼ばれて困惑するシーンが好き。ここで主人公がパパ呼びに乗っかる選択肢を選ぶとめちゃくちゃ動揺するの笑った。

 

 

ラミー・カリエールは世紀の大怪盗を自称する泥棒。スリや鍵開けはお手の物で、小柄な体格と人間離れした動きによる潜入スキルもお見事。足音を消すのがクセになってるタイプで、罪状はもちろん窃盗。ムードメーカー的な明るさと、過去の苦労がにじみ出る優しさ。そして闇の深さがほっとけない。

 

 

潜入中に急にロマンチックなこと言うからキュンと来たシーン。

 

 

カミュ・アインハルトは日本のアニメ・マンガオタクで特撮にも造詣が深い。自らを「愛の地球戦士」と呼称する痛い奴だが、罪状は危険物所持、器物損壊で肩書は革命家。ガチでヤバい爆弾を作りまくる危険人物だ!典型的なコミュ障なのでミカと話すのも一苦労だが、意外な正体や作中での成長っぷりは随一。

 

 

サリィ・デル・テスタは攻略対象では唯一の女性キャラ。天才ハッカーで罪状はもちろんサイバー犯罪だ。この手の作品でお約束だがハッキングの汎用性がズバ抜けてるので強すぎる!メンバーでは最年少で、ファッション大好きな明るい性格。でも寂しがり屋なところもあり、妹キャラ的なかわいさ全開だ。

でも罪の意識なくヤバいハッキングをスッとこなすからやっぱりヤバい奴である。

 

 

そしてプレイヤーの分身である主人公の天峰ミカ。

冤罪を被せられた一般人なので、やむなく空き家を拝借する場面でも一人だけ難色を示すし、盗んだものは後でちゃんと返すとか、弁償するとか事ある毎に言う。最初は鬱陶しがられるが、その態度だからこそ信用できると少しずつ信頼を勝ち取っていく。

 

その上で、ここぞという場面で見せる行動力とクソ度胸はプレイヤーもビックリのカッコ良さだ。最初は「無茶し過ぎだろ!?」と思うが、最終的に「やっぱすげぇよミカは……」ってなる。好きになれる主人公で良かった。ハミエルの兄貴と組んで、意外と演技が上手いところを見せるとこお気に入り。

 

 

この面子でテンポ良く進む逃亡劇が遊んでいて引き込まれる。

大々的に指名手配されて何故か罪状がどんどん上乗せされていくし、警察は追ってくるし、謎の組織が送り込む怪人(マジで怪人としか言いようがない奴らが来る)とのバトルもあり。背後に大きな力を感じる。

 

その中で潜伏場所探しや資金集めのための裏カジノ探しをする必要があるし、思わぬトラブルに巻き込まれることもある。事件を報道する有名キャスターやフリーライターの接触に、こちらの事情を知っていてメールを送ってくる謎の人物も出てくるので状況はカオス。逃亡生活は忙しすぎるぜ!

 

 

逃げながらの旅とはいえ休息は必要。一息ついたところで、こういう穏やかなシーンも豊富に用意されているぞ。まあミカの独白は「でも目の前にいる彼女は、サイバー犯罪で指名手配中。そして私に至っては殺人容疑だ。」とか穏やかじゃないが……。

 

 

登場キャラたちの掛け合いが魅力的で、ワイワイ騒ぎながら逃亡と戦いに明け暮れ、その合間のみんなで料理を食べたり、観光地を見たりする僅かな時間が愛おしい。逃亡劇だったのに、いつの間にか楽しい旅としての側面も色濃くなっていく。テンポ良く違う街に移動するから本当に旅気分。

 

攻略キャラ6人の「罪」に関してもしっかりと向き合う形で描いており、ミカが犯罪者たちを信頼する様子を見て「それはストックホルム症候群よ!」って突っ込むキャラもいる。「攻略対象が犯罪者の恋愛ゲーム」というコンセプトに真摯!そして「そんな話なの!?」と驚くような展開も続々だ。

 

 

サブキャラの人数も多く、それぞれにきっちり見せ場が用意されてるからキャラが立ってる。「ここでコイツが!?」「ここはやっぱりこの人だよな!」と、予想を裏切りつつ、期待を裏切らない構成がたまらない作り。

 

 

特に公式サイトに載ってないこの人がめちゃくちゃ印象に残るから困る。

この集中線は俺が勝手に入れたけど、なんとなくゲーム中でも出ていたような気がする。

 

 

150項目用意されたTIPSがすべてキャラの会話形式になってるのも素晴らしい!情報が更新されると会話が追記されるのも細かい仕様だ。

 


大変満喫したんだが、やはり逃亡劇なのでいちゃつくシーンは少な目。全員で行動する共通ルートがかなり長く、仲が深まる個別ルートはメンバーそれぞれの過去や闇に迫っていき、新たにヘビーな展開が立ち上がってくるので心が休まらない。

 

凄く面白かったが「恋愛ゲームと聞いたが全然甘くないな……」という感想を持ちながら遊んでた。その辺は今後予定されている後日談DLCに期待ってところかな。

 

ゲームは事件の真相が明らかになる真エンドがあり、それとは別に各キャラの個別エンドがハッピーとバッドの2種類ある。このバッドエンドがキャラによってただの惨劇で終わるものと、絶望的だけど一応の結末になってるもので差があるのはちょっと気になった。ハッピーが全員良かったから些細な点ではあるが。

あと、俺は好きだけどサリィルートは大分賛否別れるかもしれん……!

 

 

純粋な欠点として気になった点としてはミッションモード。

ミカの視点で6人のメンバーに指示を出し、潜入や脱出などに挑むパートだ。選択肢を選ぶだけだが、状況を見ながら6人それぞれの得意分野を活用させる構成は非常に面白い。カミュさん、とりあえず爆破してください!

 

が、何故かここだけスキップ機能が使えないため、周回プレイする度にやり直すのが手間。シナリオ分岐も無く、選択肢ミスったらほぼ一発ゲームオーバーなので、単に同じ作業を繰り返すだけだ……。なんでこんな仕様なんだろう。

 

 

フルプライスタイトルとしてはちょっとスチルが少なく、「ここは専用の立ち絵が欲しかったなぁ」というシーンもあったのが惜しかった。背景は割と種類が豊富なんだけどね。

 

 

このミカが真顔でサイドカーに乗るスチルが、全編通してやたら出てくるので面白くなっちゃう。

 

 

6人分の差分あるけどミカの表情いっさい変わらないし、すげぇシリアスな場面でも出てくるから笑っちゃうよ!

 

 

全ルートクリアまで30時間ほど。

最初に書いた通り乙女ゲー全然やらないんだけど、普通にスリラー作品として楽しめてメインキャラみんな好きになれた。個別ルートに入ってから感情を破壊されっぱなし。個別ルート入った後の、攻略中のキャラ以外の仲間の描写なんかも凄くいいんだよなぁ。コンプした後は旅が終わった寂しさで胸がいっぱいだったぜ……。

大満足の1本でした。D3オトメ部、今後も注目するぞ!